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【実務の盲点】養子縁組前の子が土地持分を取得する税務リスク

2026-03-12
目次

養子縁組を行う際、実務上よく落とし穴となるのが「養子縁組をする前に生まれていた子(養子の子や連れ子)」の扱いです。将来、この子に土地の持分などの財産を譲りたいと考えても、法律上は法定相続人とみなされず、思わぬ税金がかかることがあります。今回は、養子縁組前の子が土地の持分を取得した場合の税務リスクと、その対策について詳しく解説いたします。

養子縁組前の子とは?法律上の位置づけ

まずは、養子縁組をする前に生まれていた子が、法律上どのような位置づけになるのかを確認しておきましょう。民法では、養子と養親の間には縁組の日から血族関係が生じると定められています。しかし、縁組の日より前に生まれていた養子の子については、養親との間に血族関係が生じません。つまり、法律上はまったくの他人(または単なる姻族)という扱いになってしまうのです。

養子縁組後に生まれた子との違い

養子縁組の前に生まれていた子と、養子縁組の後に生まれた子では、将来の相続における権利が大きく異なります。具体的には、代襲相続(本来の相続人が亡くなっている場合に、その子が代わりに相続すること)の権利があるかどうかが変わってきます。

生まれた時期 代襲相続権の有無
養子縁組前に生まれた子 代襲相続権なし(法定相続人になれない)
養子縁組後に生まれた子 代襲相続権あり(法定相続人になれる)

法定相続人になれるかどうかの判定

養親が亡くなったとき、養子本人がご健在であれば養子が法定相続人となります。しかし、養子本人がすでに亡くなっている場合、養子縁組後に生まれた子であれば代襲相続人として法定相続人になりますが、養子縁組前に生まれていた子は法定相続人にはなれません。法定相続人ではないため、遺言書で財産を譲る(遺贈)という形をとる必要があります。

相続税計算における人数のカウント

相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。養子縁組前に生まれた子は法定相続人に含まれないため、基礎控除額を増やすことはできません。例えば、法定相続人が養子1人の場合は基礎控除額が3,600万円ですが、養子が亡くなっていてその子が養子縁組前の子であった場合、法定相続人は0人となり、基礎控除額は3,000万円になってしまいます。

土地の持分を取得した場合の税務リスク

養子縁組前に生まれていた子が、遺言などで土地の持分を取得した場合、法定相続人ではないことが原因で様々な税務上の不利益が生じます。具体的にどのような税金が重くなるのかを見ていきましょう。

相続税の2割加算の対象になる

相続税には、被相続人の配偶者、および一親等の血族(親や子、代襲相続人である孫など)以外の人に財産が渡った場合、相続税額が2割加算されるというルールがあります。養子縁組前の子は一親等の血族でも代襲相続人でもないため、支払うべき相続税が1.2倍に跳ね上がってしまいます。例えば、本来の相続税額が500万円だった場合、2割加算によって100万円多い600万円を納める必要があります。

登録免許税と不動産取得税の負担増

土地の名義変更を行う際にかかる税金も、法定相続人とそれ以外の人で大きく異なります。法定相続人であれば不動産取得税はかかりませんが、養子縁組前の子が遺贈で土地を取得した場合は課税されます。また、法務局で支払う登録免許税の税率も5倍高くなります。

税金の種類 法定相続人(養子縁組後の子など)
登録免許税 固定資産税評価額の0.4%
不動産取得税 かからない(非課税)
税金の種類 法定相続人以外(養子縁組前の子など)
登録免許税 固定資産税評価額の2.0%
不動産取得税 固定資産税評価額の3.0%または4.0%

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地を取得した場合、法定相続人なら登録免許税8万円のみで済みますが、養子縁組前の子の場合は登録免許税40万円に加え、不動産取得税(土地の場合は原則3.0%で60万円)がかかり、合計100万円もの税負担が生じます。

小規模宅地等の特例が適用できない可能性

亡くなった方の自宅や事業用の土地を相続する際、土地の評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例という非常に有利な制度があります。この特例の対象となるのは、亡くなった方の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)です。養子縁組前の子は、場合によってはこの親族の定義に当てはまらないケースがあり、その場合は特例が一切使えず、土地の評価額がそのまま課税対象となってしまいます。

生前贈与で土地の持分を渡す場合の注意点

亡くなった後(相続時)の税金が高いのであれば、生きているうちに生前贈与で土地の持分を渡しておこうと考えるかもしれません。しかし、生前贈与においてもいくつか気をつけるべきポイントがあります。

暦年贈与の基礎控除110万円の活用

1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた金額が110万円以下であれば、贈与税がかからないという暦年贈与の制度は、養子縁組前の子に対しても使うことができます。土地の持分を毎年110万円の評価額の範囲内で少しずつ贈与していけば、無税で財産を移すことが可能です。ただし、土地の贈与のたびに司法書士への登記費用や登録免許税(2.0%)、不動産取得税がかかる点には注意が必要です。

相続時精算課税制度は使えるのか?

累計2,500万円までの贈与について贈与税がかからず、相続時に精算する相続時精算課税制度というものがあります。しかし、この制度は「60歳以上の直系尊属(父母や祖父母など)」から「18歳以上の直系卑属(子や孫など)」への贈与でなければ使えません。養子縁組前の子は法律上の直系卑属ではないため、この有利な制度を利用して一度に多額の土地の持分を渡すことはできないのです。

遺言書で土地の持分を遺贈する場合のポイント

養子縁組前の子に財産を残すためには、遺言書を作成して「遺贈」という形をとるのが一般的です。その際に後々のトラブルを防ぐためのポイントを整理しておきましょう。

遺留分侵害額請求への対策

配偶者や子などの法定相続人には、遺言書の内容に関わらず最低限受け取れる財産の割合である遺留分が保証されています。養子縁組前の子に土地の持分を多く渡しすぎた結果、他の相続人の遺留分を侵害してしまうと、後から金銭による請求(遺留分侵害額請求)を受けることになります。遺留分を侵害しない範囲で遺贈の割合を決めるか、代償金を支払えるよう生命保険などで現金を準備しておく必要があります。

不動産の共有持分によるトラブル回避

土地を「他の相続人2分の1、養子縁組前の子2分の1」といった形で共有持分として遺贈することは、できる限り避けることをおすすめします。共有名義にしてしまうと、将来その土地を売却したり、建物を建て替えたりする際に、共有者全員の同意が必要となり、意見の食い違いから不動産が身動きの取れない状態(塩漬け)になるリスクが高いためです。土地は単独名義で渡し、他の人には現金を渡すなどの工夫が大切です。

税務リスクを軽減するための生前対策

ここまで見てきたように、養子縁組前の子がそのまま土地の持分を取得すると、税金面でも権利面でも不利な立場になります。これを解決するための具体的な生前対策をご紹介します。

その子自身とも養子縁組を行う

最も確実で効果的な対策は、親(養親)と養子の間で縁組をするだけでなく、その養子縁組前の子自身とも直接養子縁組をして孫養子にすることです。これにより、その子も法律上の「子(一親等の法定相続人)」となります。法定相続人になれば、基礎控除の人数にカウントされ、登録免許税は0.4%、不動産取得税は非課税となり、小規模宅地等の特例も適用しやすくなります。ただし、孫を養子にした場合、相続税の2割加算の対象にはなる(代襲相続人である場合を除く)点だけはご注意ください。

生命保険を活用した代償分割の準備

土地という分けにくい財産を特定の誰かに渡す場合、他の相続人から不満が出やすくなります。そこで、土地を取得する人が他の相続人に対して現金を支払う「代償分割」という方法があります。この現金を準備するために、財産を渡す側(被相続人)が生命保険に加入し、受取人をその子に指定しておくのが有効です。受け取った死亡保険金を使って他の相続人に現金を支払うことで、円満に土地を承継することができます。

まとめ

養子縁組を行う前に生まれていた子は、法律上の血族関係が生じないため、いざ相続が発生して土地の持分を渡そうとすると、相続税の2割加算や高額な登録免許税、不動産取得税といった重い税負担が発生します。また、相続時精算課税制度が使えないなど、生前対策の選択肢も狭まってしまいます。これらの実務の盲点を避けるためには、遺言書の作成による遺留分への配慮や、その子自身とも直接養子縁組を行うといった対策が非常に重要です。税負担や手続きが複雑になりやすいため、迷われた際はぜひ早めに対策を検討してみてください。

参考文献

国税庁 No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算

国税庁 No.4157 相続税額の2割加算

国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

養子縁組前の子の税務に関するよくある質問まとめ

Q.養子縁組前に生まれていた子は、法律上どのような扱いになりますか?

A.養子と養親の間には縁組の日から血族関係が生じますが、縁組前に生まれていた子には血族関係が生じず、法律上は法定相続人になりません。

Q.養子縁組前の子に土地を遺贈すると、相続税はどうなりますか?

A.養子縁組前の子は一親等の血族や代襲相続人ではないため、本来の相続税額に加えて2割加算の対象となり、税負担が大きくなります。

Q.土地の名義変更にかかる税金は法定相続人と同じですか?

A.いいえ、異なります。法定相続人なら登録免許税は0.4%で不動産取得税は非課税ですが、養子縁組前の子の場合は登録免許税2.0%に加え、原則3.0%などの不動産取得税が課税されます。

Q.生前贈与で土地の持分を渡す場合、相続時精算課税制度は使えますか?

A.相続時精算課税制度は直系尊属から直系卑属への贈与に限定されているため、法律上の直系卑属ではない養子縁組前の子にはこの制度を使えません。

Q.暦年贈与の年間110万円の基礎控除は利用できますか?

A.はい、暦年贈与の基礎控除110万円は誰に対しても適用できるため、養子縁組前の子へ少しずつ土地の持分を無税で贈与することは可能です。

Q.税務リスクを減らすためにはどのような対策が有効ですか?

A.養親がその養子縁組前の子自身とも直接養子縁組を行って法定相続人にすることや、遺言書の作成、代償分割のための生命保険の活用などが有効な対策です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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