お店で領収書をもらうとき、宛名を「上様」と書いてもらうことはありませんか?実は、インボイス制度が始まってから「上様」の領収書が経費や消費税の計算で認められるか不安に思う方が増えています。この記事では、インボイス制度における「上様」宛の領収書の取り扱いや、宛名記載のルール、万が一宛名が間違っていた場合の救済措置について、具体的にわかりやすく解説していきます。
領収書の宛名に書かれる「上様」とは?
領収書の宛名に記載される「上様」とは、会社名や個人名の代わりに使われる慣用的な表現です。お店が混雑しているときや、長い会社名を伝える手間を省きたいときに、お互いのやり取りを簡略化する目的で古くから使われてきました。しかし、税務調査の際には「誰が支払ったのか」が明確にならないため、証明力が低い書類として扱われるリスクがあります。
「上様」宛の領収書はインボイスとして認められる?
原則として、インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、「上様」と記載された領収書は正式なインボイスとして認められません。消費税の仕入税額控除を受けるためには、書類を受け取る事業者の正式な氏名または名称が記載されている必要があるからです。
インボイス(適格請求書)の必須記載項目
正式なインボイスとして認められるためには、以下の項目がすべて記載されている必要があります。記載漏れがあると、消費税の控除が受けられなくなるため注意が必要です。
| 項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 発行者の氏名または名称 | 株式会社〇〇など |
| 登録番号 | T+13桁の数字 |
| 取引年月日 | 令和〇年〇月〇日 |
| 取引内容 | 文房具代など(軽減税率対象ならその旨) |
| 税率ごとの合計金額と適用税率 | 10%対象 11,000円など |
| 税率ごとの消費税額等 | 消費税額 1,000円など |
| 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | お客様の正式な会社名や屋号 |
「上様」でも認められる特例(適格簡易請求書)
ただし、すべての業種で正式名称が必要なわけではありません。不特定多数のお客様と取引を行う小売業、飲食店業、タクシー業、旅行業などでは、宛名の記載を省略できる適格簡易請求書(簡易インボイス)の発行が認められています。これらの業種でお買い物をしたレシートや領収書であれば、宛名が「上様」であったり空欄であっても、インボイスとして消費税の控除を受けることができます。
宛名を訂正したい場合の正しい対応方法
会社の経費ルールで「上様」や宛名なしの領収書が認められず、宛名を訂正する必要がある場合、自分で書き加えるのは絶対にやめましょう。書類を受け取った側が勝手に追記や修正を行うことは、改ざんとみなされる恐れがあります。
発行者に訂正を依頼する
領収書の宛名を訂正したい場合は、必ず発行したお店や企業にお願いして、新しく正しい宛名で再発行してもらうか、訂正印を押して修正してもらいましょう。修正液や修正テープを使用した訂正は無効となる可能性が高いため、二重線で消して発行者の訂正印を押してもらうのが正しいルールです。
宛名の記載がない領収書の取り扱いとリスク
宛名が全く記載されていない領収書も、「上様」と同様に原則としてインボイスの要件を満たしません。ただし、先ほどご紹介した小売業や飲食店業などの適格簡易請求書であれば宛名なしでも問題ありません。また、インボイス制度においては、公共交通機関(鉄道・バス・船舶など)の3万円未満の旅客運賃や、自動販売機での3万円未満の商品の購入などを除き、原則として金額にかかわらずインボイスの保存が必要になります。
| 取引の種類 | インボイスの保存要件 |
|---|---|
| 3万円未満の鉄道やバスの運賃 | インボイス不要(帳簿のみで控除可能) |
| 3万円未満の自動販売機での購入 | インボイス不要(帳簿のみで控除可能) |
| 小売店や飲食店での購入(金額問わず) | 適格簡易請求書(宛名なし・上様でも可能) |
| 上記以外の通常の取引(金額問わず) | 原則インボイスが必要(正式な宛名が必要) |
経費精算時の領収書の取り扱いにおける注意点
インボイスとして消費税の計算に使えるかどうかだけでなく、法人税や所得税の計算において経費として認められるかも重要なポイントです。「上様」と書かれた領収書を経費精算に回す場合、私的な支払いではないことを証明するために、追加の資料を求められることがあります。
経費性を証明する補足資料の準備
領収書だけでは業務との関連性が薄いと判断されかねないため、社内の稟議書、会議の議事録、取引先とのメールのやり取りなどを一緒に保管しておくと安心です。また、領収書の裏面や余白に、一緒に食事をした相手の会社名や人数、打ち合わせの目的などをメモしておくことも、税務調査対策として非常に有効です。
まとめ
「上様」と記載された領収書は、小売業や飲食店などが発行する適格簡易請求書に該当する場合を除き、原則としてインボイスとして認められません。日頃から領収書を受け取る際は、可能な限り会社や個人の正式名称を記載してもらうよう心がけましょう。また、金額にかかわらずインボイスが必要なケースが増えているため、宛名だけでなく登録番号や消費税額などの必須項目が正しく記載されているかを確認する習慣をつけることが大切です。
参考文献
領収書の宛名やインボイスに関するよくある質問まとめ
Q.宛名が「上様」の領収書はインボイスとして使えますか?
A.原則として使えませんが、小売業や飲食店などが発行する適格簡易請求書であれば「上様」でもインボイスとして認められます。
Q.宛名が空欄の領収書に自分で会社名を書き足してもいいですか?
A.自分で宛名を書き足すことは改ざんとみなされる恐れがあるため絶対にやめましょう。必ず発行者に依頼して追記や再発行をしてもらってください。
Q.3万円未満の支払いなら領収書がなくても大丈夫ですか?
A.インボイス制度では原則として金額にかかわらずインボイスの保存が必要です。ただし、3万円未満の公共交通機関の運賃や自動販売機での購入などは例外として領収書がなくても帳簿のみで認められます。
Q.「上様」の領収書でも経費として落とせますか?
A.業務に関係する支払いであれば経費として落とすことは可能です。ただし、証明力が低くなるため、打ち合わせの相手や目的などを領収書の裏にメモしておくことをおすすめします。
Q.適格簡易請求書(レシート)を発行できるのはどんな業種ですか?
A.不特定多数のお客様と取引を行う小売業、飲食店業、タクシー業、旅行業などが適格簡易請求書を発行できます。
Q.宛名なしのレシートでも消費税の控除は受けられますか?
A.適格簡易請求書を発行できる業種(スーパーや飲食店など)からのレシートであれば、宛名が記載されていなくても消費税の仕入税額控除を受けることができます。