税理士法人プライムパートナーズ

親族間の株式譲渡に注意!高額・低額譲渡に潜む贈与税リスクと対策

2025-12-17
目次

家族や親族に会社の株式を譲るとき、良かれと思って安い値段で売ったりしていませんか?実は親族間での株式譲渡には、税務署から「低額譲渡」や「高額譲渡」とみなされ、思いがけない高額な贈与税がかかるリスクが潜んでいます。今回は、親族間の取引で失敗しないための適正価格の考え方や、税負担を抑えて安全に株式を引き継ぐための具体的なポイントを優しく解説します。

家族間で株式を譲渡する3つの方法

親族間で株式を移す場合、主に「相続」「贈与」「売買」の3つの方法があります。それぞれでかかる税金や手続きが異なりますので、状況に合わせて選ぶことが大切です。

相続で引き継ぐ

親が亡くなった際に遺産として株式を引き継ぐ方法です。この場合、相続税の対象となります。相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という大きな基礎控除があるため、評価額がこの枠内に収まれば税金はかかりません。ただし、誰が株式を引き継ぐかで親族間トラブルになるリスクがあるため、生前に遺言書を作成しておくことが重要になります。

生前贈与で渡す

生きている間に無償で株式を譲る方法で、贈与税の対象になります。1月1日から12月31日までの1年間で110万円まで非課税となる「暦年贈与」や、累計2,500万円まで非課税で将来の相続時に精算する「相続時精算課税制度」を利用できます。計画的に少しずつ譲渡することで、税負担を大きく抑えることができます。

売買で移転する

株式をお金で買い取る方法です。親族間であっても、株式を譲る側(売り手)には、売却して得た利益に対して20.315%の譲渡所得税がかかります。買い手は購入資金を用意する必要がありますが、後継者を明確にでき、他の親族からの不満が出にくいというメリットがあります。

譲渡方法 かかる税金(課税される人)
相続 相続税(株式を引き継いだ人)
贈与 贈与税(株式をもらった人)
売買(適正価格) 譲渡所得税20.315%(株式を売った人)
低額譲渡 譲渡所得税(売り手)+贈与税(買い手)

親族間の株式売買で知っておくべき適正価格

親族間で売買をする際、「家族だから安くしよう」と価格を自由に決めてしまうのは大変危険です。税務署は、親族間であっても取引が適正な時価で行われているかを厳しくチェックします。

上場株式の評価方法

上場株式の場合、毎日取引される市場価格があるため評価は比較的シンプルです。具体的には、「譲渡した日の終値」「譲渡した月の毎日の終値平均」「譲渡した前月の毎日の終値平均」「譲渡した前々月の毎日の終値平均」の4つのうち、最も低い金額を時価として採用します。

非上場株式の評価方法

中小企業などの非上場株式は市場価格がないため、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて評価します。会社の規模(大会社・中会社・小会社)に応じて、同業他社と比較する「類似業種比準方式」や、会社の純資産をもとに計算する「純資産価額方式」、またはその2つを併用して計算します。この評価は非常に複雑ですので、専門的な知識が求められます。

注意したい低額譲渡と贈与税のリスク

親から子へ株式を売る際、適正な時価よりも著しく安い価格で譲ることを「低額譲渡」と呼びます。ここには大きな税務リスクが潜んでいます。

低額譲渡とは?なぜ贈与税がかかるのか

例えば、本当は1株1万円の価値がある株式を、親族だからと1株1,000円で売ったとします。この場合、差額の9,000円分は「親から子へ無償でプレゼントされた」とみなされてしまいます。これをみなし贈与と呼び、買い手側である子に対して贈与税が課せられるのです。

買い手にかかる贈与税の具体例

適正な時価が5,000万円の非上場株式を、子に1,000万円で売却したケースを考えてみましょう。差額の4,000万円が贈与とみなされます。親から18歳以上の子への贈与(特例贈与財産)の税率を当てはめると、基礎控除110万円を引いた3,890万円に対して55%の税率がかかり、640万円の控除額を差し引いても、約1,499万円もの高額な贈与税が発生してしまいます。

意外な落とし穴である高額譲渡のリスク

安く売る低額譲渡だけでなく、逆に時価よりも高すぎる価格で売買する「高額譲渡」にも注意が必要です。

高額譲渡とは?

時価1,000万円の株式を、子が親から5,000万円で買い取ったようなケースが高額譲渡に当たります。この場合、子が親に対して多めに支払った4,000万円の差額が「子から親への贈与」とみなされることになります。

売り手にかかるみなし贈与のリスク

高額譲渡の場合、親(売り手)は「時価1,000万円で株式を売却したことによる譲渡所得税」を払うだけでなく、多めにもらった4,000万円について「子から贈与を受けた」として贈与税も課せられます。つまり、所得税と贈与税のダブルパンチを受けることになります。価格の恣意的な操作は税務調査で否認されるリスクが非常に高いため、絶対に避けましょう。

家族間の株式譲渡で税金を抑えるポイント

親族間で株式をスムーズに、かつ税負担を抑えて引き継ぐための制度をしっかり活用しましょう。

暦年贈与や相続時精算課税制度の活用

無償で贈与を選ぶ場合、年間110万円の基礎控除の範囲内で毎年少しずつ株式を移す「暦年贈与」が基本です。また、まとまった株式を一気に移したい場合は、累計2,500万円まで贈与税が非課税になる「相続時精算課税制度」を活用します。ただし、将来の相続時には贈与時の時価で相続財産に持ち戻して計算されるため、今後会社の業績が伸びて株価が上がると見込まれる場合に有利な制度です。

事業承継税制を活用した納税猶予

会社の経営を後継者に引き継ぐための株式譲渡であれば「事業承継税制」が非常に強力です。後継者が会社の代表権を持ち、総議決権の50%超を保有するといった要件を満たせば、株式の贈与や相続にかかる税金の全額が猶予されます。2027年12月31日までの時限措置となっており、特例承継計画の提出期限は2026年3月31日ですので、早めの準備をおすすめします。

まとめ

親族間での株式譲渡は、第三者との取引に比べて価格設定が甘くなりがちです。しかし、適正な時価を外れて「低額譲渡」や「高額譲渡」を行うと、みなし贈与として想定外の高額な贈与税が課せられるリスクがあります。安全に株式を引き継ぐためには、上場・非上場を問わず正しい株価評価を行い、根拠となる資料や契約書をしっかりと残しておくことが不可欠です。

参考文献

国税庁 No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき
国税庁 No.4638 取引相場のない株式の評価
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

親族間の株式譲渡に関するよくある質問まとめ

Q.親族間で株式を無料で譲ることはできますか?

A.無料で譲ることは可能ですが、生前贈与の扱いとなり贈与税の対象となります。1年間に受け取った財産の評価額が110万円の基礎控除を超える場合、受け取った方に贈与税が課せられます。

Q.家族間なら株式を安く売っても問題ないですか?

A.適正な時価よりも著しく低い価格で売ると「低額譲渡」となり、時価との差額がみなし贈与として買い手(子など)に贈与税がかかるため注意が必要です。

Q.非上場株式の適正な時価はどうやって計算しますか?

A.国税庁の財産評価基本通達に基づき、会社の規模に応じて類似業種比準方式や純資産価額方式などを用いて計算します。非常に専門的な知識が必要です。

Q.高額譲渡をしてしまった場合、どのような税金がかかりますか?

A.売り手である親などには時価での譲渡所得税がかかり、さらに時価と売却価格の差額分について、買い手から贈与を受けたとして贈与税が課せられます。

Q.家族間の株式譲渡で節税する方法はありますか?

A.年間110万円の基礎控除を利用する暦年贈与や、2,500万円まで非課税となる相続時精算課税制度、条件を満たせば全額猶予される事業承継税制などがあります。

Q.売買や贈与をした証拠はどのように残すべきですか?

A.金額の根拠となる株価算定の資料を準備し、きちんとした株式譲渡契約書や贈与契約書を作成してください。代金のやり取りは銀行振込で行い、客観的な記録を残すことが大切です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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