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遺言で相続トラブル回避!換価分割・代償分割・共有分割の指定方法

2025-03-08
目次

遺産相続で揉めないために、生前に遺言書で財産の分け方を決めておくことが大切です。特に不動産など分けにくい財産がある場合、具体的な分割方法まで指定しておくと、残された家族の負担を大きく減らせます。この記事では、遺言で指定できる「換価分割」「代償分割」「共有分割」という3つの遺産分割方法について、それぞれの特徴や注意点を分かりやすく解説します。

遺言書で遺産分割方法を指定する重要性

大切な方が亡くなった後、遺された財産を誰がどのように引き継ぐのかを決めるのが遺産分割です。しかし、この遺産分割が原因で、仲の良かった家族関係にひびが入ってしまうことも少なくありません。特に不動産のように簡単に分けられない財産があると、話し合いは難航しがちです。そこで重要になるのが、遺言書で具体的な遺産分割方法を指定しておくことです。あらかじめ遺言書で分け方を決めておけば、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)が不要になり、スムーズに手続きを進めることができます。遺言は、残された家族への最後の思いやりとも言えるでしょう。

遺産分割の基本的な考え方

遺産分割には、まず誰が相続人になるのかを確定し、その上で法律で定められた相続分(法定相続分)を参考に話し合いを進めるのが一般的です。しかし、遺言書があれば、その内容が法定相続分よりも優先されます。遺言書で「誰に」「どの財産を」「どのように」相続させるかを明確に指定することで、相続トラブルを未然に防ぐ効果が期待できるのです。

遺産分割協議が不要になるメリット

遺言書で分割方法が指定されている場合、原則として相続人全員での遺産分割協議は必要ありません。これにより、相続手続きにかかる時間や手間を大幅に削減できます。また、相続人同士で意見が対立したり、感情的なもつれが生じたりするリスクを減らすことができます。特に相続人が遠方に住んでいたり、関係が疎遠だったりする場合には、大きなメリットとなります。

遺産分割方法の主な種類

遺産分割の方法には、主に「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」の4つがあります。どの方法が最適かは、遺産の内容や相続人の状況によって異なります。遺言書を作成する際は、これらの方法の特徴を理解し、ご自身の家族に合った方法を指定することが大切です。

分割方法 概  要
現物分割 財産そのものを分ける方法(例:土地Aは長男、預金は次男)
換価分割 財産を売却してお金に換え、その現金を分ける方法
代償分割 特定の相続人が財産を取得する代わりに、他の相続人にお金を支払う方法
共有分割 一つの財産を複数の相続人で共有する方法

換価分割とは?遺言での指定方法と注意点

「換価分割(かんかぶんかつ)」とは、不動産や株式などの遺産を売却して現金化し、その現金を相続人間で分ける方法です。物理的に分けにくい財産がある場合に有効な手段です。相続人全員が平等に現金で遺産を受け取れるため、公平感を保ちやすいというメリットがあります。

換価分割が適しているケース

換価分割は、以下のようなケースで特に有効です。
・相続財産が自宅不動産のみで、誰も住む予定がない場合
・相続人全員が現金での受け取りを希望している場合
・代償分割で必要となる代償金を支払える相続人がいない場合
・公平に分けたいけれど、現物分割ではどうしても不公平が生じてしまう場合

遺言書での換価分割の指定方法(文例付き)

遺言書で換価分割を指定する場合、誰が売却手続きを行うのか(遺言執行者)、売却代金の分配割合などを明確に記載する必要があります。

【文例】

第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を売却し、その換価金から、売却にかかる諸費用(仲介手数料、登記費用、譲渡所得税等)を控除した残額を、妻〇〇に2分の1、長男〇〇に2分の1の割合で相続させる。

1.土地
所在:〇〇市〇〇町〇丁目
地番:〇〇番〇
地目:宅地
地積:〇〇.〇〇平方メートル

第○条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、下記者を指定する。遺言執行者は、前条記載の不動産の売却手続き、および換価金の分配を行う権限を有する。
住所:〇〇県〇〇市…
氏名:長男 〇〇

換価分割の注意点

換価分割には注意点もあります。まず、財産を売却する際に譲渡所得税がかかる可能性があることです。相続税とは別に税金が発生する点を理解しておく必要があります。また、不動産の場合は希望の価格やタイミングで売却できるとは限りません。売却活動が長引けば、その間の管理費用も発生します。さらに、思い出のある自宅などを手放すことになるため、相続人の感情的な側面にも配慮が必要です。

代償分割とは?遺言での指定方法と注意点

「代償分割(だいしょうぶんかつ)」とは、相続人のうちの1人または数人が不動産などの遺産を現物で取得する代わりに、他の相続人に対してその相続分に見合う現金(代償金)を支払う方法です。事業用の資産や自宅など、分割したくない財産がある場合に適しています。

代償分割が適しているケース

代償分割は、以下のような状況でよく利用されます。
・家業を継ぐ長男に、事業用の土地や建物をすべて相続させたい場合
・同居していた家族が、そのまま自宅に住み続けたいと希望している場合
・特定の相続人が、ある財産を強く取得したいと望んでいる場合
・財産を取得する相続人に、代償金を支払うだけの十分な資力(預貯金など)がある場合

遺言書での代償分割の指定方法(文例付き)

代償分割を遺言で指定する際は、誰がどの財産を取得し、誰に対していくらの代償金を支払うのかを具体的に記載します。

【文例】

第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、長男〇〇に相続させる。

(不動産の表示)

第○条 長男〇〇は、前条の不動産を相続する代償として、長女△△に対し、金1,000万円を支払わなければならない。支払期限は、遺言者の死亡から6か月以内とする。

代償金の金額は、相続開始時の財産評価額を基に公平に算定することがトラブルを防ぐポイントです。

代償分割の注意点

代償分割の最大の注意点は、財産を取得する相続人に代償金を支払う能力があるかどうかです。もし支払えなければ、結局トラブルに発展してしまいます。遺言を書く時点で、その相続人が十分な預貯金を持っているか、あるいは支払い能力があるかを考慮する必要があります。また、不動産の評価額について相続人間で意見が対立することもあります。遺言書で評価方法(例:相続税評価額など)を指定しておくことも一つの方法です。

共有分割とは?遺言での指定方法と注意点

「共有分割(きょうゆうぶんかつ)」とは、不動産などの1つの財産を、複数の相続人がそれぞれの持分を決めて共同で所有する方法です。例えば、「自宅の土地建物を長男と次男が2分の1ずつの持分で共有する」といった形です。一見、公平で簡単な方法に見えますが、将来的なトラブルの種になりやすいため、慎重な検討が必要です。

共有分割が適しているケース

共有分割は、基本的には避けるべき分割方法とされています。しかし、例外的に以下のようなケースでは検討の余地があります。
・相続人が共同で利用する収益物件(賃貸アパートなど)で、今後も協力して管理・運営していくことに全員が同意している場合
・すぐに売却するのが難しい土地(山林など)で、とりあえず共有名義にしておく場合
・相続人同士の仲が非常に良く、将来にわたって意思決定で揉める可能性が極めて低い場合

遺言書での共有分割の指定方法(文例付き)

共有分割を指定する場合は、各相続人の持分割合を明確にします。

【文例】

第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、長男〇〇と次男△△が、それぞれ2分の1の持分の割合で共有して相続させる。

(不動産の表示)

共有分割の注意点

共有分割の最大のリスクは、将来の権利関係が複雑化することです。共有不動産を売却したり、大規模なリフォームをしたりするには、共有者全員の同意が必要です。意見がまとまらなければ、何もできなくなってしまいます。また、共有者の誰かが亡くなると、その持分がさらにその人の相続人に引き継がれ、共有者がどんどん増えていく(ねずみ算式に増える)可能性があります。こうなると、権利関係はさらに複雑になり、売却や管理が事実上不可能になることも少なくありません。トラブルの先延ばしになる可能性が高いため、共有分割の指定は極力避けるのが賢明です。

どの分割方法を選ぶべき?ケース別比較

これまでご紹介した3つの分割方法を、状況に合わせて比較してみましょう。ご自身の家族や財産の状況に最も合った方法を選ぶことが、円満な相続の鍵となります。

各分割方法のメリット・デメリット比較表

分割方法 メリット
換価分割 ・公平に分割しやすい
・相続人全員が現金で受け取れる
・後のトラブルが少ない
代償分割 ・財産をそのままの形で残せる
・事業や居住を継続できる
・特定の相続人の希望を叶えられる
共有分割 ・手続きが比較的簡単
・とりあえずの分割方法として選択できる
分割方法 デメリット
換価分割 ・譲渡所得税などの費用がかかる
・売却に時間がかかる可能性がある
・思い出の財産がなくなる
代償分割 ・代償金を支払う資力が必要
・財産の評価額で揉める可能性がある
・不公平感が出やすい
共有分割 ・将来のトラブルの原因になりやすい
・財産の活用(売却・賃貸など)が難しい
・権利関係が複雑化する

遺言執行者の指定も忘れずに

換価分割や代償分割を指定する場合、その手続きをスムーズに進めるために遺言執行者を指定しておくことを強くお勧めします。遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、預貯金の解約や不動産の名義変更、売却手続きなどを単独で行う権限を持ちます。信頼できる相続人の一人や、司法書士・弁護士などの専門家を指定しておくと、残された家族の負担を大きく軽減できます。

まとめ

今回は、遺言書で指定できる「換価分割」「代償分割」「共有分割」について解説しました。遺産分割は、残されたご家族にとって大きな問題となり得ます。特に不動産など分けにくい財産がある場合は、どの分割方法が最適かを生前にじっくり考え、遺言書に明確に記しておくことが大切です。
換価分割は、公平性を重視する場合に有効です。
代償分割は、特定の財産を特定の相続人に残したい場合に適しています。
共有分割は、将来のトラブルリスクが高いため、原則として避けるべきです。

どの方法が良いか迷われる場合は、ご自身の想いやご家族の状況を整理し、必要であれば専門家に相談しながら、最適な遺言書を作成してください。それが、ご家族への最後の、そして最大の愛情表現になるはずです。

参考文献

No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算|国税庁

No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

遺産分割方法の指定に関するよくある質問

Q. 遺言書で分割方法を指定しないとどうなりますか?

A. 相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判に発展する可能性があります。

Q. 換価分割で不動産を売却した場合、税金はどうなりますか?

A. 売却によって利益(譲渡所得)が出た場合、相続税とは別に譲渡所得税がかかります。これは売却手続きを行った相続人が申告・納税する必要があります。

Q. 代償金の金額はどのように決めればよいですか?

A. 相続開始時点での財産の時価を基準に決めるのが一般的です。後々のトラブルを防ぐため、不動産鑑定士による鑑定評価額や、相続税申告で用いる相続税評価額などを基準にすると公平性を保ちやすいです。

Q. 遺言で指定された分割方法を、相続人全員の合意で変更することはできますか?

A. はい、相続人全員と受遺者が合意すれば、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことも可能です。ただし、遺言執行者がいる場合は、その同意も必要になる場合があります。

Q. 共有名義の不動産を自分の持分だけ売却することはできますか?

A. 法律上は自分の持分だけを売却することは可能ですが、買い手を見つけるのは非常に困難です。不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要になります。

Q. 遺言執行者は誰に頼むのが良いですか?

A. 未成年者や破産者でなければ誰でもなれます。信頼できる親族を指定することが多いですが、手続きが複雑な場合や相続人間で対立が予想される場合は、弁護士や司法書士などの専門家を指定する方が安心です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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