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換価分割の遺言でも諦めない!小規模宅地の特例と保有期限

2025-04-22
目次

「全財産を売却して、子どもたちで均等に分けなさい」という内容の遺言書が見つかった場合、「不動産を売ってしまうなら、相続税が安くなる小規模宅地の特例は使えないのでは?」と心配になりますよね。実は、換価分割を前提とした遺言であっても、一定の要件を満たせば小規模宅地の特例を適用できる可能性があります。その鍵を握るのが「保有継続要件」です。この記事では、換価分割の場合でも小規模宅地の特例を上手に活用するためのポイントを、わかりやすく解説していきます。

小規模宅地の特例と換価分割の基本

まず、今回のテーマである「小規模宅地の特例」と「換価分割」について、基本的な知識をおさらいしておきましょう。なぜこの二つが関係し、どのような点が問題になるのかを知ることが大切です。

換価分割とは?

換価分割(かんかぶんかつ)とは、土地や建物といった遺産をそのまま分けるのではなく、一度売却して現金に換えてから、その現金を相続人間で分割する方法です。遺産が不動産のみで公平に分けにくい場合や、相続人それぞれが現金での相続を希望する場合などによく用いられます。遺言書でこの方法が指定されていることもあります。

小規模宅地の特例とは?

小規模宅地の特例とは、亡くなった方(被相続人)が住んでいた土地などを相続した場合に、一定の要件を満たすことで、その土地の相続税評価額を最大で80%も減額できる制度です。相続税は高額になりがちですが、この特例を使えるかどうかで納税額が大きく変わるため、非常に重要な制度といえます。
例えば、ご自宅の敷地(特定居住用宅地等)であれば、330㎡までの部分について評価額を80%減額できます。評価額5,000万円の土地であれば、1,000万円として相続税を計算できるため、絶大な節税効果があります。

なぜ換価分割だと特例が使えないと思われがちなのか?

換価分割が指定されていると、小規模宅地の特例が使えないと思われがちな最大の理由は、特例の適用要件の一つである「保有継続要件」の存在です。この要件は、原則として「相続した宅地を、相続税の申告期限まで保有し続けること」を求めています。そのため、「売却して分ける(換価分割)」という行為が、この「保有し続ける」という要件と矛盾するように見えるため、特例の適用を諦めてしまうケースが多いのです。

小規模宅地の特例の「保有継続要件」を徹底解説

それでは、換価分割で小規模宅地の特例を使うための鍵となる「保有継続要件」について、詳しく見ていきましょう。この要件を正しく理解することが、節税への第一歩です。

保有継続要件の具体的な内容

小規模宅地の特例における保有継続要件とは、「相続の開始があった時から相続税の申告期限まで、その宅地等を継続して所有していること」を指します。相続税の申告期限は、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。つまり、この10か月の間は、原則としてその土地を手放してはいけない、ということになります。

「保有」のタイミングはいつ?売買契約と引き渡しの違い

ここで最も重要なポイントが、「いつの時点で保有していないと判断されるのか」という点です。換価分割のために売却活動を進める場合、申告期限前に買主が見つかり、売買契約を締結することもあるでしょう。
税法上、不動産の所有権が移転するのは、原則として「引き渡し日」と考えられています。つまり、たとえ相続税の申告期限前に売買契約を締結したとしても、物件の引き渡し日が申告期限の後であれば、「申告期限まで保有していた」とみなされ、保有継続要件を満たすことができるのです。

タイミング 特例適用の可否
申告期限前に売買契約、申告期限に引き渡し 適用可能
申告期限前に売買契約、申告期限に引き渡し 適用不可

この点を誤解して、売買契約を結んだ時点で特例を諦めてしまう方がいらっしゃいますが、それは非常にもったいないことです。不動産の売却手続きには時間がかかることも多いため、専門家と相談しながらスケジュールを調整することが重要です。

例外!配偶者は保有継続要件が不要

保有継続要件には、非常に大きな例外があります。それは、被相続人の配偶者が居住用の宅地を相続する場合です。このケースでは、保有継続要件や居住継続要件がありません。そのため、配偶者が相続した場合は、相続税の申告期限前にその土地を売却したとしても、小規模宅地の特例を適用することができます。これは配偶者だけに認められた特別な優遇措置です。

換価分割の遺言でも特例を使うための具体的な流れ

実際に換価分割の遺言書があり、小規模宅地の特例の適用を目指す場合、どのような流れで進めればよいのでしょうか。具体的なステップを確認していきましょう。

ステップ1:遺言書の内容と相続人を確認する

まずは遺言書の内容を正確に把握し、換価分割が指定されていることを確認します。同時に、誰が相続人となるのかを確定させ、その中に小規模宅地の特例の適用要件を満たす人がいるかを確認します。

ステップ2:小規模宅地の特例の他の要件を満たすか確認する

保有継続要件の他にも、誰が土地を取得するかによって満たすべき要件が異なります。例えば、被相続人と同居していた親族が取得する場合や、いわゆる「家なき子」と呼ばれる特定の条件を満たす親族が取得する場合などがあります。
特に「家なき子」特例は要件が複雑なため、注意が必要です。

「家なき子」特例の主な適用要件

要件項目 内容
被相続人の状況 亡くなった方に配偶者や同居の法定相続人がいないこと。
取得者の居住歴 相続開始前3年以内に、ご自身や配偶者、3親等内の親族等が所有する家屋に住んだことがないこと。
取得者の所有歴 相続開始時に住んでいる家を過去に所有したことがないこと。
保有継続要件 相続した宅地を相続税の申告期限まで保有し続けること。

これらの要件を相続人全員が満たす必要はなく、宅地を取得する相続人のうち誰か一人が満たしていれば、その人の取得分について特例が適用できます。

ステップ3:売却活動と引き渡し時期の調整

特例の適用要件を満たす相続人がいることが確認できたら、不動産の売却活動を開始します。不動産会社に仲介を依頼する際には、「小規模宅地の特例を使いたいため、物件の引き渡し日を相続税の申告期限(具体的な日付を伝える)より後に設定したい」という条件を明確に伝えましょう。買主との交渉が必要になりますが、事情を説明すれば理解を得られるケースも少なくありません。

ステップ4:期限内に相続税の申告を行う

すべての準備が整ったら、相続税の申告期限内に、小規模宅地の特例を適用する旨を記載した相続税申告書を税務署に提出します。この申告をもって、特例の適用が認められます。

注意点とよくある誤解

換価分割で小規模宅地の特例を目指す際には、いくつか注意すべき点や、誤解されやすいポイントがあります。損をしないためにも、しっかりと確認しておきましょう。

申告期限までに遺産分割が終わらない場合

小規模宅地の特例は、原則として相続税の申告期限までに遺産分割が確定している必要があります。しかし、相続人間で協議がまとまらないこともあります。その場合は、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出することで、申告期限から3年以内に分割が成立すれば、後から特例の適用を受けることが可能です。

「空き家特例」との併用はできない

相続した実家を売却する際には、譲渡所得税(売却益にかかる税金)の負担を軽減する「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(通称:空き家特例)」という制度もあります。こちらは、売却益から最大3,000万円を控除できる強力な特例です。
しかし、小規模宅地の特例(特定居住用宅地等)は「被相続人と同居していた」などの居住要件が基本となるのに対し、空き家特例は「相続により空き家になった」ことが前提です。このように両者の適用要件が相反するため、原則として併用することはできません。どちらの特例を使う方が有利になるか、事前にシミュレーションすることが重要です。

相続登記は必須の手続き

不動産を売却するためには、その前提として、亡くなった被相続人から相続人へ名義を変更する「相続登記」が必須です。換価分割の場合、売却手続きをスムーズにするために相続人の代表者1名の名義にすることも、相続人全員の共有名義にすることも可能です。遺産分割協議書に換価分割を行う旨と代金の配分方法を明記しておけば、代表者1名の名義にしても他の相続人への贈与税はかかりません。2024年4月1日から相続登記は義務化されていますので、忘れずに行いましょう。

まとめ

今回は、「換価分割の遺言書があっても小規模宅地の特例は使えるか?」というテーマについて解説しました。
結論として、換価分割が前提であっても、小規模宅地の特例の適用要件を満たす相続人が、相続税の申告期限までその宅地を保有(所有)していれば、特例を適用することは可能です。
重要なのは、売却の「引き渡し日」を相続税の申告期限(相続開始から10か月後)より後に設定することです。遺言書の内容を見てすぐに諦めるのではなく、まずは専門家に相談し、スケジュールを計画的に進めることで、大幅な節税が実現できるかもしれません。相続税の計算は複雑ですので、お困りの際は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

換価分割と小規模宅地の特例に関するよくある質問

Q.換価分割とは何ですか?

A.換価分割とは、土地や建物などの遺産を売却して現金に換え、その現金を相続人同士で分ける遺産分割の方法です。不動産など物理的に分けにくい遺産を公平に分割したい場合などに用いられます。

Q.小規模宅地の特例の「保有継続要件」とは何ですか?

A.原則として、「相続が開始してから相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)まで、対象となる宅地を継続して所有していること」という要件です。この要件を満たさないと、特例は適用できません。

Q.相続税の申告期限前に不動産の売買契約をしても大丈夫ですか?

A.はい、大丈夫です。保有継続要件の判定は、売買契約日ではなく「引き渡し日」で行われます。そのため、売買契約を申告期限前に結んでも、引き渡し日が申告期限の後であれば、保有継続要件を満たしたことになります。

Q.配偶者が相続する場合も保有継続要件はありますか?

A.いいえ、ありません。被相続人の配偶者が居住用の宅地を相続する場合、保有継続要件は免除されます。そのため、配偶者は相続税の申告期限前に売却しても小規模宅地の特例を適用できます。

Q.換価分割の遺言がある場合、どうすれば特例を使えますか?

A.まず特例の適用要件を満たす相続人がいるか確認します。次に、不動産を売却する際に、買主や不動産会社と交渉し、物件の「引き渡し日」を相続税の申告期限(相続開始から10か月後)より後の日付に設定します。これにより保有継続要件を満たし、特例を適用して申告することが可能になります。

Q.小規模宅地の特例と「空き家特例」は両方使えますか?

A.原則として併用はできません。小規模宅地の特例(特定居住用宅地等)は「居住していたこと」が要件の一つですが、譲渡所得税の空き家特例は「相続により空き家になったこと」が要件であり、両者の前提条件が異なるためです。どちらが有利か、事前に検討する必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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