相続手続きと聞くと、たくさんの書類を集めて、あちこちの窓口を回って…と、時間も手間もかかる大変なイメージがありませんか?特に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などをすべて集めた「戸籍の束」は、手続きのたびに提出が必要で、大きな負担になりがちです。そんな大変な相続手続きを、ぐっとスムーズにしてくれるのが「法定相続情報一覧図」という制度です。この証明書1枚が戸籍の束の代わりとなり、手続きの時間を大幅に短縮してくれます。2024年4月からは不動産の相続登記が義務化されたこともあり、この制度の重要性はますます高まっています。今回は、この便利な「法定相続情報一覧図」について、その概要からメリット、取得方法まで、わかりやすく解説していきますね。
法定相続情報一覧図って、そもそも何ですか?
まずは、「法定相続情報一覧図」がどのようなものなのか、基本から見ていきましょう。一言でいうと、「法務局がお墨付きを与えた、公的な家系図」のようなものです。これがあれば、面倒な相続手続きがぐっとシンプルになりますよ。
戸籍謄本の束が「証明書1枚」に
法定相続情報一覧図とは、被相続人(亡くなった方)と、法律上の相続人が誰なのかという関係性を一覧にまとめた図のことです。この図を戸籍謄本などと一緒に法務局に提出すると、登記官が内容をしっかり確認した上で、「この内容は正しいですよ」という認証文を付けてくれます。この認証文付きの一覧図の写しが、これまで手続きのたびに必要だった「戸籍謄本などの書類一式(束)」の代わりになるのです。何十枚にもなることがある戸籍の束が、A4用紙1枚に集約されるので、管理がとても楽になります。
法務局が認証する公的な証明書
この一覧図は、単なる家系図ではありません。法務局の登記官という専門家が、戸籍の内容と照らし合わせて厳密にチェックし、その内容を証明してくれる公的な書類です。そのため、銀行や証券会社、税務署、法務局といった各種機関で、相続関係を証明する書類として安心して使うことができます。受け取る側も、公的機関が認証した書類なので、信頼性が高く、スムーズに手続きを進めることができるのです。
手数料無料で5年間は再交付も可能
驚くことに、この便利な法定相続情報一覧図の写しは、交付手数料が無料です。必要な手続き先の数だけ、例えば銀行が3行あれば3通、不動産登記と合わせて4通といったように、必要な枚数を一度に取得できます。さらに、作成された一覧図とその元になった戸籍などの情報は、法務局で5年間保管されます。もし後から追加で必要になった場合でも、この5年間であれば無料で再交付してもらえるので、とても経済的で安心です。
なぜ手続きが「早く」「正確」になるの?3つの理由
法定相続情報一覧図を利用すると、相続手続きが「早く」「正確」に進むようになります。その背景には、3つの大きな理由があります。具体的にどんなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
理由1:原本の返却待ちがなくなり、同時進行が可能に
従来の相続手続きでは、高価な戸籍謄本一式を何セットも用意するのは大変なため、通常は1セットだけ準備することが多いです。そうすると、例えばA銀行での手続きに原本を提出したら、その手続きが終わって書類が返却されるまで、B銀行の手続きを始めることができません。この「原本の返却待ち」が、手続き全体を遅らせる大きな原因でした。しかし、法定相続情報一覧図なら必要な枚数を無料で取得できるため、複数の金融機関や法務局での手続きを同時に進めることができます。これにより、相続手続きにかかる期間を大幅に短縮できるのです。
理由2:金融機関や役所の確認作業がスピードアップ
手続きを受け付ける金融機関や役所の担当者にとっても、法定相続情報一覧図は大きなメリットがあります。何十ページにもわたる分厚い戸籍の束を一枚一枚めくり、複雑な親族関係を正確に読み解くのは、非常に時間と手間がかかる作業です。その点、一覧図であれば、相続関係が一目でわかるため、担当者の確認作業が格段に早くなります。確認がスムーズに進むことで、結果的に私たちの待ち時間も短縮され、手続き全体がスピーディになります。
理由3:大量の戸籍を持ち歩く紛失リスクを低減
出生から死亡までの戸籍謄本一式は、再発行が難しいものも含まれる非常に重要な書類です。この大切な書類の束を、銀行や法務局などへ何度も持ち歩くのは、紛失や汚損のリスクが伴い、精神的にも負担になります。法定相続情報一覧図を利用すれば、提出するのはA4用紙1枚(または数枚)で済むため、こうしたリスクを大幅に減らすことができます。大切な書類を安全に管理できるという点も、見逃せない大きなメリットです。
どんな場面で使えるの?具体的な活用シーン
法定相続情報一覧図は、さまざまな相続手続きの場面でその真価を発揮します。特に、相続人の数が多い場合や、相続財産が複数の場所に点在している場合に、そのメリットを大きく実感できるでしょう。
こんな方に特におすすめです
法定相続情報一覧図の利用が特に効果的なのは、次のようなケースです。
- 相続人の数が多い、または代襲相続など関係が複雑な場合
- 故人が複数の金融機関(銀行、証券会社など)に口座を持っていた場合
- 不動産(土地・建物)を相続し、相続登記が必要な場合
- 相続税の申告が必要な場合
これらのケースでは、手続き先が複数にわたることが多いため、同時進行できる一覧図のメリットが最大限に活かされます。
主な利用先一覧
法定相続情報一覧図は、以下のような公的機関や金融機関で、戸籍謄本一式の代わりに利用できます。
| 利用先 | 主な手続き内容 |
|---|---|
| 法務局 | 不動産の相続登記(名義変更) ※2024年4月1日から義務化されています。 |
| 金融機関(銀行・証券会社など) | 預貯金の解約・払い戻し、株式などの有価証券の名義変更 |
| 税務署 | 相続税の申告、被相続人の準確定申告 |
| 年金事務所・年金相談センター | 未支給年金や遺族年金の請求手続き |
| その他 | 自動車や船舶の名義変更手続きなど |
法定相続情報一覧図の取得方法と流れ
それでは、実際に法定相続情報一覧図を取得するには、どうすればよいのでしょうか。少し手間はかかりますが、一度取得してしまえば、その後の手続きが格段に楽になります。大まかな流れは3つのステップです。
ステップ1:必要書類の収集
まず、一覧図を作成し、その内容を証明してもらうための根拠となる書類を集めます。これが一番大変な作業かもしれませんが、ここを乗り越えればゴールは目前です。
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本(または抄本)
- 相続人全員の住民票(一覧図に住所を記載したい場合)
- 申出人(手続きをする人)の本人確認書類(運転免許証のコピーなど)
これらの書類は、それぞれの本籍地や住所地の市区町村役場で取得します。
ステップ2:一覧図の作成
次に、集めた戸籍謄本などの情報をもとに、法定相続情報一覧図を作成します。法務局のホームページに、さまざまな相続パターンに応じた様式(Excelファイルなど)と記載例が用意されているので、それを参考に作成すると良いでしょう。パソコンで作成しても、手書きで作成しても構いません。被相続人と相続人の氏名、生年月日、続柄などを正確に記入していきます。
ステップ3:法務局への申出と交付
最後に、作成した一覧図と、ステップ1で収集した書類一式を管轄の法務局に提出します。これを「申出(もうしで)」と呼びます。申出ができる法務局は、以下のいずれかから選べます。
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
提出後、登記官が書類の内容を審査し、問題がなければ認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。通常、申出から交付までは1週間から2週間程度かかります。
まとめ
法定相続情報一覧図は、これまで相続手続きの大きな負担となっていた戸籍謄本一式の提出を、証明書1枚で済ませることができる画期的な制度です。手続きの「同時進行」を可能にし、受け取る側の確認作業も減らすことで、相続手続き全体を「早く」「正確」に進める手助けをしてくれます。特に、2024年4月からの不動産相続登記の義務化に伴い、不動産をお持ちの方にとっては、その重要性がさらに高まっています。最初の書類集めや一覧図の作成には少し手間がかかりますが、その後の手続きが格段に楽になることを考えれば、利用する価値は非常に高いと言えるでしょう。相続が発生した際には、ぜひこの便利な制度の活用を検討してみてくださいね。
参考文献
法務局:法定相続情報証明制度について
法務局:法定相続情報証明制度の具体的な手続について
法務局:〜法定相続情報証明制度の手続の3STEP!〜
法定相続情報一覧図のよくある質問まとめ
Q. 法定相続情報一覧図の取得は義務ですか?
A. 義務ではありません。しかし、相続手続きが大幅に簡略化され、特に2024年4月から義務化された不動産の相続登記など、複数の手続きを並行して進めたい場合に非常に便利なので、取得をおすすめします。
Q. 取得費用はいくらかかりますか?
A. 法定相続情報一覧図の写しの交付手数料は無料です。何通でも無料で発行してもらえます。ただし、申出の際に必要となる戸籍謄本や住民票などの取得には、各市区町村所定の手数料(1通あたり数百円程度)がかかります。
Q. 自分で作成するのは難しいですか?
A. 相続関係がシンプルであれば、法務局のホームページにある記載例を参考に、ご自身で作成することも十分可能です。しかし、代襲相続や数次相続が発生しているなど、相続関係が複雑な場合は、司法書士などの専門家に依頼することも検討すると良いでしょう。
Q. 交付までにどれくらい時間がかかりますか?
A. 法務局に申出をしてから交付されるまでの期間は、管轄の法務局の混雑状況にもよりますが、おおむね1週間から2週間程度が目安です。ただし、年度末などの繁忙期はさらに時間がかかる場合もありますので、早めに手続きを始めることをおすすめします。
Q. 法定相続情報一覧図に有効期限はありますか?
A. 法定相続情報一覧図自体に法律上の有効期限はありません。しかし、提出先の金融機関などによっては、「発行後3か月以内のもの」といった独自のルールを設けている場合があります。手続きの前に提出先に確認すると安心です。
Q. 相続人の中に海外在住者がいても利用できますか?
A. 利用できます。ただし、海外在住の相続人の方は日本の戸籍謄本や住民票が取得できないため、代わりに在留証明書や署名証明書などが必要になります。必要書類が通常と異なるため、事前に法務局や専門家にご確認ください。