税理士法人プライムパートナーズ

法定相続人以外への遺贈で相続税基礎控除はどう計算する?

2025-12-01
目次

ご自身の財産を、法定相続人以外の方に譲りたいとお考えですか?遺言書を使って財産を譲る「遺贈」を活用すれば、お孫さんや内縁のパートナー、お世話になった友人などにも財産を残すことができます。しかし、遺産を受け取る人が法定相続人ではない場合、相続税の計算方法や基礎控除の扱いが通常とは大きく異なります。「基礎控除は適用されるの?」「税金は高くなってしまうの?」と不安に思う方も多いでしょう。本記事では、法定相続人以外へ遺贈する際の相続税の基礎控除の計算方法や、注意すべきポイントについて、具体的な金額を交えながら優しくわかりやすく解説します。

法定相続人以外には遺言によって相続させることができる!

大切な財産を特定の誰かに確実に譲りたい場合、遺言書を作成することがもっとも有効な手段です。遺言書があれば、民法で定められた法定相続人以外の方にも財産を渡すことができます。まずは、この制度の基本的な仕組みや税金のルールについて見ていきましょう。

遺贈とは?

遺言書を使って、特定の人に無償で財産を譲ることを遺贈と呼びます。通常、財産は配偶者や子どもといった法定相続人が引き継ぎますが、遺贈を利用すれば、息子の妻、お孫さん、内縁のパートナー、さらには地方自治体やNPO法人などの団体にも財産を渡すことができます。財産を譲る人を「遺贈者」、受け取る人を「受遺者」と呼びます。法定相続人以外に財産を渡す際には、遺産分割協議ではなく、この「遺贈」という形式をとるのが一般的です。

法定相続人以外への相続でも相続税がかかる

「法定相続人ではないから、相続税はかからないのでは?」と誤解されがちですが、実際には法定相続人以外の方が遺贈によって財産を受け取った場合でも、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。さらに、亡くなった方の配偶者や一親等の血族(子どもや両親)以外の方が財産を受け取る場合は、本来の相続税額に2割が加算されるルールがありますので、税負担の増加に注意が必要です。

法定相続人以外への相続で基礎控除はある?

遺産総額から一定額を差し引いて税負担を軽くする「基礎控除」は、法定相続人以外への遺贈が含まれる場合でも適用されます。しかし、とても重要な注意点があります。基礎控除の計算式である「3,000万円+600万円×法定相続人の数」において、人数にカウントできるのは法定相続人のみです。つまり、お孫さんやご友人などが遺贈で財産を受け取ったとしても、基礎控除の計算人数には含めることができないため、基礎控除の枠自体が増えることはありません。

基礎控除の計算式 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
法定相続人の数の扱い 遺贈を受ける法定相続人以外の人は人数に含めない

法定相続人以外への相続(遺贈)は2種類

遺言書で財産を譲る「遺贈」には、大きく分けて「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類があります。それぞれ特徴や引き継ぐ権利・義務が異なりますので、状況に合わせて使い分けることが大切です。

特定遺贈

「東京都中央区の土地を友人に譲る」「A銀行の預金1,000万円をお世話になった長男の妻に譲る」というように、具体的な財産を指定して譲る方法を特定遺贈と呼びます。受け取る側にとって、借金などのマイナスの財産を引き継ぐ必要がないという大きなメリットがあります。

特定遺贈の特徴 詳細内容
財産の指定方法 特定の不動産や預金など、ピンポイントで指定する
マイナス財産の引き継ぎ 遺言書に記載がなければ、借金などを引き継ぐ義務はない

包括遺贈

「全財産の3分の1を内縁の妻に譲る」というように、具体的な財産を特定せず、割合を指定して譲る方法を包括遺贈と呼びます。この方法で財産を受け取る人は、法定相続人と同等の権利と義務を持つことになります。そのため、プラスの財産だけでなく、指定された割合に応じて借金などのマイナスの財産も引き継がなければならない点に注意が必要です。

包括遺贈の特徴 詳細内容
財産の指定方法 全財産のうち「何割」といった割合で指定する
マイナス財産の引き継ぎ 指定された割合に応じて借金などの負債も引き継ぐ

法定相続人以外の相続税・基礎控除の計算

法定相続人以外の方が財産を受け取る場合、相続税の計算方法は少し複雑になります。どのような手順で税金が計算されるのかをわかりやすくご説明します。

基礎控除を含めた法定相続人以外の相続税の計算手順

相続税の計算は、すべての遺産を合算し、そこから基礎控除を差し引くところからスタートします。法定相続人以外の方がいる場合でも、全体の手順は以下の通りです。

計算のステップ 具体的な手順
ステップ1:遺産総額の計算 亡くなった方のすべてのプラス財産を合計する
ステップ2:基礎控除の差し引き 遺産総額から「3,000万円+600万円×法定相続人数」を引く
ステップ3:相続税の総額を計算 残った額を法定相続分で分けたと仮定し、全体の税額を出す
ステップ4:各人の税額の割り当て 全体の税額を、実際に財産をもらった割合でそれぞれに割り振る
ステップ5:2割加算の適用 法定相続人以外(一親等の血族や配偶者以外)は税額を2割増しにする

受遺者が法定相続人の場合税負担は軽減される

もし遺贈を受ける人が配偶者などの法定相続人であれば、税負担を大きく減らせる特例が用意されています。例えば、配偶者であれば「1億6,000万円まで非課税」となる配偶者の税額軽減が利用できます。また、亡くなった方と同居していた親族などが自宅の土地を引き継ぐ場合、「小規模宅地等の特例」により、330平方メートルまでの土地の評価額を最大80%減額することができます。

相続税の申告と納税期限

遺贈によって財産を受け取った場合でも、相続税の申告と納税には厳格な期限が設けられています。期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。亡くなった方の住所地を管轄する税務署へ手続きを行います。原則として現金での一括納付ですが、どうしても難しい場合は、担保を提供して最長20年などの分割で支払う「延納」や、不動産などのモノで納める「物納」という制度もあります。

法定相続人以外の人が相続する際の注意点

法定相続人以外の方が財産を受け取る際には、税金面で不利になるルールがいくつか存在します。思わぬ税負担に驚かないよう、事前にしっかりと確認しておきましょう。

遺贈する場合には相続税が2割加算される

法定相続人以外の方が遺贈で財産を受け取ると、ご自身の相続税額に2割が加算されます。対象となるのは、亡くなった方の配偶者、子ども、両親(一親等の血族)以外の方です。たとえば、ご兄弟やおい・めい、お孫さん(子どもが存命の場合)、内縁のパートナー、第三者の友人などが該当します。算出された税額が100万円であれば、実際に納める税金は120万円に増えてしまいます。

小規模宅地等の特例が適用できない場合がある

土地の評価額を最大80%も減額できる「小規模宅地等の特例」ですが、法定相続人以外の方が遺贈で不動産を受け取る場合、親族でない友人などの第三者には適用されません。親族であったとしても、亡くなった方と同居している、または生計を共にしているなどの厳格な要件をクリアしなければならず、適用ハードルが非常に高くなります。

死亡保険金・死亡退職金の非課税枠がない

生命保険金や死亡退職金には、それぞれ「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が用意されています。しかし、この非課税枠を利用できるのは法定相続人に限定されています。そのため、法定相続人ではないお孫さんや友人が死亡保険金を受け取った場合、この非課税枠は1円も使えず、受け取った全額が相続税の課税対象となってしまいます。

受け取る人 死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人数)
法定相続人(配偶者や子など) 非課税枠を利用できる
法定相続人以外(友人や孫など) 利用できない(全額が課税対象となる)

遺贈の場合には一部控除が利用できない

法定相続人以外の方が財産を受け取った場合、税負担を和らげるためのさまざまな税額控除が利用できません。具体的には、18歳に達するまで1年につき10万円が控除される「未成年者控除」、85歳に達するまで1年につき10万円(または20万円)が控除される「障害者控除」、過去10年以内に続けて相続が発生した場合に負担を減らす「相次相続控除」などが適用対象外となります。

不動産取得税・登録免許税がかかる場合がある

不動産を引き継ぐ際にも税金の違いがあります。法定相続人が不動産を相続する場合は、不動産取得税はかかりません。しかし、法定相続人以外の方が「特定遺贈」で不動産を受け取る場合、固定資産税評価額の3%または4%の不動産取得税が課税されます。また、名義変更にかかる登録免許税についても、法定相続人なら評価額の0.4%ですが、法定相続人以外への遺贈では2.0%と高額になります。

税金の種類 法定相続人の場合 法定相続人以外(特定遺贈)の場合
不動産取得税 非課税 評価額の3%または4%が課税される
登録免許税 評価額の0.4% 評価額の2.0%

相続開始前7年間の贈与は相続税の課税対象になる

令和6年1月1日の税制改正により、亡くなる前7年間(以前は3年間)に受け取った生前贈与の財産は、相続税の計算に持ち戻して加算されることになりました。遺贈で財産を受け取った方が、過去7年間に生前贈与も受けていた場合は、その分も相続税の対象に含まれます。ただし、延長された4年間分(亡くなる前4〜7年前)については、総額100万円まで加算対象から外すことができる控除措置が設けられています。

特定遺贈は債務・葬式費用を控除できない

「特定遺贈」で不動産や預金などをピンポイントで受け取った場合、亡くなった方の借金や葬儀にかかった費用を、ご自身の受け取った遺産額から差し引く(債務控除)ことはできません。一方で、割合で指定される「包括遺贈」で財産を受け取った場合は、指定された割合に応じて借金や葬式費用を差し引くことが認められています。

納税資金を用意できない可能性がある

遺言書の内容は、財産の所有者が亡くなった後に初めて開封されることがほとんどです。そのため、法定相続人以外の方は、ご自身が財産をもらうことを直前まで知らないケースがあります。相続税は現金での一括納付が原則です。もし、現金ではなく不動産だけを遺贈された場合、手元に現金がないため納税資金を用意できず、期限である10ヶ月以内に慌ててしまうリスクがあります。

法定相続人以外に相続させる遺言書作成ポイント

法定相続人以外の方に確実に財産を渡すためには、遺言書の作り方が非常に重要です。後々のトラブルを防ぎ、ご自身の思いを形にするためのポイントを5つご紹介します。

公正証書遺言で作成する

法定相続人以外に財産を遺す場合、公証役場で作成する「公正証書遺言」がもっとも安全で確実です。公証人が法律に基づいて作成し、原本が公証役場に保管されるため、偽造や紛失のリスクがありません。また、ご自身で書く自筆証書遺言とは異なり、亡くなった後に家庭裁判所で行う「検認」という時間のかかる手続きが不要になるため、受遺者がスムーズに財産を受け取ることができます。

遺留分の侵害に気を付ける

配偶者や子ども、両親といった法定相続人には、法律で最低限受け取れる財産の割合である「遺留分」が保障されています(兄弟姉妹には遺留分はありません)。特定の友人などに全財産を遺贈するなどして、この遺留分を侵害してしまうと、後から法定相続人に「遺留分侵害額請求」を起こされ、金銭の支払いを巡るトラブルに発展する可能性が高くなります。遺留分に配慮したバランスの良い配分を心がけましょう。

遺言執行者を指定する

遺言書の内容を具体的に実行する責任者である「遺言執行者」を指定しておくことが大切です。不動産の名義変更や銀行口座の解約など、受遺者だけでは他の相続人の協力を得られず手続きが難航することがあります。遺言執行者が指定されていれば、単独で登記手続きなどが行えるため、スムーズに遺贈の手続きを完了させることができます。

付言で相続トラブルを防止する

遺言書の最後に「付言事項(ふげんじこう)」として、なぜその人に財産を遺すのか、感謝の気持ちや理由を書いておきましょう。「長年、献身的に介護をしてくれた息子の妻に感謝して、この財産を譲ります」などと思いを書き添えることで、法定相続人も納得しやすくなり、無用な親族間のトラブルを防ぐ大きな効果があります。

ほかの相続人にも遺贈することを伝える

可能であれば、遺言書を作成したことや、法定相続人以外の方にも財産を譲るつもりであることを、お元気なうちに他の相続人に伝えておくことをおすすめします。あらかじめご自身の口から説明して理解を得ておくことで、亡くなった後の遺産分割協議での驚きや不満を和らげ、手続きが円滑に進みやすくなります。

特別寄与料制度で相続させることができる場合がある!

遺言書がなくても、故人のために尽くした親族が報われる制度があります。それが「特別寄与料制度」です。どのような条件で利用できるのかを確認しておきましょう。

特別寄与料制度とは?

法定相続人以外の親族が、亡くなった方の介護や看病を無償で行っていた場合、本来の相続人に対して金銭を請求できるのが特別寄与料制度です。「血のつながった子どもは何も手伝わなかったのに財産をもらい、一生懸命介護した息子の妻は何ももらえない」という不公平感を解消するために作られた比較的新しい制度です。

特別寄与料制度を利用できる条件

この制度を利用できるのは、「法定相続人以外の親族(6親等内の血族、または3親等内の姻族)」に限られます。例えば、長男の妻や、おい・めいなどが該当します。また、単にお手伝いをしたという程度ではなく、以下の厳しい条件を満たす必要があります。

特別寄与料制度の主な利用条件 詳細内容
対象者の範囲 法定相続人以外の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)であること
貢献の内容 無償で介護や療養看護を行い、故人の財産の維持・増加に貢献したこと

金銭の請求先は?

特別寄与料の請求先は、実際に財産を受け取った法定相続人です。相続人が複数いる場合は、それぞれの法定相続分に応じて金銭を請求することになります。当事者同士の話し合いで金額が決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、介護の実態などを踏まえて適正な金額を決定してもらうことになります。

まとめ

法定相続人以外の方に財産を遺贈する場合、基礎控除は適用されるものの、基礎控除額を計算する際の人数にはカウントされません。さらに、相続税の2割加算ルールや、不動産取得税の発生、一部の税額控除が使えないなど、通常の相続に比べて税負担が重くなる傾向があります。ご自身の思いを確実に形にし、残された方々のトラブルを防ぐためには、公正証書遺言を作成し、法定相続人の遺留分にも配慮することが非常に重要です。

参考文献

国税庁 No.4152 相続税の計算

国税庁 No.4157 相続税額の2割加算

国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

遺贈と相続税のよくある質問まとめ

Q.遺贈の受遺者が先に亡くなった場合はどうなる?

A.遺言書で指定された人が亡くなった方より先に死亡した場合、その部分の遺言は無効となり、財産は法定相続人に分配されます。

Q.法定相続人以外が財産を受け取る場合、基礎控除は増えますか?

A.増えません。基礎控除の計算式「3,000万円+600万円×法定相続人の数」には、法定相続人以外の人は人数に含まれないためです。

Q.遺贈を放棄することは可能ですか?

A.可能です。特定遺贈の場合は他の相続人に意思を伝えるだけで放棄でき、包括遺贈の場合は家庭裁判所での手続きが必要になります。

Q.遺言書がなくても法定相続人以外に財産を譲れますか?

A.遺言書がなければ原則として譲れません。ただし、無償で介護等を行った親族であれば特別寄与料制度で金銭を請求できる場合があります。

Q.法定相続人以外が不動産をもらうと税金はどうなりますか?

A.相続税の2割加算に加えて、固定資産税評価額の3%または4%の不動産取得税や、2.0%の登録免許税が課税され、税負担が重くなります。

Q.生命保険の非課税枠は法定相続人以外にも適用されますか?

A.適用されません。500万円×法定相続人の数の非課税枠は法定相続人のみが対象となり、それ以外の人が受け取った保険金は全額が課税対象です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /
士業の先生向け専門家AI
士業AI【税務】
\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /