相続手続きを進める上で、たくさんの戸籍謄本を集めて各所に提出するのは大変ですよね。そんな手間をぐっと減らしてくれるのが「法定相続情報一覧図」です。
結論からお伝えすると、法定相続情報一覧図は「どこの法務局でも取れる」わけではありません。申出ができるのは、次の4か所のいずれかを管轄する法務局(登記所)です。
- ①被相続人(亡くなった方)の本籍地(死亡時のもの)
- ②被相続人の最後の住所地
- ③申出人(手続きをする相続人)の住所地
- ④被相続人名義の不動産の所在地
この4つの中から、ご自身が一番行きやすい法務局を選べます。しかも郵送でも申出ができるので、遠方でも問題ありません。この記事では、この「どこの法務局か」の選び方を軸に、必要書類のチェックリスト、一覧図の作り方、郵送申出や再交付の手順まで、順を追ってご説明しますね。
法定相続情報一覧図とは?
まずは、「法定相続情報一覧図」がどのようなものなのか、基本から見ていきましょう。これは、相続手続きをスムーズにするために作られた、とても便利な制度なんです。
法定相続情報証明制度の仕組み
法定相続情報証明制度とは、法務局(登記官)が戸籍謄本などの情報をもとに、誰が法定相続人であるかを公的に証明してくれる制度です。具体的には、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本など必要な書類を法務局に提出すると、登記官がその内容を確認し、認証文付きの「法定相続情報一覧図の写し」を交付してくれます。この一覧図は、相続関係を家系図のようにまとめたもので、これ一枚が戸籍謄本の束の代わりとして、さまざまな相続手続きに利用できるんです。
法定相続情報一覧図を使うメリット
この制度を利用する一番のメリットは、相続手続きの負担が大幅に軽くなることです。具体的には、以下のようなメリットがあります。
| 手続きの時間短縮 | 金融機関や法務局、税務署など、複数の機関で手続きが必要な場合、戸籍謄本の束を何度も出し直す必要がなくなります。一覧図の写しは必要な枚数を無料で交付してもらえるので、複数の手続きを同時に進めることができます。 |
| 費用の節約 | 戸籍謄本(1通450円)や除籍謄本(1通750円)を何通も取得する必要がなくなります。最初に一式揃えれば、あとは無料で交付される一覧図の写しを使えるので、結果的に費用を抑えることができます。 |
| 手続きの簡略化 | 分厚い戸籍謄本の束を持ち歩く必要がなくなり、A4用紙1枚で済むため、書類の管理がとても楽になります。窓口での確認作業もスムーズに進みやすくなります。 |
相続税の申告でも戸籍関係の書類は必ず使いますので、あわせて相続税申告の必要書類一覧|全員必須と財産別の集め方もご覧いただくと、書類集めを一度で済ませやすくなりますよ。
デメリットと注意点
とても便利な制度ですが、いくつか知っておきたい注意点もあります。まず、一覧図そのものは自分で作成しなければなりません。法務局が作ってくれるわけではないので、少し手間がかかります。また、ごく一部の金融機関では、この制度に対応しておらず、従来通り戸籍謄本の提出を求められる可能性もゼロではありません。相続手続きをする場所が1〜2ヶ所しかない場合は、わざわざ一覧図を作成するメリットは少ないかもしれません。
法定相続情報一覧図はどこの法務局で取得できる?
ここが一番のポイントです。冒頭でお伝えしたとおり、最寄りの法務局ならどこでもよい、というわけではありません。4種類の「地」を管轄する法務局の中から選ぶ、というルールになっています。
申出ができる4つの法務局と選び方
法定相続情報一覧図の保管および交付の申出は、以下のいずれかの場所を管轄する法務局(登記所)で行うことができます。どれを選んでも交付される一覧図の写しは同じものです。
| ①被相続人の本籍地 | 亡くなった時点の本籍地です。戸籍を集める過程で必ず分かりますので、迷ったらここが基本になります。 |
| ②被相続人の最後の住所地 | 住民票の除票に記載されている住所です。実家の近くで手続きしたい場合に選ばれます。 |
| ③申出人の住所地 | 手続きをする相続人ご自身の住所地です。「自宅の近くの法務局で済ませたい」という場合はこれを選びます。 |
| ④被相続人名義の不動産の所在地 | 相続登記も同じ法務局で行う予定なら、ここを選ぶと窓口を1か所にまとめられます。 |
つまり、多くの方にとっては③のご自宅の住所地を管轄する法務局が一番現実的な選択肢になります。管轄がどの法務局になるかは、法務局のホームページにある管轄一覧で調べられますので、出向く前に必ず確認しておきましょう。
本局・支局・出張所のどこへ行けばいい?
法務局には「本局」「支局」「出張所」がありますが、法定相続情報証明制度の申出は、上の4か所を管轄する登記所であれば支局や出張所でも受け付けてもらえます。ただし、証明書の発行のみを扱う窓口など、登記の事務を取り扱っていない場所もあります。お住まいの地域を管轄する登記所がどこかは、事前に法務局のホームページで確認するのが確実です。
手続きの流れと交付までの期間
法務局での手続きは、以下のステップで進みます。
- 必要書類の収集:戸籍謄本などを集めます。
- 法定相続情報一覧図の作成:ご自身で一覧図を作成します。
- 申出書の記入と提出:必要事項を記入した申出書と、集めた書類、作成した一覧図を法務局に提出します。
- 一覧図の写しの交付:登記官が内容を確認後、問題がなければ認証文付きの一覧図の写しが交付されます。
申出をしてから一覧図の写しが交付されるまでの期間は、法務局の混雑状況にもよりますが、おおむね1週間から2週間程度が目安です。ただし、これはあくまで申出後の期間なので、戸籍謄本を集める時間なども考慮して、余裕を持って準備を始めましょう。相続全体のスケジュール感は相続は何から始める?死亡直後から10ヶ月までの手続きと期限の全体像で整理していますので、あわせてご確認ください。
取得に必要な事前準備【必要書類チェックリスト】
法定相続情報一覧図を取得するには、事前にいくつかの書類を準備する必要があります。どこで取れるのかも含めて、チェックリスト形式で整理しました。
必ず必要になる書類
一般的に、申出の際に必ず必要となる書類は以下の通りです。
| 書類 | 誰の分 | 取得先 |
| □ 出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本 | 被相続人 | 本籍地の市区町村役場 |
| □ 住民票の除票(取得できない場合は戸籍の附票) | 被相続人 | 最後の住所地の市区町村役場 |
| □ 現在の戸籍謄本または戸籍抄本 | 相続人全員 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 |
| □ 氏名・住所を確認できる公的書類(運転免許証やマイナンバーカードのコピーなど) | 申出人 | 手元のものをコピー |
| □ 法定相続情報一覧図(ご自身で作成) | ― | 自作(様式は法務局HP) |
| □ 申出書 | ― | 法務局の窓口またはHPからダウンロード |
特に「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」を集めるのは、本籍地が何度も変わっていると少し大変な作業になることがあります。時間に余裕をもって準備を始めましょう。運転免許証などのコピーには「原本と相違ない」旨と申出人の記名を書き添えます。
状況によって必要になる追加書類
上記の書類に加えて、状況に応じて以下の書類が必要になる場合があります。
- 各相続人の住民票の写し:一覧図に相続人の住所を記載したい場合に必要です。記載しておくと、不動産登記の手続きなどで住民票の提出を省略できるメリットがあります。
- 委任状:親族や専門家(弁護士、司法書士など)に手続きを代理で依頼する場合に必要です。
- 戸籍の記載事項証明書など:相続人の中に亡くなっている方がいて代襲相続が起きている場合など、関係を証明するための追加の戸籍が必要になることがあります。
提出した戸籍謄本などの原本は、手続き終了後に返却してもらえます。相続税の申告や金融機関の手続きでも使えますので、必ず返却を受けてください。
法定相続情報一覧図の作成方法と様式
必要書類がそろったら、次は法定相続情報一覧図の作成です。少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、法務局のホームページに相続人のパターン別の様式(テンプレート)と記載例が用意されているので、それを参考にすれば大丈夫ですよ。エクセル形式の様式もダウンロードできます。
一覧図に記載する内容
一覧図には、戸籍謄本などの情報をもとに、以下の内容を正確に記載します。
- 被相続人の情報:氏名、生年月日、死亡年月日、最後の住所、最後の本籍(住民票の除票が取得できない場合は必須)
- 相続人の情報:氏名、生年月日、被相続人との続柄
- 作成日と作成者:一覧図を作成した日付と、作成者(申出人)の住所・氏名
被相続人と相続人の関係がわかるように線で結び、家系図のような形式で作成するのが一般的です。
作成するときのポイントと注意点
ご自身で作成する際には、いくつかポイントがあります。
- A4サイズの丈夫な白い用紙に、縦向きで作成しましょう。
- 用紙の下から約5cmは余白として空けておきます。この部分に法務局の認証文が入ります。
- 手書きでもパソコンでの作成でも構いません。手書きの場合は、消えない黒のボールペンなどを使いましょう。
- 続柄は「長男」「長女」など戸籍どおりの記載にします。「子」とまとめて書くこともできますが、その場合は相続税の申告など一部の手続きで使えないことがあるため、戸籍どおりに書いておくのが安心です。
- 相続放棄をした方や、遺産分割の結果は一覧図には反映されません。あくまで戸籍上の相続人を示す書類です。
遺産の分け方そのものは別途、遺産分割協議書にまとめる必要があります。書き方は遺産分割協議書を自分で作成する手順|書き方と相続税申告の注意点で詳しく解説していますね。
郵送で申出する方法と再交付の手続き
「管轄の法務局が遠くて行けない」という場合でも大丈夫です。法定相続情報証明制度は、窓口に出向かずに手続きを完結させることができます。
郵送での申出の手順
申出も、一覧図の写しの受け取りも、郵送で行うことができます。手順は次のとおりです。
- 申出書・一覧図・必要書類一式を用意します。
- 返信用の封筒と郵便切手を同封します(これを忘れると返送してもらえません)。
- 管轄の法務局(上の4か所のいずれかを管轄する登記所)宛に郵送します。
戸籍謄本などの原本を郵送することになりますので、簡易書留やレターパックなど、追跡ができる方法をおすすめします。なお、一覧図の写しを窓口で受け取りに行く場合は、受け取り時に本人確認書類が必要です。
再交付を受けたいとき
一度申出をすると、作成した一覧図は法務局で5年間(申出日の翌年から起算)保管されます。この期間内であれば、申出人はいつでも無料で写しの再交付を受けられます。
ここで一つ注意点があります。再交付を申し出られるのは、当初の申出をした法務局(一覧図が保管されている登記所)に限られます。「近くの法務局で再発行してもらおう」ということはできませんので、最初にどこの法務局へ申し出たかは必ず控えておきましょう。また、再交付を申し出られるのは原則として当初の申出人だけです。他の相続人が再交付を受けたい場合は、申出人からの委任状が必要になります。
費用と期間について
最後に、法定相続情報一覧図の取得にかかる費用と期間について整理しておきましょう。
交付にかかる費用
法務局で法定相続情報一覧図の写しを交付してもらう際の手数料は無料です。必要な枚数を何通でも無料で発行してもらえます。
ただし、事前の準備段階で必要になる書類の取得には、以下のような発行手数料がかかります。
- 戸籍謄本:1通 450円
- 除籍謄本・改製原戸籍謄本:1通 750円
- 住民票の写しや除票:1通 300円程度(市区町村により異なる)
交付までにかかる期間
法務局に申し出てから交付されるまでの期間は、前述の通り1週間から2週間程度が目安です。ただし、戸籍謄本の収集に1ヶ月以上かかるケースもあるため、相続手続き全体のスケジュールを考えて早めに準備を始めることが大切です。相続税の申告期限は「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」ですので、そこから逆算して動くと安心ですよ。
まとめ
今回は、法定相続情報一覧図をどこの法務局で取得できるのか、またそのための事前準備について詳しく解説しました。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 申出先は①被相続人の本籍地 ②最後の住所地 ③申出人の住所地 ④被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局。「どこの法務局でもよい」わけではありません。
- 多くの方は③ご自宅の住所地を選ぶのが便利。郵送でも申出できます。
- 交付手数料は無料。何通でも発行してもらえます。
- 一覧図は5年間保管され、当初申し出た法務局でのみ再交付を受けられます。
相続手続きが多い方にとって、この制度は時間や費用の負担を大きく減らしてくれる心強い味方です。ただし、戸籍謄本の収集や一覧図の作成といった事前準備には、ある程度の時間と手間がかかります。どこまで自分でやるか迷われたら相続手続きは自分でできる?手続き別の難易度と専門家の線引きも参考になさってください。相続税の申告が必要な方は相続税申告の完全ガイド|期限・流れ・必要書類と特例もあわせてご覧いただき、不安な点があれば私たち税理士法人プライムパートナーズにお気軽にご相談くださいね。
参考文献
法定相続情報一覧図のよくある質問まとめ
Q.法定相続情報一覧図はどこの法務局でも取れますか?
A.いいえ、どこの法務局でもよいわけではありません。申出ができるのは、①被相続人の本籍地、②被相続人の最後の住所地、③申出人の住所地、④被相続人名義の不動産の所在地、のいずれかを管轄する法務局(登記所)です。この4つの中から、ご自身が行きやすい場所を選べます。
Q.郵送でも申出できますか?
A.はい、郵送での申出と一覧図の写しの受け取りが可能です。その場合は返信用の封筒と郵便切手を同封してください。戸籍謄本の原本を送るため、追跡できる郵送方法をおすすめします。
Q.法定相続情報一覧図の取得に費用はかかりますか?
A.法務局での交付手数料は無料です。ただし、事前に集める戸籍謄本(1通450円)や除籍謄本(1通750円)などの取得費用は別途かかります。
Q.どのくらいで交付されますか?
A.法務局に申し出てから、通常1週間から2週間程度で交付されます。ただし、戸籍謄本などを集める準備期間はこれとは別に必要です。
Q.代理人でも申請できますか?
A.はい、委任状があれば親族のほか、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家が代理で申請することができます。
Q.法定相続情報一覧図に有効期限はありますか?
A.一覧図の写し自体に法律上の有効期限はありません。しかし、提出先の金融機関などが「発行後3ヶ月以内のもの」といった独自のルールを設けている場合がありますので、事前に確認することをおすすめします。
Q.交付された一覧図を紛失した場合、再発行できますか?
A.はい、申出日の翌年から5年間は法務局で保管されており、申出人であれば無料で再交付を受けられます。ただし再交付を申し出られるのは、当初の申出をした法務局に限られます。
Q.自分で作成するのが難しい場合はどうすればいいですか?
A.戸籍謄本の収集や一覧図の作成が難しい場合は、司法書士や行政書士などの専門家に依頼することができます。専門家は申出の手続き全体を代理することも可能です。