医療機関で働く皆様の待遇を改善するために、令和6年度の診療報酬改定で新しい制度がスタートしました。それがベースアップ評価料等です。この記事では、対象となる職種や具体的な点数、どのように申請すればよいのかについて、分かりやすく解説していきます。制度を正しく理解して、スタッフの皆様の賃金アップに繋げていきましょう。
ベースアップ評価料等とは?制度の基本的な仕組み
ベースアップ評価料等とは、医療機関で働くスタッフの賃上げをサポートするために国が新しく設けた評価料のことです。これまで医療現場を支えてきた方々の処遇を改善し、安心して働き続けられる環境を作ることが最大の目的となっています。
制度が導入された背景と目的
近年、他産業では賃上げが進んでいますが、医療や福祉の現場ではなかなか進んでいないという課題がありました。そこで、令和6年度に2.5パーセント、令和7年度に2.0パーセントのベースアップ等による賃上げを実現するために、この制度が導入されました。物価高騰にも負けない職場づくりを国が後押ししています。
対象となる医療従事者の範囲
この評価料を活用して賃上げの対象となるのは、主に患者さんと直接関わる医療スタッフです。具体的には、看護師や薬剤師、理学療法士、医療事務作業補助者などが含まれます。以下の表に対象となる主な職種をまとめました。
| 区分 | 具体的な職種例 |
|---|---|
| 対象となる職種 | 薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士など |
対象外となってしまう職種
一方で、すべてのスタッフが対象になるわけではありません。医師や歯科医師、役員などは基本的には対象外となります。また、医療現場に立たず、もっぱら事務作業のみを行う方も対象外です。
| 区分 | 具体的な職種例 |
|---|---|
| 対象外となる職種 | 医師、歯科医師、役員、専ら事務作業を行う事務職員など |
ベースアップ評価料の算定要件と施設基準
この評価料を受け取るためには、いくつかの約束事を守る必要があります。ただ申請すればもらえるというわけではなく、スタッフの皆様に確実に還元される仕組みを作らなければなりません。
賃金改善計画書の作成と届出
まず最初のステップとして、地方厚生局に対して賃金改善計画書を作成し、提出する必要があります。この計画書には、対象となるスタッフの現在の基本給や手当の総額、そしてどれくらい賃上げを行うのかという具体的な金額を記載します。計画書を出さずに評価料を受け取ることはできません。
評価料による収入の使い道
算定したベースアップ評価料等による収入は、その全額を対象スタッフの賃金改善に充てることが厳格に定められています。具体的には、基本給や毎月決まって支払われる手当の引き上げに使わなければなりません。一時的なボーナスなどではなく、継続的な賃上げに繋げることが求められます。
具体的な評価料の種類と点数について
ベースアップ評価料には、外来や在宅、入院など、提供する医療サービスに合わせていくつかの種類が用意されています。それぞれの場面で算定できる点数が異なりますので、具体的に見ていきましょう。
外来・在宅ベースアップ評価料の点数
外来患者さんや在宅医療を受けている患者さんに対して算定できるのが、外来・在宅ベースアップ評価料です。例えば、初診時には6点、再診時には2点を算定することができます。訪問診療の場合は、同一建物以外への訪問で28点となります。
| 算定項目 | 算定点数 |
|---|---|
| 初診料への加算 | 6点 |
| 再診料への加算 | 2点 |
入院ベースアップ評価料の点数
入院している患者さんに対して算定する評価料です。こちらは病院の規模や看護配置などによって細かく分類されており、入院基本料に加算する形で算定します。多くの病院では、1日につき数十点から百数十点の加算となりますが、施設基準の届出内容によって正確な点数が決まります。
賃金改善の計算方法と配分のルール
実際にスタッフにどのように配分すればよいのか、そのルールもしっかりと決まっています。事業所の都合で偏った配分をすることは認められていません。
賃上げ目標の具体的な数値
前述の通り、令和6年度は対象職員の給与総額の2.5パーセント、令和7年度は2.0パーセントの引き上げが目標とされています。例えば、月給30万円の看護師さんの場合、2.5パーセントの引き上げであれば、月に7500円のベースアップを行う計算になります。
評価料の公平な配分方法
配分にあたっては、特定の職員だけに全額を支給するのではなく、対象となる職員全体に広く行き渡るように配慮しなければなりません。ただし、職種や経験年数、現在の給与水準などに応じて、一人ひとりの賃上げ額に差をつけること自体は問題ありません。
実績報告と注意すべきポイント
賃上げを実施した後は、その結果を国に報告する義務があります。この報告を怠ったり、ルールに違反したりすると、厳しいペナルティが課される可能性がありますので十分にご注意ください。
毎年の実績報告の義務
計画書を提出した翌年の7月には、実際にどれだけ賃金が改善されたかを示す賃金改善実績報告書を提出しなければなりません。ここで、評価料の収入を本当に全額賃上げに使ったかどうかがチェックされます。
返還を求められるケースとは
もし、実績報告の結果、評価料の収入を全額賃上げに充てていなかったことが判明した場合、その差額を返還しなければならないケースがあります。また、虚偽の報告を行った場合は、施設基準の取り消しなどの重い処分を受けることもありますので、正確な計算と報告が不可欠です。
まとめ
今回は、令和6年度の診療報酬改定で新設されたベースアップ評価料等について解説しました。医療従事者の皆様の待遇改善を目指す非常に重要な制度です。計画書の作成や実績報告など、事務的な負担は増えますが、スタッフのモチベーション向上と人材定着のために、ぜひ制度を正しく理解し、有効に活用していきましょう。
参考文献
ベースアップ評価料等についてのよくある質問まとめ
Q.ベースアップ評価料等の対象とならない職種は何ですか?
A.医師、歯科医師、役員、および医療現場に出ず専ら事務作業を行うスタッフなどは対象外となります。
Q.ベースアップ評価料で得た収入はボーナスとして支払ってもよいですか?
A.いいえ、ボーナスなどの一時金ではなく、基本給や決まって毎月支払われる手当の引き上げに全額を充てる必要があります。
Q.賃金改善計画書はどこに提出すればよいですか?
A.賃金改善計画書は、管轄の地方厚生局へ提出する必要があります。期限を守って忘れずに提出してください。
Q.目標とされている賃上げの割合はどれくらいですか?
A.令和6年度は給与総額の2.5パーセント、令和7年度は2.0パーセントのベースアップ等による引き上げが目標とされています。
Q.外来・在宅ベースアップ評価料の初診料での加算点数は何点ですか?
A.外来・在宅ベースアップ評価料の場合、初診料に対して6点の加算を算定することができます。
Q.賃上げを行った後の報告は必要ですか?
A.はい、必要です。毎年7月に、前年度の賃金改善実績報告書を地方厚生局に提出し、全額を賃上げに充てたことを報告する義務があります。