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財産債務調書とは?対象者の条件や提出義務をわかりやすく解説

2025-11-25
目次

財産債務調書という言葉を聞いて、ご自身が提出の対象になるのか不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。この記事では、財産債務調書とはどのような制度なのか、どのような条件を満たすと提出義務が発生するのか、そして提出を忘れた場合のペナルティなどを、具体的な金額やルールを交えてやさしく解説します。

財産債務調書とは?制度の目的と概要

財産債務調書とは、保有している財産や借入金などの債務の状況を税務署に報告するための書類です。高額な財産をお持ちの方に対して、適正な課税を行うことを目的として導入されました。

財産債務調書が導入された背景

所得税や相続税などは、納税者が自分で税額を計算して申告する仕組みになっています。しかし、国税庁が個人の複雑な財産状況をすべて把握するのは非常に困難です。そこで、多額の資産をお持ちの方に自主的に財産と債務の全体像を報告していただくことで、申告漏れを防ぎ、税金の負担を公平にするために財産債務調書制度が作られました。

令和4年の税制改正のポイント

制度は定期的に見直されており、令和4年の税制改正では提出対象者が大きく広がりました。以前は所得が高い方だけが対象でしたが、改正後は所得金額に関わらず、財産の合計額が10億円以上ある方も新たに提出義務者として追加されています。また、提出期限が翌年の3月15日から6月30日に延長され、準備期間にゆとりができました。

対象となる財産と債務の考え方

調書に記載する財産には、預貯金や有価証券、不動産だけでなく、自動車や貴金属、骨董品、そして近年普及している暗号資産(仮想通貨)も含まれます。一方で、債務には住宅ローンや銀行からの借入金、未払金などが該当します。注意点として、財産の合計額から債務を差し引くことはできません。財産と債務はそれぞれ分けて別々に計算する必要があります。

財産債務調書の提出義務者と条件

ご自身に提出義務があるかどうかは、毎年12月31日時点の所得額と財産額を基準に判断します。大きく分けて2つの基準がありますので、詳しく見ていきましょう。

所得基準と財産基準(3億円・1億円の条件)

1つ目の条件は、所得と財産の両方が一定の基準を超えている場合です。給与所得や事業所得などの合計が2,000万円を超えており、かつ保有する財産の合計額が3億円以上ある方が対象となります。また、財産合計が3億円未満であっても、海外へ移住する際に課税対象となる有価証券などの国外転出特例対象財産を1億円以上持っている場合も提出が必要です。

条件 具体的な基準
所得基準 退職所得を除く各種所得金額の合計が2,000万円超
財産基準 財産の合計額が3億円以上、または国外転出特例対象財産が1億円以上

財産基準のみ(10億円の条件)

2つ目の条件は、令和5年分から新たに加わったルールです。その年の12月31日時点で保有する財産の合計額が10億円以上ある場合、その年の所得金額が2,000万円以下であっても、提出義務が発生します。これにより、事業を引退して所得が少ない方でも、多額の資産を保有している場合は対象となりました。

財産債務調書の提出期限と提出方法

対象となった場合、いつまでに、どこへ提出すればよいのかを確認しておきましょう。

提出期限は翌年の6月30日

財産債務調書の提出期限は、対象となる年の翌年6月30日です。以前は所得税の確定申告と同じ3月15日が期限でしたが、財産の集計には時間がかかるため、現在では期間が延長されています。対象となる財産や債務は、対象年の12月31日時点の状況で計算します。

提出先と手続きの流れ

作成した財産債務調書は、ご自身の住所地を管轄する税務署へ提出します。提出の際は、財産の種類ごとの合計額をまとめた「財産債務調書合計表」も一緒に添付する必要があります。提出方法には、税務署の窓口へ持参するほか、郵送や、国税庁のシステムを利用したオンライン提出(e-Tax)も選択可能です。

項目 詳細内容
提出期限 対象年の翌年6月30日
提出先 お住まいの地域を管轄する税務署

財産の具体的な評価方法

財産債務調書に記載する金額は、原則として12月31日時点の時価または合理的な見積価額で評価します。具体的にどのように計算するのか解説します。

預貯金や有価証券の評価

現金や預貯金は、12月31日時点の預入残高をそのまま記載します。定期預金の場合は、解約したと仮定して計算した利息を加える必要があります。また、上場株式などの有価証券は、12月31日の証券取引所の最終価格(終値)で評価します。非上場株式の場合は、会社の純資産額などをもとに計算した見積価額を使用します。

不動産(土地・建物)の評価

土地や建物といった不動産も原則は時価ですが、毎年価格を正確に調べるのは大変です。そのため、毎年送られてくる固定資産税評価額や、相続税の計算で使う路線価方式や倍率方式で計算した金額を記載することが認められています。

財産の種類 評価方法の目安
預貯金 12月31日時点の預入残高
不動産(土地・建物) 固定資産税評価額など

提出した場合の優遇措置と未提出のペナルティ

財産債務調書の提出は義務ですが、提出しなかった場合やすぐに提出しなかった場合、税金面でどのような影響があるのでしょうか。

期限内に提出した場合の軽減措置

財産債務調書を期限内に正しく提出していると、もし後になって所得税や相続税の申告漏れが見つかってしまった場合でも、その財産に関する過少申告加算税などが通常よりも5%軽減されるという優遇措置が受けられます。正しい報告を推奨するためのメリットと言えます。

未提出や記載漏れがある場合の加重措置

一方で、提出期限を過ぎてしまったり、意図的に財産の記載を漏らしたりした場合はペナルティがあります。未提出の状態で所得税の申告漏れが発覚すると、本来支払うべき罰金(過少申告加算税など)に加えて、さらに5%加重して税金を支払わなければなりません。税金の負担が重くなるため、忘れずに提出することが大切です。

状況 加算税への影響
期限内に提出した場合 過少申告加算税等が5%軽減
未提出・記載漏れの場合 過少申告加算税等が5%加重

まとめ

財産債務調書は、所得が2,000万円を超え、かつ財産が3億円以上ある方や、財産が10億円以上ある方が提出しなければならない重要な書類です。対象となる場合は、対象年の翌年6月30日までに所轄の税務署へ提出する必要があります。提出を怠ると税務調査で申告漏れが指摘された際にペナルティが重くなってしまうため、ご自身の財産をしっかりと把握し、期限内に正しく申告するようにしましょう。

参考文献

国税庁:No.7457 財産債務調書の提出義務

国税庁:財産債務調書制度等の見直しについて

財産債務調書のよくある質問まとめ

Q. 財産債務調書の提出義務はいくらからですか?

A. 所得が2,000万円を超え、かつ財産が3億円以上ある方、または所得に関わらず財産が10億円以上ある方が対象です。

Q. 財産債務調書の提出期限はいつですか?

A. 令和5年分以降は、対象年の翌年6月30日が提出期限となっています。

Q. 不動産の評価額はどのように計算すればよいですか?

A. 土地や建物などの不動産は、原則として年末時点の時価ですが、実務上は固定資産税評価額などを基準に算出することが認められています。

Q. 借入金(ローン)がある場合、財産から差し引けますか?

A. 財産の合計額を計算する際、借入金などの債務を差し引くことはできません。財産と債務は別々に記載する必要があります。

Q. 財産債務調書を提出しないと罰則はありますか?

A. 未提出自体への直接的な罰金はありませんが、後日申告漏れが発覚した場合、過少申告加算税などが通常より5%加重されるペナルティがあります。

Q. 提出する財産に暗号資産(仮想通貨)は含まれますか?

A. はい、暗号資産も財産に含まれます。年末時点の時価で評価し、「その他の財産」として記載する必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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