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中国の相続財産どうする?手続きの流れと必要書類を徹底解説

2025-05-28
目次

ご家族が中国に財産を残して亡くなられた、あるいはご自身が中国にある財産を相続することになった、という方もいらっしゃるかもしれません。国際相続は日本国内の相続と比べて手続きが複雑で、どの国の法律に従うのか、どんな書類が必要なのか、不安に感じることも多いですよね。この記事では、中国に相続財産がある場合の相続手続きについて、基本的なルールから具体的な流れ、必要書類まで、できるだけ分かりやすく解説していきます。一つひとつ確認していきましょう。

中国の相続、どの国の法律が適用される?準拠法の基本

国際相続でまず最初に確認しなければならないのが、「どの国の法律に従って手続きを進めるか」という問題です。これを「準拠法(じゅんきょほう)」といいます。被相続人(亡くなった方)の国籍や財産の場所によって、適用される法律が変わってくるため、非常に重要なポイントになります。

日本の法律「法の適用に関する通則法」

日本には「法の適用に関する通則法」という法律があり、国際的な法律問題についてどの国の法律を適用するかを定めています。この法律の第36条には「相続は、被相続人の本国法による。」と規定されています。つまり、亡くなった方が中国籍であれば、原則として中国の相続法が適用される、ということになります。

中国の法律ではどう決まる?

では、中国の法律ではどうなっているのでしょうか。中国の法律では、相続に関して「動産については被相続人の住所地の法律を、不動産については、不動産所在地の法律を適用する」と定められています。動産とは現金や預貯金、株式などのことで、不動産は土地や建物のことです。日本のルールと中国のルールを組み合わせることで、どの財産にどの法律が適用されるかが決まります。

具体的なケースで見てみよう

例えば「日本に住んでいた中国人」の方が亡くなった場合、財産の種類によって適用される法律は以下のようになります。このケースでは、中国にある不動産以外は日本の法律が適用されることが分かりますね。

財産の種類 適用される法律
日本にある不動産 日本の法律
日本にある動産(預貯金など) 日本の法律
中国にある不動産 中国の法律
中国にある動産(預貯金など) 日本の法律(被相続人の住所地が日本のため)

日本と中国の相続制度の違いを知っておこう

適用される法律が違うと、相続人の範囲やそれぞれの相続分(取り分)も変わってきます。手続きをスムーズに進めるためにも、日本と中国の相続制度の主な違いを理解しておきましょう。

相続人の順位と相続分

誰が財産を相続する権利を持つか(法定相続人)の順位が、日本と中国では大きく異なります。特に、中国では被相続人の父母も子と同じ第1順位の相続人になる点が大きな特徴です。

順位 日本の相続法
常に相続人 配偶者
第1順位
第2順位 父母(直系尊属)
第3順位 兄弟姉妹
順位 中国の相続法
第1順位 配偶者・子・父母
第2順位 兄弟姉妹・祖父母

また、相続分についても、日本では配偶者と子で2分の1ずつなど細かく定められていますが、中国では原則として同じ順位の相続人は均等に分けることになっています。

遺留分制度の有無

日本では、遺言によっても侵害されない、相続人が最低限相続できる財産の割合として「遺留分」という制度があります。しかし、中国の相続法には遺留分の考え方はありません。ただし、労働能力がなく生活が困難な相続人に対しては、遺産を分配する際に配慮することが求められるなど、相続人を保護するための別の仕組みが設けられています。

債務の相続(限定承認と単純承認)

借金などのマイナスの財産を相続する場合の考え方も異なります。日本では、特に手続きをしなければ、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐ「単純承認」が原則です。一方、中国では、相続したプラスの財産の価値を限度として債務を弁済すればよい「限定承認」が原則となっており、相続財産を超える借金を背負うことはありません。

中国の相続財産、手続きの具体的な流れ

それでは、実際に中国に財産がある場合の相続手続きは、どのような流れで進んでいくのでしょうか。大まかな流れは日本の相続手続きと似ていますが、国際相続特有のポイントがあります。

相続人の確定

まず、誰が相続人になるのかを法的に確定させる必要があります。日本の場合は戸籍謄本を出生から死亡まで遡って集めることで相続関係を証明しますが、中国には日本のような戸籍制度がありません。そのため、後述する「公証書(こうしょうしょ)」という特別な書類を取得して、被相続人と相続人の身分関係を証明する必要があります。これが中国の相続手続きにおける最初の大きなハードルとなります。

遺産分割協議

相続人が確定したら、相続人全員で遺産をどのように分けるかを話し合います。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。相続人全員の合意が得られたら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、全員が署名・押印します。中国に住んでいる相続人がいる場合は、印鑑証明書の代わりに現地の公証処で署名の認証を受けるなどの手続きが必要になることがあります。

各種名義変更手続き

遺産分割協議がまとまったら、その内容に従って預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きを行います。日本の金融機関や法務局での手続きは日本のルールに従いますが、中国国内の銀行預金の解約や不動産の名義変更は、中国現地の法律や実務慣行に従う必要があります。現地の銀行や不動産登記機関とのやり取りは非常に煩雑で専門知識を要するため、専門家のサポートが不可欠となることが多いです。

手続きに必要な書類と取得方法

中国の相続手続きで最も重要かつ時間と手間がかかるのが、必要書類の収集です。特に、日本の戸籍謄本の代わりとなる「公証書」の準備が鍵となります。

公証書とは?

公証書とは、中国の「公証処(日本の公証役場に相当する機関)」が発行する公的な証明書です。中国には身分関係を網羅的に記録する戸籍制度がないため、相続手続きにおいては、被相続人の死亡の事実、相続人が誰であるか、他に相続人はいないことなどを証明するために、この公証書が必要不可欠となります。具体的には、出生公証書、婚姻公証書、死亡公証書、親族関係公証書など、証明したい事柄に応じた公証書を取得します。

主な必要書類一覧

一般的に必要とされる書類は以下の通りですが、金融機関や手続きの内容によって求められる書類は異なりますので、必ず事前に確認するようにしてください。

書類名 内容・取得場所
死亡を証明する書類 日本で亡くなった場合:死亡届記載事項証明書、死亡診断書など
相続関係を証明する公証書 中国の公証処で取得。被相続人と全相続人の関係を証明するもの。
各相続人の身分を証明する公証書 出生公証書、婚姻公証書など。相続人が中国籍の場合に必要。
遺産分割協議書 相続人全員の署名・実印の押印が必要。
各相続人の印鑑証明書 日本在住者は市区町村役場。中国在住者は署名が本人であることの公証書などが必要。
被相続人のパスポート 口座開設時から死亡時までのすべてのパスポートの提出を求められることもあります。

書類取得の注意点

公証書は、原則として中国本土にある、本籍地などを管轄する公証処でしか申請・取得ができません。申請には多くの証明資料が必要となり、取得までに数ヶ月単位の時間がかかることも珍しくありません。また、取得した公証書は中国語で記載されているため、日本の金融機関や役所に提出する際には、日本語の翻訳文を添付する必要があります。手続きを始める際は、まずこの書類収集から早めに着手することが重要です。

相続税はどうなる?日本と中国の課税関係

財産を相続した後は、税金の問題も考えなくてはなりません。国際相続の場合、どちらの国に税金を納めるのかが問題となります。

日本での相続税申告

相続人か被相続人のどちらかが日本に住んでいる場合、原則として日本で相続税の申告が必要になります。この場合、日本国内の財産だけでなく、中国にある不動産や預貯金なども含めたすべての財産が日本の相続税の課税対象となります。相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、日本の税務署に申告・納税しなければなりません。

中国には相続税がない?

2024年現在、中国には相続税および贈与税という税制度が存在しません。そのため、中国の財産を相続したことによって、中国の税務当局に相続税を支払う必要はありません。ただし、不動産の名義変更時などには、相続税とは別の税金(日本の登録免許税や不動産取得税に似たもの)がかかる場合があります。

外国税額控除について

もし将来、中国で相続税が導入されるなど、外国で日本の相続税と類似の税金を納めた場合には、国際的な二重課税を避けるための制度があります。それが「外国税額控除」です。外国で支払った税額を、日本で納めるべき相続税額から一定の範囲で差し引くことができる制度です。これにより、同じ財産に対して二重に税金がかかる負担を軽減できます。

まとめ

中国に相続財産がある場合の手続きは、どの国の法律が適用されるかという「準拠法」の確認から始まり、日本と中国の制度の違いを理解した上で進める必要があります。特に、日本の戸籍謄本に代わる「公証書」の取得が手続きの大きな鍵となり、時間と労力がかかります。また、中国国内の財産の名義変更は現地のルールに従う必要があり、手続きは非常に複雑です。ご自身での対応が難しいと感じた場合や、少しでも不安がある場合は、国際相続に詳しい税理士や弁護士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。専門家の力を借りることで、時間的・精神的な負担を大きく減らし、円滑に手続きを進めることができるでしょう。

参考文献

パンフレット・手引|国税庁

No.4138 相続人が外国に居住しているとき|国税庁

No.4432 受贈者が外国に居住しているとき|国税庁

中国の相続手続きに関するよくある質問

Q.中国人の相続では、どの国の法律が適用されますか?

A.財産の種類によって異なります。原則として、預貯金などの「動産」は亡くなった方の住所がある国の法律が、土地や建物などの「不動産」はその不動産がある国の法律が適用されます。

Q.中国には戸籍がないと聞きましたが、相続人はどうやって証明しますか?

A.中国の「公証処」という役所が発行する「公証書」を使って、親子関係や婚姻関係などを証明します。これが日本の戸籍謄本の代わりとなり、相続関係を証明するために不可欠な書類です。

Q.中国の相続財産にも日本の相続税はかかりますか?

A.はい、相続人や亡くなった方が日本に居住しているなど、一定の要件を満たす場合には、中国にある財産も日本の相続税の課税対象となります。

Q.中国に相続税はありますか?

A.いいえ、2024年現在、中国には相続税や贈与税の制度はありません。したがって、中国の税務当局に相続税を支払う必要はありません。

Q.中国と日本の相続人で、相続分はどのように決まりますか?

A.適用される法律によりますが、中国の法律が適用される場合、相続人の順位が日本とは異なり、配偶者・子・父母が同順位(第1順位)となります。同じ順位の相続人の相続分は原則として均等です。

Q.中国にある銀行預金の解約手続きは難しいですか?

A.はい、非常に複雑で時間がかかることが多いです。公証書をはじめとする多くの書類が必要で、銀行ごとに求められる手続きも異なるため、一般の方がご自身で行うのは困難な場合があります。専門家への依頼をおすすめします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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