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市街化調整区域の宅地評価「しんしゃく」とは?相続税が安くなる減額ポイントを解説

2025-02-15
目次

ご家族から相続した大切な土地が「市街化調整区域」の中にあると知ったら、その評価額がどうなるか、とても気になりますよね。特に、相続税の土地評価では「しんしゃく」という言葉が重要なキーワードになります。これは、土地の評価額を大きく減額できる可能性を秘めた、とても大切な考え方なんです。この記事では、少し難しいイメージのある市街化調整区域内宅地の「しんしゃく」について、できるだけ優しく、わかりやすく解説していきますね。

市街化調整区域と「しんしゃく」の基本

まずは、「市街化調整区域」とはどんな場所なのか、そしてなぜ「しんしゃく」という考え方が評価の際に必要になるのか、基本的なところから一緒に見ていきましょう。この基本を理解することが、適切な土地評価への第一歩になりますよ。

まずは理解しよう!市街化調整区域とは?

市街化調整区域とは、都市計画法という法律に基づいて、「市街化を抑制すべき区域」、つまり、むやみに建物を建てたり開発したりしないようにしましょう、と定められたエリアのことです。自然環境を守ったり、計画的でない市街地の広がりを防いだりする目的があります。そのため、原則として住宅や商業施設などを新しく建築することができなかったり、できても厳しい条件が付いたりするのが大きな特徴です。

なぜ評価額が下がる?「しんしゃく」の意味

「しんしゃく(斟酌)」という言葉には、「相手の事情を汲み取って手加減する」といった意味があります。相続税の土地評価における「しんしゃく」も、まさにこの意味合いで使われます。市街化調整区域内の土地は、自由に建物を建てられないなど、利用する上で大きな制限がありますよね。この不便さや利用価値の低さを「汲み取って」、通常の宅地よりも評価額を低くしましょう、というのが「しんしゃく」の考え方なんです。この適用ができるかどうかで、相続税額が大きく変わることもあるんですよ。

宅地と雑種地で「しんしゃく」の考え方は同じ?

国税庁が出している公式な見解(質疑応答事例)では、「市街化調整区域にある雑種地の評価」について「しんしゃく」が明記されています。では、登記上の地目が「宅地」の場合はどうなのでしょうか?結論から言うと、地目が宅地であっても、雑種地と同様の建築制限や利用制限があるのであれば、この「しんしゃく」の考え方を準用して評価するのが一般的です。大切なのは登記上の地目よりも、その土地が実際にどのような法的規制を受けているか、という実態なんですね。

しんしゃく割合は3パターン!具体的な減額率をチェック

市街化調整区域内の土地評価で適用される「しんしゃく割合」は、その土地に課せられた建築制限の厳しさによって、大きく3つのパターンに分かれます。国税庁の指針を参考に、どのくらいの減額が見込めるのか、それぞれのケースを見ていきましょう。

しんしゃく割合 どのような土地か
50% 建物の建築が原則として一切認められない土地
30% 建築は可能だが、用途や規模などに制限がある土地
0% 建築制限がほとんどなく、宅地と同様に利用できる土地

【50%減額】建物の建築が一切認められない場合

最も大きく評価額が下がるのが、この50%減額のケースです。これは、その土地に建物を建てることが原則として一切許可されない場合に適用されます。例えば、周りが田んぼや畑ばかりの純農地地帯にポツンとある土地などで、都市計画法第34条に定められた開発許可の基準をどれも満たせないような土地が該当します。ただし、この50%の減額は建築ができないことに対する評価減ですので、無道路地補正など、他の建築制限に関する補正と重複して適用することはできないので注意が必要です。

【30%減額】特定の建物なら建築できる制限付きの場合

次に、30%減額が適用されるケースです。これは、建物の建築が全面的に禁止されているわけではないものの、建てられる建物の種類(用途)や規模、建築できる人などに厳しい制限がある場合に適用されます。例えば、「農家住宅しか建てられません」「特定の条件を満たす人の自己居住用住宅(分家住宅など)に限ります」「地域住民のための小規模な店舗ならOKです」といったケースがこれにあたります。実務上、最もよく見られるのがこの30%減額のパターンです。

【減額なし】原則として建築制限がない場合

市街化調整区域内であっても、しんしゃくが全く適用されない(0%)ケースもあります。これは、区域内でも例外的に宅地化が進んでいたり、計画的な開発が認められていたりして、建築に関する制限がほとんどない土地です。具体的には、後ほど詳しく解説する「地区計画」が定められた区域や、自治体の「条例で指定された区域」などが該当します。このような土地は、実質的に市街化区域の宅地と変わらない価値があると判断されるため、減額の対象にはなりません。

【しんしゃく割合30%】適用される具体的なケース

しんしゃく割合30%が適用されるのは、「建築はできるけれど制限付き」というケースでしたね。この「制限」の根拠となるのが都市計画法第34条です。ここでは、実務でよく見られる代表的なケースをいくつかご紹介します。

第1号:地域住民のための公益施設や小規模店舗

その地域に住んでいる人たちの生活に必要な施設であれば、建築が許可される場合があります。例えば、診療所や社会福祉施設、あるいは日用品を販売する小規模な店舗(予定建築物の敷地面積が500㎡以下など)がこれに該当します。ただし、「既存集落からおおむね50m以内」といった場所の要件もあり、どこでも建てられるわけではありません。

第9号:道路沿いのサービス施設

国道などの幹線道路沿いにある土地で、ドライバー向けのサービス施設、具体的にはガソリンスタンドやコンビニエンスストア、レストランなどの建築が許可されるケースです。これも、接している道路が一定の条件(例:4車線以上の県道)を満たす必要があり、用途が限定されるため30%のしんしゃくが検討されます。

第12号:自治体の条例で定められた開発行為

これは、それぞれの市町村が条例で独自に定めている基準です。よくあるのが、いわゆる「分家住宅」の建築を認めるケースです。市街化調整区域に長年住んでいる親族から土地を譲り受けて、自分の家を建てるといった場合に適用されることがあります。建築できる人の属性や建物の用途が限定されるため、30%減額の対象となる代表例です。

第13号:線引き前から土地を持つ人のための建築

その地域が市街化調整区域に指定されること(これを「線引き」と言います)よりも前から土地を所有していた人が、自分の家や自分の事業所を建てる場合に限って開発が許可される、という基準です。これも建築目的が「自己の居住用」または「自己の業務用」に限定されているため、30%のしんしゃく割合が適用されます。

【しんしゃく割合0%】減額できない具体的なケース

一方で、市街化調整区域内でも宅地としての利用価値が高いと判断され、しんしゃくが認められない土地もあります。どのような場合に減額が適用されないのか、具体的なケースを見ていきましょう。

第10号:地区計画・集落地区計画の区域内

市町村が「地区計画」や「集落地区計画」という、より細かいまちづくりのルールを定めている区域があります。このような区域では、その計画に沿ったものであれば建築が認められ、計画的な開発が進められています。建築制限が大幅に緩和されているため、しんしゃく割合は0%となります。

第11号:条例で指定された区域内(50戸連たん地域など)

市街化区域に隣接・近接していて、すでにおおむね50戸以上の建物が連なっている(連たんしている)地域などで、都道府県が条例で特別に指定した区域がこれにあたります。すでに宅地化がかなり進んでおり、市街化区域と一体的な日常生活圏を形成していると認められるため、一般的な住宅建築が可能です。そのため、しんしゃくは適用されません。

しんしゃく割合を判断するための調査方法

では、実際に相続した土地のしんしゃく割合を知るには、どうすれば良いのでしょうか。ご自身で調べる場合の基本的なステップをご紹介します。

ステップ1:役所の都市計画課で確認する

最も確実で重要なのが、土地が所在する市区町村の役所(都市計画課など)に問い合わせることです。まずはその土地が市街化調整区域であることを確認し、その上で「この土地で開発許可を得る場合、都市計画法第34条のどの号の基準が適用される可能性がありますか?」と具体的に質問してみましょう。担当者から得られる情報が、しんしゃく割合を判断する上で最も重要な根拠になります。

ステップ2:周辺の利用状況を現地で確認する

役所での確認と合わせて、必ず現地に足を運び、ご自身の目で周辺の状況を確認しましょう。書類上は厳しい規制があるように見えても、実際には周りに店舗や住宅が立ち並び、宅地として活発に利用されていることもあります。特に幹線道路沿いなどで、郊外型の店舗が広がっているような地域では、宅地としての取引価格も高く形成されているため、しんしゃくが認められない可能性も出てきます。役所での情報と現地の状況、両方を見て総合的に判断することが大切です。

まとめ

今回は、市街化調整区域内宅地の評価における「しんしゃく」について解説しました。ポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 市街化調整区域内の土地は、建築制限などの利用上の不便さを考慮して評価額を減額する「しんしゃく」が適用される場合がある。
  • しんしゃく割合は、建築制限の度合いに応じて50%、30%、0%の3パターンに分かれる。
  • どの割合が適用されるかは、都市計画法第34条のどの基準に該当するかによって決まることが多い。
  • 正確な判断のためには、役所の都市計画課への確認現地の状況調査が不可欠。

しんしゃく割合の判断は、相続税の申告において非常に専門的で難しい部分です。もしご自身での判断に不安を感じる場合は、土地評価に詳しい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。適切な評価を行うことで、払い過ぎの相続税を防ぐことにつながりますよ。

参考文献

市街化調整区域の土地評価に関するよくある質問まとめ

Q.市街化調整区域の土地はすべて評価額が下がりますか?

A.いいえ、すべてではありません。建築制限がほとんどない「条例指定区域」(都市計画法第34条第11号)など、実質的に宅地と変わらない利用ができる土地では減額されない(しんしゃく割合0%)こともあります。

Q.「しんしゃく」と「宅地造成費」の控除は併用できますか?

A.はい、併用できます。宅地比準方式で評価する場合、近傍宅地の価額からしんしゃく割合による減額を行った後、さらに宅地に転用するための造成費を控除して評価額を計算します。

Q.登記地目が「宅地」ですが、「しんしゃく」は適用されますか?

A.はい、適用される可能性が高いです。国税庁の指針は「雑種地」を例にしていますが、登記地目が宅地であっても、市街化調整区域として同様の建築制限があれば、その制限を評価に反映させるのが実務上の一般的な考え方です。

Q.しんしゃく割合50%と無道路地減額は併用できますか?

A.いいえ、原則として併用できません。しんしゃく割合50%も無道路地減額も、どちらも「建物の建築が困難であること」を理由とする減価要因です。そのため、両方を適用すると二重に減額することになるため、認められていません。

Q.しんしゃく割合は誰が判断するのですか?

A.最終的には、相続税を申告する納税者自身(または依頼を受けた税理士)が、法令や通達、役所調査の結果など客観的な資料に基づいて判断します。そのため、税務署との間で見解が異なる可能性もあります。

Q.自分の土地のしんしゃく割合がわからない場合はどうすればいいですか?

A.まずは土地の所在する市区町村の都市計画担当部署に問い合わせて、どのような建築制限があるかを確認するのが第一歩です。その上で判断が難しい、または不安な場合は、土地評価の実績が豊富な税理士などの専門家にご相談ください。

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