税理士法人プライムパートナーズ

税制適格とは?ストックオプションの要件やメリットを徹底解説

2025-11-21
目次

会社が役員や従業員に対して自社の株式をあらかじめ決められた価格で購入できる権利を与える制度をストックオプションと呼びます。その中でも税制適格ストックオプションは、一定の要件を満たすことで税金の負担を大幅に軽くできるとても魅力的な仕組みです。この記事では、税制適格とはどのような意味なのか、他の制度との違いや具体的な適用要件、メリットなどについて詳しく分かりやすく解説していきます。

税制適格ストックオプションとは

税制適格ストックオプションとは、法律で定められた特定の厳しい要件をクリアすることで、特別な税制優遇を受けることができるストックオプションのことです。通常、株式を安く購入して利益が出た場合には高い税金がかかりますが、この制度を正しく活用することで、手元に残る利益を大きく増やすことが可能になります。企業にとっては優秀な人材を確保し、働くモチベーションを高めてもらうための強力なツールとして活用されています。

税制非適格ストックオプションとの違い

要件を満たしていない通常の無償ストックオプションは、税制非適格ストックオプションと呼ばれます。この2つの最も大きな違いは、税金がかかるタイミングと税率です。税制非適格の場合、権利を行使して株式を購入した時点で時価との差額に対して最大55パーセントの所得税などがかかり、さらに株式を売却した時にも20.315パーセントの税金がかかります。つまり、2回も税金を支払う必要があるのです。

有償ストックオプションとの違い

有償ストックオプションは、あらかじめ従業員や役員が自分でお金を支払って株式を購入する権利を買い取る制度です。無料で権利がもらえる税制適格ストックオプションとは異なり、最初に費用の負担が発生します。ただし、自分でお金を出して買っているため金融商品として扱われ、権利を行使して株式を取得した時には税金がかからず、売却した時のみ税金がかかるという特徴があります。

課税されるタイミングの違いまとめ

それぞれのストックオプションにおいて、いつ税金が発生するのかを表にまとめました。このように、どの制度を選ぶかによって手元に残るお金が大きく変わってきますので、慎重に検討することが大切です。

ストックオプションの種類 課税されるタイミング
税制適格ストックオプション 株式を売却した時のみ(1回)
税制非適格ストックオプション 権利を行使した時と株式を売却した時(2回)
有償ストックオプション 株式を売却した時のみ(1回)

税制適格ストックオプションのメリット

企業がストックオプションを導入する際、あえて要件の厳しい税制適格ストックオプションを選ぶのには大きな理由があります。働く側にとって非常に魅力的なメリットが用意されているからです。ここでは代表的な2つのメリットをご紹介します。

税金の負担を大きく減らせる

最大のメリットは、何と言っても税金の負担を大きく減らせることです。先ほどもお伝えした通り、税制非適格の場合は株式を取得した段階で最大55パーセントもの高い税金がかかる可能性があります。しかし、税制適格ストックオプションであれば、株式を取得した時点では一切税金がかかりません。その後、株価が上がって実際に売却し、手元に現金が入ってきたタイミングで一律20.315パーセントの税金を支払うだけで済むため、実質的な手取り額が大幅に増えます。

確定申告の計算が簡単

もう一つのメリットは、確定申告の手間が少なく計算が簡単であることです。取得した株式を売却して利益が出た場合、確定申告を行う必要がありますが、税制適格ストックオプションの場合は計算式がとてもシンプルです。「(売却した価格-権利を行使した価格)×売却した株数」という計算で出た利益に対して、20.315パーセントを掛けるだけで税額が計算できます。必要な書類も少なく、スムーズに申告手続きを進めることができます。

ストックオプション税制の適用要件

大きな税制優遇を受けるためには、租税特別措置法で定められた厳しいルールをすべて守らなければなりません。これらの条件から外れてしまうと、自動的に税制非適格となって多額の税金がかかってしまうため注意が必要です。具体的な適用要件を詳しく見ていきましょう。

付与対象者の範囲

権利をもらえる人の範囲は、会社やその子会社の取締役、執行役、従業員に限定されています。自社の株式の3分の1以上を持っている大口株主やその親族、また社外の監査役などは対象外となります。ただし、国の認定を受けた事業計画に従って企業の成長に貢献するプログラマーや弁護士などの社外高度人材については、例外として付与することが認められています。

権利行使期間と権利行使価額

権利を行使できる期間と、購入する金額にも明確な決まりがあります。まず期間についてですが、原則として権利を与える決議をした日から2年が経過した日から、10年が経過する日までの間に行使しなければなりません。また、権利行使価額は、契約を結んだ時の株式の時価と同じか、それ以上の金額に設定する必要があります。最初から時価より安い値段で買えるような設定はできないルールになっています。

権利行使価額の上限額

1年間に権利を行使できる金額には上限が設けられています。この上限を超えて権利を行使してしまうと、そのとき行使した分全体が税制優遇の対象外となってしまいますので、計画的な行使が必要です。企業の種類によって、以下のように上限額が細かく設定されています。

会社の種類 1年間の権利行使価額の上限
設立から5年未満の株式会社 2400万円
設立5年以上20年未満の未上場企業 3600万円
上場してから5年未満の企業 3600万円
上記にあてはまらない一般的な株式会社 1200万円

令和6年度税制改正のポイント

ストックオプション税制は、時代に合わせてルールが見直されています。特に2024年の税制改正では、スタートアップ企業がより優秀な人材を集めやすくなるように、いくつかの重要な変更が行われました。主なポイントを確認しておきましょう。

社外高度人材の要件緩和

これまで、社外の専門家に税制適格ストックオプションを付与するためには、国家資格を持ってから一定年数以上の実務経験が必要など、厳しい条件がありました。今回の改正により、この実務経験年数の要件が廃止されました。さらに、未上場企業の役員経験者や、大学の教授・准教授なども新たに付与の対象として追加され、より多くの専門家を巻き込みやすくなりました。

株式の自社管理の容認

以前は、権利を行使して取得した株式は、必ず証券会社などの金融機関に預けて管理してもらう必要がありました。しかし、令和6年度の改正により、一定の手続きを踏むことで、企業自身が自社内で株式の管理を行うことが認められるようになりました。これにより、証券会社を利用する際の手数料などのコストや手間を省くことができ、制度を運用しやすくなっています。

税制適格ストックオプションの注意点

非常にメリットの大きい制度ですが、導入や運用にあたっては気をつけるべき点もあります。ルールを正しく理解していないと、後から思わぬトラブルや税金の支払いが発生してしまう可能性があるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。

譲渡の禁止

通常の株式やストックオプションは、特別なルールがない限り家族などに譲ることができます。しかし、税制適格ストックオプションの場合は、法律によって他人への譲渡が固く禁止されています。この権利はあくまで本人が働きによって得たインセンティブであるため、配偶者や親族であっても権利を譲ることはできません。一般的な株式投資とは仕組みが異なる点を忘れないようにしましょう。

まとめ

税制適格ストックオプションは、法律で定められた要件を満たすことで、権利行使時の税金をゼロにし、売却時のみ一律20.315パーセントの課税で済ませることができる非常に優れた制度です。最大55パーセントの税金がかかる税制非適格ストックオプションと比べると、手元に残る利益が大きく変わるため、働く人にとって大きなモチベーションアップに繋がります。行使期間や金額の上限など細かいルールを守る必要はありますが、企業の成長と働く人の利益を一致させる素晴らしい仕組みですので、要件をしっかり確認した上でぜひ有効に活用してみてください。

参考文献

国税庁:No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について

税制適格ストックオプションのよくある質問まとめ

Q.税制適格ストックオプションとは何ですか?

A.法律で定められた一定の要件を満たすことで、権利行使時の税金が免除されるなど、大きな税制優遇を受けることができるストックオプションのことです。

Q.税制非適格ストックオプションとの一番の違いは何ですか?

A.税金がかかるタイミングと税率です。税制非適格は株式取得時と売却時の2回税金がかかり最大55パーセントの税率になることがありますが、税制適格は売却時の1回のみで一律20.315パーセントの税金で済みます。

Q.どのような人が税制適格ストックオプションをもらえますか?

A.基本的に会社や子会社の取締役、執行役、従業員が対象です。ただし大口株主は対象外となり、要件を満たせば弁護士やエンジニアなどの社外高度人材にも付与することができます。

Q.権利を行使できる期間に決まりはありますか?

A.はい、原則として付与する決議をした日から2年が経過した日から、10年が経過する日までの間に行使しなければならないという明確なルールがあります。

Q.年間に購入できる金額に上限はありますか?

A.あります。一般的には年間1200万円までですが、設立5年未満の会社は2400万円、設立5年から20年未満の未上場企業などは3600万円までと上限が引き上げられています。

Q.取得したストックオプションを家族に譲ることはできますか?

A.いいえ、できません。税制適格ストックオプションは法律によって他人への譲渡が固く禁止されているため、配偶者や親族であっても権利を譲渡することは不可能です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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