「給与所得はないけれど、株の配当金がたくさんある」という方、ふるさと納税を諦めていませんか?実は、配当金の申告方法を工夫することで、ふるさと納税の限度額が生まれ、お得な返礼品を受け取れる可能性があります。それが「申告分離課税」という選択肢です。この記事では、給与所得がなく多額の受取配当金がある方が申告分離課税を選んだ場合、ふるさと納税の限度額はどうなるのか、そして所得税やその他にどんな影響があるのかを、分かりやすく解説していきます。
配当所得の課税方法とふるさと納税の仕組み
まず、ふるさと納税の限度額を理解するために、配当金にかかる税金の仕組みから見ていきましょう。配当所得の課税方法には、大きく分けて3つの選択肢があります。どの方法を選ぶかによって、ふるさと納税の限度額が大きく変わってくるんですよ。
3つの課税方法、どれを選ぶ?
上場株式の配当金を受け取った場合、税金の納め方として以下の3つの方法から選ぶことができます。それぞれの特徴を簡単な表にまとめました。
| 課税方法 | 特 徴 |
| 申告不要制度 | 配当金を受け取る際に税金が天引き(源泉徴収)され、それで納税が完了します。確定申告は不要で一番手軽ですが、所得として扱われないため、ふるさと納税の限度額は増えません。 |
| 総合課税 | 他の所得(事業所得など)と合算して確定申告する方法です。所得に応じた累進税率が適用され、税金の負担を軽減できる「配当控除」が使えます。所得が増えるため、ふるさと納税の限度額も増えます。 |
| 申告分離課税 | 他の所得とは合算せず、配当所得だけで所得税15%、住民税5%(復興特別所得税を除く)の税率で計算し、確定申告する方法です。こちらも所得が増えるため、ふるさと納税の限度額は増えます。 |
ふるさと納税の限度額が決まる仕組み
ふるさと納税の控除上限額は、とても簡単に言うと「あなたが納める住民税の所得割額」に基づいて決まります。住民税の所得割額は、あなたの所得が多ければ多いほど金額が大きくなります。つまり、確定申告をして配当所得をあなたの所得に含めることで、住民税所得割額が増え、結果としてふるさと納税ができる上限額もアップする、という仕組みなんです。
給与所得がない場合の重要なポイント
今回のケースのように給与所得がない場合、ふるさと納税の限度額を計算する元となる所得は、基本的に配当所得だけになります。もし「申告不要制度」を選ぶと、配当所得は所得としてカウントされないため、ふるさと納税の限度額は0円になってしまいます。ですから、配当所得でふるさと納税を活用するためには、「総合課税」または「申告分離課税」を選んで確定申告することが絶対条件となるのです。
申告分離課税でふるさと納税限度額は増えるのか?
結論からお伝えすると、はい、申告分離課税を選ぶことでふるさと納税の限度額は増えます。正確には、申告不要制度を選んだ場合の「0円」の状態から、限度額が算出されるようになります。ここでは、具体的な例を挙げて見ていきましょう。
具体的なシミュレーションで比較
例えば、以下のようなケースで考えてみましょう。
- 前提:独身、給与所得0円、配当所得1,000万円
- 所得控除:基礎控除48万円のみ
【申告不要制度を選んだ場合】
配当所得は所得として計算されないため、課税所得は0円です。そのため、ふるさと納税の限度額も0円となります。
【申告分離課税を選んだ場合】
配当所得1,000万円を所得として確定申告します。これにより所得税と住民税が計算され、住民税の所得割額が発生します。その結果、ふるさと納税のポータルサイトなどでシミュレーションすると、約25万円程度のふるさと納税限度額が生まれる計算になります(詳細な控除額により変動します)。つまり、実質2,000円の負担で約25万円分の返礼品を受け取れるチャンスが生まれるのです。
総合課税を選んだ場合との比較
では、同じ条件で「総合課税」を選んだ場合はどうでしょうか。配当所得1,000万円の場合、課税される所得金額は900万円を超えるため、所得税の税率は33%になります。一方、申告分離課税の所得税率は一律15%です。このケースでは、総合課税を選ぶと税率が高くなり、トータルの税負担は申告分離課税よりも重くなってしまいます。多額の配当所得がある場合は、一般的に申告分離課税の方が有利になることが多いです。
申告分離課税を選ぶことによるトータルの税額への影響
ふるさと納税の限度額が増えるのは嬉しいですが、全体の税負担がどうなるのかも気になりますよね。申告不要制度を選んだ場合と、申告分離課税を選んでふるさと納税をした場合のトータルの手残りを比較してみましょう。
申告不要制度の場合の納税額
特定口座(源泉徴収あり)で配当金を受け取っている場合、所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%、合計20.315%が自動的に天引きされています。1,000万円の配当金なら、203万1,500円が税金として引かれ、手残りは796万8,500円です。これで納税は完了です。
申告分離課税でふるさと納税をした場合
申告分離課税で確定申告をすると、すでに天引きされた203万1,500円を元に、年間の正しい税額を再計算します。このとき、基礎控除などが適用されるため、天引きされた税金の一部が還付される可能性があります。さらに、例えば25万円のふるさと納税を行うと、自己負担分の2,000円を除いた24万8,000円が、所得税からの還付と翌年の住民税からの控除という形で戻ってきます。実質的な納税額は変わりませんが、25万円分の返礼品が手に入る分、申告分離課税を選んだ方が断然お得と言えます。
注意!税金以外にも影響があります
「それなら絶対に確定申告した方がいい!」と思うかもしれませんが、少し待ってください。確定申告をすることで、税金以外にも影響が出ることがあります。特に以下の点は必ず確認してください。
国民健康保険料への影響
これが最も注意すべき点です。申告不要制度では所得としてカウントされなかった配当所得が、確定申告をすることで国民健康保険料の算定基礎となる「合計所得金額」に含まれてしまいます。これにより、国民健康保険料が大幅に上がってしまう可能性があるのです。自治体によって計算方法や上限額は異なりますが、ふるさと納税で得られるメリット(返礼品の価値)よりも、保険料の増加額の方が大きくなってしまうケースも少なくありません。
配偶者控除・扶養控除への影響
もしあなたが誰かの扶養に入っている場合、確定申告をして合計所得金額が48万円を超えると、扶養から外れてしまいます。そうなると、扶養しているご家族(例えば配偶者や親)の税負担が増えてしまうというデメリットが発生します。
その他の行政サービスへの影響
所得金額は、下記のような様々な行政サービスの負担額や受給資格の判定にも使われます。
- 後期高齢者医療制度の保険料や医療費の自己負担割合
- 介護保険料
- 児童手当の所得制限
- 保育料の算定
確定申告によって所得が増えることで、これらのサービスに影響が出る可能性も考慮する必要があります。
結局、申告分離課税を選ぶべき?判断のポイント
ここまで見てきたように、申告分離課税にはメリットもデメリットもあります。最終的にどう判断すれば良いのか、ポイントを整理しました。
メリットとデメリットのまとめ
| メリット | デメリット |
| ふるさと納税の限度額が生まれ、活用できる | 国民健康保険料が大幅に上がる可能性がある |
| 基礎控除等の適用で、税金が少し戻ってくる場合がある | 扶養に入っている場合、扶養から外れてしまう |
| 他の株式の譲渡損失があれば損益通算ができる | 医療費負担など他の行政サービスに影響が出る可能性がある |
あなたの状況に合わせた判断を
最終的な判断は、「ふるさと納税で得られるメリット」と「確定申告による負担増」を天秤にかけることになります。
- 会社の健康保険や共済組合に加入している(国民健康保険ではない)ご家族の扶養に入っている方は、保険料の心配がないため、ふるさと納税のメリットを受けやすいかもしれません。(ただし、扶養から外れない所得金額かどうかの確認は必要です)
- ご自身で国民健康保険に加入している方は、お住まいの市区町村の窓口で、所得が1,000万円増えた場合の保険料の増加額を事前に試算してもらうことを強くお勧めします。
返礼品の価値と保険料の増加額を比較し、それでもメリットがあると感じる場合に、申告分離課税での確定申告を検討しましょう。
まとめ
給与所得がなく多額の受取配当金がある場合、申告分離課税で確定申告をすれば、ふるさと納税の限度額を増やし、制度を活用することができます。申告不要制度と比べて、返礼品がもらえる分だけお得になる可能性が高いです。
ただし、最大の注意点は国民健康保険料への影響です。確定申告によって所得が増えることで、保険料が大きく跳ね上がるリスクがあります。また、扶養に入っている方は扶養から外れる可能性も考えなければなりません。
ご自身の状況をよく確認し、ふるさと納税のメリットと、保険料などの負担増を総合的に比較して、最適な選択をしてくださいね。もし判断に迷う場合は、お住まいの市区町村役場や税務署、税理士などの専門家に相談してみましょう。
参考文献
配当所得とふるさと納税のよくある質問まとめ
Q.給与所得がありませんが、配当金だけでふるさと納税はできますか?
A.はい、できます。配当所得もふるさと納税の控除限度額を計算する際の所得に含まれるため、給与所得がなくても利用可能です。
Q.配当金の申告方法によって、ふるさと納税の限度額は変わりますか?
A.はい、変わります。「総合課税」「申告分離課税」「申告不要」のいずれを選択するかで、限度額計算の基礎となる所得額が変動するため、限度額も変わってきます。
Q.配当金を申告分離課税で申告すると、ふるさと納税の限度額は増えますか?
A.所得総額によりますが、増える可能性があります。申告分離課税を選ぶと、限度額の計算に使う住民税所得割額が変わります。総合課税と比較してどちらが有利かは、所得の合計額によって異なるため、シミュレーションが必要です。
Q.申告分離課税を選ぶと、所得税や住民税の合計額は安くなりますか?
A.課税所得金額によります。一般的に、課税所得金額が900万円を超えるような場合は、総合課税よりも税率が低い申告分離課税の方が、税額全体を抑えられる可能性があります。
Q.申告分離課税で申告した配当金は、国民健康保険料に影響しますか?
A.はい、影響があります。申告分離課税で確定申告した配当所得は、国民健康保険料の算定基礎に含まれます。そのため、申告不要制度を選んだ場合に比べて保険料が上がることがあります。
Q.ふるさと納税の限度額を最大化しつつ、税金も抑える最適な申告方法は?
A.個々の所得状況によって最適解は異なります。ふるさと納税の限度額、所得税・住民税、国民健康保険料は連動して変わるため、トータルで最も有利な方法を見つけるには、ご自身の所得額で複数のパターンを試算することが重要です。