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海外在住者の不動産売却、税金はどうなる?非居住者の確定申告を解説

2025-05-21
目次

海外に住んでいるから日本の税金は関係ない、と思っていませんか?実は、海外にお住まいの方でも、日本国内にある不動産を売却したり、家賃収入を得たりすると、日本の税金がかかる場合があります。特に不動産の売却は金額が大きくなるため、税金のルールを知らないと後で大変なことになるかもしれません。この記事では、海外に住む「非居住者」の方に向けて、日本で所得を得た場合の税金の仕組みや確定申告について、分かりやすく解説していきますね。

「居住者」と「非居住者」の違いって何?

日本の税金のルールを理解する上で、まず知っておきたいのが「居住者」「非居住者」という言葉の違いです。この区分によって、どこまでの所得に税金がかかるのか、その範囲が大きく変わってくるんですよ。

日本の所得税法における「居住者」の定義

日本の所得税法では、「居住者」とは、次のどちらかに当てはまる人のことを指します。

  1. 日本国内に「住所」がある人
  2. 現在まで引き続いて1年以上、日本国内に「居所(きょしょ)」がある人

「住所」というのは、生活の中心となっている場所のことです。住民票があるかどうかだけでなく、仕事や家族の状況などから総合的に判断されます。一方、「居所」は、生活の中心ではないけれど、一時的に住んでいる場所を指します。

「非居住者」に当てはまるのはどんな人?

「非居住者」とは、先ほどの「居住者」の定義に当てはまらない人のことです。例えば、1年以上の予定で海外の支社へ転勤になった方や、生活の拠点を完全に海外に移した方などが該当します。海外旅行のように一時的に日本を離れているだけでは、非居住者にはなりません。

なぜこの区分が重要?課税される所得の範囲が変わる!

この「居住者」か「非居住者」かの区分がとても大切なのは、日本で課税される所得の範囲がまったく異なるからです。具体的には、以下の表のように違いがあります。

区分 課税される所得の範囲
居住者 日本国内だけでなく、海外で得た所得も含め、すべての所得(全世界所得)が課税対象です。
非居住者 日本国内で得た所得(国内源泉所得)のみが課税対象です。

このように、非居住者の方は、海外で得たお給料などには日本の税金はかかりませんが、日本国内で発生した所得については納税の義務がある、ということを覚えておきましょう。

非居住者が日本で課税される「国内源泉所得」とは?

海外に住む非居住者の方でも、日本で納税義務が発生するのが「国内源泉所得」です。これは、その名の通り「日本国内を源泉として生じた所得」のこと。具体的にどのようなものが含まれるのか、代表的な例を見ていきましょう。

不動産の売却による所得(譲渡所得)

最も代表的なものが、日本国内にある土地や建物を売却して得た利益です。これは「譲渡所得」と呼ばれ、国内源泉所得にあたるため、非居住者であっても日本の所得税の課税対象となります。例えば、親から相続した実家を売却した場合などがこれに該当します。

不動産の賃貸による所得(不動産所得)

日本国内に所有しているマンションやアパートを誰かに貸して得られる家賃収入も、もちろん国内源泉所得です。これは「不動産所得」と呼ばれます。売却だけでなく、賃貸によって継続的に収入がある場合も、申告が必要になるので注意してくださいね。

その他の国内源泉所得の例

不動産以外にも、以下のような所得が国内源泉所得に該当します。

  • 日本国内の会社から支払われる給与や報酬
  • 日本国内の法人から受け取る配当金
  • 日本国内の資産を運用して得た利益
  • 日本の国債や社債の利子
  • 工業所有権や著作権などの使用料

もし心当たりがある場合は、ご自身の所得が国内源泉所得に該当するかどうか、一度確認してみることをお勧めします。

不動産を売却した場合の税金計算と確定申告

では、実際に非居住者の方が日本国内の不動産を売却した場合、税金はどのように計算され、どんな手続きが必要になるのでしょうか。具体的な流れを見ていきましょう。

譲渡所得の計算方法

不動産を売却したときの税金は、売却価格そのものではなく、売却によって得られた「利益」に対してかかります。この利益のことを「譲渡所得」と呼び、以下の式で計算します。

譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)

  • 取得費:その不動産を購入したときの代金や手数料、リフォーム費用などです。先祖代々の土地などで取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とすることができます。
  • 譲渡費用:不動産を売るために直接かかった費用のことで、不動産会社に支払った仲介手数料や印紙税などが含まれます。

税率は不動産の所有期間で決まる

計算した譲渡所得にかかる税率は、売却した不動産をどれくらいの期間所有していたかによって大きく変わります。これはとても重要なポイントです。

所有期間 所得税率(復興特別所得税を含む)
5年以下(短期譲渡所得) 30.63% (所得税30% + 復興特別所得税0.63%)
5年超(長期譲渡所得) 15.315% (所得税15% + 復興特別所得税0.315%)

所有期間は、売却した年の1月1日時点で判断されます。見ての通り、税率が倍近くも違うので、売却のタイミングを検討する上で非常に大切な要素になります。

確定申告の手続きはどうする?

日本国内の不動産を売却して利益が出た場合、非居住者であっても確定申告が必要です。原則として、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に、日本の税務署へ確定申告書を提出し、税金を納めなければなりません。海外からの手続きは大変なので、次に紹介する「納税管理人」を選任しておくとスムーズですよ。

確定申告と納税をスムーズに進める「納税管理人」

「海外に住んでいると、日本の税務署とのやり取りや納税手続きは難しそう…」と感じる方も多いのではないでしょうか。そんな時にとても頼りになるのが「納税管理人」という制度です。

納税管理人ってどんな役割?

納税管理人とは、海外に住む本人に代わって、日本での税金に関する手続きを行ってくれる代理人のことです。具体的には、以下のような役割を担ってくれます。

  • 確定申告書の作成・提出
  • 税金の納付手続き
  • 税務署からの書類の受け取り
  • 還付金の受け取り

納税管理人を定めておけば、わざわざ日本に帰国しなくても、すべての税務手続きを任せることができて安心です。

誰に頼める?どうやって指定する?

納税管理人は、税理士のような特別な資格は必要なく、日本国内に住所がある個人または法人であれば誰でもなることができます。ご家族やご友人にお願いすることも可能です。ただし、申告内容が複雑な場合や専門的なアドバイスが欲しい場合は、税理士に依頼するのが一般的です。

納税管理人を決めたら、「所得税・消費税の納税管理人の選任届出書」という書類を作成し、ご自身の納税地を管轄する税務署に提出します。この手続きは、出国する前、または納税管理人を定める必要が生じた時に行います。

非居住者の税金に関する注意点

最後に、非居住者の方が日本の税金について知っておくべき注意点をいくつかご紹介します。思わぬ課税をされたり、使えるはずの控除が使えなかったりすることがあるので、しっかり確認しておきましょう。

住民税はかかるの?

所得税とは別に気になるのが住民税ですよね。住民税は、その年の1月1日時点で日本国内に住所がある人に対して課税される税金です。そのため、例えば2024年12月31日までに出国し、住民票を抜く手続き(海外転出届の提出)を済ませていれば、2025年度の住民税は課税されません。出国するタイミングが重要になります。

利用できる所得控除が限られる

居住者の場合、確定申告で医療費控除や生命保険料控除、配偶者控除など、さまざまな所得控除を利用して税金の負担を軽くすることができます。しかし、非居住者の確定申告では、これらの控除のほとんどが利用できません。利用できるのは、基礎控除や雑損控除、寄附金控除などごく一部に限られてしまいます。

二重課税と外国税額控除

例えば、日本での不動産所得について、日本の所得税が課税され、さらに今お住まいの国でも課税対象となる場合があります。このように、同じ所得に対して二つの国で税金がかかってしまうことを「二重課税」といいます。

この二重課税を調整するために、「外国税額控除」という制度があります。これは、外国で納めた税額を、自国で納める税額から差し引くことができる仕組みです。ただし、適用できるかどうかは、日本と相手国との間で結ばれている「租税条約」の内容によって異なりますので、専門家への相談をおすすめします。

まとめ

今回は、海外にお住まいの「非居住者」の方が、日本国内で不動産売却などの所得を得た場合の課税関係について解説しました。最後にポイントをまとめておきましょう。

  • 海外に住んでいても、日本国内で得た所得(国内源泉所得)には日本の所得税がかかります。
  • 不動産を売却して得た利益(譲渡所得)は、所有期間によって税率が大きく変わります(5年超で約15%、5年以下で約30%)。
  • 不動産売却益が出た場合は、確定申告が必要です。
  • 海外からの手続きが難しい場合は、日本にいる納税管理人を選任するとスムーズです。
  • 非居住者は、住民税がかからない(1月1日時点に非居住の場合)一方で、利用できる所得控除が限られるなどの注意点があります。

国際的な税務は複雑な部分も多いですが、基本的なルールを知っておくことで、安心して手続きを進めることができます。もしご自身のケースで不安な点があれば、税務署や税理士などの専門家に相談してみてくださいね。

参考文献

非居住者の不動産売却に関するよくある質問

Q.海外に住んでいれば、日本での所得に税金はかからない?

A.いいえ、かかります。日本国内で得た所得(国内源泉所得)については、海外に住んでいる「非居住者」であっても日本の所得税が課税されます。

Q.「非居住者」とは具体的にどんな人ですか?

A.日本に住所がなく、かつ1年以上日本に居住していない人のことです。例えば、1年以上の予定で海外転勤になった方などが該当します。

Q.日本の不動産を売却した場合、税率はどのくらいですか?

A.不動産の所有期間によって異なります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら約30.63%、5年を超えていれば約15.315%の所得税率(復興特別所得税を含む)がかかります。

Q.確定申告は必ず必要ですか?

A.はい、日本国内の不動産売却などで利益が出た場合は、原則として翌年の3月15日までに日本の税務署へ確定申告を行う必要があります。

Q.納税管理人とは何ですか?

A.海外に住む本人に代わって、確定申告書の提出や税金の納付、税務署からの書類受け取りなど、日本での税務手続きを行ってくれる人のことです。

Q.非居住者になると住民税も払う必要がありますか?

A.いいえ、住民税はその年の1月1日時点で日本に住所がある人に課税されるため、1月1日より前に海外転出届を提出して出国していれば、その年の住民税はかかりません。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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