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【令和8年末まで】贈与税非課税で持分なしへ!認定医療法人制度

2025-12-09
目次

医療法人を運営されている理事長の皆様、将来の事業承継や多額の相続税についてお悩みではありませんか?平成18年の医療法改正以前に設立された「持分あり医療法人」の場合、長年の経営努力によって蓄積された利益が出資金の評価額を大きく押し上げ、いざ世代交代をしようとした際に多額の相続税や贈与税が発生するリスクがあります。こうした資金面での課題を解決し、税負担をなくして円滑に経営を引き継ぐための特例が「認定医療法人制度」です。令和8年(2026年)12月31日までの期間限定となる本制度について、活用するメリットや注意点、具体的な要件を分かりやすく解説いたします。

認定医療法人制度とは?持分なし医療法人への移行を支援

認定医療法人制度とは、出資持分のある医療法人が、出資持分のない医療法人へと移行する際に、国から移行計画の認定を受けることで、税制上の優遇措置を受けられる制度です。

持分あり医療法人が抱える相続税・贈与税のリスク

出資持分とは、医療法人に拠出した出資金の割合に応じて、法人の財産に対する権利を持つことを指します。経営が順調で内部留保が貯まると、この出資持分の価値が数億円規模にまで膨れ上がることも珍しくありません。この状態で理事長に相続が発生すると、出資持分に対して莫大な相続税が課せられ、後継者が納税資金を用意できずに経営が立ち行かなくなる恐れがあります。

認定医療法人制度の概要と令和8年12月31日までの期限

持分なし医療法人へ移行するために出資者が持分を放棄すると、通常は医療法人に対して莫大な贈与税(みなし贈与)が課税されてしまいます。しかし、認定医療法人制度を活用して厚生労働大臣の認定を受ければ、この贈与税が非課税となります。本制度を利用するための認定申請期限は令和8年(2026年)12月31日まで延長されていますが、移行計画の作成や認可には時間がかかるため、早期の検討が必要です。

持分なし医療法人への移行手続きの流れ

手続きの流れとしては、まず社員総会で移行計画を決議し、厚生労働大臣に申請して認定を受けます。認定日から最長で5年以内にすべての出資者が持分を放棄し、都道府県知事の定款変更認可を受けることで移行が完了します。その後も6年間は、毎年国へ運営状況を報告する義務があります。

認定医療法人制度を活用する大きなメリット

認定医療法人制度を利用して持分なし医療法人へ移行することには、税務面と経営面の両方で非常に大きなメリットが存在します。

贈与税が非課税になる優遇措置

最大のメリットは、出資者が持分を放棄した際に発生する医療法人への贈与税が全額非課税になることです。本来であれば、数億円の純資産を持つ医療法人の持分を放棄した場合、法人に対して多額の贈与税が課せられますが、この制度を活用することで課税をゼロに抑えたまま、持分なしの体制へ移行することができます。

多額の相続税が猶予・免除される制度

万が一、持分なし医療法人へ移行するための計画期間中に理事長に相続が発生してしまった場合でも、一定の要件を満たすことで、出資持分に対する相続税が猶予され、最終的に持分放棄が完了した時点で全額免除されます。これにより、世代交代のタイミングで突然発生する税負担の不安を解消できます。

出資持分の払戻請求リスクからの解放と事業承継の円滑化

持分あり医療法人では、出資者が退職する際などに「出資持分の払戻し」を請求されるリスクがあります。例えば、純資産が1億円で50%の持分を持つ退職者から5,000万円の払戻しを求められれば、法人の資金繰りは急速に悪化します。持分なし医療法人へ移行すればこの払戻請求権が消滅するため、急な資金流出を防ぎ、後継者へ安定した財務基盤を引き継ぐことが可能です。

認定医療法人制度を活用する際の注意点とデメリット

非常に魅力的な制度ですが、出資持分という財産権を手放すことになるため、将来的な経営方針に合わせた慎重な判断が求められます。

解散時の残余財産分配請求権がなくなる点

持分を放棄するということは、医療法人が解散した際に残った財産(残余財産)を受け取る権利を失うことを意味します。持分なし医療法人が解散した場合、最終的に残った財産は出資者ではなく、国や地方公共団体などに帰属することになります。そのため、将来的に法人を解散して個人の財産に還元しようと考えている場合には適していません。

第三者へ医療法人を譲渡する際の対価についての制限

後継者が不在で、将来的に第三者へ医療法人の経営を譲渡(M&A)する場合にも注意が必要です。持分あり医療法人であれば「出資持分の売却」という形で数千万〜数億円の譲渡対価を直接受け取ることができますが、持分なし医療法人の場合は持分自体が存在しないため、売却による対価を得ることができません。ただし、理事長の退任時に役員退職金として長年の貢献に見合った適正な報酬を受け取ることは可能です。

認定要件の維持と認定取り消し時のペナルティ

移行後6年間は国が定める厳格な運営要件を満たし続ける必要があります。もしモニタリング期間中に要件を逸脱し、認定が取り消されてしまうと、非課税や免除となっていた贈与税・相続税が遡って課税されるという重いペナルティがあります。そのため、移行後も計画に沿った適正な法人運営を継続しなければなりません。

持分なし医療法人への移行に向けた具体的な認定要件

税制上の大きな優遇を受けるため、認定医療法人になるには厚生労働省が定める運営要件をクリアし、移行後も6年間にわたって維持する必要があります。

移行計画の作成と社員総会での決議

まず前提として、社員総会において持分なし医療法人へ移行する旨の決議を行い、認定日から5年を超えない範囲で具体的な移行期限を定めた「移行計画」を作成する必要があります。この計画が有効かつ適切であると認められなければなりません。

社会保険診療収入割合や役員報酬に関する運営要件

医療を提供する公益性の高い法人として、特定の個人に利益が偏らないよう、以下のような具体的な決算数値などの要件が定められています。

要件の項目 具体的な基準や内容
役員報酬の支給基準 役員への報酬が不当に高額にならないよう適正な支給基準を定めていること
社会保険診療収入の割合 社会保険診療や介護保険等の収入が全収入金額の80%を超えること
自費診療の請求基準 自費患者への請求額が、社会保険診療報酬と同一の基準で計算されていること
医業収入と医業費用のバランス 決算数値において、医業収入が医業費用の150%以内に収まっていること
遊休財産額の制限 事業の用に供していない遊休財産額が、事業にかかる費用の額を超えないこと

移行後6年間の継続的な報告義務について

これらの要件は、持分なし医療法人への移行が完了した日から起算して6年間満たし続ける必要があります。また、この6年間のモニタリング期間中は、毎年1回、厚生労働大臣に対して運営状況に関する報告書を提出する義務が課されています。

後継者の有無で変わる!制度活用の検討ポイント

認定医療法人制度を活用すべきかどうかは、ご親族内に後継者がいるか、それとも第三者への譲渡を検討しているかによって大きく分かれます。

親族内に後継者がいる場合の大きな節税効果

お子様やお孫様など、親族内に医師の後継者がおり、今後も同族で医療経営を長く続けていく方針であれば、認定医療法人制度の活用は非常に有効です。高額になった出資持分に対する相続税の不安がなくなり、払戻請求に怯えることなく医業に専念できるため、盤石な体制で事業承継を進めることができます。また、役員を非同族にする必要もないため、同族経営を維持できます。

後継者が不在で第三者への譲渡を検討する場合

一方で後継者がおらず、数年内に第三者へ医療法人を譲渡してリタイアすることを考えている場合、持分を放棄してしまうと譲渡対価としての売却益を得られなくなります。ただし、譲渡先が見つかる前に理事長に相続が発生してしまい、ご遺族が多額の相続税を負担するリスクが高い状態であれば、役員退職金で対価を得ることを前提として、あえて持分なし医療法人へ移行して税務リスクを断ち切るという選択も考えられます。

まとめ

認定医療法人制度は、持分あり医療法人が抱える相続税や贈与税、出資持分の払戻しといった経営上の爆弾を取り除くための非常に優れた制度です。贈与税非課税で持分なし医療法人へ移行できれば、将来の事業承継が極めてスムーズになります。しかし、残余財産分配請求権を失うことや、移行後6年間の厳格な要件維持が求められる点には十分な注意が必要です。本制度の認定申請期限は令和8年(2026年)12月31日までとなっています。複雑な申請手続きや要件確認には時間がかかりますので、事業承継や相続税に不安を抱えている理事長様は、手遅れになる前にぜひお早めに専門家へご相談ください。

参考文献

国税庁:No.4440 医療法人の持分に係る経済的利益についての贈与税の納税猶予の特例

認定医療法人制度のよくある質問まとめ

Q.認定医療法人制度の申請期限はいつまでですか?

A.厚生労働大臣による移行計画の認定申請期限は、令和8年(2026年)12月31日までと定められています。申請の準備には時間がかかるため、早めの着手をおすすめします。

Q.出資持分を放棄すると贈与税がかかると聞きましたが本当ですか?

A.通常は持分を放棄すると医療法人に対して多額の贈与税が課税されますが、認定医療法人制度の認定を受けることで、この贈与税が全額非課税となります。

Q.移行後に認定が取り消されることはありますか?

A.はい、移行後6年間のモニタリング期間中に、社会保険診療割合が80%を超えないなど、運営の要件を満たさなくなった場合には認定が取り消され、猶予・免除されていた税金が遡って課税されるリスクがあります。

Q.後継者がいなくても認定医療法人制度を利用すべきですか?

A.第三者への譲渡を検討している場合、持分を手放すと売却益が得られなくなります。しかし、高額な相続税リスクを回避するために制度を利用し、理事長退任時に役員退職金を受け取るという選択肢もあります。

Q.持分なし医療法人に移行した後、法人が解散したら財産はどうなりますか?

A.持分なし医療法人が解散して負債などを清算した後に残った財産(残余財産)は、出資者には分配されず、国や地方公共団体などに帰属することになります。

Q.認定医療法人制度では、役員を非同族にする必要がありますか?

A.いいえ、認定医療法人制度では役員の非同族要件は求められていません。そのため、ご親族を中心とした同族経営体制を維持したまま、持分なし医療法人へ移行することが可能です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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