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相続人が台湾在住でも大丈夫!国際相続の手続きをわかりやすく解説

2025-03-26
目次

ご家族が亡くなられ、相続人の方が台湾にお住まいの場合、「手続きはどう進めたらいいの?」「日本の法律と何が違うの?」と不安に感じますよね。国をまたぐ相続は専門的な知識が必要で、戸惑うことも多いかもしれません。この記事では、台湾にお住まいの相続人の方がスムーズに手続きを進められるよう、準拠法から必要書類、相続税のポイントまで、わかりやすく解説していきます。

台湾の相続、どっちの国の法律が適用されるの?

国際相続で最初に確認すべきなのが、どの国の法律に基づいて手続きを進めるかという「準拠法」の問題です。これを知っておくことが、手続きをスムーズに進める第一歩になります。被相続人、つまり亡くなった方の国籍がどこかによって、適用される法律が変わってくるんですよ。

相続の準拠法は「被相続人」の国籍で決まる

日本の法律では、「相続は、被相続人(亡くなった方)の本国法による」と定められています(法の適用に関する通則法第36条)。つまり、亡くなった方が台湾籍であれば、台湾の法律が適用されるのが原則です。相続人の方が日本に住んでいても、台湾に住んでいても、このルールは変わりません。

台湾の法律でも台湾法が適用される

では、台湾の法律ではどうなっているのでしょうか。台湾の法律(渉外民事法律適用法第58条)でも、「相続は、被相続人の死亡時の本国法による」と定められています。そのため、亡くなった方が台湾籍の場合、日本の法律に戻ることなく(これを専門用語で「反致」といいます)、最終的に台湾の法律に基づいて相続手続きが進められることになります。

相続財産が日本にあっても台湾法が適用

たとえ不動産や預貯金などの相続財産がすべて日本国内にあったとしても、被相続人が台湾籍であれば、遺産分割などは台湾の法律に従って行います。ただし、不動産の名義変更(相続登記)の手続き自体は、不動産がある日本の法律(不動産登記法)に従って日本の法務局で行う必要がありますので、その点は注意が必要ですね。

日本とこんなに違う!台湾の相続法のポイント

台湾の相続法は日本の民法と似ている部分もありますが、法定相続人の範囲や相続分など、重要な違いがいくつかあります。ご自身のケースではどうなるのか、特に注意したいポイントを日本と比較しながら見ていきましょう。

法定相続人の範囲と順位

台湾の法定相続人の順位は、日本と少し異なります。一番の違いは「祖父母」が第4順位として明確に定められている点です。日本では祖父母は父母と同じ第2順位の「直系尊属」に含まれますが、台湾では兄弟姉妹よりも後の順位になります。

順位 台湾の法定相続人
配偶者 常に相続人になります
第1順位 直系卑属(子、孫など)
第2順位 父母
第3順位 兄弟姉妹
第4順位 祖父母

配偶者の法定相続分

配偶者の相続分も、誰と一緒に相続するかによって大きく変わります。特に、子どもと相続する場合、日本では配偶者が1/2ですが、台湾では子どもたちと均等に分けることになります。例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、それぞれが1/3ずつ相続することになります。

共同相続人 台湾での配偶者の相続分
第1順位の相続人(子など)と相続する場合 他の相続人と均等
第2順位(父母)または第3順位(兄弟姉妹)の相続人と相続する場合 遺産の1/2
第4順位の相続人(祖父母)と相続する場合 遺産の2/3

相続放棄と限定承認

台湾の相続では、原則として「限定承認」が適用される点が大きな特徴です。限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲内でのみ、被相続人の借金などのマイナスの財産を返済すればよいという制度です。日本では、何もしなければすべての財産と債務を引き継ぐ「単純承認」になりますが、台湾では自動的に相続財産を上限として債務を負うことになります。もしプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継ぎたくない場合は、相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申し立てをする必要があります。

台湾在住の相続人が行う手続きの流れ

実際に相続手続きを進める際の具体的なステップをご紹介します。海外とのやり取りが発生するため、日本国内のみで完結する手続きよりも時間がかかることが多いです。時間に余裕を持って計画的に進めることが大切ですよ。

Step1. 遺言書の有無を確認する

まずはじめに、被相続人が遺言書を残しているかどうかを確認します。台湾の法律で認められている遺言方式には、自筆遺言、公証遺言、密封遺言、代筆遺言、口述遺言などがあります。もし封印された遺言書が見つかった場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所などで所定の開封手続きを行う必要があります。

Step2. 相続人を確定させる(戸籍の収集)

次に、法律上の相続人が誰になるのかを確定させるため、戸籍謄本などを集めます。台湾にも日本と同様の戸籍制度がありますので、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を台湾の役所(戸政事務所)から取り寄せる必要があります。これにより、誰が相続人であるかを公的に証明します。

Step3. 相続財産を調査する

被相続人がどのような財産をどこに持っていたかを詳しく調査し、財産目録を作成します。日本国内の預貯金、不動産、有価証券はもちろん、台湾国内にも財産がないか丁寧に確認することが重要です。後から財産が見つかると、遺産分割協議のやり直しなど、手続きが非常に煩雑になる可能性があります。

Step4. 遺産分割協議を行う

相続人と相続財産がすべて確定したら、相続人全員で遺産の分け方について話し合います。この話し合いを「遺産分割協議」と呼びます。全員の合意が得られたら、その内容を「遺産分割協議書(聲明書)」という書面にまとめます。この書類は、後の不動産登記や預貯金の解約手続きで必要となる大切な書類です。

手続きに必要な書類と注意点

台湾が関わる相続手続きでは、日本国内の相続とは異なる書類が必要になったり、特別な手続きが求められたりします。特に、台湾から取り寄せる書類は時間も手間もかかるため、早めに準備を始めましょう。

台湾の戸籍謄本と翻訳文

最も重要なのが、被相続人の出生から死亡までの台湾の戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本です。これらの書類は台湾の役所で取得しますが、日本国内の法務局や金融機関に提出する際には、日本語の翻訳文を添付する必要があります。翻訳は専門家に依頼することもできますし、ご自身で行うことも可能です。ただし、翻訳文には誰が翻訳したかを明記し(翻訳者の氏名・住所を記載)、押印するのが一般的です。

書類の認証手続き

以前は、台湾で発行された公文書を日本で使用する際、台湾の公証人、外交部、そして日本の台北駐日経済文化代表処による三段階の認証が必要とされていました。しかし現在では、多くの法務局でこの認証がなくても受理される運用になっています。これにより、手続きの負担が少し軽くなりました。ただし、金融機関によっては独自のルールで認証を求めてくる場合もあるため、提出先に事前に確認することをおすすめします。

印鑑証明書とサイン証明書

台湾にお住まいの相続人の方は、日本の市区町村で発行される印鑑証明書を取得できません。その場合、台湾の役所(戸政事務所)で発行される「印鑑証明書」を使用するか、または台北駐日経済文化代表処などで「サイン証明書(署名認証)」を取得し、日本の印鑑証明書の代わりとして使用します。どちらの書類が必要になるかは、手続きの内容や提出先によって異なりますので、こちらも事前に確認しておくとスムーズです。

相続税の申告はどうなる?

相続人が台湾に住んでいる場合、「日本の相続税はどうなるの?」と疑問に思いますよね。納税義務があるかどうか、そして申告をどう進めるかについて解説します。

納税義務者の判定

相続税の納税義務は、被相続人と相続人の住所や国籍によって決まります。相続人が台湾在住(日本の非居住者)の場合、原則として日本国内にある財産のみが日本の相続税の課税対象となります。しかし、被相続人または相続人が過去10年以内に日本に住所を持っていた、などの条件に当てはまると、台湾にある財産も含めた全世界の財産が課税対象になる場合がありますので注意が必要です。

ケース 課税対象となる財産
被相続人:日本在住、相続人:台湾在住(過去10年以内に日本住所なし) 日本国内の財産のみ
被相続人:日本在住、相続人:台湾在住(日本国籍で過去10年以内に日本住所あり) 全世界の財産

納税管理人の選任

日本に住所がない相続人が相続税の申告・納税を行う場合、日本国内に住んでいる方を「納税管理人」として選任し、税務署に届け出る必要があります。納税管理人は、ご本人に代わって税務署からの書類を受け取ったり、税金を納付したりする大切な役割を担います。日本の親族や知人、または税理士などの専門家に依頼するのが一般的です。

台湾の相続税(遺産税)にも注意

被相続人が台湾に財産を持っていた場合、日本の相続税とは別に、台湾の相続税(遺産税)が課される可能性があります。台湾の遺産税は、遺産総額に対して課税される方式で、基礎控除額は1,333万台湾ドル(2024年時点)です。税率は10%、15%、20%の3段階となっています。日本と台湾の両方で課税される場合は、二重課税を調整するための「外国税額控除」という制度が利用できることがあります。

まとめ

相続人が台湾に居住している場合の相続手続きは、準拠法の確認から始まり、台湾からの書類取り寄せ、翻訳、そして納税管理人の選任など、日本国内だけの相続に比べて多くのステップが必要です。特に台湾の相続法は、法定相続人の順位や配偶者の相続分が日本と異なるため、正確な知識が求められます。手続きに不安を感じる場合や、スムーズに進めたい場合は、国際相続に詳しい専門家へ相談することをおすすめします。早めに準備を始めることで、落ち着いて手続きを進めることができるでしょう。

参考文献

国税庁「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」

台湾に住んでいる相続人に関するよくある質問

Q. 被相続人が日本国籍、相続人が台湾在住の場合、どの国の法律が適用されますか?

A. 被相続人(亡くなった方)が日本国籍なので、日本の民法が適用されます。相続手続きは日本の法律に基づいて進めます。

Q. 台湾の戸籍謄本は自分で取得できますか?

A. ご自身で台湾の役所に郵送で請求することも可能ですが、手続きが煩雑です。台湾在住の親族に依頼するか、国際相続に詳しい専門家に代行を依頼するのが一般的です。

Q. 台湾在住なので日本の印鑑証明書がありません。どうすればよいですか?

A. 台湾の役所で発行される印鑑証明書を使用するか、台北駐日経済文化代表処などでサイン証明書(署名認証)を取得することで、日本の印鑑証明書の代わりとすることができます。

Q. 納税管理人には誰でもなれますか?

A. 日本国内に住所があれば、個人でも法人でも納税管理人になることができます。親族や友人、あるいは税理士などの専門家に依頼することが多いです。

Q. 相続財産が日本の不動産だけですが、台湾の法律が適用されるのですか?

A. 被相続人が台湾籍の場合、財産がどこにあっても相続のルール(誰が相続人か、相続分はいくつかなど)は台湾の法律が適用されます。ただし、不動産の名義変更(相続登記)の手続き自体は、日本の法務局で行うため、日本の不動産登記法に従います。

Q. 台湾と日本の両方で相続税を支払う必要がありますか?

A. 被相続人が日本と台湾の両方に財産を持っていた場合、両国で相続税が課税される可能性があります。その場合、国際的な二重課税を調整するため、日本の申告で「外国税額控除」を適用できる場合があります。

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