お子さんやお孫さんの将来のために、「教育資金贈与の非課税措置」の利用を考えていた方も多いのではないでしょうか。しかし、この制度が2026年3月31日をもって終了することが決まりました。「これからどうやって教育資金を準備すればいいの?」と、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、ご安心ください。これからの時代には、もっと柔軟で効率的な資産形成の方法があります。その主役となるのが、2024年から新しくなったNISA(少額投資非課税制度)です。この記事では、教育資金贈与制度の終了をふまえ、これからの資産形成の柱となる新NISAの活用術を、わかりやすく解説していきます。
教育資金贈与の特例、まもなく終了へ
まずは、終了が決まった「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」について、改めて確認しておきましょう。この制度は、多くの方にとって大きなメリットがありましたが、一方でいくつかの注意点もありました。
どんな制度だった?「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」
この制度は、祖父母や親から30歳未満の子や孫へ、教育資金として一括で資金を贈与する場合に、最大1,500万円まで贈与税が非課税になるというものです。通常、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかりますが、この特例を使えばまとまった金額を非課税で渡せるため、教育資金の準備や相続税対策として広く活用されてきました。
| 非課税限度額 | 受贈者1人あたり1,500万円 |
| うち学校以外の費用(塾や習い事など) | 最大500万円まで |
| 対象者 | 贈与を受ける年の1月1日時点で30歳未満の子や孫など |
| 手続き | 金融機関で専用の「教育資金口座」を開設する必要がある |
| 終了時期 | 2026年3月31日 |
この制度を利用するには、信託銀行や銀行などで専用の口座を開設し、そこから教育費を引き出して支払うという手続きが必要でした。
なぜ終了するの?制度の課題
とても便利な制度に思えますが、なぜ終了することになったのでしょうか。理由の一つとして、一部の富裕層が相続税対策として利用することが主となり、教育格差の固定化につながるという指摘があったことが挙げられます。まとまった資金を贈与できる家庭が限られるため、制度の恩恵が一部に偏ってしまうという課題がありました。また、贈与された資金が教育費としてすぐに使われず、長期間口座に留まるケースも多かったため、経済効果が限定的であるとの見方もあったようです。
終了までに駆け込むべき?注意点
「終了する前に利用した方がいい?」と考える方もいるかもしれませんが、いくつかの注意点があります。まず、この制度で贈与されたお金は、教育目的以外には使えません。また、受贈者(お金をもらった子や孫)が30歳になった時点で口座に残高があると、その残額に対して贈与税が課税されます。さらに、原則として途中で解約することはできず、資金の使い道が限定されるという柔軟性の低さもデメリットでした。ご家庭の状況によっては、これからご紹介するNISAなど、他の方法が適している場合も多いでしょう。
これからの教育資金、いくら必要?
制度の利用を検討する前に、そもそもお子さんの教育にどれくらいの費用がかかるのかを把握しておくことが大切です。具体的な金額を知ることで、より現実的な計画を立てることができます。
大学卒業までにかかる教育費の目安
お子さんの進路によって教育費は大きく変わります。幼稚園から大学卒業まで、すべて国公立か、すべて私立かで、総額には大きな差が生まれます。
| すべて国公立の場合 | 約1,000万円 |
| すべて私立の場合(大学は理系) | 約2,500万円 |
これはあくまで平均的なデータですが、私立の医歯薬系に進学する場合などは、さらに多くの費用が必要になります。教育費は、人生の三大支出の一つと言われるだけの大きな金額になることを覚えておきましょう。
学校以外にもかかる「隠れ教育費」
見落としがちなのが、授業料や入学金といった「学校教育費」以外の費用です。実際には、以下のような「隠れ教育費」も考慮に入れる必要があります。
- 塾や予備校、家庭教師の費用
- ピアノやスイミングなどの習い事の月謝
- 部活動の遠征費や用具代
- 大学受験の受験料や交通費・宿泊費
- 大学進学後の一人暮らしの仕送り(家賃、生活費など)
これらの費用を合計すると、予想以上に大きな負担になることも少なくありません。早めに総額をイメージしておくことが重要です。
教育費無償化政策も知っておこう
近年、国の支援策も充実してきています。例えば「高等教育の修学支援新制度」では、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生を対象に、大学などの授業料・入学金の減免や、給付型奨学金の支給が行われます。こうした制度をうまく活用することで、家庭の負担を軽減できます。ただし、支援には所得制限があり、すべての費用が無料になるわけではありません。やはり、計画的な自己資金の準備は不可欠と言えるでしょう。
新NISAを教育資金準備に活用するメリット
そこで、これからの教育資金準備の主役として期待されるのが「新NISA」です。教育資金贈与制度にはない、たくさんのメリットがあります。
運用益が非課税になるパワフルな効果
NISAの最大の魅力は、投資で得た利益(運用益)に税金がかからないことです。通常、投資で得た利益には約20%(20.315%)の税金がかかりますが、NISA口座内での運用なら、それがまるまる手元に残ります。例えば、運用で100万円の利益が出たとします。通常の口座なら約20万円が税金として引かれてしまいますが、NISAなら100万円をそのまま受け取れるのです。この差は、長期間の運用になるほど大きくなり、効率的に資産を増やす上で非常に強力な武器になります。
いつでも引き出せる柔軟性
教育資金贈与制度が一度贈与すると30歳まで原則引き出せなかったのに対し、NISAは必要な時にいつでも資金を引き出すことができます。大学の入学金が必要なタイミング、急に留学費用が必要になった時など、ライフイベントに合わせて柔軟に活用できるのは大きなメリットです。売却して空いた非課税枠は翌年以降に復活するため、計画的に利用しやすいのも嬉しいポイントです。
少額から始められる手軽さ
「投資」と聞くとまとまった資金が必要なイメージがあるかもしれませんが、NISAは毎月1,000円や5,000円といった少額から積立投資を始めることができます。児童手当の一部を積み立てに回すなど、家計に無理のない範囲でスタートできるので、資産形成の第一歩として非常に始めやすい制度です。
長期・積立・分散でリスクを抑える
教育資金の準備は、お子さんが生まれてから大学入学まで18年間など、長期にわたります。NISAで毎月コツコツ積み立てる方法は、投資の王道である「長期・積立・分散」を手軽に実践できます。長期間続けることで複利の効果(利益が利益を生む効果)を最大限に活かせますし、毎月一定額を買い付けることで購入価格が平準化され(ドルコスト平均法)、価格変動のリスクを抑える効果も期待できます。
NISAを活用した教育資金計画の立て方
では、具体的にどのようにNISAを活用して計画を立てていけば良いのでしょうか。シミュレーションを交えながら見ていきましょう。
シミュレーション:月3万円の積立でいくら貯まる?
仮に、お子さんが0歳の時から毎月3万円をNISAで積み立て、年利5%で18年間運用できた場合を考えてみましょう。
- 積立元本:3万円 × 12ヶ月 × 18年 = 648万円
- 18年後の資産額(運用益含む):約1,048万円
この場合、運用益は約400万円になります。もしこれが通常の課税口座であれば、この利益に約20%の税金がかかり、約80万円が引かれてしまいます。NISAであればこの約80万円が非課税になるのです。これは非常に大きな差ですよね。
※このシミュレーションは将来の運用成果を保証するものではありません。
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の使い分け
新NISAには年間120万円までの「つみたて投資枠」と、年間240万円までの「成長投資枠」があります。教育資金のように、毎月コツコツと長期的に準備していくなら、まずは「つみたて投資枠」の活用が基本となります。金融庁が厳選した、手数料が低く長期投資に適した投資信託が対象なので、初心者の方でも安心して始めやすいでしょう。家計に余裕がある場合や、もう少し積極的にリターンを狙いたい場合は、「成長投資枠」で個別株や他の投資信託を組み合わせることも可能です。
出口戦略も考えておこう
NISAで順調に資産が増えても、いざお金が必要な大学入学のタイミングで株価が暴落してしまっては元も子もありません。そうしたリスクを避けるために、「出口戦略」を考えておくことが大切です。例えば、大学入学の3〜5年前になったら、少しずつ利益を確定(売却)して現金化したり、値動きの安定している債券中心の投資信託に切り替えたりするなどの対策が考えられます。ゴールから逆算して、計画的にリスクを減らしていく準備をしておきましょう。
NISA以外の教育資金準備方法との比較
NISAは非常に優れた制度ですが、他の方法と組み合わせることで、さらに盤石な教育資金計画を立てることができます。それぞれの特徴を比較してみましょう。
学資保険|安心感と保障が魅力
学資保険は、子どもの教育資金準備を目的とした貯蓄型の保険です。最大のメリットは、契約者である親に万が一のことがあった場合、以降の保険料の支払いが免除され、満期金は予定通り受け取れるという保障機能がある点です。NISAにはない大きな安心材料と言えます。一方で、現在の低金利下では返戻率(支払った保険料総額に対する受取額の割合)が低く、NISAほどの高いリターンは期待しにくいのがデメリットです。
預貯金|元本保証の絶対的な安全性
銀行の定期預金や積立預金は、元本が保証されているという絶対的な安全性が魅力です。いつでも引き出せる流動性の高さもメリットです。ただし、ご存知の通り金利は非常に低いため、お金を大きく増やすことは期待できません。インフレ(物価上昇)によって、お金の実質的な価値が目減りしてしまうリスクもあります。リスクを取りたくない資金や、数年以内に使う予定の資金を確保しておくのに適しています。
各方法の比較まとめ
それぞれの方法のメリット・デメリットを理解し、ご家庭のリスク許容度に合わせて組み合わせることが理想的です。
| 方法 | 特徴 |
| 新NISA | 【収益性◎・柔軟性◎・安全性△】 運用益が非課税で効率的に増やせる可能性がある。いつでも引き出せるが、元本保証はない。 |
| 学資保険 | 【収益性△・柔軟性△・安全性◎】 リターンは低いが、保障機能があり着実に貯められる。途中解約は元本割れの可能性も。 |
| 預貯金 | 【収益性×・柔軟性◎・安全性◎】 元本保証で安全だが、ほとんど増えない。インフレに弱い。 |
まとめ
教育資金贈与の非課税措置は2026年3月末で終了しますが、悲観する必要はありません。むしろ、これを機にご家庭の資産形成プランを見直し、より柔軟で効率的な新NISAを積極的に活用するチャンスと捉えましょう。新NISAは、運用益非課税の大きなメリットを活かしながら、少額からでも始められ、いつでも引き出せるという使い勝手の良さが魅力です。学資保険や預貯金といった他の方法と賢く組み合わせることで、大切なお子さんの未来を支える教育資金を、計画的かつ着実に準備していくことができます。まずは「いつまでに、いくら必要か」という目標を立て、できる範囲から一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考文献
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
教育資金とNISAのよくある質問まとめ
Q.教育資金贈与の非課税制度はいつまでですか?
A.現行の「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、2026年3月31日をもって終了する予定です。
Q.新NISAは子ども名義で口座開設できますか?
A.いいえ、新NISAは18歳以上の成人が対象のため、子ども名義での口座開設はできません。親権者(親など)の名義で口座を開設し、教育資金を準備することになります。
Q.NISAは元本保証がありますか?
A.いいえ、NISAは投資であるため、預貯金とは異なり元本保証はありません。運用成果によっては、投資した金額を下回る(元本割れする)可能性があります。
Q.教育資金はNISAだけで準備すべきですか?
A.NISAは有力な手段ですが、元本割れのリスクもあります。そのため、元本保証のある預貯金や、保障機能のある学資保険など、他の方法と組み合わせてリスクを分散させることがおすすめです。
Q.NISAで貯めたお金はいつ引き出せますか?
A.NISA口座内の資産は、原則としていつでも売却して引き出すことが可能です。教育資金が必要になるタイミングに合わせて柔軟に現金化できます。
Q.贈与制度終了後、祖父母が孫の教育資金を援助する方法はありますか?
A.年間110万円までの暦年贈与の非課税枠を活用する方法があります。この範囲内であれば贈与税はかかりません。また、必要な都度、教育費として直接学校などに支払う場合は、贈与税の対象外となります。