会社を成長させるために補助金を活用して建物を取得したものの、今後の資金調達のために担保に入れたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。しかし、実は補助金で取得した建物への根抵当権は不可という厳しい原則があります。ルールを知らずに金融機関と話を進めてしまうと、後から思わぬペナルティを受けることもありますので、ここで正しい知識を一緒に確認していきましょう。
補助金で取得した建物への根抵当権が不可となる理由
補助金を使って建てた工場や店舗などの建物は、事業を成功させるための大切な財産ですよね。国から支援を受けている以上、これらの財産を自由に扱うことはできず、担保に設定する際にも厳しいルールが設けられています。まずは、なぜ根抵当権が認められないのか、その理由を分かりやすく紐解いていきましょう。
根抵当権と抵当権の決定的な違いとは
そもそも、根抵当権と通常の抵当権はどう違うのでしょうか。通常の抵当権が「今回の借入金3,000万円だけを担保する」という一回限りの約束であるのに対し、根抵当権は「極度額5,000万円の範囲内であれば、何度でも借りたり返したりできる」という包括的な約束になります。この性質の違いが、補助金のルールにおいて非常に重要な意味を持ってきます。
| 担保の種類 | 具体的な特徴 |
|---|---|
| 通常の抵当権 | 特定の借入(1回の融資)のみを担保し、完済すれば消滅する |
| 根抵当権 | 極度額の範囲内で不特定の借入を担保し、完済しても消滅しない |
なぜ補助金の対象建物に根抵当権を設定できないのか
補助金は、あらかじめ申請した特定の事業を行うためだけに交付されるお金です。もし補助金で取得した建物に根抵当権を設定してしまうと、将来的に「補助事業とは全く関係のない別の事業の借入」まで担保してしまう可能性がありますよね。これは国のお金が目的外に利用されるリスクとなるため、原則として設定が認められていないのです。
財産処分制限の対象となる財産の具体的な要件
補助金のルールでは、一定の金額以上の財産を勝手に処分(売却や担保設定など)してはいけないという財産処分制限があります。すべての備品が対象になるわけではなく、具体的には以下のような基準が設けられています。少額のパソコンなどは対象外ですが、建物や高額な機械は対象になると覚えておいてくださいね。
| 対象となる財産 | 具体的な金額要件 |
|---|---|
| 建物・機械装置・ソフトウェアなど | 取得価格または効用の増加価格が単価50万円以上のもの |
| 事務用品・少額の備品など | 単価50万円未満であれば原則として制限の対象外 |
根抵当権設定が不可となることで生じる事業への影響
根抵当権が設定できないとなると、会社の資金繰りや今後の事業展開にどのような影響が出るのでしょうか。特に、今後の成長を見据えて複数の融資を検討している経営者の方にとっては、避けては通れない課題となります。
金融機関からの追加の資金調達への影響
金融機関は、企業に継続的な融資を行う際、手続きが簡単な根抵当権の設定を好む傾向があります。しかし、補助金で取得した建物には根抵当権が設定できないため、追加で資金を借りたい場合には、その都度新しく通常の抵当権を設定するか、別の財産を担保として差し出す必要が出てきます。これにより、資金調達のスピードが遅くなってしまう可能性があります。
資金繰り計画における注意点
根抵当権の枠を使って柔軟に資金を回そうと考えていた場合、その計画は見直しが必要になります。例えば、急な仕入れ資金が1,000万円必要になったとき、根抵当権があればすぐに引き出せますが、抵当権の場合は改めて審査や登記の手続きが必要になります。そのため、手元の現金を多めに確保しておくなど、より慎重な資金計画が求められます。
補助金で取得した建物に担保を設定するための例外ルール
「じゃあ、補助金で建てた建物は絶対に担保にできないの?」と不安に思われるかもしれませんが、ご安心ください。根抵当権は難しくても、一定の条件を満たせば通常の抵当権を設定できる道は用意されています。
通常の抵当権であれば事前の承認で設定できるケース
補助事業を継続するために必要な追加資金を借りる場合など、目的がはっきりしている借入であれば、通常の抵当権を設定できるケースが多いです。ただし、この場合でも勝手に登記をしてはいけません。必ず事前に補助金の事務局や国から財産処分承認を得る必要があります。承認前に設定してしまうとルール違反になるので注意してくださいね。
抵当権設定のための具体的な承認手続きの流れ
事前の承認を得るためには、金融機関から融資の実行を受ける前に、所定の申請書を提出する必要があります。申請書には、なぜ融資が必要なのか、いくら借りるのか、融資額は対象財産の残存簿価の範囲内か、といった具体的な理由や金額を記載します。審査には通常2週間から1ヶ月程度かかることが多いので、余裕を持ったスケジュールで動くことが大切です。
補助金返還などの重大なペナルティを避けるための対策
補助金のルールは非常に厳格です。「知らなかった」では済まされず、ルールを破ってしまうと会社にとって致命的なダメージとなるペナルティが課されることがあります。しっかりと対策を確認しておきましょう。
無断で担保設定した場合のペナルティと加算金
事前の承認を得ずに無断で根抵当権や抵当権を設定してしまった場合、補助金の交付決定が取り消され、受け取った補助金の全額返還を求められる可能性があります。さらに、ただ返すだけでなく、厳しい加算金が上乗せされるため注意が必要です。
| ペナルティの種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 補助金の全額返還 | 交付された補助金を一括で国に返還しなければならない |
| 加算金の支払い | 受領日から返還日までの日数に応じ、年利10.95%の加算金が発生する |
専門家や事務局への事前の相談の重要性
担保設定のルールは複雑で、個別の事情によって判断が分かれることもあります。自己判断で手続きを進めてしまうのは非常に危険ですので、少しでも迷ったら、補助金の申請をサポートしてくれた専門家や、補助金事務局の窓口に早く相談することが一番の対策になります。
他の補助金制度との共通点や注意すべきポイント
財産処分制限のルールは、補助金だけでなく、事業再構築補助金やものづくり補助金など、他の多くの国庫補助金でも共通しています。最後に、税務面や管理面での注意点も押さえておきましょう。
国税庁の圧縮記帳制度を利用する際の注意点
補助金を受け取って建物を取得した場合、法人税の負担を一時的に軽くするための圧縮記帳という制度を利用することが多いと思います。この制度を利用して帳簿上の価格を下げたとしても、財産処分制限の基準となる「単価50万円以上」という判断は、圧縮記帳をする前の実際の取得価格で計算されますので、間違えないようにしてくださいね。
法定耐用年数が経過するまでの管理義務
この厳しい財産処分制限は、永遠に続くわけではありません。財産ごとに決められた法定耐用年数が経過すれば、制限は解除され、自由に根抵当権を設定したり売却したりできるようになります。それまでは、しっかりと財産台帳をつけて管理を続けていきましょう。
| 財産の種類 | 財産処分制限が続く期間の目安 |
|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所 | 50年間(法定耐用年数に準ずる) |
| 金属加工用の機械装置 | 10年間(法定耐用年数に準ずる) |
まとめ
ここまで見てきたように、補助金で取得した建物への根抵当権は不可というのが大原則です。根抵当権は補助事業以外の借入も担保してしまうため、国のお金を使った財産には設定できません。もし担保に入れたい場合は、事業に必要な資金に限定した通常の抵当権を利用し、必ず事前に承認を得るようにしてくださいね。ルールを守って、会社をさらに発展させていきましょう。
参考文献
国税庁:国庫補助金等を受け取ったときの圧縮記帳
厚労省:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
補助金のよくある質問まとめ
Q.補助金で取得した建物に根抵当権は設定できますか?
A.原則として設定できません。根抵当権は将来の不特定の債務も担保するため、補助金の目的に反すると判断されるからです。
Q.根抵当権ではなく、通常の抵当権なら設定できますか?
A.補助事業を遂行するための資金調達を目的とする場合であれば、事前の承認を得ることで通常の抵当権を設定できることが多いです。
Q.財産処分制限の対象となるのはいくら以上の建物ですか?
A.原則として、取得価格が単価50万円以上の建物や機械装置が財産処分制限の対象となります。
Q.事前承認を得ずに担保設定してしまった場合はどうなりますか?
A.補助金の交付決定の取り消しや、受け取った補助金に年利10.95%の加算金を上乗せして一括返還を求められる可能性があります。
Q.補助金の財産処分制限はいつまで続きますか?
A.財産の種類ごとに定められた法定耐用年数の期間中は、財産処分制限が継続します。
Q.補助金で取得した建物を売却することはできますか?
A.売却自体は可能ですが、事前に承認を得る必要があり、売却によって得た収益の全部または一部を国に納付しなければならない場合があります。