在宅でお仕事をされている方や、特定の会社から継続的にお仕事を受けている方の中で、「家内労働者の特例ってなに?」と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。実は、この特例を正しく理解することで、税金の負担を大きく減らすことができるかもしれません。令和7年度の税制改正によって、特例の内容や確定申告が不要になる要件が新しくなりました。今回は、家内労働者の特例の基本的な仕組みや対象となる職種、確定申告が不要になる具体的な金額の基準について、優しくわかりやすく解説していきます。
家内労働者の特例とは?制度の基本をわかりやすく解説
家内労働者の特例とは、実際にかかったお仕事の経費が少ない場合でも、一定の金額を必要経費として認めてもらえる制度です。本来、事業所得や雑所得の経費は、実際に支払った金額しか差し引くことができません。しかし、この特例を使えば、令和7年度以降は最大65万円を必要経費として計上することができます。会社員の方にある給与所得控除と似たような仕組みで、働き方による税金負担の不公平をなくすために作られました。
家内労働者の特例の対象になるのはどんな人?
特例の対象となるのは、家内労働法に規定される内職者や、特定の人に対して継続的にサービスを提供する方です。自宅を作業場にしてメーカーから部品を受け取り、加工や組み立てを行って工賃を受け取っている方が当てはまります。
| 対象となる方の分類 | 具体的な職種の例 |
|---|---|
| 家内労働法に規定する家内労働者 | 自宅で作業を行う内職者 |
| 特定の相手に継続的にサービスを提供する人 | 生命保険の外交員、集金人、電力会社の検針員、ヤクルトレディ、シルバー人材センターの登録者 |
家内労働者等に該当しないケースとは?
一方で、同じように個人で仕事をしていても、家内労働者の特例を利用できないケースもあります。不特定多数のお客様を相手にするお仕事や、家族以外の人を雇って事業を行っている場合は対象外となりますので注意しましょう。
| 該当しないお仕事の条件 | 具体的な職種の例 |
|---|---|
| 不特定多数を対象としたサービス | 自宅で開くピアノ教室や学習塾の先生 |
| 商品の販売などを行うセールス | 物品の販売を広く行う営業マン |
令和7年度の税制改正で最低保障額が65万円に引き上げ
令和7年度の税制改正によって、家内労働者の特例で認められる必要経費の最低保障額が引き上げられました。これにより、これまでよりも多くの金額を無条件で必要経費として差し引くことができるようになり、税金の負担が軽くなります。
| 適用される年度 | 必要経費の最低保障額 |
|---|---|
| 令和6年度分まで | 55万円 |
| 令和7年度分以降 | 65万円 |
家内労働者の特例を利用すると確定申告は不要になる?
収入から必要経費と基礎控除を差し引いた結果、所得が0円になる場合は、所得税がかからないため確定申告は不要になります。家内労働者の特例を適用するための特別な申告手続きは必要なく、基準となる金額以下の収入であれば自動的に申告不要の扱いとなります。
令和6年度までの確定申告が不要になる要件(103万円以下)
令和6年度分までの確定申告では、年間の収入が103万円以下であれば申告が不要でした。これは、特例による必要経費の最低保障額と、全員が受けられる基礎控除の合計額が103万円だったためです。
| 差し引ける控除の種類 | 控除できる金額(令和6年度まで) |
|---|---|
| 家内労働者の特例による必要経費 | 55万円 |
| 基礎控除 | 48万円 |
令和7年度以降の確定申告が不要になる要件(160万円以下)
令和7年度分以降は、税制改正によって必要経費の最低保障額と基礎控除の両方が引き上げられました。その結果、年間の収入が160万円以下であれば、所得税がかからず確定申告が不要になります。
| 差し引ける控除の種類 | 控除できる金額(令和7年度以降) |
|---|---|
| 家内労働者の特例による必要経費 | 65万円 |
| 基礎控除(合計所得金額132万円以下の場合) | 95万円 |
家内労働者の特例と配偶者控除・扶養控除の関係
ご家族の扶養に入りながらお仕事をしている場合、ご自身の収入がいくらになるかによって、ご家族の税金(配偶者控除や扶養控除)に影響が出ます。確定申告が不要になる基準と、扶養に入れる基準は少し異なるため注意が必要です。
令和6年度までの配偶者控除・扶養控除の要件
令和6年度までは、年間の収入が103万円以下であれば、ご家族の税金を計算する際に配偶者控除や扶養控除の対象になっていました。103万円を超えると扶養から外れてしまうため、働く時間を調整していた方も多かったのではないでしょうか。
令和7年度以降の配偶者控除・扶養控除の要件
令和7年度以降は、扶養親族などの所得要件が見直されました。年間の収入が123万円以下であれば配偶者控除や扶養控除の対象となり、123万円を超えて160万円以下の場合は配偶者特別控除の対象となります。
| 年間の総収入金額(令和7年度以降) | 控除の適用状況 |
|---|---|
| 123万円以下 | 配偶者控除・扶養控除が適用可能 |
| 123万円を超え160万円以下 | 配偶者特別控除(最大38万円)が適用可能 |
家内労働者の特例でも確定申告が必要になる具体的なケース
基本的には一定の収入以下であれば確定申告は不要ですが、場合によっては申告をしなければならないケースや、申告したほうがお得になるケースがあります。ご自身の状況に当てはまるか一緒に確認してみましょう。
収入が基準額(160万円)を超える場合
令和7年度以降で年間の収入が160万円を超える場合は、所得が発生するため確定申告を行い、所得税を納める必要があります。この場合でも、家内労働者の特例による65万円の必要経費は差し引いて計算することができます。
給与所得など他の収入がある場合
内職などの収入以外に、パートやアルバイトの給与収入がある場合は注意が必要です。給与収入が年間65万円以上ある場合は、すでに給与所得控除を十分に受けているとみなされ、この特例を利用することができません。他の収入がある場合は合算して所得を計算するため、確定申告が必要になることが多いです。
| 給与収入の状況 | 特例の適用の有無(令和7年度以降) |
|---|---|
| 給与収入が年間65万円以上ある | 家内労働者の特例は利用できない |
| 給与収入が年間65万円未満 | 65万円から給与所得控除を引いた残額と実際の経費を比較して高い方を適用 |
医療費控除などを利用して税金の還付を受けたい場合
年間の収入が160万円以下で確定申告の義務がない方でも、病院の支払いが多かった場合に医療費控除を受けたり、ふるさと納税の寄附金控除を受けたりしたい場合は、確定申告を行うことで支払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。
確定申告で家内労働者の特例を適用する方法
確定申告が必要になった場合、国税庁のシステムを利用してパソコンやスマートフォンから申告書を作成するのがとても便利です。その際、事業所得か雑所得かによって入力する方法が少し異なりますので、正しい手順で申告を行いましょう。
事業所得として申告する場合の記入方法
お仕事を事業所得として青色申告決算書や収支内訳書を作成する場合は、必要経費の任意の項目に「家内労働者等の特例」と入力します。そして、特例を適用して計算したあとの必要経費の金額(最大65万円)を記載して申告を完了させます。
雑所得として申告する場合の記入方法
お仕事を雑所得として申告する場合は、必要経費の欄に特例適用後の金額を入力します。さらに、報酬を支払ってくれた会社の名前などを書く欄の最後に「(措法27)」と入力してください。これは、特定の法律のルールを使っていますよ、という大切な印になります。
まとめ
家内労働者の特例は、在宅で働く内職者や特定の会社から継続してお仕事を受ける方のための、とても心強い制度です。令和7年度の税制改正により、必要経費の最低保障額が65万円に引き上げられ、年間の収入が160万円以下であれば確定申告が不要になりました。ただし、配偶者控除などの扶養の基準は123万円以下となっている点や、パートなどの給与収入がある場合の計算方法には注意が必要です。ご自身の働き方や収入をしっかりと確認し、この特例を正しく活用して税金の負担を軽くしていきましょう。
参考文献
家内労働者の特例に関するよくある質問まとめ
Q.家内労働者の特例とは何ですか?
A.実際の必要経費が少なくても、令和7年度以降は最大65万円までを必要経費として差し引くことができる制度です。
Q.どのような人が家内労働者の特例の対象になりますか?
A.自宅で作業を行う内職者や、生命保険の外交員、検針員など、特定の人に対して継続的にサービスを提供する人が対象です。
Q.家内労働者の特例を利用すると確定申告は不要ですか?
A.令和7年度以降は、この特例を利用して所得が0円になる場合、つまり年間の収入が160万円以下であれば原則として確定申告は不要です。
Q.パートなどの給与収入があっても特例を利用できますか?
A.給与収入が年間65万円以上ある場合は利用できません。65万円未満の場合は、一定の計算を行って高い方の経費を適用できます。
Q.収入がいくらまでなら配偶者控除や扶養控除の対象になりますか?
A.令和7年度以降は、年間の総収入金額が123万円以下であれば配偶者控除や扶養控除の対象となります。
Q.ピアノ教室を開いている場合、この特例は使えますか?
A.不特定多数のお客様を対象としたサービスとなるため、家内労働者の特例を利用することはできません。