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相続した非上場株式の売却は特例で節税!発行会社への譲渡特例を解説

2025-03-01
目次

相続で非上場株式を受け取ったものの、どうすればいいか悩んでいませんか?特に、相続税の納税資金を準備するために売却したいけれど、税金が高くなるのは避けたいですよね。実は、相続で取得した非上場株式を発行会社に譲渡する場合、税金の負担を軽くできる特例があるんです。この記事では、その特例について、わかりやすく解説していきます。

相続した非上場株式を発行会社に譲渡するときの税金の基本

相続した非上場株式を売却して現金化したいと考える方は少なくありません。特に、経営に関与していない場合や、納税資金が必要な場合には、発行会社に買い取ってもらうことが有効な手段です。しかし、このときに注意したいのが税金の扱いです。通常の売却とは異なる課税ルールが適用されることがあるため、基本をしっかり押さえておきましょう。

通常の株式譲渡と何が違うの?

個人が株式を第三者に売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して20.315%(所得税15.315%、住民税5%、復興特別所得税含む)の税金がかかります。これは分離課税といって、給与所得など他の所得とは合算されずに計算されます。しかし、株式を発行した会社自身に売却(自己株式の取得)する場合は、少し話が複雑になります。

注意したい「みなし配当」課税

非上場株式を発行会社に譲渡した場合、その売却代金は2つの部分に分けて考えられます。

資本金の払戻し部分 もともと出資した資本金が戻ってきた部分。ここは譲渡所得として扱われます。
利益の分配部分 会社の利益が株主に還元された部分。これは「みなし配当」とされ、配当所得として扱われます。

この「みなし配当」がポイントです。みなし配当は、給与など他の所得と合算して計算される総合課税の対象となります。総合課税の所得税率は、所得が高いほど税率も高くなる累進課税で、住民税と合わせると最大で約55%にもなります。譲渡所得の税率(約20%)と比べると、非常に高い税負担になる可能性があるのです。

節税のカギ!「相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」

高額になりがちな「みなし配当」課税を回避し、税負担を軽減するために設けられているのが「相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」です。この特例を使うことで、みなし配当とされる部分もすべて譲渡所得として扱われ、税率を20.315%に抑えることができます。相続税の納税資金を確保するために株式を売却するのに、高い税金がかかってしまっては意味がありませんよね。この特例は、そんな状況を助けてくれる心強い制度なんです。

特例の適用を受けるための要件

このお得な特例を利用するには、いくつかの要件を満たす必要があります。うっかり見落としてしまうと適用できないので、しっかり確認しましょう。

要件1 相続または遺贈によって非上場株式を取得した個人であること。
要件2 その相続で納付すべき相続税額があること。
要件3 相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに株式を譲渡すること。(つまり、相続開始から3年10ヶ月以内

特に重要なのが「納付すべき相続税額があること」です。例えば、配偶者の税額軽減の特例などを利用して相続税が0円になった場合は、この特例は利用できないので注意が必要です。

必要な手続きは?

特例の適用を受けるためには、自動的に適用されるわけではなく、事前の手続きが必要です。
まず、株式を譲渡する人(株主)が「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を作成し、株式を譲渡する日までに発行会社に提出します。
そして、株式を買い取った発行会社が、その譲渡があった年の翌年1月31日までに、所轄の税務署へその届出書を提出するという流れになります。株主と会社が協力して手続きを進めることが大切ですね。

さらにお得に!「取得費加算の特例」との併用

相続した財産を売却する際には、もう一つ知っておきたい特例があります。それが「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、通称「取得費加算の特例」です。これは、相続した財産を売却する際に、支払った相続税の一部を株式の取得費に上乗せできるという制度です。

取得費加算の特例の仕組み

譲渡所得は「売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)」で計算されます。取得費加算の特例を使うと、この「取得費」が大きくなるため、結果的に譲渡所得が減り、支払う税金も少なくなるという仕組みです。
この特例も、相続開始から3年10ヶ月以内に譲渡することが要件となっています。

2つの特例を併用するメリット

素晴らしいことに、「みなし配当課税の特例」と「取得費加算の特例」は併用が可能です。
まず、「みなし配当課税の特例」で高い税率の総合課税を回避し、税率の低い譲渡所得(20.315%)として計算できるようにします。
次に、「取得費加算の特例」で譲渡所得そのものを圧縮します。
この2つの特例を組み合わせることで、税負担を大幅に軽減できる可能性があるのです。相続した非上場株式を発行会社へ譲渡する際には、必ず検討したい組み合わせですね。

特例を利用する際の注意点

とても便利な特例ですが、いくつか注意すべき点があります。後から「知らなかった」とならないように、事前に確認しておきましょう。
まず、先ほども触れましたが、相続税を納税していることが大前提です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例によって相続税がゼロになった場合は、どちらの特例も利用できません。
また、期限が非常に重要です。どちらの特例も「相続開始後3年10ヶ月以内」の譲渡が条件です。遺産分割協議が長引いてしまうと、期限を過ぎてしまう可能性もありますので、計画的に進めることが大切です。
さらに、手続きを忘れないことも重要です。「みなし配当課税の特例」には事前の届出が必要ですので、譲渡する前に必ず発行会社と連携して準備を進めましょう。

非上場株式の譲渡価額はどう決まる?

特例の話とは少し離れますが、そもそも非上場株式をいくらで会社に買い取ってもらうのか、という点も重要です。上場株式のように市場価格がないため、当事者間で価格を決める必要があります。
一般的には、相続税申告の際に評価した株価を基準にすることが多いですが、あまりにも低い価格や高い価格で取引すると、税務署から「みなし贈与」などと判断され、思わぬ課税が発生する可能性があります。
譲渡価格を決める際には、税理士などの専門家に相談し、客観的に妥当な価格を算定してもらうことを強くおすすめします。

まとめ

今回は、「相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」について詳しく解説しました。
通常であれば「みなし配当」として高額な税金がかかる可能性がありますが、この特例を使えば税率の低い譲渡所得として計算できます。さらに、「取得費加算の特例」と併用することで、税負担を大きく減らすことが可能です。
ただし、これらの特例には「相続税を納税していること」や「相続開始後3年10ヶ月以内」といった期限や要件、事前の手続きがあります。相続で非上場株式を取得し、発行会社への譲渡を検討している場合は、ご自身だけで判断せず、ぜひお早めに相続に詳しい税理士に相談してくださいね。

参考文献

国税庁 No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例

国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

非上場株式の譲渡に関するよくある質問

Q.相続した非上場株式を発行会社へ譲渡する特例は誰でも使えますか?

A.相続で非上場株式を取得し、その相続で相続税を納めた方が対象です。相続税が0円だった方は利用できません。

Q.いつまでに株式を売却すれば特例を使えますか?

A.相続が開始してから3年10ヶ月以内に発行会社へ譲渡(売却)する必要があります。

Q.特例を使うために何か手続きは必要ですか?

A.はい、「みなし配当課税の特例」には事前の届出が必要です。株式を譲渡する日までに、所定の届出書を発行会社に提出する必要があります。

Q.「みなし配当」とは何ですか?

A.株式を発行会社に売却した際、売却代金のうち会社の利益から支払われたとみなされる部分のことです。通常は税率の高い総合課税の対象となります。

Q.取得費加算の特例とは何ですか?

A.相続財産を売却した際に、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度です。これにより譲渡所得が減り、税金が安くなります。

Q.特例を使わないと税金はどれくらい高くなりますか?

A.みなし配当として総合課税が適用されると、所得に応じて税率が上がり、住民税と合わせて最大で約55%になる可能性があります。特例を使えば約20%の譲渡所得課税に抑えられます。

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