フリーランスの方や個人事業主の方とお仕事をされている事業者さま。「支払調書」という言葉を耳にしたことはありますか?「源泉徴収票と何が違うの?」「どうやって書けばいいの?」など、意外と知らないことも多いかもしれませんね。この記事では、そんな支払調書の基本から、提出義務、書き方、注意点まで、初心者の方にも分かりやすく、丁寧にご説明します。これを読めば、支払調書の作成もスムーズに進められるはずですよ。
支払調書ってなに?税務署へのお金の流れの報告書
支払調書とは、とても簡単に言うと、会社や個人事業主が「誰に」「どんな内容で」「年間にいくら支払ったか」といった情報をまとめて、税務署に報告するための書類のことです。これは「法定調書」という法律で提出が定められた書類の一種で、現在63種類あります。税務署は、この支払調書を受け取ることで、報酬を受け取った人が正しく税金の申告(確定申告)をしているかを確認する大切な役割を持っています。つまり、お金の流れを透明にするための報告書なんですね。
支払調書と源泉徴収票のちがい
支払調書とよく似た書類に「源泉徴収票」があります。この二つは混同されがちですが、対象となる人が全く違います。一番の違いは、報酬を支払った相手が「従業員」か「従業員以外」かという点です。下の表で違いをスッキリ整理してみましょう。
| 種類 | 対象となる人 |
| 支払調書 | 従業員以外(個人事業主、フリーランス、弁護士、税理士など) |
| 源泉徴収票 | 従業員(正社員、アルバイト、パートなど雇用関係にある人) |
このように、自社の従業員に給与を支払った場合は「源泉徴収票」を、外部のフリーランスのデザイナーさんなどにデザイン料を支払った場合は「支払調書」を作成するという使い分けになります。
なぜ支払調書の提出が必要なの?
支払調書を税務署に提出する一番の理由は、税務署が申告漏れなどをチェックするためです。報酬を支払った会社側から「Aさんに年間〇〇円支払いました」という支払調書が提出され、報酬を受け取ったAさんからは「会社から〇〇円の収入がありました」という確定申告書が提出されます。税務署は、この二つの書類を照らし合わせることで、「Aさんはきちんと収入を申告しているかな?」と確認できるわけです。また、報酬を支払う際に天引きした源泉徴収税額が正しく納められているかを確認する目的もあります。
支払調書はいつまでにどこへ提出する?
支払調書の提出先は、報酬を支払った会社や個人事業主の所在地を管轄する税務署です。そして、提出期限は原則として、報酬を支払った年の翌年1月31日までと決められています。1月は年末調整の関連書類の提出などもあり、経理担当者にとっては忙しい時期なので、早めに準備を始めることが大切です。提出方法には、税務署の窓口へ直接持っていく方法のほか、郵送や、e-Tax(電子申告)などがあります。なお、前々年に提出した法定調書の枚数が種類ごとに100枚以上だった場合は、e-Taxや光ディスクなど電子的な方法で提出することが義務付けられています。
支払調書にはどんな種類があるの?
「支払調書」と一言で言っても、実は支払いの内容によっていくつかの種類に分かれています。ここでは、ビジネスシーンでよく使われる代表的な4つの支払調書をご紹介しますね。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
これが最も一般的でよく使われる支払調書です。フリーランスのライターさんへの原稿料、デザイナーさんへのデザイン料、弁護士や税理士への報酬、大学教授への講演料など、個人への専門的な業務に対する報酬を支払った場合に作成します。多くの事業者の方にとって、一番関わりの深い支払調書と言えるでしょう。
不動産の使用料等の支払調書
これは、事務所や店舗の家賃、権利金、更新料といった不動産の使用料を支払った場合に作成する支払調書です。提出義務があるのは、支払いを行った法人のほか、不動産業を営む個人事業主です。同一の相手に対して、年間の支払額の合計が15万円を超える場合に提出が必要となります。
不動産の譲受けの対価の支払調書
こちらは、土地や建物といった不動産を買い取った(譲り受けた)場合に、その対価について作成する支払調書です。売買だけでなく、交換や競売などで不動産を取得した場合も含まれます。同一の相手に対して、年間の支払額の合計が100万円を超える場合に提出が必要になります。
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
不動産の売買や賃貸の際に、不動産会社などに仲介手数料(あっせん手数料)を支払った場合に作成する支払調書です。同一の相手に対して、年間の支払額の合計が15万円を超える場合に提出します。
どんな場合に支払調書の提出義務があるの?
外部の方に報酬を支払ったからといって、必ずしも支払調書を提出しなければならないわけではありません。提出義務があるかどうかは、報酬の種類と年間の支払金額によって決まります。ここでは、一番身近な「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を例に、具体的な基準を見ていきましょう。
提出が必要になる金額の基準
同じ相手(同一人)に対して1年間に支払った報酬の合計額が、下の表の金額を超える場合に、支払調書を税務署に提出する義務が発生します。
| 報酬の種類 | 提出義務が生じる年間支払金額 |
| 弁護士、税理士、司法書士などへの報酬 | 5万円を超える場合 |
| 作家、イラストレーター、デザイナーなどへの原稿料、画料、デザイン料 | 5万円を超える場合 |
| 講演料、通訳料など | 5万円を超える場合 |
| 外交員、集金人、プロボクサー、バー・キャバレーのホステスなどへの報酬 | 50万円を超える場合 |
| 広告宣伝のための賞金 | 50万円を超える場合 |
例えば、フリーランスのライターさんAさんに、1年間で合計6万円の原稿料を支払った場合は支払調書の提出が必要ですが、4万円だった場合は提出義務はありません。
法人への支払いや源泉徴収していない場合も必要?
はい、注意が必要です。支払調書の提出義務を判断するのは、あくまで「支払った報酬の種類と金額」です。そのため、上記の提出範囲に該当すれば、源泉徴収をしていない支払いであっても支払調書の提出は必要になります。例えば、法人であるデザイン事務所に年間10万円のデザイン料を支払った場合、法人への支払いなので源泉徴収は不要ですが、支払調書の提出義務はあります。この点は見落としやすいので気をつけましょう。
支払調書の書き方を徹底解説!
それでは、実際に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の書き方を見ていきましょう。国税庁のウェブサイトからフォーマットをダウンロードできますので、見ながら確認するとより分かりやすいですよ。
支払を受ける者
ここには、報酬を受け取った相手の情報を記入します。住所(または所在地)、氏名(または名称)、そして個人番号(マイナンバー)または法人番号を記載してください。個人事業主の方で屋号がある場合でも、屋号だけでなく必ず個人の氏名を書きましょう。マイナンバーや法人番号は、税務署に提出する書類にのみ記載します。相手に渡す控えには記載しないように、くれぐれも注意してくださいね。
区分・細目
「区分」の欄には、「原稿料」「講演料」「弁護士報酬」といったように、支払った報酬の具体的な名称を記入します。「細目」の欄には、さらに詳しい内容を書きます。例えば、区分が「原稿料」なら細目には「〇〇に関する記事執筆」、区分が「弁護士報酬」なら「△△訴訟事件」といった具合です。
支払金額・源泉徴収税額
「支払金額」には、その年の1月1日から12月31日までに支払いが確定した報酬の総額を記入します。この金額は、原則として消費税込みの金額です。また、年末時点で未払いの金額があっても、支払うことが確定していれば、その金額も含めて計上します。「源泉徴収税額」には、支払金額から源泉徴収(天引き)した所得税と復興特別所得税の年間の合計額を記入します。報酬が100万円以下の場合、源泉徴収税額は支払金額の10.21%で計算するのが一般的です。
支払者
最後の「支払者」の欄には、報酬を支払った自分(自社)の情報を記入します。住所(または所在地)、氏名(または名称)、電話番号、そして個人番号(マイナンバー)または法人番号を忘れずに記載しましょう。
支払調書を作成するときの注意点
支払調書の作成には、いくつか気をつけておきたい大切なポイントがあります。ミスなくスムーズに手続きを終えるために、しっかり確認しておきましょう。
マイナンバーの取り扱い
税務署に提出する支払調書には、支払先と支払者、両方のマイナンバー(または法人番号)の記載が義務付けられています。そのため、初めて取引するフリーランスの方などからは、事前にマイナンバーを提供してもらう必要があります。マイナンバーは非常に重要な個人情報ですので、漏洩などがないよう、厳重に管理しなければなりません。そして、何度もお伝えしますが、支払先に渡す控えには絶対にマイナンバーを記載しないでください。マスキングするなどして渡しましょう。
支払先への交付義務はない
従業員に渡す「源泉徴収票」と違い、「支払調書」は報酬を受け取った本人に交付する法的な義務はありません。支払調書は、あくまで支払者が税務署に提出するための書類です。ただし、報酬を受け取った側が確定申告をする際に、支払額や源泉徴収税額を確認するために支払調書を欲しがるケースはよくあります。法律上の義務はなくても、商習慣として交付するのが一般的ですので、求められた際にはスムーズに対応できるよう準備しておくと、相手との関係も良好に保てますね。
「法定調書合計表」も忘れずに!
支払調書を作成して提出する際には、もう一つ大切な書類があります。それは「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」という書類です。これは、1年間に提出する各種の法定調書(給与の源泉徴収票や退職金の源泉徴収票、そして各種支払調書など)の内容を一枚にまとめた集計表のようなものです。作成した支払調書の内容も、この合計表に転記する必要がありますので、忘れずに作成し、支払調書と一緒に税務署へ提出しましょう。
まとめ
今回は、「支払調書」について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしておきましょう。
- 支払調書は、事業者が従業員以外の人に報酬を支払った際、税務署にその内容を報告するための書類です。
- 従業員向けの「源泉徴収票」とは違い、フリーランスや個人事業主などが対象です。
- 報酬の種類と年間の支払金額によって、税務署への提出義務があるかが決まります。
- 提出期限は、原則として翌年1月31日です。
- 作成する際は、マイナンバーの取り扱いに十分注意しましょう。
支払調書の作成は、年に一度の少し手間のかかる作業かもしれませんが、納税に関わる重要な手続きです。この記事を参考に、一つ一つの項目を確認しながら、正確な書類を作成し、期限内にきちんと提出してくださいね。
参考文献
支払調書のよくある質問まとめ
Q. 支払調書とは何ですか?
A. 事業者がフリーランスなど従業員以外の方へ報酬を支払った際に、「誰に、いくら支払ったか」を税務署へ報告するための書類です。
Q. 支払調書と源泉徴収票の違いは何ですか?
A. 支払調書は従業員以外への報酬について、源泉徴収票は従業員への給与について作成する点が主な違いです。
Q. 支払調書は必ず発行しないといけないのですか?
A. いいえ、報酬の種類や年間の支払金額によって提出義務が定められています。例えば、弁護士やフリーランスへの報酬は年間5万円を超えた場合に提出が必要です。
Q. 支払調書は、報酬を受け取った本人にも渡す必要がありますか?
A. 法律上の交付義務はありません。ただし、慣習として写しを渡すことは多いです。税務署への提出は義務です。
Q. 支払調書の提出期限はいつですか?
A. 原則として、報酬を支払った年の翌年1月31日までに、支払者の所轄税務署へ提出します。
Q. 支払調書にマイナンバーの記載は必要ですか?
A. 税務署に提出する支払調書には、支払を受ける方と支払者両方のマイナンバー(または法人番号)の記載が必要です。本人に渡す控えには記載してはいけません。