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相続人が行方不明の場合の相続税申告を完全解説

2025-09-27
目次

相続が発生した際、相続人の中に連絡が取れない方や行方不明の方がいると、手続きが前に進まず不安になってしまいますよね。実は、相続人が行方不明の場合でも、相続税の申告期限である「亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」というルールは変わりません。この記事では、行方不明の相続人がいる場合に、どのように遺産分割協議を進め、相続税申告を完了させればよいのか、具体的な手続きや費用を含めて優しく丁寧に解説いたします。

行方不明の相続人がいると相続税申告はどうなる?

相続の手続きを進める上で、相続人全員の合意は絶対に欠かせないルールとなっています。ここでは、行方不明の方がいることで生じる影響や、まず最初に行うべき調査についてお話しします。

遺産分割協議は相続人全員の参加が必須

亡くなった方の財産を誰がどれくらい受け継ぐかを決める話し合いを遺産分割協議と呼びます。この協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。もし、行方不明の相続人を一人でも仲間外れにして遺産分割協議書を作成しても、法律上は無効となってしまいます。預貯金の解約や不動産の名義変更といった手続きも一切進められなくなるため、まずは全員の状況を把握することがとても重要です。

必要な手続き 全員の合意の要否
遺産分割協議書の作成 全員の署名と実印が必要
預貯金の解約・名義変更 原則として全員の合意が必要
不動産の相続登記 遺産分割による登記は全員の合意が必要

相続税の申告期限は待ってくれない

相続税の申告と納税の期限は、原則として亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と厳格に定められています。相続人が行方不明で遺産分割が終わっていない場合でも、この期限が延長されることはありません。もし期限に遅れてしまうと、本来の税金に加えて、延滞税無申告加算税といった重いペナルティが課されてしまいます。そのため、まずは法定相続分(法律で定められた割合)で財産を分けたと仮定して、期限内に申告と納税を済ませる必要があります。

まずは戸籍の附票で現住所を確認しよう

連絡が途絶えている相続人がいる場合、最初に行うべきは「現在の住所」を調べることです。本籍地の市区町村役場で戸籍の附票を取得することで、これまでの住所の移り変わりや現在の住民登録地を確認できます。住所が判明したら、まずは丁寧な手紙を送って、相続が発生したことや手続きへの協力を呼びかけてみましょう。

連絡が取れない場合の具体的な2つの手続き

手紙を送っても返事がない場合や、そもそもどこにいるのか全く分からない場合は、家庭裁判所での法的な手続きが必要になります。状況に合わせて、主に2つの方法から選びます。

不在者財産管理人を選任する方法

行方不明で連絡が取れない状態が続いている場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立てを行います。不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産を管理する人のことです。他の相続人や検察官などの利害関係人が、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。候補者として利害関係のない親族を立てることもできますが、適任者がいない場合は弁護士や司法書士などの専門家が選ばれます。

選任にかかる費用と期間の目安

不在者財産管理人の選任手続きには、一定の費用と時間がかかります。申し立てから実際に選任されるまでには、おおよそ1ヶ月から2ヶ月程度の期間を見込んでおく必要があります。

費用の種類 具体的な金額・目安
収入印紙代 800円
連絡用の郵便切手代 数百円〜数千円(裁判所により異なる)
予納金(専門家が選ばれた場合など) 20万円〜100万円程度

専門家が管理人に選ばれた場合、管理のための費用として予納金を納めるよう裁判所から求められることがあります。

7年以上行方不明なら失踪宣告の申立て

行方不明の期間が非常に長く、生死すら分からない状態が7年以上続いている場合は、失踪宣告の申し立てを検討します。失踪宣告が認められると、法律上はその方が「亡くなったもの」として扱われます。そのため、行方不明者を除いた相続人で遺産分割協議を進めることや、行方不明者の子どもが代わりに相続(代襲相続)することが可能になります。ただし、申し立てから宣告までに半年から1年半ほどかかるため、申告期限の10ヶ月には間に合わないことが多い点に注意が必要です。

不在者財産管理人を交えた遺産分割と申告

不在者財産管理人が選任されたら、いよいよ遺産分割協議を進めることができます。ただし、管理人がそのまま自由に話し合いに参加できるわけではありません。

裁判所の権限外行為許可が必要

不在者財産管理人の本来の役割は「財産をそのまま大切に保管すること」です。そのため、遺産分割協議に参加して財産の分け方を決めるには、家庭裁判所から権限外行為許可をもらう必要があります。許可をもらうためには、あらかじめ「どのような分け方にするか」という遺産分割協議の案を作成し、裁判所に提出してチェックを受けなければなりません。

不利な遺産分割は認められない点に注意

裁判所は行方不明者の財産や権利を守る立場にあります。そのため、行方不明者の取り分が極端に少ない、あるいは全くゼロになるような不利な内容の遺産分割協議案は、特別な事情がない限り許可されません。原則として、行方不明者が法定相続分(法律で定められた割合)と同等の財産を受け取れる内容にする必要があります。例えば、現金をそのまま確保しておくか、他の相続人が行方不明者の代わりにお金を管理する「帰来時弁済型」といった方法をとることが一般的です。

不在者財産管理人が代理で申告を行う

裁判所の許可を得て遺産分割協議が無事にまとまったら、不在者財産管理人は行方不明者の法定代理人として、相続税申告書の提出も行うことができます。申告期限までにこれらの手続きがすべて完了すれば、ペナルティを受けることなく、スムーズに相続税の申告と納税を終わらせることができます。

未分割のまま相続税申告を先に行うケース

不在者財産管理人の選任や失踪宣告の手続きに時間がかかり、10ヶ月の申告期限までに遺産分割協議が間に合わないこともよくあります。その場合の対処法を分かりやすく解説します。

配偶者の税額軽減などの特例が使えないデメリット

期限までに遺産分割が間に合わない場合、まずは「未分割」として、各相続人が法定相続分で財産を受け取ったと仮定して申告と納税を行います。しかし、未分割の申告では、配偶者が1億6,000万円まで無税になる配偶者の税額軽減や、土地の評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例といった、税金を大きく減らせる有利な制度を使うことができません。そのため、一旦は多めの税金を納める必要が出てしまいます。

特例の名称 未分割時の適用
配偶者の税額軽減 適用不可(分割後に適用可能)
小規模宅地等の特例 適用不可(分割後に適用可能)

3年以内の分割見込書を提出して特例を適用する

多めに納めた税金を後から取り戻すためには、最初の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を一緒に提出しておきます。これを提出しておけば、申告期限から3年以内に無事に遺産分割がまとまった際、特例を適用して再計算し、納めすぎた税金を返してもらう手続き(更正の請求)ができます。もし裁判所の手続きなどで3年以上かかってしまう場合でも、やむを得ない事情がある旨の承認申請書を出せば、期限を延長することが可能です。

行方不明の相続人対策には生前の遺言書が有効

これまでご説明した通り、行方不明の相続人がいると手続きは非常に複雑になり、残されたご家族の負担は大きなものになります。こうした事態を防ぐための生前対策をご紹介します。

遺言書があれば遺産分割協議を省略できる

将来、相続人の中に行方不明になる可能性のある方がいる場合、最も有効な対策は生前に遺言書を作成しておくことです。法的に有効な遺言書があれば、その内容に従って財産を分けることができるため、原則として遺産分割協議を行う必要がなくなります。戸籍の附票を探したり、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらったりする多大な手間と費用を完全に省くことができます。

遺言執行者を指定して手続きをスムーズに

遺言書を作成する際は、あわせて遺言執行者を指定しておくことを強くお勧めします。遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実行する権限を持った人のことです。遺言執行者がいれば、行方不明者や他の相続人の同意や実印をもらうことなく、遺言執行者が単独で不動産の名義変更や預貯金の解約手続きを進めることができます。信頼できる親族や、専門家を指定しておくと安心です。

まとめ

相続人の中に行方不明の方がいる場合でも、相続税申告の10ヶ月という期限は待ってくれません。まずは戸籍の附票で住所を確認し、連絡が取れない場合は家庭裁判所で「不在者財産管理人の選任」や「失踪宣告」といった法的な手続きを進める必要があります。期限に間に合わない場合は、一旦未分割で申告し「3年以内の分割見込書」を提出して、後から特例を受ける準備をしておきましょう。また、このような複雑な手続きを未然に防ぐためには、生前の遺言書作成が非常に効果的です。大切なご家族が困らないよう、早めの対策と専門家への相談を検討してみてくださいね。

参考文献

国税庁 No.4102 相続税がかかる場合
裁判所 不在者財産管理人選任
裁判所 失踪宣告

相続人が行方不明の場合のよくある質問まとめ

Q.行方不明の相続人を除外して遺産分割協議をしてもいいですか?

A.いいえ、できません。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一人でも欠けると法律上無効になります。不在者財産管理人の選任などの手続きが必要です。

Q.行方不明の相続人がいる場合、相続税の申告期限は延長されますか?

A.原則として延長されません。亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納税を行う必要があります。間に合わない場合は、法定相続分で未分割として仮申告を行います。

Q.行方不明の相続人の住所はどうやって調べればいいですか?

A.本籍地の市区町村役場で「戸籍の附票」を取得することで、住民登録されている現在の住所や過去の住所の移り変わりを確認することができます。

Q.不在者財産管理人を立てれば自由に財産を分けられますか?

A.自由には分けられません。家庭裁判所の権限外行為許可が必要であり、行方不明者の法定相続分を下回るような不利な遺産分割は原則として認められません。

Q.失踪宣告と不在者財産管理人のどちらの手続きを選ぶべきですか?

A.行方不明になってから7年以上経過し生死不明の場合は失踪宣告を検討しますが、期間が7年未満の場合や単に連絡が取れない場合は不在者財産管理人の選任を申し立てます。

Q.生前にできる行方不明の相続人対策はありますか?

A.遺言書の作成が最も有効です。遺言書で財産の分け方を指定し、遺言執行者を選任しておけば、遺産分割協議をすることなくスムーズに相続手続きを進められます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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