毎月の給与から天引きされている所得税。その金額がどうやって決まっているか、ご存知ですか?実は、その計算の基になっているのが、国税庁が発行する「源泉徴収税額表」という資料なんです。給与計算を担当する方はもちろん、働くすべての人に関わる大切な書類です。この記事では、源泉徴収税額表の基本的な役割から、具体的な見方、計算方法まで、分かりやすく丁寧にご紹介していきますね。
源泉徴収税額表の基本を知ろう
まずは、「源泉徴収税額表」がどのようなものなのか、その基本的な役割から見ていきましょう。一見すると数字ばかりで難しそうに感じますが、仕組みが分かればとても便利なツールなんですよ。
源泉徴収税額表の役割とは?
源泉徴収税額表は、会社(給与の支払者)が従業員の方へ給与を支払う際に、天引きする所得税の金額を調べるための表です。従業員一人ひとりの給与額や扶養している家族の人数によって所得税額は変わりますが、この表を使えば、誰でも簡単に正しい税額を算出できるようになっています。会社には、給与から所得税を預かって国に納める「源泉徴収義務」があり、この表はその義務を正確に果たすために不可欠なものなのです。
どこで手に入るの?
源泉徴収税額表は、毎年、国税庁のウェブサイトでPDF形式で公開されています。誰でも無料でダウンロードして確認することができますよ。税制改正などによって内容が変わることがあるため、給与計算を行う際は、必ずその年の最新版を使いましょう。令和8年分の税額表もすでに公開されています。
源泉徴収税額表の種類は3つ
源泉徴収税額表は、支払う給与の種類に応じて、主に3つの表を使い分けます。
| 表の種類 | 使われる場面 |
| 月額表 | 毎月支払われる給与(月給)など、定期的な給与の場合 |
| 日額表 | 日給や週払い、日雇いの方への給与の場合 |
| 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表 | ボーナス(賞与)を支払う場合 |
このように、給与の支払い形態によって参照する表が異なるので、注意が必要ですね。
とても重要!「甲・乙・丙」3つの区分の違い
源泉徴収税額表を見る上で、最も大切なのが「甲(こう)」「乙(おつ)」「丙(へい)」という3つの区分です。どの区分を適用するかで、天引きされる所得税の額が大きく変わってきます。それぞれの違いをしっかり理解しておきましょう。
甲欄:メインの勤務先で適用
「甲欄」は、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員の方に適用されます。ほとんどの正社員や、メインで働いているパート・アルバイトの方がこれに該当します。この申告書は、扶養家族がいるかどうかなどを会社に知らせるための大切な書類で、原則として一人一か所にしか提出できません。甲欄は、後で説明する乙欄に比べて、源泉徴収される税額が低く設定されています。
乙欄:副業や申告書未提出の場合に適用
「乙欄」は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない従業員の方に適用されます。具体的には、以下のようなケースが当てはまります。
- 2か所以上の会社で働いていて、別の会社(メインの勤務先)に申告書を提出している場合(副業など)
- 申告書の提出を忘れてしまった、または提出していない場合
乙欄は甲欄に比べて税額が高く設定されています。もし本来は甲欄のはずなのに申告書を出し忘れて乙欄になっていると、毎月の手取り額が少なくなってしまうので注意しましょう。
丙欄:日雇いの方に適用
「丙欄」は、日額表にのみある区分で、日雇いの方や、あらかじめ雇用契約期間が2か月以内と決められている短期アルバイトの方などに支払われる「日雇賃金」に対して適用されます。例えば、1日単位で仕事をしてその日ごとにお給料をもらうようなケースで使われます。
【実践編】源泉徴収税額表の見方と税額の計算方法
それでは、実際に令和6年分の源泉徴収税額表を使って、税額の求め方を見ていきましょう。ここでは、一般的な「月額表」と「賞与」のケースをご紹介します。
毎月の給与(月額表)の場合
月給の所得税額は、以下のステップで調べます。
- 社会保険料控除後の給与額を計算する
まず、その月の総支給額から、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料を差し引きます。この金額が税額計算の基準となります。 - 税額表の金額欄で該当箇所を探す
次に、月額表の左側にある「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」の欄で、先ほど計算した金額がどの範囲に当てはまるかを探します。 - 扶養親族等の数と交わる欄の税額を確認する
最後に、その行を右に見ていき、該当する「扶養親族等の数」の列と交差する部分の金額が、その月の源泉徴収税額となります。
<具体例>
社会保険料控除後の給与月額が255,000円で、扶養親族が1人の場合
| 区分 | 源泉徴収税額 |
| 甲欄 | 4,500円 |
| 乙欄 | 28,050円 |
このように、甲欄と乙欄では税額に大きな差が出ることが分かりますね。
賞与(ボーナス)の場合
賞与の所得税額は、少し計算方法が異なります。「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。
- 前月の社会保険料控除後の給与額を確認する
賞与計算の基準となるのは、「賞与が支払われた月の前月の給与額(社会保険料控除後)」です。 - 算出率の表で税率を探す
前月の給与額と扶養親族等の数を基に、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から、賞与に乗じる税率(パーセント)を探します。 - 賞与額に税率を掛けて税額を計算する
賞与の総支給額から社会保険料を引いた金額に、先ほど見つけた税率を掛けると、賞与から天引きされる所得税額が算出できます。
<具体例>
前月の社会保険料控除後の給与額が300,000円、扶養親族が2人、社会保険料控除後の賞与額が500,000円の場合、税率は6.126%です。
計算式: 500,000円 × 6.126% = 30,630円 が源泉徴収税額となります。
源泉徴収と年末調整の関係
毎月給与から天引きされている源泉徴収税額は、実は概算の金額です。生命保険料控除や住宅ローン控除などが考慮されていないため、1年間の所得が確定した段階で、正しい税額を計算し直す必要があります。この精算手続きが「年末調整」です。
甲欄の人は年末調整の対象
勤務先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している甲欄適用の人は、会社で年末調整が行われます。1年間の給与総額から計算した正しい所得税額と、毎月源泉徴収されてきた税額の合計を比較し、差額を調整します。多く払い過ぎていれば還付金として戻ってきたり、不足していれば追加で徴収されたりします。
乙欄の人は原則、確定申告が必要
一方で、副業先などで乙欄が適用されている場合、その給与は年末調整の対象にはなりません。そのため、複数の会社から給与をもらっている方は、ご自身で「確定申告」を行い、すべての所得を合算して税金を納める(または還付を受ける)必要があります。確定申告をしないと、正しい納税額にならず、後から追徴課税される可能性もあるので注意しましょう。
まとめ
今回は、源泉徴収税額表について、その役割から具体的な見方までを解説しました。給与計算の担当者にとっては必須の知識ですが、従業員の皆さんにとっても、自分の手取り額がどのように決まっているかを知る上でとても大切です。特に、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出するかどうかで適用される「甲欄」「乙欄」が変わり、毎月の税額に直接影響するという点は、ぜひ覚えておいてくださいね。もし分からないことがあれば、会社の経理や総務の担当者に確認してみましょう。
参考文献
源泉徴収税額表のよくある質問まとめ
Q.源泉徴収税額表はどこで手に入りますか?
A.国税庁のウェブサイトでPDF形式で公開されており、誰でも無料でダウンロードできます。毎年更新されるため、必ず最新のものを利用してください。
Q.甲欄と乙欄の大きな違いは何ですか?
A.勤務先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しているかどうかの違いです。提出していれば税額が優遇される「甲欄」、していなければ「乙欄」が適用され、乙欄の方が税額は高くなります。
Q.アルバイトやパートでも源泉徴収の対象になりますか?
A.はい、なります。給与の月額が社会保険料等控除後で88,000円以上になる場合、アルバイトやパートの方でも所得税が源泉徴収されます。
Q.副業をしている場合、税金の区分はどうなりますか?
A.一般的に、主たる給与を受け取る勤務先(「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した会社)が「甲欄」、副業の勤務先は「乙欄」として源泉徴収されます。
Q.丙欄が使われるのはどんな時ですか?
A.日雇いの方や、雇用契約期間が2か月以内と定められている短期のアルバイトの方へ支払われる給与(日雇賃金)の場合に適用されます。
Q.間違って多く源泉徴収された税金は戻ってきますか?
A.はい、戻ってきます。「甲欄」が適用されている方は勤務先の年末調整で精算されます。「乙欄」が適用されている方や年末調整で対応できない控除がある方は、ご自身で確定申告を行うことで還付を受けられます。