最近、数時間や1日単位で働くスキマバイトを活用する企業が増えていますね。しかし、いざスキマバイトのスタッフを直接雇用した際に迷いやすいのが、年末調整や源泉徴収の対応です。「単発のアルバイトでも年末調整は必要なの?」「源泉徴収票は発行するべき?」といった疑問をお持ちの担当者様も多いのではないでしょうか。今回は、スキマバイトを直接雇用した時の年末調整の留意点について、具体的な金額や条件を交えながらわかりやすく解説していきます。
スキマバイトの直接雇用と税務上の基本ルール
スキマバイトのスタッフにお仕事を依頼する場合、契約形態には大きく分けて直接雇用と業務委託があります。直接雇用として労働契約を結んだ場合、支払う報酬は給与所得として扱われます。そのため、基本的には通常のアルバイトやパートスタッフと同じように税務上のルールが適用され、要件を満たせば年末調整の対象にもなり得るのです。単発や短時間の勤務であっても、労働の対価として給与を支払う以上、正しい源泉徴収や管理が求められます。
給与所得と業務委託の報酬の違い
会社がスタッフの働く時間や場所を指定し、具体的な業務の指示を出して働いてもらう場合は直接雇用となります。このときに支払うお金は給与所得となり、給与計算や源泉徴収、条件によっては年末調整が必要です。一方で業務委託として契約した場合は、給与ではなく事業所得や雑所得となるため、年末調整の対象外となります。まずは契約の実態がどちらに当てはまるのかをしっかり確認しましょう。
源泉徴収税額表の3つの区分の理解
直接雇用で給与を支払う際、所得税の源泉徴収を行う必要がありますが、その計算には給与所得の源泉徴収税額表を使用します。適用される区分には「甲欄」「乙欄」「丙欄」の3種類があり、スキマバイトの勤務実態や提出書類によってどの区分を使うかが変わります。ここを間違えると税務上のトラブルにつながるため、正しい区分の判断が不可欠です。
| 区分 | 適用される主な条件 |
|---|---|
| 甲欄 | 給与所得者の扶養控除等申告書を提出している主たる給与の場合 |
| 乙欄 | 扶養控除等申告書を提出していない従たる給与の場合 |
| 丙欄 | 日雇いなどで日々給与を支払い、雇用期間が継続して2ヶ月以内の場合 |
扶養控除等申告書の提出の有無
年末調整を行うためには、スタッフから給与所得者の扶養控除等申告書が提出されていることが絶対条件です。スキマバイトの場合、他でメインの仕事をしているダブルワーカーの方も多く、自社には申告書を提出しないケースがよくあります。申告書の提出がなければ乙欄や丙欄での源泉徴収となり、自社での年末調整は行えません。
スキマバイトで年末調整が必要になるケース
基本的に単発で働くスキマバイトでは年末調整を行わないことが多いですが、一定の条件を満たせば必要になるケースもあります。年末調整は、その年の1月1日から12月31日までに支払った給与の総額から正しい所得税を計算し、すでに源泉徴収した税額との過不足を精算する大切な手続きです。自社で手続きをすべきかどうか、スタッフの状況を適切に把握しておきましょう。
自社に扶養控除等申告書を提出している場合
スキマバイトのスタッフであっても、自社に給与所得者の扶養控除等申告書を提出しており、その年の年末まで継続して雇用している場合は、自社で年末調整を行う必要があります。この場合、給与計算では税額表の甲欄が適用されます。給与所得の基礎控除48万円と給与所得控除55万円を合わせた103万円を超えなくても、甲欄適用者で年末まで在籍していれば年末調整の対象です。
年中途で就職し年末まで在籍している場合
他社を退職した後に自社でスキマバイトとして直接雇用され、年末時点で自社に在籍し、かつ扶養控除等申告書を提出している場合も年末調整の対象です。この際、前職があるスタッフからは前の職場の源泉徴収票を提出してもらい、自社の給与と合算して年末調整の計算を行う必要があります。
スキマバイトで年末調整が不要になるケース
多くのスキマバイトスタッフは、実は年末調整の対象外となるケースに当てはまります。単発やごく短期間の雇用であったり、他社をメインの職場としている場合は、自社で年末調整を行う義務はありません。ただし、年末調整が不要であっても源泉徴収や必要な書類の発行といった業務は残るため、留意点として押さえておいてくださいね。
日雇い労働として丙欄が適用される場合
雇用期間が継続して2ヶ月以内であり、日々給与を計算して支払う日雇い契約のスキマバイトには、源泉徴収税額表の丙欄が適用されます。丙欄が適用されるスタッフは年末調整の対象外となります。なお、丙欄の場合は日額の給与が9,300円未満であれば、源泉徴収する所得税は0円となります。
ダブルワークで他社がメインの職場の場合
スキマバイトのスタッフが他社で正社員やメインのアルバイトとして働いており、そちらの会社に扶養控除等申告書を提出している場合、自社の給与は従たる給与として扱われます。このときは税額表の乙欄を適用して源泉徴収を行い、自社での年末調整は行いません。スタッフ自身が翌年に確定申告を行って税金の精算をすることになります。
企業が注意すべき源泉徴収票や給与支払報告書の発行
スキマバイトのスタッフに直接雇用で給与を支払った場合、金額の大小や勤務期間の短さに関わらず、企業側には大切な義務が発生します。それが源泉徴収票の交付と、各市区町村への給与支払報告書の提出です。「1日しか働いていないから発行しなくていい」というわけではないので、漏れがないようにしっかり対応しましょう。
1日だけの勤務でも源泉徴収票の交付は必須
労働の対価として給与を支払った以上、たとえ1日だけのスキマバイトであっても、企業はスタッフに対して源泉徴収票を交付する義務があります。退職後1ヶ月以内に発行し、スタッフの手に渡るように手配してください。電子交付に同意をもらっていれば、PDFファイルなどのデータで送付することも可能です。
給与支払報告書の市区町村への提出基準
源泉徴収票と併せて注意したいのが、スタッフの住む市区町村へ提出する給与支払報告書です。原則としてすべての給与所得者について提出が必要ですが、退職したスタッフでその年の給与支払総額が30万円以下の場合は、市区町村への提出が免除されるという特例があります。スキマバイトの場合は年間30万円以下に収まることが多いですが、市区町村によっては独自のルールを設けていることもあるため確認が必要です。
| 書類の種類 | 提出先と提出の条件 |
|---|---|
| 源泉徴収票 | スタッフ本人へ交付(支払金額にかかわらず全件交付義務あり) |
| 給与支払報告書 | スタッフの住所地の市区町村へ提出(退職者で年収30万円以下は免除される場合あり) |
スキマバイトの年末調整業務をスムーズに進めるポイント
単発のスタッフが多くなると、企業側の労務管理や税務処理の負担は大きくなりがちです。特に年末調整や源泉徴収票の発行時期に慌てないためには、スタッフを雇用した最初のタイミングでの確認と準備が重要になります。留意点をしっかり押さえて、日々の管理をスムーズに進めていきましょう。
雇用時の必要情報の確実な回収
源泉徴収票や給与支払報告書を正しく作成するためには、スタッフの正確な氏名、住所、生年月日、そしてマイナンバーの提出が必要です。単発のスキマバイトであっても、雇用契約を結ぶ際にこれらの情報を確実に回収する仕組みを整えておくことが大切です。後から連絡が取れなくなって書類が発行できないというトラブルを防ぐことができます。
給与計算システムでの税額表区分の適切な設定
スキマバイトの給与を計算する際、甲欄、乙欄、丙欄のどの区分を適用するかをシステム上で正しく設定しておくことが、後々の修正の手間を省くコツです。特に日雇いで丙欄を適用していたスタッフが、継続して2ヶ月を超えて働くことになった場合は、3ヶ月目からは甲欄または乙欄に変更しなければならないという税務上のルールがあるため、勤務期間の管理にも注意を払いましょう。
スキマバイトの直接雇用に関する年末調整のまとめ
スキマバイトを直接雇用した時の年末調整の留意点について解説してきました。スキマバイトであっても給与所得となるため、原則として源泉徴収や源泉徴収票の発行が必要です。多くの場合、日雇いの丙欄適用や従たる給与の乙欄適用となり自社での年末調整は不要になりますが、扶養控除等申告書が提出されている場合は年末調整が必要になることもあります。正しい税務知識を持って、スタッフも企業も安心して働ける環境を整えていきましょう。
参考文献
スキマバイトの年末調整に関するよくある質問まとめ
Q.スキマバイトの給与は年末調整の対象になりますか?
A.自社に給与所得者の扶養控除等申告書を提出しており、年末まで雇用が継続している場合は年末調整の対象になります。それ以外の場合は対象外です。
Q.1日だけのスキマバイトでも源泉徴収票の発行は必要ですか?
A.はい、必要です。労働の対価として直接雇用で給与を支払った場合、勤務日数や金額に関わらず源泉徴収票を交付する義務があります。
Q.スキマバイトの従業員から扶養控除等申告書の提出は必要ですか?
A.自社をメインの職場として源泉徴収の甲欄を適用し、年末調整を行う場合には提出が必要です。他社がメインの場合は提出は不要です。
Q.源泉徴収税額表の丙欄が適用される条件は何ですか?
A.雇用期間があらかじめ継続して2ヶ月以内と定められており、日々給与を計算して支払う日雇い労働の場合に適用されます。
Q.スキマバイトの給与支払報告書は市区町村へ提出が必要ですか?
A.原則として必要ですが、退職したスタッフでその年の給与支払総額が30万円以下の場合は提出が免除される特例があります。
Q.複数の会社で働いている場合、年末調整はどうなりますか?
A.扶養控除等申告書を提出している1社(主たる職場)でのみ年末調整を行い、その他の職場の給与は合算して自身で確定申告を行います。