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兄弟姉妹の相続は甥・姪まで?代襲相続の範囲と昭和55年改正の背景

2026-03-11
目次

兄弟姉妹が相続人になるケースで、「甥や姪までは相続できるのに、その下の子には財産が引き継がれないのはなぜだろう」と疑問に思ったことはありませんか。実は、このルールは昭和55年の民法改正によって定められたものです。この記事では、なぜ兄弟姉妹の代襲相続が甥や姪の1代限りに制限されたのか、その背景にある歴史的な経緯や、現在の相続実務への影響について、具体的なルールを交えながら分かりやすく解説していきます。

兄弟姉妹の相続と代襲相続の基本ルール

まずは、兄弟姉妹が相続人になる場合の基本的な決まりと、代襲相続の仕組みについて確認していきましょう。

代襲相続とはどのような制度なのか

代襲相続とは、本来財産を受け継ぐはずだった相続人が、被相続人(亡くなった方)よりも先に死亡していた場合や、相続欠格、廃除などによって相続権を失っている場合に、その人の子どもが代わりに相続人になる制度です。たとえば、親が亡くなる前に子どもが亡くなっていた場合、その子ども(被相続人から見て孫)が代わりに財産を受け継ぐことになります。これにより、本来その家系に引き継がれるはずだった財産が途絶えないように保護されています。ただし、相続放棄をした場合は「初めから相続人ではなかった」とみなされるため、代襲相続は発生しません。

兄弟姉妹が相続人になる具体的なケース

民法では、誰が相続人になるかの優先順位が明確に定められています。配偶者は常に相続人となり、第1順位が子ども、第2順位が父母や祖父母などの直系尊属です。兄弟姉妹は第3順位の法定相続人となります。つまり、亡くなった方に子どもや孫がおらず、かつ父母や祖父母もすでに他界している場合に初めて、兄弟姉妹に相続権が回ってきます。配偶者と兄弟姉妹が共に相続人になる場合、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が全員で4分の1を分け合うことになります。

甥や姪が代襲相続人になる条件

兄弟姉妹に相続権が回ってきたものの、その兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、兄弟姉妹の子どもである甥や姪が代襲相続人として財産を受け継ぎます。たとえば、被相続人に配偶者がおらず、兄がすでに他界していて、その兄に2人の子ども(甥と姪)がいる場合、この甥と姪が被相続人の財産を2分の1ずつ相続することになります。このように、兄弟姉妹の相続においても代襲相続の仕組みは機能していますが、どこまでも続くわけではありません。

甥・姪の子(大甥・大姪)に再代襲相続が認められない理由

子どもが相続人の場合は孫、ひ孫へと代襲相続が続きますが、兄弟姉妹の場合は甥・姪まででストップします。この違いについて詳しく解説します。

子や孫の代襲相続との明確な違い

代襲相続がどこまで続くかは、誰の家系をたどるかによってルールが異なります。被相続人の子どもが相続人となる場合は、孫、ひ孫へと無制限に代襲相続が続く再代襲相続が認められています。しかし、兄弟姉妹が相続人となる場合は、代襲相続できるのは甥や姪までの1代限りです。甥や姪もすでに亡くなっている場合、その子ども(被相続人から見て大甥・大姪)には相続権は移りません。以下の表で違いを確認してみましょう。

本来の相続人 代襲相続が認められる範囲
被相続人の子 孫、ひ孫へと無制限に再代襲する
被相続人の兄弟姉妹 甥・姪までの1代限り(再代襲なし)

遺産分割協議における実務上の問題点

なぜ兄弟姉妹の場合は1代限りなのでしょうか。その大きな理由は、遺産分割協議をスムーズに進めるためです。被相続人と兄弟姉妹は血のつながりはあるものの、その甥・姪の子ども(大甥・大姪)の世代になると、もはや生前にお互い顔を合わせたこともない関係になることがほとんどです。面識のない遠い親戚が場合によっては20人から30人以上の相続人になってしまうと、全員を探し出して連絡を取り、実印と印鑑証明書を集めて遺産分割協議をまとめるのは現実的に極めて困難になります。こうした実務上のトラブルを防ぐために制限が設けられました。

昭和55年の民法改正の背景と歴史的経緯

兄弟姉妹の代襲相続が1代限りに制限されたのは、昭和55年(1980年)の民法改正によるものです。それまでの経緯を見ていきましょう。

昭和23年から昭和55年までの旧制度

戦後の新民法が施行された昭和23年1月1日から、昭和55年12月31日までの期間は、実は兄弟姉妹の代襲相続にも再代襲相続が無制限に認められていました。つまり、被相続人の甥や姪が先に亡くなっていれば、その子ども、さらには孫へと、どこまでも相続権が引き継がれていたのです。当時の法律では、直系卑属(子や孫)と同じように、兄弟姉妹の家系であっても血縁関係が続く限り財産を分け与えるという考え方が採用されていました。

戸籍調査の負担増大と何十人もの相続人

しかし、この無制限の再代襲相続は、実務の現場で大きな混乱を招きました。昔は兄弟姉妹の数が多い家庭が一般的だったため、相続が発生すると、相続人が数十人に膨れ上がるケースが珍しくありませんでした。相続人を確定させるためには、亡くなった兄弟姉妹や甥・姪の戸籍を日本全国の役所から何十通も取り寄せて、一人ひとりの生存や死亡を確認しなければなりません。この膨大な戸籍調査の負担が、遺産相続の手続きを長期化させる最大の原因となっていました。

昭和55年改正による1代限りの制限とその目的

こうした深刻な実務上の困難を解消するため、昭和55年に民法が改正され(昭和56年1月1日施行)、兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪の子どもには及ばないよう、1代限りに制限されました。改正の最大の目的は、相続人の範囲が際限なく広がることを防ぎ、遺産分割の手続きを合理化することです。遠い親戚同士の無用なトラブルを減らし、残された遺族がスムーズに財産の整理を行えるようにするための、非常に重要なルール変更でした。

適用される法律は「被相続人の死亡日」で決まる

相続のルールは、法律が改正されたからといって過去のすべての相続にさかのぼって適用されるわけではありません。どのルールが適用されるかは、被相続人が亡くなった日で決まります。

昭和55年12月31日以前に亡くなった場合の特例

被相続人が昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までの間に亡くなっている場合、当時の旧民法が適用されます。つまり、この期間に発生した相続であれば、現在であっても甥・姪の子どもへの再代襲相続が認められます。たとえば、亡くなった祖父の古い名義のまま放置されている土地を今になって相続登記しようとした場合、当時の法律に従って、多数の相続人全員を探し出して遺産分割協議を行う必要があるため、非常に専門的な知識が求められます。

被相続人の死亡時期 兄弟姉妹の代襲相続の範囲
昭和23年1月1日〜昭和55年12月31日 制限なし(甥・姪の子も再代襲する)
昭和56年1月1日以降 甥・姪までの1代限り(再代襲なし)

昭和56年1月1日以降に亡くなった場合の現行ルール

被相続人が昭和56年1月1日以降に亡くなった場合、現行の民法が適用されるため、兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪までとなります。現在発生している相続の大半はこの現行ルールが適用されます。そのため、兄弟姉妹が相続人になるケースであっても、相続人の数が異常に膨れ上がるリスクは昔に比べて大きく軽減されています。ご自身の親族関係を整理し、誰が法定相続人になるのかを事前に把握しておくことが大切です。

甥や姪に確実に財産を残すための生前対策

「自分には子どもがいないので、可愛がっている甥や姪、あるいはその子どもに財産を残したい」と考える方も多いでしょう。そのための対策をご紹介します。

遺言書の作成による遺贈の活用

法定相続人ではない甥・姪の子どもに財産を残したい場合や、特定の甥・姪に多く財産を与えたい場合は、遺言書の作成が最も確実な方法です。遺言書で「〇〇に財産を遺贈する」と指定しておけば、法定相続分にとらわれず自由に財産の受取人を決めることができます。ただし、遺言書で指定された受取人が遺言者よりも先に亡くなった場合、代襲相続の規定は適用されません。そのため、「〇〇が先に死亡した場合は、その子どもに遺贈する」といった予備的な記載をしておくことが非常に重要です。

生前贈与や生命保険を活用した財産移転

遺言書以外にも、生前贈与を活用して、甥や姪、その子どもに元気なうちから少しずつ財産を渡していく方法もあります。年間110万円までの基礎控除の範囲内であれば贈与税はかかりません。また、生命保険の死亡保険金の受取人に甥や姪を指定することも効果的です。ただし、生命保険の受取人を兄弟姉妹や甥・姪にする場合、保険会社によって引き受けの条件が異なることがあるため、事前に保険会社に要件を確認することをおすすめします。

まとめ

兄弟姉妹の相続において、代襲相続が甥・姪までの1代限りに制限されているのは、昭和55年の民法改正によるものです。それ以前の無制限な再代襲相続が引き起こした「相続人が何十人にも膨れ上がり、戸籍調査や遺産分割協議が困難になる」という実務上の深刻な問題を解決するために、このルールが設けられました。現在では、適用される法律は被相続人が亡くなった日によって決まります。もしご自身の財産を確実に甥や姪、あるいはその下の子どもたちに残したいとお考えの場合は、生前に遺言書を作成するなどの対策をしっかりと立てておくことが大切です。

参考文献

国税庁:No.4132 相続人の範囲と法定相続分

兄弟姉妹の代襲相続に関するよくある質問まとめ

Q.兄弟姉妹の相続で、甥や姪の子どもは代襲相続できますか?

A.原則として代襲相続できません。昭和56年1月1日以降に亡くなった方の相続では、兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪までの1代限りに制限されています。

Q.なぜ甥・姪までしか代襲相続できないように法改正されたのですか?

A.相続人が何十人にも増え、面識のない遠い親戚同士で遺産分割協議を行うことになり、戸籍調査や手続きが極めて困難になるという実務上のトラブルを防ぐためです。

Q.昔の相続で、甥や姪の子どもが相続人になることはありますか?

A.はい、あります。被相続人が昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までの間に亡くなっている場合、当時の法律が適用されるため無制限の再代襲相続が認められます。

Q.子どもの代襲相続と兄弟姉妹の代襲相続の違いは何ですか?

A.子どもの場合は孫、ひ孫へと無制限に再代襲相続が続きますが、兄弟姉妹の場合は甥・姪までの1代限りで再代襲相続がストップする点が明確に異なります。

Q.甥や姪の子どもに財産を残したい場合はどうすればいいですか?

A.遺言書を作成して「遺贈」として財産を渡す旨を記載するか、生前贈与や生命保険の受取人指定を活用することで、確実に財産を残すことができます。

Q.甥や姪が遺言書で指定されていた場合、その甥・姪が先に亡くなったらどうなりますか?

A.遺言による遺贈には代襲相続の規定は適用されず、その指定は無効になります。あらかじめ「もし先に亡くなった場合はその子どもに譲る」という予備的記載が必要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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