税理士法人プライムパートナーズ

違法建築された建物の敷地評価で損しない!相続税の減額ポイント

2025-02-16
目次

ご家族が遺された財産の中に、もし「違法建築された建物」がある土地が含まれていたら、その敷地の相続税評価はどうなるのでしょうか?「法律違反の建物だから価値は低いはず」と単純に考えてしまうと、実は相続税で大きく損をしてしまう可能性があります。違法建築物の敷地評価には、知っておくべき特別なルールがあるんです。この記事では、専門的で難しいと思われがちな違法建築された建物の敷地評価について、誰にでもわかるように優しく解説していきますね。

違法建築とは?まずは基本を知りましょう

相続税の評価を考える前に、まずは「違法建築」がどのようなものか、基本的な知識を整理しておきましょう。「違法建築」と似た言葉に「既存不適格建築物」というものもあり、この違いを理解することが第一歩になります。

そもそも「違法建築」ってどんなもの?

違法建築とは、その名の通り、建物を建てるときに守らなければならない法律(主に建築基準法)や条例に違反して建てられた建物のことです。建物を建てた当初から、法律のルールを守っていない状態を指します。
具体的には、以下のようなケースがよく見られます。

  • 建ぺい率・容積率オーバー:決められた敷地面積に対する建物の広さや延床面積の上限を超えてしまっている状態。
  • 接道義務違反:建築基準法で定められた幅4m以上の道路に、敷地が2m以上接していない状態。
  • 無許可での増改築:建築確認申請を出さずに、勝手に建物を増築したり、大規模な改築をしたりした状態。

これらの建物は、法律上の問題を抱えていることになります。

「既存不適格建築物」との違い

一方で、既存不適格建築物というものがあります。これは、建てられた当時は法律に適合していて適法だったけれど、その後の法律や条例の改正によって、現在の基準に合わなくなってしまった建物のことです。
例えば、昔は問題なかった道路の幅の基準が、法改正で厳しくなったために、現在の基準を満たせなくなった、といったケースです。
違法建築とは違い、既存不適格建築物はそのまま使用し続けることに法的な問題はありません。ただし、大規模な増改築や建て替えを行う際には、現在の法律に適合させる必要があります。

種類 内容
違法建築 建築当初から法律に違反している建物。是正命令の対象になる可能性がある。
既存不適格建築物 建築当時は適法だったが、法改正で現行基準に合わなくなった建物。そのままの使用は問題ない。

違法建築がもたらすリスク

違法建築の建物を所有していると、いくつかのリスクが伴います。例えば、役所から建物の撤去や改修を命じられる「是正命令」が出される可能性があります。また、金融機関から住宅ローンなどの融資を受けにくくなったり、売却しようとしても買い手が見つかりにくかったりします。こうしたリスクは、当然、その建物が建っている敷地の評価額にも大きく影響してくるのです。

違法建築された建物の敷地の相続税評価の基本ルール

それでは、本題である違法建築の敷地の相続税評価について見ていきましょう。ここには、非常に重要な基本ルールがあります。このルールを知っているかどうかが、評価額を大きく左右します。

原則:「建物はないもの」として評価する

相続税の評価において、違法建築された建物は「存在しないもの」として取り扱うのが大原則です。つまり、建物が建っているにもかかわらず、税務上は更地(建物が何もない土地)として敷地を評価することになります。
これは、法的に問題のある建物は本来あるべきではない、という考え方に基づいています。そのため、賃貸アパートなどが違法建築だった場合、土地の評価額が下がる「貸家建付地評価」を適用することはできません。

市街化区域内の場合

建物が市街化区域内にある場合、基本的には「建物がない更地(自用地)」として評価されます。路線価が定められている地域であれば、「路線価 × 面積」で計算するのが基本です。ただし、違法建築であることによって事実上、再建築が困難であるといった特別な事情があれば、その利用価値の低下を考慮して評価額が減額される可能性もあります。

市街化調整区域内の場合

ここが最も重要なポイントです。もし違法建築の建物が市街化調整区域内にある場合、評価方法が大きく変わります。
市街化調整区域とは、原則として建物の建築や開発が抑制されているエリアです。そのため、違法建築物が「ないもの」とされると、その敷地は「建物を建てられない土地」として扱われます。地目は「宅地」ではなく、「雑種地」として評価されるのが一般的です。そして、建築が厳しく制限される土地であることから、評価額が大幅に減額されることになるのです。

市街化調整区域内の違法建築敷地の具体的な評価方法

市街化調整区域内にある違法建築の敷地は、どのように評価額を下げていくのでしょうか。具体的な評価のステップを追いながら、その仕組みを理解しましょう。

近傍宅地の価額を基に評価

まず、評価の出発点として、その土地の近くにある標準的な宅地の価額を参考にします。これを「近傍宅地」といいます。路線価地域であれば路線価を、倍率地域であれば固定資産税評価額に一定の倍率をかけたものが基準になります。これを仮の1㎡あたりの価額とします。

宅地造成費を控除する

次に、その土地は「雑種地」として評価するため、「もしこの雑種地を宅地にするなら、どれくらいの費用がかかるか」を計算し、評価額から差し引きます。これを宅地造成費の控除といいます。国税庁が地域ごとに定める標準的な造成費の金額を使って計算します。

最も重要な「斟酌(しんしゃく)」による減価

そして、ここが最大の減額ポイントです。市街化調整区域内にある土地は、建築ができない、あるいは非常に厳しい制限があるため、利用価値が著しく低くなります。この利用価値の低さを評価額に反映させるために行われるのが「斟酌(しんしゃく)」による減価です。
簡単に言うと、「いろいろな事情を考慮して、評価額を大幅に割り引きますよ」ということです。この斟酌割合がどれくらい認められるかで、最終的な評価額が大きく変わってきます。

斟酌割合はどのくらい?減価の目安

「斟酌」によって、いったいどれくらい評価額が下がるのでしょうか。この割合は法律で一律に決まっているわけではなく、土地の個別の状況によって判断されます。その目安と、判断するための重要なポイントについて解説します。

斟酌割合の決定要因

斟酌割合をどのくらいにするかは、主にその土地の開発可能性によって決まります。具体的には、以下のような要素を総合的に考慮して判断します。

  • 周辺が宅地化されているか(市街地に近いか、農地や山林に囲まれているか)
  • 開発許可(建築許可)が得られる可能性が少しでもあるか
  • 道路や上下水道などのインフラが整備されているか

これらの状況によって、「ほとんど宅地として使えない土地」なのか、「将来的には宅地化の可能性もゼロではない土地」なのかを判断し、減価の割合を決めていきます。

斟酌割合の具体的な目安

実務上、斟酌割合は30%から50%の範囲で適用されることが多くなっています。特に、周囲に市街地がなく、開発許可の見込みが全くないような土地の場合、50%もの大幅な減価が認められるのが一般的です。これは、評価額が半分になることを意味し、相続税額に与える影響は非常に大きいです。

土地の状況 斟酌割合の目安
周辺が市街化しつつあり、限定的な開発許可の見込みがある 30%程度
周囲が農地や山林で、開発許可の見込みが全くない 50%

役所調査の必要性

この斟酌割合を適切に判断するためには、専門家による役所調査が不可欠です。市役所や町役場の都市計画課などの担当窓口で、「この土地で開発許可を得ることは可能ですか?」といったヒアリングを行います。その際の役所の回答が、開発可能性を判断する重要な根拠となり、50%の減価を適用するための客観的な証拠にもなります。

違法建築の敷地評価で注意すべきポイント

最後に、違法建築の敷地を評価する上で、見落としがちな注意点をいくつかご紹介します。正しい申告のために、これらのポイントもしっかり押さえておきましょう。

「再建築不可物件」との評価の違い

接道義務を満たしていないなどの理由で建て替えができない「再建築不可物件」も評価減の対象となりますが、その評価ロジックは違法建築の敷地評価とは異なります。「再建築不可物件」は、既存の建物があることを前提に、その利用制限を考慮して減価します。一方、違法建築の敷地評価は、まず「建物がないもの」として土地の地目(雑種地など)を判断し、その上で建築制限(斟酌)を考慮するという流れになります。アプローチが違うことを理解しておきましょう。

専門家への相談が不可欠

ここまでご説明してきた通り、違法建築の敷地評価は非常に専門的です。特に市街化調整区域内の土地評価では、役所調査の結果をどう解釈し、どの程度の斟酌割合を適用するかが税理士や不動産鑑定士の腕の見せ所となります。
もし、ご自身で判断して誤った評価額で申告してしまうと、後日の税務調査で指摘され、過少申告加算税や延滞税といったペナルティが課される恐れがあります。逆に、減額できることを見逃してしまえば、本来払う必要のない多額の税金を納めてしまうことにもなりかねません。不安な場合は、必ず相続案件の経験が豊富な専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は、違法建築された建物の敷地評価について解説しました。内容をまとめると、以下のようになります。

  • 相続税評価では、違法建築物は「ないもの」として敷地を評価するのが大原則です。
  • 特に市街化調整区域内にある場合、敷地は「雑種地」として評価され、建築制限を理由に最大50%もの大幅な減価(斟酌)が期待できます。
  • 正確な斟酌割合を判断するためには、役所調査で開発許可の見込みを確認することが非常に重要です。
  • 評価方法が複雑で専門的な判断を要するため、相続に強い税理士などの専門家に相談することが、適正な申告への一番の近道です。

もし相続財産に心当たりのある土地がある場合は、諦めずに専門家へ相談し、適正な評価額で相続税申告を行うようにしてくださいね。

違法建築の敷地評価に関するよくある質問まとめ

Q. 違法建築の敷地は必ず評価が下がりますか?

A. 必ずではありませんが、特に市街化調整区域内にある場合は大幅な評価減が期待できます。市街化区域内でも、利用制限があれば減価の対象になることがあります。

Q. 「違法建築」と「既存不適格」で評価方法は違いますか?

A. 評価上の扱いは異なります。「違法建築」は建物がないものとして敷地を評価しますが、「既存不適格」は建物がある前提で評価し、増改築の制限などを考慮して減価を検討します。

Q. 斟酌割合50%というのは、どういう場合に認められますか?

A. 周辺に宅地がなく、今後も開発許可が得られる見込みが全くないような、市街化を抑制すべき純然たる市街化調整区域内の土地の場合に認められることが多いです。

Q. 親が許可なく増築した建物も違法建築になりますか?

A. はい、建築確認申請が必要な規模の増築を無許可で行った場合、その部分は違法建築となります。敷地全体の評価に影響する可能性があります。

Q. 違法建築の敷地を物納することはできますか?

A. 難しい場合が多いです。物納劣後財産(法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地)に該当するため、他に物納に適した財産がない場合に限り認められます。

Q. 評価が難しい場合、誰に相談すれば良いですか?

A. 相続税に精通した税理士や、土地評価に詳しい不動産鑑定士への相談をおすすめします。役所調査や複雑な評価計算を正確に行ってくれます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。