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株価が安い今が好機?相続時精算課税で株式贈与のメリット・デメリット

2025-05-07
目次

将来値上がりしそうな上場株式、お子さんやお孫さんにどうやって渡すか悩んでいませんか?実は、株価が下がっている今こそ、「相続時精算課税制度」を活用して贈与するチャンスかもしれません。この制度は、贈与した財産を相続時に精算するものですが、贈与時の価額で評価されるという大きな特徴があります。今回は、この仕組みを利用して上場株式などを贈与する際のメリットとデメリットを、わかりやすく解説していきますね。

相続時精算課税制度の基本をおさらい

まずは、相続時精算課税制度がどのようなものか、基本から見ていきましょう。この制度を上手に活用するためには、仕組みをしっかり理解しておくことが大切ですよ。

制度の仕組みと2024年からの改正点

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与するときに選択できる制度です。この制度を選ぶと、贈与者一人あたり累計2,500万円までの贈与なら贈与税がかかりません。そして、贈与した財産は、贈与した方が亡くなったときに相続財産に加えて相続税を計算する、という仕組みです。

さらに、2024年1月1日からの改正で、この2,500万円の特別控除とは別に、年間110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以下の贈与であれば、贈与税の申告も不要で、相続財産に加算する必要もありません。とても使いやすくなりましたね。

暦年課税との違いを簡単にまとめてみましょう。

制度 相続時精算課税制度
非課税枠 ・年間110万円の基礎控除(相続財産への加算不要)
・生涯で2,500万円の特別控除
超過分の税率 一律20%
相続時の扱い 贈与財産(年間110万円の基礎控除分を除く)を贈与時の価額で相続財産に加算して相続税を計算
制度 暦年課税制度
非課税枠 年間110万円
超過分の税率 10%~55%の累進課税
相続時の扱い 相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算(相続時の価額ではない)

なぜ「贈与時の価額」で持ち戻されることが重要なのか

この制度の最大のポイントは、相続時に加算される財産の価額が「贈与した時の価額」で固定される点です。たとえば、株価1,000万円の時に株式を贈与したとします。その後、贈与した方が亡くなった時にその株価が5,000万円に値上がりしていても、相続税の計算に使うのは贈与時の1,000万円のままなのです。この仕組みが、将来値上がりしそうな資産を贈与する際に大きなメリットを生む可能性があるんですね。

値上がりしそうな上場株式を贈与するメリット

では、具体的に将来値上がりしそうな上場株式を、株価が下がっているときに相続時精算課税制度で贈与すると、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

将来の値上がり益に相続税がかからない

これが最大のメリットです。先ほども触れましたが、贈与後にどれだけ株価が上がっても、その値上がり部分には相続税がかかりません。例えば、株価が低迷している時期に2,000万円分の株式を贈与したとします。数年後、景気が回復し、相続が発生したときにはその株式の価値が4,000万円になっていたとしても、相続財産として計算されるのは贈与時の2,000万円です。もし贈与せずに相続で渡していたら、4,000万円に対して相続税がかかっていたかもしれないので、大きな節税効果が期待できます。

株価が下がっているタイミングが絶好の機会

相続時精算課税制度のメリットを最大限に活かすには、贈与のタイミングが非常に重要です。市場全体が冷え込んでいるときや、特定の企業の株価が一時的に下がっているときに贈与を行えば、より低い価額で多くの株式を非課税枠内で贈与することができます。つまり、将来の大きな資産を、低い税負担リスクで次世代に移すことができるのです。

株式から生じる配当金も受贈者の財産になる

株式を贈与すると、その株式を保有していることで得られる配当金は、贈与を受けたお子さんやお孫さんのものになります。もし贈与せずに親や祖父母が持ち続けていると、配当金はどんどん溜まっていき、それらもすべて相続財産になってしまいます。株式自体を早めに渡しておくことで、将来の相続財産が増え続けるのを防ぐ効果もあるんですよ。

知っておきたいデメリットと注意点

いいことばかりに見えるこの方法ですが、もちろんデメリットや注意すべき点もあります。しっかりリスクも理解した上で、慎重に判断することが大切です。

贈与後に株価が下落するとかえって損をする可能性

メリットの裏返しになりますが、もし贈与した後に株価がさらに下落してしまった場合、不利になることがあります。なぜなら、相続時には贈与した時の高い価額で計算されてしまうからです。例えば、株価2,000万円の時に贈与した株式が、相続時には1,000万円に値下がりしていたとします。それでも相続税の計算では2,000万円として扱われるため、贈与せずに相続で渡した方が税金が安かった、という結果になりかねません。財産の評価額が元に戻らない可能性がある場合は、慎重な判断が必要です。

一度選択すると暦年贈与には戻れない

これは非常に重要な注意点です。一度、特定の贈与者(例えば父)から相続時精算課税制度を使って贈与を受けると、その後、同じ贈与者(父)からの贈与については、毎年110万円まで非課税になる暦年贈与を使うことは二度とできなくなります。もちろん、別の贈与者(例えば母や祖父)から暦年贈与を受けることは可能です。コツコツと少額の贈与を続けたいと考えている場合は、この制度を選ぶべきかよく考える必要があります。

贈与税の申告が必要になる

2024年の改正で年間110万円以下の贈与は申告が不要になりましたが、それを超える贈与をする場合や、初めてこの制度を利用する際には、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに税務署へ「相続時精算課税選択届出書」を添付した贈与税の申告が必要です。申告を忘れると、2,500万円の特別控除が使えなくなってしまうなどのペナルティがあるので注意しましょう。

贈与された株式は「物納」に使えない

相続税は原則として現金で納める必要がありますが、どうしても現金で納められない場合には、相続した土地や株式などで税金を納める「物納」という制度があります。しかし、相続時精算課税制度を使って生前に贈与された財産は、この物納の対象にすることができません。多額の相続税が見込まれる場合は、納税資金をどう準備するかも合わせて考えておく必要があります。

どんな人がこの制度の活用に向いている?

これらのメリット・デメリットを踏まえると、相続時精算課税制度を使った株式贈与は、次のような方に向いていると言えるでしょう。

  • 将来的に株価の上昇が強く見込まれる株式(例:成長企業の株式、再開発予定地の関連企業の株式など)を保有している方
  • 会社の経営者で、後継者である子や孫に自社株を計画的に移したいと考えている方
  • 相続財産が多く、明らかに相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えており、積極的な相続税対策が必要な方
  • 金融市場の動向を見て、株価が一時的に大きく下がったタイミングを捉えて贈与を実行できる方

当てはまる方は、この制度の活用を検討してみる価値は大きいかもしれません。

制度利用の簡単な手続きの流れ

実際に制度を利用する場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。大まかな流れは以下の通りです。

  1. 贈与契約書を作成する
    誰から誰に、いつ、何を贈与したかを明確にするために、書面で契約書を残しておくことが大切です。
  2. 株式の名義変更手続きを行う
    証券会社などを通じて、株式の名義を贈与者から受贈者(贈与を受ける人)へ変更します。
  3. 贈与税の申告をする
    贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、受贈者の住所地を管轄する税務署で贈与税の申告を行います。初めてこの制度を利用する場合は、必ず「相続時精算課税選択届出書」と戸籍謄本などの必要書類を添付して提出します。

手続き自体はそこまで複雑ではありませんが、書類の準備などが必要になるので、計画的に進めましょう。

まとめ

相続時精算課税制度を利用した上場株式の贈与は、株価が下がっているときに、将来値上がりしそうな資産を贈与する場合に大きな節税効果が期待できる非常に有効な生前対策です。特に「贈与時の価額」で相続財産が固定される点は、大きな魅力と言えるでしょう。

しかし、一度選択すると暦年贈与に戻れない点や、贈与後に価値が下落した場合のリスクなど、慎重に検討すべきデメリットも存在します。ご自身の財産状況やご家族の将来設計などを総合的に考え、本当にこの制度が適しているのかを判断することが重要です。少しでも不安な点があれば、税理士などの専門家に相談してみることをお勧めします。

参考文献

相続時精算課税贈与のよくある質問まとめ

Q.相続時精算課税制度って何ですか?

A.原則として60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する際に選択できる制度です。累計2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、贈与者が亡くなった際に、贈与した財産を「贈与時の価額」で相続財産に加えて相続税を計算します。2024年からは年間110万円の基礎控除も新設されました。

Q.なぜ株価が下がっているときに贈与するのが良いのですか?

A.相続時精算課税制度では、相続時に持ち戻される財産の価額が「贈与時の価額」で固定されるためです。株価が低いときに贈与すれば、将来値上がりしても低い価額のまま相続税が計算されるので、節税につながる可能性があります。

Q.贈与した後に株価が値下がりしたらどうなりますか?

A.デメリットになります。相続時には値下がり後の価額ではなく、「贈与時の高い価額」で相続税が計算されてしまいます。そのため、贈与せずに相続で受け取った場合より税負担が重くなるリスクがあります。

Q.暦年贈与との併用はできますか?

A.一度、ある人(例えば父)から相続時精算課税制度で贈与を受けると、その人(父)からは二度と暦年贈与(年間110万円非課税)を受けることはできなくなります。ただし、別の人(例えば母)から暦年贈与を受けることは可能です。

Q.手続きはどうすればいいですか?

A.贈与契約書を作成し、株式の名義変更を行います。その後、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に、税務署へ贈与税の申告が必要です。初めて利用する際は「相続時精算課税選択届出書」などの書類を添付します。

Q.2024年の改正で何が変わりましたか?

A.従来の2,500万円の特別控除枠に加えて、新たに年間110万円の基礎控除が創設されました。この110万円の範囲内の贈与であれば、贈与税の申告が不要になり、相続財産に加算する必要もなくなったため、より利用しやすくなりました。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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