税理士法人プライムパートナーズ

自己株式の取得時に発生するみなし配当とは?計算方法と税務処理

2025-12-21
目次

会社が自社の株式を買い取る「自己株式の取得」を行うと、株主に対して「みなし配当」という税務上の配当が発生することがあります。実際の配当金を受け取っていなくても税金がかかる場合があるため、注意が必要です。この記事では、みなし配当の基本的な仕組みから、計算方法、そして法人や個人における税務処理について、分かりやすく解説していきます。

みなし配当とは?

みなし配当とは、法人税法に規定されている制度です。会社法上の剰余金の配当には当てはまらなくても、実質的に会社から株主へ利益が分配されたとみなされる場合に発生します。自己株式の取得や会社の解散などの際に、株主が受け取った金銭が、過去に出資した金額を上回っていると、その上回った部分が税務上は配当として扱われます。

会社法上の配当との違い

通常の配当は、会社が事業で得た利益を株主に分配するものです。一方、みなし配当は、株式の買い取りや合併などの取引を通じて、結果的に利益の分配と同じ経済的効果が生じた場合に税務上だけ配当として扱われるという違いがあります。実態に合わせて適正な税金を計算するためのルールと言えますね。

みなし配当が発生する主なケース

みなし配当は、特定の取引が行われたときに発生します。ここでは、代表的なケースをいくつかご紹介します。

自己株式を取得する場合

会社が株主から自社の株式を買い取る自己株式の取得を行った場合です。株主が受け取った対価が、その株式に対応する資本金等の額を超えていると、その超えた部分がみなし配当となります。

会社が解散して残余財産が分配される場合

会社をたたむ際に、残った財産(残余財産)を株主に分配することがあります。このとき、株主が受け取る金額が、当初出資した金額(資本金など)よりも多ければ、増えた部分は事実上の利益の分配とみなされ、みなし配当として課税されます。

組織再編(非適格合併や非適格分割型分割)の場合

M&Aなどで会社が合併したり分割したりする際、税務上の「適格要件」を満たさない非適格合併や非適格分割型分割が行われると、みなし配当が発生します。消滅する会社の株主が受け取る対価が、出資額を上回るケースが該当します。

みなし配当の基本的な計算方法

みなし配当の計算は、取引の種類によって少しずつ異なりますが、基本となる考え方は共通しています。

計算の基本式

みなし配当は、株主が受け取った対価の全体から、資本の払戻し部分(出資した元本)を差し引いて計算します。

項目 内容
受け取った対価 株主が会社から受け取った金銭などの総額
資本の払戻し分 資本金や資本剰余金のうち、手放した株式に対応する金額
みなし配当額 受け取った対価から資本の払戻し分を差し引いた金額

自己株式取得時の計算例

具体的な数字で見てみましょう。たとえば、1株あたりの資本金等の額が5,000円の会社が、株主から1株15,000円で自己株式を買い取ったとします。この場合、受け取った15,000円から資本部分の5,000円を差し引いた、10,000円がみなし配当となります。複数株を売却した場合は、この差額に売却した株式数を掛け合わせて全体の金額を計算します。

みなし配当の課税の仕組みと税務処理

みなし配当が発生した場合、株式を譲渡したのが個人か法人かによって、税金の計算方法や税務処理が大きく変わります。

個人が株式を譲渡した場合

個人の株主が非上場企業の株式を会社に譲渡し、みなし配当を受け取った場合、これは配当所得として扱われます。通常の株式譲渡(申告分離課税・一律20.315%)とは異なり、原則として総合課税の対象となります。総合課税は累進課税制度をとっているため、他の所得と合算して所得に応じて5%から最大45%の所得税が課されます。住民税の10%を含めると最大で55%程度の税負担になる可能性があり、高所得者ほど注意が必要です。

法人が株式を譲渡した場合

法人が他の会社の株式を譲渡してみなし配当を受け取った場合、会計上は受取配当金として処理します。法人税の計算上は二重課税を防ぐため、持株比率に応じて受取配当等の益金不算入制度が適用され、課税所得から控除されます。

株式の区分(持株比率) 益金不算入となる割合
完全子法人株式等(100%) 100%
関連法人株式等(3分の1超~100%未満) 100%(負債利子控除後)
その他の株式等(5%超~3分の1以下) 50%
非支配目的株式等(5%以下) 20%

このように、法人にとっては一定割合が益金に算入されないため、法人税の節税効果が生まれることがあります。

自己株式を取得した発行会社の税務処理

自己株式を買い取った発行会社側も対応が必要です。みなし配当は配当金を支払ったのと同じ扱いになるため、会社は源泉徴収を行わなければなりません。非上場企業の場合、みなし配当の金額に対して20.42%(所得税および復興特別所得税)の税率で源泉徴収を行い、原則として支払った翌月の10日までに税務署へ納付する義務があります。

みなし配当が発生しないケース

すべての自己株式の取得や組織再編でみなし配当が発生するわけではありません。例外的なケースもあります。

市場での取得や適格組織再編

上場企業の株式を証券取引所などの市場を通じて取得した場合は、みなし配当は発生せず、通常の譲渡所得として計算されます。また、税務上の要件を満たした「適格合併」や「適格分割型分割」の場合も、利益積立金がそのまま引き継がれるため、みなし配当は生じません。さらに、相続で取得した非上場株式を、相続開始から3年以内に発行会社へ譲渡する場合も、特例によりみなし配当ではなく譲渡所得として扱われることがあります。

まとめ

自己株式の取得時に発生するみなし配当は、実際の現金の動きと税務上の扱いが異なるため、非常に複雑な制度です。個人の場合は総合課税により税負担が大きくなるリスクがある一方で、法人の場合は益金不算入制度により税務上のメリットを受けられることもあります。税務処理を誤ると後から指摘を受ける可能性があるため、自己株式の取得や組織再編を行う際は、事前にしっかりとした確認を行いましょう。

参考文献

国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
国税庁 No.5760 所得税額控除

みなし配当のよくある質問まとめ

Q.みなし配当とは簡単に言うと何ですか?

A.会社法上の配当ではないものの、自己株式の取得や会社の解散などで株主が受け取った金銭が出資額を上回った場合に、税務上は実質的な配当とみなされる利益のことです。

Q.個人がみなし配当を受け取った場合、税金はどうなりますか?

A.個人が非上場株式でみなし配当を受け取ると配当所得となり、総合課税の対象となります。所得に応じて5%から最大45%の所得税が課され、税負担が大きくなる可能性があります。

Q.法人がみなし配当を受け取った場合のメリットは何ですか?

A.法人が受け取るみなし配当は受取配当金として扱われ、持株比率に応じて一部または全額が益金不算入(課税対象外)となるため、法人税の節税効果が期待できます。

Q.みなし配当の基本的な計算方法を教えてください。

A.みなし配当は、株主が受け取った対価の総額から、手放した株式に対応する資本の払戻し分(資本金や資本剰余金など)を差し引いて計算します。

Q.自己株式を取得した会社側がすべきことはありますか?

A.自己株式を取得した会社は、みなし配当の金額に対して20.42%(非上場企業の場合)の税率で源泉徴収を行い、原則翌月10日までに税務署へ納付する義務があります。

Q.みなし配当が発生しないケースはありますか?

A.証券取引所などの市場を通じた上場株式の取得や、税務上の要件を満たす適格合併などの適格組織再編、また相続特例を利用した株式の譲渡などではみなし配当は発生しません。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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