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相続人じゃない孫も納税?相続時精算課税制度のメリット・デメリット

2025-05-12
目次

「かわいい孫のために、まとまったお金を渡してあげたい」そうお考えの方も多いのではないでしょうか。そんなときに便利なのが相続時精算課税制度です。しかし、この制度を使って孫に贈与をすると、本来は相続人ではない孫にも相続税がかかってしまうことがあります。今回は、相続時精算課税制度を使って孫に基礎控除額以上の贈与をする際のメリットとデメリットを、わかりやすく解説していきます。2024年からの改正で新設された年間110万円の非課税枠についても触れていきますので、ぜひ参考にしてくださいね。

相続時精算課税制度の基本をおさらい

まずは、相続時精算課税制度がどのようなものか、基本的な仕組みから確認していきましょう。少し複雑に感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば大丈夫ですよ。

相続時精算課税制度ってどんな制度?

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の祖父母や親から、18歳以上の子や孫へ生前贈与をするときに選択できる制度です。この制度の一番の特徴は、贈与税の負担を先送りにして、贈与した方が亡くなったときに相続税としてまとめて精算する点にあります。

具体的には、以下の2つの非課税枠があります。

  • 特別控除枠:最大2,500万円(生涯にわたって使える非課税枠)
  • 基礎控除枠:年間110万円(2024年1月1日から新設)

年間の贈与額が110万円までなら贈与税の申告も不要で、相続財産に加算する必要もありません。110万円を超えた部分が2,500万円の特別控除枠から引かれていき、この枠を超えた分については、一律20%の贈与税がかかります。そして、贈与した方が亡くなったとき、この制度を使って贈与した財産(年間110万円の基礎控除分を除く)は、相続財産に加算されて相続税が計算される仕組みです。

誰が使えるの?対象者まとめ

この制度を利用するには、贈与する側(贈与者)と贈与される側(受贈者)に、以下のような年齢の要件があります。

贈与者(あげる人) 贈与した年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母
受贈者(もらう人) 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子または孫

おじいちゃん、おばあちゃんから、成人したお孫さんへ贈与する場合が典型的なケースですね。

なぜ相続人ではない孫も相続税を支払うの?

ここが一番のポイントです。通常、相続税を支払うのは配偶者や子などの「法定相続人」です。しかし、相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた孫は、法定相続人ではなくても、贈与された財産を相続財産に加えて相続税を計算することになります。そのため、財産の総額によっては、孫も相続税の納税義務者になる可能性があるのです。「贈与」という形で財産を受け取りますが、税金の計算上は「相続」と同じように扱われる、と考えると分かりやすいかもしれません。

孫へ相続時精算課税制度を使うメリット

では、孫へこの制度を使って贈与するメリットは何でしょうか。特に大きなメリットを4つご紹介します。

まとまった資金を非課税で渡せる

最大のメリットは、最大で2,500万円という大きな非課税枠があることです。例えば、孫の結婚資金、マイホームの頭金、起業資金など、まとまったお金が必要なタイミングで、贈与税を気にすることなく支援してあげられます。通常の暦年贈与(年間110万円まで非課税)で2,500万円を渡そうとすると20年以上かかってしまいますが、この制度なら一度に渡すことも可能です。

新設!年間110万円の基礎控除で節税効果アップ

2024年1月1日からの税制改正で、従来の2,500万円の特別控除とは別に、新たに年間110万円の基礎控除が創設されました。この110万円までの贈与は、贈与税の申告が不要なだけでなく、将来の相続財産にも加算されません。つまり、毎年110万円ずつコツコツ贈与すれば、2,500万円の特別控除枠を全く使わずに、非課税で財産を移すことができるのです。これにより、制度がより使いやすく、節税の選択肢も広がりました。

将来値上がりする財産を贈与すると節税になる

相続時精算課税制度で贈与した財産の価値は、「贈与した時点」の時価で固定されます。これが大きな節税ポイントになることがあります。例えば、将来再開発が予定されている土地や、今後成長が見込まれる会社の株式などを、価値がまだ低い時点で贈与しておけば、将来相続が発生したときにその財産がどれだけ値上がりしていても、贈与時の低い評価額で相続税が計算されます。結果として、相続税の負担を抑えることができるのです。

特定の孫に確実に財産を渡せる

「この財産は、事業を継いでくれる長男の孫に渡したい」といったように、特定の孫に確実に財産を承継させたい場合にも有効です。遺言書で指定することもできますが、生前に贈与することで、ご自身の意思をより確実に反映させることができます。相続が始まった後の親族間のトラブルを未然に防ぐ効果も期待できるでしょう。

孫へ相続時精算課税制度を使うデメリット

メリットがある一方で、特に孫へ贈与する際には知っておくべき重要なデメリットもあります。安易に選択すると後悔することになりかねないので、しっかり確認しましょう。

相続税が2割加算される

これが孫への贈与における最大のデメリットです。相続税法では、亡くなった方の配偶者と一親等の血族(子や親)以外の方が財産を相続した場合、相続税額が2割加算されるというルールがあります。孫は通常「二親等」の血族なので、この2割加算の対象になってしまうのです。ただし、親(子)が既に亡くなっていて、孫が代襲相続人として相続する場合は、2割加算の対象にはなりません。

一度選択すると暦年贈与に戻せない

相続時精算課税制度は、一度選択すると、その贈与者(例えば祖父)からの贈与については、二度と暦年贈与(年間110万円の非課税枠)に戻すことができません。「今年は大きな額を贈与したいから相続時精算課税制度、来年からはまた暦年贈与で」といった使い分けはできないので、慎重な判断が必要です。ただし、別の贈与者(例えば祖母)から暦年贈与を受けることは可能です。

土地の贈与では「小規模宅地等の特例」が使えない

ご自宅の土地などを相続する場合、その土地の評価額を最大80%も減額できる「小規模宅地等の特例」という非常に節税効果の高い制度があります。しかし、この特例は「相続」または「遺贈」で取得した土地が対象です。相続時精算課税制度は「贈与」にあたるため、この制度を使って贈与された土地には小規模宅地等の特例を適用できません。土地の評価額が高い場合は、かえって税負担が重くなる可能性があるので注意が必要です。

不動産贈与は登録免許税・不動産取得税が高い

不動産を贈与した場合、名義変更のための登録免許税や不動産取得税がかかります。これらの税金は、相続で取得した場合に比べて税率が高く設定されています。

税金の種類 生前贈与の場合
登録免許税 固定資産税評価額の2.0%
不動産取得税 固定資産税評価額の3.0%(宅地は1/2に軽減措置あり)

相続の場合は登録免許税が0.4%、不動産取得税はかからないため、税負担の差は大きくなります。

メリット・デメリット比較まとめ

これまで見てきたメリットとデメリットを一覧表にまとめました。どちらを重視するか考える際の参考にしてください。

メリット デメリット
・最大2,610万円(特別控除2,500万円+基礎控除110万円)まで贈与税がかからない
・将来値上がりする財産なら節税になる
・特定の孫に確実に財産を渡せる
・年間110万円の基礎控除は相続財産に加算されない
・孫への贈与は相続税が2割加算される
・一度選択すると暦年贈与に戻せない
・小規模宅地等の特例が使えない
・不動産贈与は税金が高くなる
・制度利用には申告が必要

どんな人が孫への相続時精算課税贈与を検討すべき?

それでは、どのような方がこの制度の利用を検討すると良いのでしょうか。具体的なケースを見ていきましょう。

相続財産が相続税の基礎控除額に収まる見込みの人

そもそも相続税がかからないのであれば、2割加算などのデメリットを心配する必要がありません。生前贈与のメリットだけを享受できます。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算できます。この範囲内に財産が収まりそうであれば、積極的に検討する価値があります。

将来価値が大きく上がりそうな財産を持っている人

前述の通り、値上がりが期待できる非上場株式や再開発エリアの土地などを持っている場合、価値が低い時点で贈与することで、将来の相続税を大きく節税できる可能性があります。2割加算のデメリットよりも、評価額上昇による税負担増のリスクを避けたい場合に有効です。

賃貸アパートなど収益を生む物件を渡したい人

賃貸アパートなどを所有している場合、何もしなければ家賃収入によってどんどん相続財産が増えていってしまいます。この制度を使って早めに孫に贈与すれば、その後の家賃収入は孫のものになるため、ご自身の相続財産の増加を抑えることができます。これも有効な相続税対策の一つです。

まとめ

相続時精算課税制度を孫への贈与で利用する場合、まとまった資金を非課税で渡せるという大きなメリットがある一方で、相続税の2割加算という無視できないデメリットも存在します。2024年の改正で年間110万円の基礎控除が加わり、以前よりも使いやすくなったのは事実です。しかし、一度選択すると後戻りできないため、ご自身の財産状況や家族構成、そして何より「なぜ孫に財産を渡したいのか」という目的を明確にして、慎重に判断することが大切です。ご自身での判断が難しい場合は、税理士などの専門家に相談し、シミュレーションをしてもらうことをお勧めします。

参考文献

相続時精算課税制度のよくある質問まとめ

Q.相続時精算課税制度とは簡単に言うと何ですか?

A.原則60歳以上の祖父母や親から18歳以上の子や孫へ贈与する際に選択できる制度です。贈与税の支払いを先送りし、贈与者が亡くなったときに相続税としてまとめて精算する仕組みです。累計2,500万円の特別控除と年間110万円の基礎控除があります。

Q.孫への贈与で、なぜ相続税が2割増しになるのですか?

A.相続税法では、亡くなった方の配偶者と一親等の血族(子など)以外の方が財産を取得した場合、相続税額が2割加算されるルールがあるためです。孫は二親等の血族にあたるため、原則として2割加算の対象となります。

Q.2024年の改正で何が変わりましたか?

A.従来の2,500万円の特別控除とは別に、新たに年間110万円の基礎控除が創設されました。この110万円までの贈与は、贈与税の申告が不要で、将来の相続財産にも加算されません。

Q.相続時精算課税制度を使ったら、もう暦年贈与は使えませんか?

A.はい、一度相続時精算課税制度を選択した贈与者(例えば祖父)からは、二度と暦年贈与(年間110万円非課税)を受けることはできなくなります。ただし、他の贈与者(例えば祖母)から暦年贈与を受けることは可能です。

Q.贈与額が110万円以下でも申告は必要ですか?

A.年間の贈与額が110万円の基礎控除以下であれば、贈与税の申告は不要です。ただし、初めて相続時精算課税制度を選択する年には、贈与額にかかわらず「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。

Q.この制度を使えば必ず節税になりますか?

A.必ずしも節税になるとは限りません。特に孫への贈与では相続税が2割加算されるため、かえって税負担が増えるケースもあります。将来値上がりする財産を贈与する場合や、相続財産が基礎控除以下の場合などに節税効果が期待できます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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