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相続で不動産が未分割の場合!消費税の申告は誰がどの割合で行う?

2025-08-27
目次

ご家族が亡くなられて不動産賃貸業を引き継ぐことになったとき、所得税だけでなく消費税の申告が必要になるのか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。特に、店舗や駐車場など消費税がかかる不動産を相続し、まだ誰が相続するか話し合いが終わっていない未分割の状態では、誰がどの割合で消費税を申告すればよいのか迷ってしまいますよね。この記事では、相続により事業を引き継いだ場合の消費税の納税義務について、未分割の場合の申告割合や具体的な判定基準などを優しくわかりやすく解説していきます。

消費税の納税義務の基本的な仕組み

まずは、どのような場合に消費税を納める義務が発生するのか、基本的な仕組みを確認していきましょう。事業を行っているからといって、必ずしもすぐに消費税を納めなければならないわけではありません。

課税事業者となる原則的な基準

消費税を納める義務がある事業者のことを課税事業者と呼びます。個人事業主の場合、原則としてその年の2年前である基準期間の課税売上高が1000万円を超えているかどうかで判定します。例えば、今年の消費税を納める必要があるかは、2年前の1月1日から12月31日までの課税売上高が1000万円を超えているかどうかで決まります。居住用の家賃は消費税がかかりませんが、店舗や駐車場などの貸付による収入は課税売上高に含まれます。

特定期間の売上高による判定

2年前の課税売上高が1000万円以下であっても、例外として課税事業者になる場合があります。それが特定期間による判定です。個人事業主の場合、前年の1月1日から6月30日までの半年間を特定期間と呼びます。この半年間の課税売上高が1000万円を超え、かつ、従業員などに支払った給与の合計額も1000万円を超えている場合は、その年から消費税を納める義務が発生します。

個人事業主の免税事業者とは

2年前の課税売上高が1000万円以下であり、前年の1月1日から6月30日までの課税売上高または給与支払額も1000万円以下である場合、消費税の納税義務が免除されます。このような事業者を免税事業者と呼びます。不動産賃貸業を始めたばかりの年や、事業の規模が小さい間は、原則としてこの免税事業者として扱われます。

相続があった年の消費税の納税義務

事業を引き継いだ相続人自身がこれまで免税事業者であったとしても、亡くなった方の売上規模によっては、相続したその年からすぐに消費税を納める義務が発生することがあります。具体的に見ていきましょう。

亡くなった方の売上が1000万円を超える場合

相続人自身の2年前の課税売上高が1000万円以下であっても、亡くなった方の2年前の課税売上高が1000万円を超えている場合、特例が適用されます。この場合、相続があった日の翌日からその年の12月31日までの期間について、相続人は消費税の納税義務が免除されません。つまり、引き継いだ直後から課税事業者として消費税を納める必要があります。

亡くなった方の売上が1000万円以下の場合

一方で、亡くなった方の2年前の課税売上高が1000万円以下であれば、原則通り相続があった年の消費税の納税義務は免除されます。ただし、相続人自身がすでに課税事業者を選択する届出書を提出している場合などは、免除されないため注意が必要です。

亡くなった方の2年前の課税売上高 相続があった年の相続人の納税義務
1000万円を超える場合 相続日の翌日から課税事業者になる
1000万円以下の場合 原則として免税事業者のまま

相続の翌年や翌々年の消費税の納税義務

相続があった年だけでなく、その翌年や翌々年についても特別な判定方法が設けられています。相続人自身の過去の売上だけでなく、亡くなった方の売上も考慮して計算する必要があります。

相続人と亡くなった方の売上高を合算して判定

相続があった年の翌年または翌々年の納税義務は、相続人の2年前の課税売上高と亡くなった方の2年前の課税売上高を合計した金額が1000万円を超えるかどうかで判定します。もし合計額が1000万円を超える場合は、その年は消費税を納める義務が発生します。ご自身の売上が少なくても、引き継いだ事業の規模が大きかった場合は課税事業者になる可能性が高いため、過去の売上データをしっかりと確認しておくことが大切です。

不動産が未分割の場合の消費税の申告割合と誰が払うか

相続人が複数人いて、誰がどの不動産を引き継ぐか話し合い(遺産分割協議)が終わっていない状態を未分割と呼びます。この期間中の家賃収入から生じる消費税は、一体誰がどのように申告するのでしょうか。

未分割期間中の納税義務者の判定と申告割合

遺産が分割されるまでの間は、特定の誰かが事業を引き継いだと決まっていないため、各相続人が共同して事業を引き継いだものとして取り扱われます。この場合、消費税の納税義務の判定は、亡くなった方の2年前の課税売上高に、各相続人の法定相続分(法律で定められた相続割合)を掛けた金額で行います。例えば、亡くなった方の売上が1800万円で、ご自身の法定相続分が2分の1の場合、1800万円の2分の1である900万円がご自身の基準となる売上高です。この金額が1000万円以下であれば、ご自身は免税事業者となります。実際の消費税の申告と納税についても、未分割の期間に発生した売上は法定相続分の割合に応じて各相続人がそれぞれ行うことになります。

遺産分割協議が成立した後の消費税の扱い

未分割の状態で数ヶ月が経過した後に遺産分割協議が成立し、誰が不動産を取得するか確定した場合の扱いはどうなるのでしょうか。法律上、遺産の分割は相続が開始した日に遡って効力を持ちます。しかし消費税の計算においては、過去に遡って売上を訂正したり申告をやり直したりすることはしません。相続が起きた日から遺産分割が成立した日までの期間は法定相続分で計算し、成立した日の翌日からは実際に不動産を取得した人が全額を自身の売上として計算し、申告することになります。

対象となる期間 消費税の申告割合と計算方法
相続開始日〜遺産分割協議成立日 法定相続分の割合で各相続人が計算
遺産分割協議成立日の翌日〜12月31日 実際に不動産を取得した人が全額を計算

事業を引き継いだ場合に必要な消費税の手続き

相続によって消費税の納税義務が発生したり、新たに制度を利用したりする場合には、税務署への届出が必要になります。自動的に手続きが終わるわけではないので注意しましょう。

消費税課税事業者届出書の提出

相続によって亡くなった方の事業を引き継いだ結果、2年前の課税売上高の合計が1000万円を超えて課税事業者となった場合は、速やかに消費税課税事業者届出書を管轄の税務署長に提出する必要があります。また、併せて「相続・合併・分割等があったことにより課税事業者となる場合の付表」という書類も必要になりますので、忘れずに準備してくださいね。

適格請求書発行事業者(インボイス)の手続き

亡くなった方がインボイス制度の適格請求書発行事業者であった場合、その登録番号を相続人がそのまま引き継ぐことはできません。相続人が引き続き適格請求書を発行したい場合は、新たに適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する必要があります。ただし、相続があった日の翌日から4ヶ月を経過する日までは、亡くなった方の登録番号を相続人のものとみなして利用できる特例措置が設けられていますので、この期間内に手続きを済ませましょう。

まとめ

相続で不動産賃貸業を引き継いだ場合、亡くなった方の過去の売上高を引き継いで消費税の納税義務を判定することになります。特に不動産が未分割の状態では、法定相続分の割合に応じて各相続人が共同で事業を引き継いだとみなされるため、ご自身の法定相続分を掛けた金額で1000万円を超えるかどうかの確認が必要です。また、遺産分割協議が成立したとしても、消費税の計算においては過去に遡って訂正することはないという点も重要です。消費税の計算や判定は非常に複雑ですので、迷ったときは早めに専門家に相談して正しい手続きを進めてくださいね。

参考文献

国税庁 No.6602 相続で事業を引き継いだ場合の納税義務について

相続による消費税のよくある質問まとめ

Q. 相続した不動産から家賃収入がありますが、消費税はかかりますか?

A. 居住用の家賃収入には消費税はかかりませんが、事務所や店舗、駐車場などの貸付けによる収入には消費税がかかります。

Q. 不動産が未分割の場合、消費税の申告は誰が行いますか?

A. 遺産分割の話し合いが終わるまでは、法定相続人全員が法定相続分の割合に応じて売上を計算し、それぞれが申告と納税を行います。

Q. 遺産分割協議が終わったら、過去の消費税の申告をやり直す必要がありますか?

A. 遺産分割協議が成立しても、消費税の計算においては過去に遡って売上を訂正したり、申告をやり直したりする必要はありません。

Q. 亡くなった親が消費税を納めていましたが、引き継いだ私もすぐに納める必要がありますか?

A. 亡くなった方の2年前の課税売上高が1000万円を超えている場合、相続した日の翌日からその年の12月31日までの売上について、消費税を納める義務が発生します。

Q. 消費税の免税事業者になるための手続きはありますか?

A. ご自身と亡くなった方の基準となる課税売上高が1000万円以下であれば、原則として自動的に免税事業者になります。特別な届出は不要ですが、過去に課税事業者を選択している場合は手続きが必要です。

Q. 亡くなった方がインボイスに登録していましたが、そのまま使えますか?

A. 登録番号は引き継ぐことができません。相続人が引き続きインボイスを発行したい場合は、新たに適格請求書発行事業者の登録申請を行う必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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