今回は、近年ニュースなどでもよく耳にする相続税について、申告件数の推移や今後の予測を詳しく解説していきますね。以前はお金持ちだけに関係すると思われがちだった相続税ですが、実は身近な税金へと変化しています。ご自身やご家族が将来困らないように、現状を正しく知って早めの準備をしていきましょう。
相続税申告件数のこれまでの推移と現状
まずは、日本における相続税申告件数の推移が近年どのように変化しているのか、現状を振り返ってみましょう。実は、ある年を境に申告が必要な方が急増しているんですよ。
平成27年の基礎控除引き下げによる影響
大きな転換点となったのは、平成27年(2015年)1月1日の税制改正です。この改正により、相続税がかからないボーダーラインである基礎控除額が大きく引き下げられました。具体的な金額の変化は以下の表のようになっています。
| 適用時期 | 基礎控除額の計算式 |
|---|---|
| 平成26年以前 | 5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数 |
| 平成27年以降 | 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 |
この変更により、例えば法定相続人が2人の場合、非課税となる枠が7,000万円から4,200万円へと大幅に減少しました。その結果、都心に持ち家があるごく一般的なご家庭でも、相続税の対象となるケースが増加したのです。
近年の相続税申告件数と課税割合の増加
基礎控除の引き下げ以降、相続税申告件数の推移は右肩上がりを続けています。国税庁の統計によると、平成26年には亡くなった方のうち相続税がかかる方の割合(課税割合)は約4.4%でした。しかし、令和3年分には約9.3%にまで上昇しており、現在では亡くなる方の約10人に1人が相続税の対象となっています。
| 年分 | 課税割合(相続税の対象者の割合) |
|---|---|
| 平成26年 | 約4.4% |
| 令和3年 | 約9.3% |
割合が約2倍以上に増えている数字を見ると、もはや特別な人だけの税金ではないことがお分かりいただけるかと思います。
申告が必要になる具体的な財産額の目安
では、具体的にどのくらいの財産があると相続税の申告が必要になるのでしょうか。法定相続人の数ごとの現在の基礎控除額をまとめてみました。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額(申告が不要なライン) |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
亡くなった方が残した現金や預貯金、不動産、有価証券などの合計額がこの金額を超える場合、原則として相続税の申告が必要になります。ご自身の状況に当てはめて、一度計算してみてくださいね。
今後の相続税申告件数の予測
これまでの状況を踏まえ、ここからは今後の予測についてお話ししますね。日本の社会構造の変化に伴い、今後も申告が必要な方は増えていくと考えられています。
超高齢社会の進行と死亡者数の増加
日本では超高齢社会が急速に進んでおり、厚生労働省のデータによると、年間の死亡者数は年々増加しています。令和4年の年間死亡者数は約156万人でしたが、今後も2040年頃までは増加傾向が続くと推計されています。死亡者数が増えるということは、それに伴って相続が発生する件数も増えるため、結果として相続税申告件数の推移も増加していくと予測されます。
首都圏や都市部を中心とした地価の上昇
相続財産の中で大きな割合を占めるのが土地や建物などの不動産です。近年、東京などの首都圏や地方の主要都市では、路線価などの地価が上昇傾向にあります。預貯金の金額が変わらなくても、所有している自宅の土地の評価額が上がることで、気づかないうちに基礎控除額の3,600万円や4,200万円を超えてしまうケースが今後の予測として多く考えられます。
インフレや資産価値の変動が与える影響
最近は物価上昇(インフレ)のニュースをよく耳にしますよね。インフレ対策として株式や投資信託などの有価証券で資産運用を行う方が増えています。投資によって資産価値が大きく増えた場合、その分相続財産の合計額も大きくなります。今後、現金預金だけでなく様々な形で資産を持つ方が増えることで、申告の対象となる財産額を超える方が増加していくでしょう。
相続税申告が必要な人の具体的な特徴
申告件数が増加している中で、どのような方が相続税の対象になりやすいのでしょうか。ここでは、具体的な特徴を3つ挙げて詳しく解説しますね。
不動産を複数所有している場合
ご自宅以外に、賃貸アパートや駐車場、別荘などの不動産を複数所有している方は注意が必要です。土地の評価額は路線価や固定資産税評価額をもとに計算されますが、都市部にある土地の場合は数十坪の広さであっても評価額が5,000万円を超過することが珍しくありません。不動産が多いと、基礎控除額をあっという間に超えてしまいます。
預貯金や有価証券の残高が多い場合
長年コツコツと貯蓄を続けてきた方や、退職金をそのまま預貯金として残している方も対象になりやすいです。例えば、預貯金が3,000万円あり、さらに自宅の土地と建物の評価額が1,500万円ある場合、合計で4,500万円の財産となります。この場合、法定相続人が2人(基礎控除額4,200万円)であれば申告が必要になります。
生命保険金の非課税枠を超過している場合
生命保険の死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。例えば法定相続人が3人の場合、1,500万円までは税金がかかりません。しかし、加入している複数の保険から合計で2,000万円を受け取った場合、差額の500万円は相続財産として加算されてしまいます。保障を手厚くしている方は、非課税枠を超えていないか確認してみてください。
今後予測される税制改正と対策の必要性
税金のルールは毎年のように見直されています。今後の予測として、相続税や贈与税に関するルールがさらに厳しくなる傾向にありますので、最新の情報を知っておくことが大切です。
生前贈与の加算期間の延長(3年から7年へ)
令和5年度の税制改正により、亡くなる前に行われた生前贈与が相続財産に足し戻される(加算される)期間が、これまでの亡くなる前3年間から、亡くなる前7年間に順次延長されることになりました。令和6年(2024年)1月1日以降の贈与からこの新しいルールが適用されています。つまり、亡くなる直前に慌てて贈与を行っても、相続税を減らす効果が薄れてしまうことになります。
| 贈与の時期 | 相続財産への加算期間 |
|---|---|
| 令和5年12月31日以前の贈与 | 亡くなる前3年間 |
| 令和6年1月1日以降の贈与 | 亡くなる前7年間(順次延長) |
相続時精算課税制度の見直し
一方で、使い勝手が良くなった制度もあります。それが「相続時精算課税制度」です。以前は一度選択すると年間110万円の非課税枠(暦年贈与)が使えなくなっていましたが、令和6年からは新たに年間110万円の基礎控除枠が設けられました。これにより、累計2,500万円までの特別控除枠とは別に、毎年110万円までは税金もかからず、将来の相続財産にも加算されずに贈与できるようになりました。
早めの生前対策が生む大きなメリット
ルールが厳格化される一方で、新しい控除枠が新設されるなど、税制は複雑になっています。しかし、共通して言えるのは「早めに動くほど有利になる」ということです。加算期間が7年に延びたとしても、10年前から少しずつ財産を移していれば、その分は確実に相続税の負担を減らすことができます。手遅れになる前に、今のうちから計画を立てることが重要です。
今からできる具体的な相続税対策
それでは、具体的にどのような対策から始めればよいのでしょうか。誰でも始めやすい、効果的な3つの方法をご紹介しますね。
年110万円の暦年贈与の活用
最も基本となるのが、1年間(1月1日〜12月31日)に1人あたり110万円までなら贈与税がかからない「暦年贈与」の活用です。例えば、お子様2人とお孫様2人の合計4人に、毎年100万円ずつ10年間贈与を続けた場合、「4人 × 100万円 × 10年 = 4,000万円」もの財産を無税で次の世代に移すことができます。贈与契約書を毎回作成し、銀行振込で記録を残すことがポイントです。
生命保険の非課税枠の活用
現金をそのまま持っているよりも、生命保険に変えた方が税金面でお得になります。先ほども触れた通り、死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。例えば、法定相続人が2人の場合、現金1,000万円を残すと全額が課税対象の財産になりますが、これを一時払いの終身保険などにしておくことで、1,000万円を非課税でご家族に残すことができるのです。
小規模宅地等の特例を適用するための準備
ご自宅の土地の評価額を最大80%も減らすことができる「小規模宅地等の特例」という非常に強力な制度があります。例えば、評価額が5,000万円の土地でも、要件を満たせば1,000万円として計算してもらえます(限度面積330平方メートルまで)。ただし、配偶者が相続するか、亡くなった方と同居していた親族が相続するなどの厳しい要件があります。誰が自宅を相続するのか、特例が使えるかどうかを事前に話し合っておくことが大切です。
まとめ
今回は、相続税申告件数の推移と今後の予測について詳しく解説しました。基礎控除額の引き下げや高齢化の影響により、相続税は決して他人事ではなくなっています。今後も申告が必要な方は増え続けると予測されていますが、慌てる必要はありません。まずはご自身の財産がいくらあるのか、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えているのかを確認することから始めてみてください。そして、生前贈与や生命保険の活用など、今日からできる対策を少しずつ進めていきましょう。ご家族の未来を守るために、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。
参考文献
相続税申告に関するよくある質問まとめ
Q. 相続税の申告が必要なのはどんな人ですか?
A. 亡くなった方の残した財産(現金、不動産、有価証券など)の合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えている場合に申告が必要になります。
Q. 相続税の申告件数は増えているのですか?
A. はい、平成27年の基礎控除引き下げ以降、申告件数は大きく増加しています。現在では亡くなった方の約10人に1人が相続税の対象となっており、身近な税金になっています。
Q. 今後の相続税の対象者はどうなると予測されていますか?
A. 超高齢社会による死亡者数の増加や、都市部の地価上昇、インフレによる資産価値の増加などの影響により、今後も相続税の対象となる方は増え続けると予測されています。
Q. 令和5年度の税制改正で生前贈与はどう変わりましたか?
A. 生前贈与した財産が相続財産に加算される期間が、亡くなる前3年間から7年間に順次延長されました。これにより、今まで以上に早めの生前対策が必要になっています。
Q. 生命保険を活用した相続税対策とは何ですか?
A. 死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があります。現金をそのまま残すより、一時払いの終身保険などに変えておくことで課税される財産を減らすことができます。
Q. 自宅の土地の相続税を減らす方法はありますか?
A. 「小規模宅地等の特例」を利用すると、同居の親族などが自宅の土地(330平方メートルまで)を相続する場合、その土地の評価額を最大80%減らすことができます。