「自分の所得だと、社会保険料や受けられる手当はどのくらいになるんだろう?」と考えたことはありませんか?実は、私たちの所得の金額によって、毎月支払う保険料や医療費の負担、もらえる手当の額などが大きく変わってきます。知らないままだと、損をしてしまうこともあるかもしれません。この記事では、所得によってどのような影響があるのか、国民健康保険料や後期高齢者医療制度、介護保険料、児童手当、保育料の5つのポイントに絞って、具体的な金額を交えながら分かりやすく解説していきますね。
国民健康保険料は所得でどう変わる?
自営業の方や退職された方などが加入する国民健康保険。その保険料は、お住まいの市区町村によって計算方法が異なりますが、基本的には「所得割額」と「均等割額」の合計で決まります。所得が多いほど、所得割額が増えるため、保険料も高くなる仕組みです。
所得割額と均等割額ってなに?
国民健康保険料は、主に2つの要素で構成されています。
| 所得割額 | 前年の所得に応じて計算される部分です。所得が多いほど、この金額は大きくなります。 |
| 均等割額 | 所得に関わらず、加入者一人ひとり、または一世帯ごとに定額でかかる部分です。 |
この2つを合計したものが、年間の保険料となります。具体的な料率(所得にかける割合)や均等割額の金額は市区町村によって異なるため、お住まいの自治体のホームページなどで確認してみてくださいね。
所得が低い場合の軽減措置
前年の所得が一定の基準を下回る世帯については、保険料の「均等割額」が減額される制度があります。世帯の所得と加入者の人数に応じて、7割、5割、2割のいずれかの割合で軽減されます。
| 軽減割合 | 軽減の対象となる所得基準(世帯の合計所得) |
| 7割軽減 | 43万円 + (給与所得者等の数 – 1) × 10万円 以下 |
| 5割軽減 | 43万円 + (被保険者数 × 29.5万円) + (給与所得者等の数 – 1) × 10万円 以下 |
| 2割軽減 | 43万円 + (被保険者数 × 54.5万円) + (給与所得者等の数 – 1) × 10万円 以下 |
この軽減措置は、ご自身で申請しなくても、所得の申告がされていれば自動的に適用されることがほとんどです。所得が少ないのに保険料が高いと感じる場合は、所得の申告が正しくされているか確認してみましょう。
後期高齢者医療制度の保険料と自己負担割合
原則として75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」。こちらも、保険料や病院にかかったときの自己負担割合が所得によって変わります。
保険料の決まり方
保険料は、国民健康保険と同じように「所得割額」と「均等割額」の合計で決まります。保険料率は都道府県ごとに定められており、2年ごとに見直されます。
例えば、千葉県(令和6~7年度)の場合、以下のようになっています。
| 均等割額 | 43,800円 |
| 所得割率 | 9.11% (所得が低い方への軽減措置あり) |
年間の保険料は、「(前年の総所得金額等 – 基礎控除43万円)× 9.11% + 43,800円」という式で計算されます。こちらも所得が低い世帯には、均等割額の軽減措置があります。
医療費の自己負担割合は所得で決まる
病院の窓口で支払う医療費の自己負担割合は、所得に応じて1割、2割、3割のいずれかになります。毎年8月1日に、前年の所得をもとに見直されます。
| 負担割合 | 所得の基準 |
| 3割 | 同じ世帯の被保険者のうち、住民税の課税所得が145万円以上の方がいる場合。 |
| 2割 | 世帯の被保険者のうち住民税の課税所得が28万円以上の方がいて、かつ以下のいずれかに当てはまる場合。 ・被保険者が1人の世帯:「年金収入 + その他の合計所得金額」が200万円以上 ・被保険者が2人以上の世帯:被保険者全員の「年金収入 + その他の合計所得金額」の合計が320万円以上 |
| 1割 | 上記(3割、2割)に当てはまらない場合。 |
3割負担と判定されても、収入が一定額未満の場合は申請によって1割または2割負担になる「基準収入額適用申請」という制度もあります。
介護保険料の仕組み
40歳になると加入が義務付けられる介護保険。保険料は、65歳以上の方(第1号被保険者)と40歳から64歳までの方(第2号被保険者)で納め方が異なります。ここでは、所得による影響が大きい65歳以上の方の保険料について見ていきましょう。
所得段階で保険料が決まる
65歳以上の方の介護保険料は、お住まいの市区町村が定める「基準額」をもとに、本人や世帯の所得状況に応じて複数の所得段階に分けて設定されます。所得が低い方は基準額よりも低く、所得が高い方は基準額よりも高くなる仕組みです。
所得段階は市区町村によって異なりますが、一般的には以下のように分かれています。
| 所得段階(例) | 対象となる方 |
| 第1段階 | 生活保護受給者、世帯全員が住民税非課税で本人が老齢福祉年金受給者 |
| 第2段階 | 世帯全員が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下 |
| 第5段階(基準) | 本人が住民税課税で、合計所得金額が120万円未満 |
| 第9段階以上 | 本人が住民税課税で、合計所得金額が300万円以上など(所得に応じてさらに細分化) |
所得段階が上がるにつれて、基準額にかける倍率も上がっていきます。ご自身の保険料がどの段階に当たるかは、市区町村から送られてくる介護保険料の決定通知書で確認できます。
児童手当の所得制限
中学校卒業までの児童を養育している家庭に支給される児童手当。実は、この手当にも保護者の所得による制限が設けられています。
2つの「所得の壁」
児童手当には、「所得制限限度額」と「所得上限限度額」という2つの基準があります。扶養している親族の人数によって、基準となる金額が変わります。
| 所得の状況 | 支給額(児童1人あたり月額) |
| 所得制限限度額未満 | ・3歳未満:一律15,000円 ・3歳~小学生:10,000円(第3子以降は15,000円) ・中学生:一律10,000円 |
| 所得制限限度額以上、所得上限限度額未満 | 特例給付として、児童の年齢に関わらず一律5,000円 |
| 所得上限限度額以上 | 支給なし |
具体的な所得制限の金額
例えば、子どもが1人(扶養親族1人)の場合の所得制限額は以下のようになります。「収入額の目安」は給与所得のみの場合の目安です。
| 扶養親族の人数 | 所得制限限度額 (所得額 / 収入額の目安) |
| 0人(子どもが生まれる前など) | 622万円 / 833.3万円 |
| 1人(子ども1人) | 660万円 / 875.6万円 |
| 2人(子ども2人) | 698万円 / 917.8万円 |
所得上限限度額は、上記の所得制限限度額に200万円~300万円程度上乗せした金額が目安となります。ご自身の所得がどの区分に当てはまるか、確認してみましょう。
保育料はどうやって決まる?
保育園や認定こども園などを利用する際の保育料も、保護者の所得によって大きく変わります。3歳から5歳児クラスは原則無償化されていますが、0歳から2歳児クラスや、無償化の対象外となる費用については、所得に応じた負担が必要です。
市町村民税の所得割額で決定
保育料は、国が定める基準を参考に、各市区町村が決定します。その基準となるのが、世帯の「市町村民税所得割額」です。毎年4月から8月までの保育料は前年度の所得割額、9月から翌年3月までは当年度の所得割額で算定されます。
所得割額に応じて階層区分が設定されており、その階層ごとに保育料が決まっています。
| 階層区分(例) | 基準となる市町村民税所得割額(世帯合計) |
| A階層 | 生活保護世帯 |
| B階層 | 市町村民税非課税世帯 |
| C1階層 | 市町村民税所得割額 48,600円未満 |
| C2階層 | 市町村民税所得割額 97,000円未満 |
このように、所得割額が低い世帯ほど保育料は安く、高くなるほど保育料も上がっていきます。具体的な階層区分や保育料の金額は、お住まいの市区町村のホームページや、子育て支援の窓口で確認することができます。
まとめ
今回は、所得によって変わる社会保険料や各種手当、自己負担割合について解説しました。国民健康保険料、後期高齢者医療制度、介護保険料、児童手当、保育料は、いずれも私たちの所得に大きく関係しています。所得の計算方法は制度ごとに少しずつ異なりますが、基本的には「所得が高いほど負担は増え、給付は少なくなる」という仕組みになっています。ご自身の所得で負担や給付がどうなるのかを正しく理解し、家計の計画を立てる参考にしてくださいね。より詳しい情報については、お住まいの市区町村の窓口や公式サイトで確認することをおすすめします。
参考文献
所得と社会保障制度のよくある質問まとめ
Q.所得が増えると、国民健康保険料はどれくらい上がりますか?
A.国民健康保険料は、前年の所得に応じて計算される「所得割」と加入者数に応じた「均等割」などで構成されます。所得が増えれば所得割額が直接的に増加するため、保険料も高くなります。具体的な金額はお住まいの市区町村によって異なりますが、所得が低い世帯には保険料の軽減措置があります。
Q.75歳以上の医療費の自己負担割合は、所得によってどう決まりますか?
A.後期高齢者医療制度では、医療費の自己負担割合は原則1割ですが、現役並み所得者は3割となります。また、一定以上の所得がある方は2割負担となります。負担割合は、前年の住民税課税所得額などによって毎年判定されます。
Q.介護保険料は所得によって変わりますか?
A.はい、変わります。65歳以上の方の介護保険料は、お住まいの市区町村ごとに、前年の所得に応じて多段階に設定されています。所得が高いほど保険料も高くなる仕組みです。40歳から64歳までの方は、加入している健康保険の算定方法に基づき保険料が決まります。
Q.児童手当の所得制限について教えてください。
A.児童手当には「所得制限限度額」と「所得上限限度額」があります。所得が所得制限限度額未満の場合は満額支給、所得制限限度額以上で所得上限限度額未満の場合は特例給付として一律月額5,000円が支給されます。所得が所得上限限度額以上になると、手当は支給されなくなります。
Q.保育料は、世帯の所得でどのように決まるのですか?
A.認可保育施設などの保育料は、主に世帯の市区町村民税の所得割額に基づいて算定されます。所得割額が多い(所得が高い)世帯ほど、保育料も高くなる階層区分が設定されています。ただし、3歳から5歳児クラスは所得にかかわらず無償化の対象となります。
Q.医療費が高額になった場合、所得によって自己負担の上限額は変わりますか?
A.はい、高額療養費制度における1か月の自己負担限度額は、年齢や所得によって区分が分かれています。住民税の課税所得などに応じて区分が設定されており、所得が高い方ほど自己負担の上限額は高くなります。上限を超えた分は申請により払い戻されます。