会社を経営していると、たとえ赤字であっても支払わなければならない税金があります。その代表的なものが「法人住民税の均等割」です。なぜ利益が出ていないのに税金を払う必要があるのでしょうか?その金額は一体どのように決まるのでしょうか。この記事では、法人住民税の均等割の仕組みや決まり方について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
そもそも法人住民税とは?
法人住民税は、法人が事業所を置いている都道府県や市町村に納める地方税です。私たちが個人として住民税を納めるのと同じように、法人も地域社会の一員として、その地域の行政サービスを維持するための費用を負担する、という考え方に基づいています。この法人住民税は、大きく分けて2つの要素から成り立っています。
法人住民税の2つの柱「法人税割」と「均等割」
法人住民税は、「法人税割」と「均等割」という2つの異なる計算方法で算出された税額を合計して納付します。
| 法人税割 | 国に納める法人税額を基準に計算されます。つまり、会社の利益(所得)が多ければ多いほど、納める税額も増えます。逆に、赤字で法人税がゼロの場合は、この法人税割もゼロになります。 |
| 均等割 | 会社の利益(所得)に関係なく、資本金の額や従業員数といった会社の規模に応じて課税される部分です。そのため、たとえ会社が赤字であっても支払い義務が発生します。 |
なぜ赤字でも税金を払うの?均等割の目的
「赤字なのに税金を払うのは納得いかない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。均等割は、法人がその地域で事業を行うにあたり、道路の整備、ゴミの収集、消防・救急サービスといった様々な行政サービスから恩恵を受けている、という考えに基づいています。そのため、利益が出ているかどうかに関わらず、その地域に存在すること自体で発生するコストを、会社の規模に応じて公平に負担してもらう「会費」のような性格を持っているのです。
「都道府県民税」と「市町村民税」の合計額
法人住民税は、さらに2つの納税先に分かれています。それは、事業所がある都道府県に納める「都道府県民税」と、市町村に納める「市町村民税」です。均等割も、この両方でそれぞれ計算され、その合計額を納めることになります。例えば、東京都23区内に事業所がある場合は、これらが一本化された「法人都民税」として東京都に納付します。
法人住民税の均等割はどうやって決まる?
それでは、本題である均等割の具体的な金額の決まり方を見ていきましょう。均等割の税額は、主に「資本金等の額」と「従業員数」という2つの基準によって、段階的に定められています。
基準① 資本金等の額
均等割の税額を決定する最も大きな要素が「資本金等の額」です。これは、会社の規模を示す指標として用いられます。資本金等の額が大きくなるほど、均等割の額も高くなる仕組みです。注意点として、平成27年度の税制改正以降、ここでいう「資本金等の額」は、単に登記上の資本金の額だけではありません。「法人税法上の資本金等の額」と、「資本金+資本準備金の合算額」を比較して、いずれか大きい方の金額が基準となります。
基準② 従業員数
もう一つの基準が「従業員数」です。具体的には、市町村民税において、その事業所に勤務する従業員数が50人を超えるか、50人以下かで税額の区分が設けられています。従業員数は、原則として事業年度の末日時点の人数で判断されます。この従業員数には、役員やパート、アルバイトなども含まれる点に注意が必要です。
【税額一覧】均等割の標準税率
「資本金等の額」と「従業員数」の2つの基準を組み合わせた、均等割の標準的な税額は以下の通りです。これはあくまで国が定める「標準税率」であり、自治体によっては財政状況に応じてこれより高い「超過税率」を設定している場合もあります。
法人住民税 均等割の標準税率(年額)
| 資本金等の額 | 従業員数 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 【都道府県民税】20,000円 【市町村民税】50,000円(50人以下)/ 120,000円(50人超) 【合計】70,000円 / 140,000円 |
| 1,000万円超 1億円以下 | 【都道府県民税】50,000円 【市町村民税】130,000円(50人以下)/ 150,000円(50人超) 【合計】180,000円 / 200,000円 |
| 1億円超 10億円以下 | 【都道府県民税】130,000円 【市町村民税】160,000円(50人以下)/ 400,000円(50人超) 【合計】290,000円 / 530,000円 |
| 10億円超 50億円以下 | 【都道府県民税】540,000円 【市町村民税】410,000円(50人以下)/ 1,750,000円(50人超) 【合計】950,000円 / 2,290,000円 |
| 50億円超 | 【都道府県民税】800,000円 【市町村民税】410,000円(50人以下)/ 3,000,000円(50人超) 【合計】1,210,000円 / 3,800,000円 |
この表から分かるように、資本金1,000万円以下、従業員50人以下の法人の場合、均等割は最低でも年間7万円かかることになります。
【具体例】均等割の計算シミュレーション
実際に2つのケースで、均等割がいくらになるか計算してみましょう。(標準税率を適用)
ケース1:資本金500万円、従業員10人の会社
| 資本金等の額の区分 | 1,000万円以下 |
| 従業員数の区分 | 50人以下 |
| 都道府県民税 | 20,000円 |
| 市町村民税 | 50,000円 |
| 年間の均等割額(合計) | 70,000円 |
ケース2:資本金3,000万円、従業員60人の会社
| 資本金等の額の区分 | 1,000万円超 1億円以下 |
| 従業員数の区分 | 50人超 |
| 都道府県民税 | 50,000円 |
| 市町村民税 | 150,000円 |
| 年間の均等割額(合計) | 200,000円 |
均等割の申告と納付はどうするの?
均等割は、法人税割とあわせて法人住民税として申告・納付します。手続きの概要は以下の通りです。
申告・納付の時期
原則として、各事業年度が終了した日の翌日から2ヶ月以内に、確定申告書を提出し、税金を納付する必要があります。例えば、3月決算の会社であれば、5月末日が申告・納付の期限となります。
申告・納付先
申告書と税金は、それぞれの管轄の窓口に提出・納付します。
- 都道府県民税:管轄の都道府県税事務所
- 市町村民税:管轄の市区町村役場の税務課など
※東京都23区の場合は、都税事務所に一括して申告・納付します。
納付方法
納付方法は、各自治体の窓口で現金で納付するほか、金融機関での納付、地方税の共通納税システムである「eLTAX(エルタックス)」を利用したインターネットバンキングやクレジットカードでの電子納税も可能です。
均等割が免除・減免されるケースはある?
均等割は赤字でも課税されるのが原則ですが、特定の条件下では負担が軽くなる「減免制度」を設けている自治体もあります。
対象となるのは、主に以下のような法人です。
- 収益事業を行わない公益法人やNPO法人
- 事業年度の途中で解散・清算した法人
- 長期間にわたり事業を休止している「休業中」の法人
ただし、これらの減免制度は自動的に適用されるわけではなく、法人側からの申請が必要です。また、減免の条件や申請手続きは自治体によって大きく異なります。「休業」と認められるための要件も厳しく定められていることが多いです。もし対象になる可能性がある場合は、必ず事前に事業所のある都道府県や市町村の担当窓口に確認するようにしましょう。
まとめ
今回は、法人住民税の均等割について解説しました。最後にポイントを振り返ってみましょう。
- 法人住民税の均等割は、会社の利益に関わらず課税される地方税です。
- 税額は主に「資本金等の額」と「従業員数」という会社の規模によって決まります。
- たとえ赤字であっても、最低で年間7万円(標準税率の場合)の支払い義務があります。
- 申告と納付は、原則として事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に行います。
均等割は、会社を維持していく上で必ず発生する固定コストの一つです。これから会社を設立する方や、会社の経営に携わる方は、この仕組みを正しく理解し、資金計画にしっかりと組み込んでおくことが大切ですね。
参考文献
法人住民税の均等割に関するよくある質問
Q. 法人住民税の均等割とは何ですか?
A. 法人が事業所を置く地方自治体に納める地方税の一部で、会社の利益に関わらず、資本金や従業員数といった規模に応じて課税される税金です。
Q. 会社が赤字でも均等割は支払う必要がありますか?
A. はい、必要です。均等割は利益に対して課税されるものではなく、地方自治体の行政サービスを受けるための会費のような位置づけのため、赤字でも支払い義務があります。
Q. 均等割の最低額はいくらですか?
A. 標準税率では、都道府県民税が2万円、市町村民税が5万円の合計7万円が最低額となります。ただし、自治体によっては税額が異なる場合があります。
Q. 均等割の金額は何を基準に決まりますか?
A. 主に「資本金等の額」と「従業員数」の2つの基準で決まります。会社の規模が大きいほど税額は高くなります。
Q. 従業員がいない一人社長の会社でも均等割はかかりますか?
A. はい、かかります。従業員数が0人でも、資本金1,000万円以下の法人であれば、最低額である年間7万円(標準税率)の均等割が課税されます。
Q. 均等割はいつまでに支払うのですか?
A. 原則として、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に、確定申告書を提出するとともに納付する必要があります。