会社を経営されていると、グループ会社からの配当金を受け取る機会もあるのではないでしょうか。特に、上場会社が発行している非上場の種類株式からの支払配当の源泉はどうすればよいか、迷われることも多いと思います。なお、受け取るのは当該上場会社の50%超を保有する法人の場合、税制改正によって取り扱いが大きく変わりました。この記事では、具体的な要件や手続きについて、わかりやすく丁寧にお伝えしていきます。
配当金の源泉徴収ルールの基本をおさらいしましょう
まずは、法人が受け取る配当金に関する源泉徴収の基本的なルールについて確認していきましょう。配当金を支払う会社は、原則として配当金を支払う際に税金を天引きして国に納める義務があります。これを源泉徴収と呼びます。通常であれば、法人が配当金を受け取る際には、あらかじめ税金が差し引かれた後の金額が手元に振り込まれることになります。
上場株式と非上場株式の配当の違いとは
配当金の源泉徴収税率は、株式の種類によって異なります。一般的な上場株式の配当金であれば、所得税15%と復興特別所得税0.315%を合わせた15.315%が源泉徴収されます。一方で、非上場株式の配当金の場合は、所得税20%と復興特別所得税0.42%を合わせた20.42%が源泉徴収される仕組みです。ただし、今回のように上場会社が発行する株式であれば、それが非上場の種類株式であったとしても、税務上は原則として上場株式等と同様の扱いを受けるケースが多くなります。
| 株式の区分 | 源泉徴収税率(法人受取の場合) |
|---|---|
| 上場株式等の配当 | 15.315% |
| 非上場株式の配当 | 20.42% |
令和5年10月からの源泉徴収不要制度とは
実は、令和4年度の税制改正により、令和5年(2023年)10月1日以後に支払われる一定の配当金については、源泉徴収が不要となる新しいルールが導入されました。これは、グループ法人間の二重課税を解消し、事務負担を軽減することを目的としています。具体的には、配当金を受け取る法人が、配当金を支払う法人の株式を3分の1超保有している場合、所得税の源泉徴収を行わずに全額をそのまま支払うことができるようになりました。
法人が受け取る配当の益金不算入制度との関係
源泉徴収のルールとは別に、法人税の計算には「受取配当等の益金不算入制度」というものがあります。これは、法人が受け取った配当金のうち、一定割合を会社の利益(益金)に含めなくてもよいという制度です。すでに配当金を支払う会社で法人税が課税された後の利益から配当が行われているため、受け取った会社で再度課税されるのを防ぐための仕組みです。この益金不算入制度の割合も、株式の保有割合によって異なります。
50%超を保有する法人が受け取る配当の取り扱い
それでは、今回のテーマである「当該上場会社の50%超を保有する法人」が配当を受け取るケースについて詳しく見ていきましょう。50%超という高い保有割合がある場合、税務上は非常に有利な取り扱いを受けることができます。
発行済株式の1/3超を保有している場合の特例
先ほど触れた通り、令和5年10月1日以降、配当の基準日において発行済株式総数の3分の1超(約33.3%超)を直接保有している法人に対する配当金は、源泉徴収が不要となります。今回、受け取る法人は50%超を保有しているため、この「3分の1超」という要件をしっかりと満たしています。したがって、配当金を支払う上場会社は、源泉徴収を行わずに全額をそのまま支払う処理を行います。
| 株式の保有割合 | 源泉徴収の有無(令和5年10月以降) |
|---|---|
| 3分の1超を保有する法人 | 源泉徴収不要 |
| 3分の1以下の法人 | 源泉徴収あり(15.315%等) |
上場会社が発行する非上場の種類株式という特殊性
ここで疑問になるのが「上場会社が発行しているけれど、該当の株式自体は非上場の種類株式である」という点です。税制上、源泉徴収不要制度の適用要件は「配当等の基準日において3分の1超を保有しているか」という保有割合に焦点が当てられています。つまり、対象となる株式が上場されているか非上場の種類株式であるかを問わず、保有割合の要件を満たしていれば、源泉徴収は不要として取り扱って問題ありません。
具体的な源泉徴収の要否と手続きの流れ
結論として、50%超を保有する法人へ配当を支払う場合、源泉徴収は一切行いません。支払う上場会社側は、配当決議で定められた金額をそのまま100%受け取り法人へ振り込みます。その後、税務署に対して「配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書」を提出する際にも、源泉徴収税額を0円として記載して提出することになります。受け取る法人側も、源泉所得税が引かれていないため、確定申告時に所得税額控除の計算を行う必要がなくなります。
益金不算入制度の適用要件と注意点
源泉徴収が不要になることと、受け取った配当金に法人税がかからない(益金不算入)ことは、別々の制度です。ここでは、50%超を保有している法人が、受け取った配当金をどのように法人税の申告で処理すべきかを解説します。
関連法人株式等に該当するための保有期間
50%超を保有している場合、その株式は法人税法上「関連法人株式等」に分類されます。関連法人株式等からの配当金は、受け取った配当金の100%が益金不算入となります(ただし、その株式を取得するための借入金がある場合は、その負債利子を控除した額となります)。ここで注意したいのは保有期間の要件です。関連法人株式等として認められるためには、配当の計算期間の初日から末日まで、継続して3分の1超を保有している必要があります。
| 株式の区分(持株割合) | 益金不算入の割合 |
|---|---|
| 完全子法人株式等(100%保有) | 配当金の100% |
| 関連法人株式等(3分の1超〜100%未満) | 配当金の100%(負債利子控除あり) |
源泉徴収の判定時期と益金不算入の判定時期の違い
源泉徴収不要制度と益金不算入制度では、保有割合を判定するタイミングが異なります。源泉徴収が不要かどうかの判定は「配当の基準日時点」での直接保有割合で行います。一方で、益金不算入制度の判定は「配当計算期間の継続保有」が要件となります。例えば、基準日の直前に株式を買い増して50%超になった場合、源泉徴収は不要になりますが、計算期間を通じて保有していなかった場合は、関連法人株式等ではなく「その他の株式等(50%益金不算入)」に該当してしまうケースがあるため注意が必要です。
手取り額を最大化するための実務上のポイント
配当金の手取り額を最大化し、税務上のメリットを最大限に活かすためには、株式の保有割合だけでなく、保有期間をしっかりと管理することが大切です。とくに、種類株式を発行・取得する際には、次回の配当基準日や計算期間を逆算してスケジュールを立てることで、配当金の100%益金不算入を確実に適用させることができます。
種類株式を発行・保有する際の税務上の留意点
普通株式ではなく「種類株式」を発行したり保有したりする場合、一般的な株式とは異なる特有の注意点が存在します。思わぬ税務リスクを抱えないためにも、事前にポイントを押さえておきましょう。
種類株式の評価と配当の決定に関する注意点
非上場の種類株式は、議決権の制限や優先配当権など、普通株式とは異なる権利が付与されています。そのため、税務上の株価評価が非常に複雑になります。配当金の額を決定する際も、定款に定められた優先配当の規定に従って正確に計算しなければなりません。不当に高額な配当を行ったり、逆に配当を過少にしたりすると、実質的な贈与や寄附金とみなされるリスクがあるため、慎重な検討が求められます。
税務調査で指摘されやすいポイント
税務調査において種類株式の配当がチェックされる際、もっとも注目されるのは「適正な保有割合の算定」と「負債利子控除の計算漏れ」です。種類株式を含む複数の株式を発行している場合、発行済株式の総数に対する保有割合の計算を誤ってしまうケースが散見されます。また、関連法人株式等の配当について益金不算入を適用する際、会社全体で支払っている支払利息の中から、種類株式に対応する部分の負債利子を適切に計算して差し引いているかが厳しく確認されます。
事前のシミュレーションの重要性
種類株式を通じた配当政策を実行する前には、支払う側と受け取る側の双方で税務シミュレーションを行うことが不可欠です。源泉徴収の手間が省けるだけでなく、法人税の申告でどれだけ益金不算入として計上できるのか、借入金の利息がどれくらい影響するのかを具体的に数値化しておくことで、安心して手続きを進めることができます。
実務で迷いやすいケースと具体的な対処法
実際のビジネスの現場では、ルール通りに当てはめるのが難しいイレギュラーなケースも発生します。ここでは、よくある疑問とその対処法をご紹介します。
期中に株式を買い増して50%超になった場合
事業年度の途中で株式を買い増し、保有割合が30%から55%に増えた場合を考えてみましょう。配当の基準日において55%(3分の1超)を保有しているため、令和5年10月以降の配当であれば源泉徴収は不要です。しかし、法人税の益金不算入の計算においては、配当計算期間の初日から継続して3分の1超を保有していなかったことになります。そのため、この配当金については「関連法人株式等」としての100%益金不算入は受けられず、「その他の株式等」として配当金の50%のみが益金不算入となる点に気をつけてください。
グループ法人税制が適用されるケース
もし、受け取る法人が当該上場会社の株式を100%保有している完全親法人であった場合は、完全支配関係があるとして「グループ法人税制」の対象となります。この場合も源泉徴収は当然不要であり、配当金は「完全子法人株式等」として100%益金不算入となります。さらに、完全子法人株式等の場合は、関連法人株式等とは異なり、負債利子を差し引く必要もありません。受け取った額がそのまま非課税となる非常に強力なメリットがあります。
申告漏れを防ぐためのチェックリスト
経理処理や申告漏れを防ぐために、以下のポイントをチェックリストとして活用してください。
・配当基準日における直接保有割合が3分の1超であることを確認したか
・支払う側は源泉徴収を行わず、全額を支払ったか
・受け取る側は、配当計算期間を通じて3分の1超を保有していたかを確認したか
・関連法人株式等に該当する場合、適切に負債利子控除の計算を行ったか
・支払調書の提出期限(原則として支払確定から1ヶ月以内)を守っているか
まとめ
上場会社が発行する非上場の種類株式から、50%超を保有する法人が配当を受け取る場合、令和5年10月以降は源泉徴収が不要となります。種類株式であっても、基準日において3分の1超を直接保有しているという要件を満たせば、税金が天引きされることなく全額を受け取ることが可能です。また、法人税の計算においては、継続保有要件を満たせば「関連法人株式等」として負債利子を控除した残額の100%が益金不算入となります。源泉徴収の判定時期と益金不算入の判定時期の違いをしっかりと理解し、適切な税務処理を行っていきましょう。
配当金と源泉徴収のよくある質問まとめ
Q.上場会社が発行する非上場の種類株式からの配当は源泉徴収されますか?
A.受け取る法人がその上場会社の株式を基準日において3分の1超保有している場合、令和5年10月1日以後の配当については源泉徴収が不要です。
Q.50%超を保有する法人が配当を受け取る場合、益金不算入制度はどうなりますか?
A.関連法人株式等に該当するため、配当金の100%から負債の利子を控除した金額が益金不算入となります。
Q.源泉徴収不要の判定と益金不算入の判定は同じ時期に行いますか?
A.異なります。源泉徴収の判定は配当の基準日における直接保有割合で行いますが、益金不算入の判定は配当計算期間を通じた継続保有期間で判定します。
Q.非上場の種類株式でも上場株式と同じ税率が適用されますか?
A.上場会社が発行する株式であれば原則として上場株式等として取り扱われますが、保有割合が3分の1超の法人への配当であれば、種類株式であっても源泉徴収は不要です。
Q.種類株式の保有割合はどのように計算して判定しますか?
A.種類株式だけでなく、その法人が発行している自己株式を除くすべての株式の総数に対する保有割合を計算し、3分の1超を保有しているかどうかを判定します。
Q.配当金の源泉徴収が不要になった場合、確定申告の手続きは変わりますか?
A.配当から源泉徴収がされないため、法人税の申告において所得税額控除の適用はありません。受取配当等の益金不算入に関する別表の申告のみを適切に行う必要があります。