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公正証書遺言と付言メッセージで「争続」回避!家族への思いの伝え方

2026-01-15
目次

大切なご家族のために遺言書を準備しようとお考えの方も多いのではないでしょうか。特に、法的に確実でトラブルになりにくい公正証書遺言は、相続をスムーズに進めるための強力な手段です。しかし、財産の分け方を法的に定めただけでは、ご家族の間に感情的なしこりを残してしまうことも。「なぜ、こんな分け方なんだろう…」そんな疑問が、やがて深刻な「争続」に発展しかねません。そこで重要になるのが、遺言書に添える「付言」です。法的効力はありませんが、ご自身の素直な気持ちや感謝を伝えるメッセージは、財産以上に価値のあるものとして、円満な相続を実現する大きな力になってくれます。この記事では、争続を避けるための公正証書遺言の知識と、心温まる付言の書き方について、文例を交えながら優しく解説していきます。

「争続」を避けるための最強の武器「公正証書遺言」

遺言書にはいくつか種類がありますが、その中でも特に信頼性が高く、争続の予防に効果的なのが公正証書遺言です。まずは、その特徴と、なぜそれでもトラブルが起こりうるのかを知っておきましょう。

公正証書遺言とは?その強力な法的効力

公正証書遺言とは、法律の専門家である公証人が、遺言者ご本人の意思を確認しながら作成する公的な遺言書です。作成には公証人が関与するため、法律で定められた形式を守らないことによる無効のリスクがほとんどありません。また、原本が公証役場で厳重に保管されるため、紛失や改ざん、隠匿の心配がないのも大きなメリットです。亡くなった後に家庭裁判所で遺言書を開封する「検認」という手続きも不要なので、相続手続きを迅速かつスムーズに進めることができます。

公正証書遺言のメリット・デメリット
メリット ・形式不備で無効になる心配がほぼない
・原本が公証役場で保管され、紛失や改ざんのリスクがない
・家庭裁判所の検認が不要で、手続きがスムーズ
・遺言者の意思能力が確認されるため、後々の争いになりにくい
デメリット ・作成に費用(公証人手数料)がかかる
・証人2名の立ち会いが必要
・必要書類の準備に手間がかかることがある

なぜ公正証書遺言でも「争続」は起こるのか?

これほど強力な公正証書遺言があっても、残念ながら相続トラブルがゼロになるわけではありません。その主な原因は、遺言の内容、特に財産の分け方にあります。例えば、「長男に全財産を相続させる」といった内容の遺言があった場合、他のご兄弟は納得できないかもしれません。法律では、兄弟姉妹以外の法定相続人に「遺留分」という最低限の取り分が保障されています。この遺留分を侵害する内容の遺言は、法的には有効ですが、他の相続人から「遺留分侵害額請求」という金銭の支払いを求める請求をされ、深刻なトラブルに発展する可能性があります。公正証書遺言は「どう分けるか」を法的に確定させる力はありますが、相続人一人ひとりの「なぜ、その分け方なのか」という感情的な疑問に答えるものではないのです。

遺言書に添える「最後のラブレター」付言とは?

法的な効力だけでは埋められない、ご家族の感情の溝。それを優しく埋めてくれるのが「付言(ふげん)」です。遺言書の最後に添える、あなたからのラストメッセージとお考えください。

付言に法的効力はない?それでも重要な理由

付言とは、遺言の法的な内容(誰にどの財産を渡すかなど)とは別に、ご家族への感謝の気持ちや、なぜそのような遺産分割にしたのかの理由、今後の暮らしへの願いなどを自由に書き記す部分です。この部分には、遺言本文のような法的効力は一切ありません。例えば「兄弟仲良く暮らしてほしい」と書いても、法的にそれを強制することはできません。しかし、付言には法的効力以上に大切な役割があります。それは、遺言に込められたあなたの「想い」を伝えることです。遺されたご家族が遺言書を読んだとき、そこにあるのが財産の配分だけだと、どうしても無機質で冷たい印象を与えがちです。そこに、あなた自身の言葉で綴られた温かいメッセージがあれば、ご家族はあなたの真意を理解し、遺言の内容を穏やかに受け入れやすくなるのです。

付言に書くべきこと【文例付き】

付言に何を書くべきか、決まったルールはありません。あなたの素直な気持ちを伝えることが一番です。ここでは、一般的に書かれることが多い内容と文例をご紹介します。

付言の文例
書くべき内容 文例
家族への感謝の言葉 「妻の花子へ。長い間、私を支えてくれて本当にありがとう。あなたと一緒になれて、私の人生はとても幸せでした。」
「太郎、次郎へ。お前たちが私の子供でいてくれたことが、何よりの誇りです。たくさんの思い出をありがとう。」
遺産分割の理由 「長男の太郎には、家業を継いでもらうため、会社の株式と事業用の土地・建物を相続させることにしました。他の二人には不公平に感じるかもしれませんが、どうか私の想いを理解してください。」
「長女の明子には、私が病気で苦しんだ時に、仕事を休んでまで介護をしてくれました。その感謝の気持ちとして、預貯金を多めに残します。」
家族への願い 「私が亡き後も、家族みんなで助け合い、仲良く暮らしてくれることを心から願っています。お母さんのことを頼んだよ。」
葬儀などに関する希望 「私の葬儀は、家族だけでささやかに行ってください。あまりお金をかけず、皆で思い出話をしてくれれば、それで十分です。」

【ケース別】争続を避ける付言メッセージの書き方

特定の状況において、付言は特に大きな力を発揮します。ここでは、トラブルになりがちな3つのケースについて、心に響くメッセージの書き方を見ていきましょう。

特定の相続人に多くの財産を渡す場合

事業の承継や、介護の貢献などを理由に、特定の相続人へ財産を多く渡すことは珍しくありません。このような場合、他の相続人が不公平感を抱かないよう、理由を丁寧に説明することが不可欠です。「なぜその人なのか」を具体的に記し、他の相続人への配慮の言葉を添えることで、納得感が大きく変わります。

【文例】
「私がこれまで続けてきたこの店を、長男の一郎が継いでくれると言ってくれました。本当に嬉しく、頼もしく思っています。そのため、店舗兼自宅の不動産と事業資金として預貯金の一部を一郎に相続させます。次郎と三郎には、一郎に比べて渡せる財産が少なくなってしまい、申し訳なく思っています。どうか、これからも家業を守っていく一郎を支え、兄弟三人で力を合わせていってほしい。これが、父さんの最後の願いです。」

相続人以外(息子の嫁など)に財産を遺贈する場合

法的な相続人ではないものの、長年介護をしてくれた息子の嫁や、内縁の妻など、特にお世話になった方に財産を遺したい(遺贈したい)というケースもあります。この場合、相続人にとっては予想外のことであり、反発を招きやすいものです。感謝の気持ちを具体的なエピソードと共に伝え、相続人にも理解を求める姿勢が大切です。

【文例】
「長男の嫁である春子さんには、私が病気になってから本当に親身に世話をしてもらいました。毎日の食事の準備から病院の付き添いまで、あなたがいなければ、穏やかな晩年を過ごすことはできなかったでしょう。心からの感謝のしるしとして、私の預貯金の中から300万円を遺贈します。相続人のみんなも、春子さんがどれだけ尽くしてくれたか知っていると思います。どうか、私のこの気持ちを理解してください。」

遺留分を侵害してしまう可能性がある場合

配偶者に終の棲家となる自宅を確実に残したい、などの理由で、結果的に他の相続人の遺留分を侵害してしまうことがあります。遺留分は法律で認められた強い権利であり、付言で請求を法的に阻止することはできません。しかし、なぜそのような財産配分にしたのかという理由を誠心誠意伝え、「どうか遺留分を請求しないでほしい」と真摯にお願いすることで、相手の心情に訴えかけ、争いを避けられる可能性があります。

【文例】
「妻の和子には、私の全ての財産を相続させます。私が亡き後、住み慣れたこの家で安心して暮らし続けてほしいからです。子供たちに残せる財産が法律で定められた遺留分よりも少なくなってしまうことは、重々承知しています。しかし、お母さんがこれからの人生を穏やかに過ごせるようにという、私の最後のわがままを聞き入れてはくれないでしょうか。どうか、遺留分の請求はせず、お母さんを支えてあげてください。お願いします。」

付言を書く際の注意点!逆効果にならないために

想いを伝える付言も、書き方を間違えると、かえってトラブルの火種になりかねません。次の3つの点に注意して、あなたの真意が正しく伝わるようにしましょう。

誰かを非難する内容は避ける

「長男は親不孝だったから財産は渡さない」といった、特定の相続人への不満や非難を書き記すのは絶対にやめましょう。このようなネガティブな内容は、遺された家族の心を深く傷つけ、修復不可能な対立を生むだけです。たとえ本心であったとしても、それを書くことは誰の幸せにもつながりません。「次男がよく世話をしてくれたことに感謝して」というように、感謝を伝えたい相手へのポジティブなメッセージに変換することを心がけてください。

遺言の本文と矛盾させない

遺言の本文(法的に有効な部分)と、付言の内容に矛盾が生じないように注意が必要です。例えば、本文で「全財産を妻に相続させる」と定めているのに、付言で「長男の学費にも充ててほしい」などと書くと、遺言者の本当の意思がどちらにあるのか不明確になり、解釈をめぐって争いになる可能性があります。内容は必ず一致させましょう。

具体的に、そして正直に書く

「感謝しています」という言葉だけよりも、「あなたが毎週見舞いに来てくれたことが、何よりの励みでした」といった具体的なエピソードを交える方が、気持ちはより深く伝わります。飾らない、あなた自身の素直な言葉で綴ることが大切です。上手な文章である必要はありません。一生懸命に書かれたメッセージは、きっとご家族の心に響くはずです。

公正証書遺言と付言作成の流れ

実際に公正証書遺言を作成する際の、大まかな流れは以下の通りです。付言に書きたい内容も、この準備段階でじっくりと考えておきましょう。

1. 遺言内容の検討
誰に、どの財産を、どれくらい渡すのかを決めます。同時に、付言で伝えたいメッセージ(感謝の気持ち、分割理由など)をメモに書き出しておきましょう。

2. 必要書類の準備
遺言者本人の印鑑登録証明書や戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、財産を証明する資料(不動産の登記事項証明書、預貯金通帳のコピーなど)を準備します。

3. 公証役場への相談・予約
お近くの公証役場に連絡し、公正証書遺言を作成したい旨を伝えて、相談日時を予約します。

4. 公証人との打ち合わせ
準備した書類と遺言内容のメモを持参し、公証人と打ち合わせをします。この時に、付言の内容についても相談できます。公証人が法律的に問題のない遺言の文案を作成してくれます。

5. 証人の手配
作成当日には、証人2名の立ち会いが必要です。推定相続人など利害関係者は証人になれないため、信頼できる知人や専門家(司法書士や行政書士など)に依頼するのが一般的です。公証役場で紹介してもらうことも可能です。

6. 遺言の作成
予約した日時に、証人2名とともに公証役場へ行きます。公証人が遺言の内容を読み上げ、遺言者と証人が内容を確認・署名・押印し、最後に公証人が署名・押印して完成です。

まとめ

公正証書遺言は、あなたの財産を確実に引き継がせるための法的な手続きです。しかし、相続は単なる手続きではありません。それは、あなたが築いてきた人生と家族への想いを次世代に繋ぐ、大切なセレモニーです。法的な効力を持つ遺言本文で「財産」を守り、法的効力のない付言のメッセージで「家族の絆」を守る。この二つが揃って初めて、本当の意味での円満な相続、「争続」を避けることができるのです。あなたの最後のラブレターである付言が、遺されたご家族にとって、何物にも代えがたい宝物となることを心から願っています。

参考文献

e-Gov法令検索 - 民法
国税庁 - No.4102 相続税がかかる場合
法務省_自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

公正証書遺言と付言に関するよくある質問

Q.付言に書いたお願いは、必ず守ってもらえますか?

A.法的効力はないため、必ず守られるとは限りません。しかし、遺言者の真摯な想いを伝えることで、相続人が尊重してくれる可能性は高まります。

Q.公正証書遺言の作成費用はいくらくらいですか?

A.遺産の価額によって手数料が定められており、数万円から数十万円程度が目安です。財産が100万円以下なら5,000円、5,000万円を超え1億円以下なら43,000円といった形で変動します。詳しくは最寄りの公証役場にご確認ください。

Q.付言は自分で考えなければいけませんか?

A.ご自身の言葉で書くのが最も気持ちが伝わりますが、専門家に相談しながら内容を考えることも可能です。伝えたい想いを整理し、トラブルにならない適切な表現を一緒に検討してもらえます。

Q.遺言書の内容と付言の内容が矛盾していたらどうなりますか?

A.法的には遺言書本文の内容が優先されますが、遺言者の真意について争いが生じる可能性があります。トラブルを避けるため、内容は必ず一致させましょう。

Q.公正証書遺言の証人は誰でもいいのですか?

A.未成年者、推定相続人、受遺者及びその配偶者・直系血族などは証人になることができません。利害関係のない信頼できる第三者や、守秘義務のある専門家に依頼するのが一般的です。

Q.遺言書は何歳から作成できますか?

A.民法の定めにより、満15歳以上であれば、誰でも有効な遺言を作成することができます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。