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持分評価が変わる?会計検査院の指摘と類似業種比準価額の行方

2025-12-08
目次

医療法人などの出資持分をお持ちの方にとって、その評価額が今後どうなるのかはとても気になりますよね。実は最近、国の機関である会計検査院から、現在の評価方法について見直しを求めるような厳しい指摘がありました。これにより、今後の持分評価の仕組みが大きく変わるかもしれません。今回は、出資持分評価の基本から、指摘された問題点、そして今後の「類似業種比準価額」の行方について、優しくわかりやすく解説していきます。

出資持分の評価方法とは?

取引相場のない株式の評価の基本

医療法人の出資持分は、一般的な株式会社の非上場株式と同じように「取引相場のない株式の評価方法」を使って計算します。評価方法には大きく分けて、会社の規模や財産に注目する「原則的評価方式」と、配当金に注目する「特例的評価方式」があります。ただし、医療法人の場合は法律で配当が禁止されているため、特例的評価方式は使えず、必ず原則的評価方式で評価することになります。

会社規模の判定基準と区分

原則的評価方式では、まず評価する法人の「会社規模」を判定します。規模は従業員数や総資産価額、取引金額によって「大会社」「中会社の大・中・小」「小会社」のいずれかに区分されます。たとえば、従業員数が70人以上の場合は無条件で大会社に分類されます。従業員数が70人未満の場合は、総資産価額と取引金額の規模を比較して決定します。

判定要素 基準の例
従業員数 70人以上なら大会社
総資産価額・取引金額 従業員70人未満の場合に組み合わせて判定

会社規模に応じた評価方式の選び方

会社規模が決まると、それに応じて評価方式が決まります。大きな会社ほど上場企業に近い性質を持つと考えられるため、上場企業の株価を参考にする「類似業種比準価額方式」を使う割合が高くなります。小さな会社は法人の純資産に注目する「純資産価額方式」が基本となります。

会社規模 原則的な評価方式
大会社 類似業種比準方式(または純資産価額方式)
中会社 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式
小会社 純資産価額方式(または併用方式)

類似業種比準価額と純資産価額の仕組み

類似業種比準価額の計算方法

類似業種比準価額とは、事業内容が似ている上場企業の株価を基準にして、評価する会社の「1株当たりの配当金額」「利益金額」「純資産価額」の3つの要素を比較して計算する方法です。医療法人の場合は「その他の産業」という分類が使われます。また、計算の最後には規模に応じた「斟酌率(しんしゃくりつ)」という割引率(大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5)を掛け合わせるため、評価額が下がりやすい特徴があります。

純資産価額の計算方法

一方、純資産価額は、もし今法人が解散したら出資者にいくら戻ってくるか、という視点で計算します。評価日時点での法人のすべての資産の相続税評価額から、負債と、資産の含み益に対する法人税等相当額(含み益の37%)を差し引いて求めます。一般的に、長年利益を蓄積してきた法人や、不動産などの資産を多く持つ法人は、この純資産価額が高くなる傾向があります。

項目 計算のポイント
資産の合計額 相続税評価額で再計算する
控除する金額 負債と評価差額に対する法人税等相当額(37%)

医療法人の評価における注意点

医療法人ならではの注意点として、利益の蓄積が大きくなりやすいことが挙げられます。医療法人は配当を出せないため、毎年の利益がそのまま純資産として積み上がっていきます。そのため、業績が好調で長く続いている医療法人ほど、純資産価額が非常に高額になり、相続や贈与の際に多額の税金が発生するリスクを抱えることになります。

会計検査院からの指摘事項とは?

評価方式間での大きな価格差

令和5年度の決算検査報告で、会計検査院から非常に重要な指摘がありました。それは「類似業種比準価額」で計算した評価額が、「純資産価額」と比べて低すぎるというものです。調査によると、類似業種比準価額の中央値は11,622円だったのに対し、純資産価額の中央値は42,648円と、およそ4倍もの開きがありました。この価格差が公平性を損なっていると指摘されたのです。

評価方式 評価額の中央値(調査結果)
類似業種比準価額 11,622円
純資産価額 42,648円

会社規模による意図的な税負担の軽減

さらに会計検査院は、この評価方法の差を利用して、意図的に税負担を軽くしようとするケースが存在することも問題視しています。類似業種比準価額の方が安く計算されるため、従業員数を増やしたり、取引金額を調整したりして、無理やり「大会社」の区分に当てはめようとするなどの操作が行われているというのです。こうした現状に対して、制度の見直しが求められています。

なぜ類似業種比準価額は低くなるのか?

過去の評価方法の見直しの影響

類似業種比準価額がここまで低くなる背景には、過去に行われた評価方法の度重なる改正があります。たとえば、計算式の中で使われる割引率(斟酌率)が引き下げられたり、比較する上場企業の株価を複数の選択肢から一番低いものを選べるようになったりしました。こうした納税者に有利な変更が積み重なった結果、純資産価額との差が大きく広がってしまったと考えられています。

配当金額が評価に与える影響

もうひとつの大きな要因は、配当金額の扱いです。類似業種比準価額は上場企業の配当を基準にしますが、そもそも非上場企業や医療法人は配当を出さない(または出せない)ケースがほとんどです。調査でも約80%の会社が配当を出していませんでした。配当がゼロの場合、計算式の比準要素が小さくなるため、結果として評価額が大きく下がってしまうという構造的な問題があります。

特例的評価方式(配当還元方式)の現状と課題

配当還元方式の計算と適用対象

会社の経営に口出しできないような少数の株式を持っている人(同族株主以外の株主など)には、例外的に「配当還元方式」という計算方法が使われます。これは、過去の配当金額を「10%」という一定の還元率で割り戻して株価を計算する、とてもシンプルな方法です。原則的評価方式に比べて、評価額がかなり低く抑えられるという特徴があります。

還元率と現在の金利水準とのズレ

しかし、この配当還元方式にも会計検査院からメスが入りました。計算に使われる「還元率10%」という数字は、なんと昭和39年当時の金利を参考に決められたもので、それから約60年間一度も変わっていません。現在の日本の金利は非常に低いため、この10%という数字は高すぎであり、結果として株価が不当に低く評価されているのではないかと指摘されています。

項目 現状と課題
設定時期 昭和39年(約60年前)
現在の金利との差 還元率10%は現代の低金利と合っていない

まとめ

いかがでしたでしょうか。これまで医療法人の出資持分などは、類似業種比準価額を上手く活用することで評価額を抑えることが可能でした。しかし、今回の会計検査院の厳しい指摘により、今後は類似業種比準価額の計算方法が見直され、税金が高くなる方向にルールが変更される可能性が非常に高まっています。法人の規模が大きいからといって安心せず、最新の税制動向にしっかりとアンテナを張り、早めに適切な生前対策を検討していくことが大切です。

参考文献

国税庁:相続税の申告のしかた(取引相場のない株式の評価)

国税庁:取引相場のない株式の評価について

持分評価に関するよくある質問まとめ

Q.医療法人の出資持分はどのように評価されますか?

A.原則として、取引相場のない株式の評価方法に準じて評価されます。会社規模に応じて、類似業種比準価額方式や純資産価額方式を用いて計算します。

Q.類似業種比準価額とは何ですか?

A.事業内容が似ている上場企業の株価を基準に、配当や利益、純資産の要素を比較して株価を計算する方法です。比較的評価額が低くなりやすい特徴があります。

Q.純資産価額方式とはどのような計算方法ですか?

A.評価日時点で法人が解散したと仮定し、すべての資産の相続税評価額から負債や法人税等相当額を差し引いて、1株あたりの価値を計算する方法です。

Q.会計検査院はどのような指摘をしたのですか?

A.類似業種比準価額が純資産価額と比べて極端に低く算定されており、評価方式間で大きな価格差が生じていて公平性に欠けると指摘しました。

Q.特例的評価方式(配当還元方式)の問題点は何ですか?

A.計算に使われる10%という還元率が昭和39年当時の金利を基準にしており、現在の低金利水準と合っていないため、評価額が不当に低くなっているという点です。

Q.今後、出資持分の評価はどうなる可能性がありますか?

A.会計検査院の指摘を受け、類似業種比準価額や配当還元方式の計算方法が見直され、相続や贈与の際の評価額(税負担)が高くなる可能性があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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