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相続放棄した後に残る正の財産はどうすればよい?正しい対処法と注意点

2026-03-23
目次

ご家族がお亡くなりになり、悲しみの中でも進めなければならないのが相続のお手続きですね。その中で、亡くなった方に多額の借金があり、相続放棄を選ばれる方もいらっしゃると思います。しかし、相続放棄をした後で「預貯金や不動産といった正の財産(プラスの財産)はどうすればよいのだろう?」と迷ってしまうことはありませんか。この記事では、相続放棄をした後の正の財産の取り扱いや、絶対にやってはいけない注意点などを分かりやすくお話ししていきます。

相続放棄の基本と正の財産の扱い方

相続放棄とは?プラスの財産も手放すことになる

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産や借金を一切引き継がないようにするための法的な手続きです。この手続きは、ご自身が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。ここで気をつけたいのは、借金などのマイナスの財産だけを手放すことはできず、預貯金や不動産といった正の財産もすべて手放すことになるという点です。つまり、相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったものとして扱われるため、正の財産を受け取る権利も失います。

相続放棄後に正の財産を受け取るとどうなる?

もし、相続放棄の手続きが無事に終わった後に、亡くなった方の銀行口座から現金を引き出したり、ご自身の名義に変更したりしてしまうとどうなるのでしょうか。実は、このような行動をとると、法律上「相続を承認した(単純承認)」とみなされてしまう危険があります。単純承認とみなされると、せっかく行った相続放棄が無効になり、数千万円などの多額の借金であってもすべて背負わなければならなくなります。そのため、放棄後は正の財産には絶対に触れないことが鉄則です。

単純承認とみなされるケースと注意点

どのような行動が単純承認とみなされるのか、具体的に知っておくことが大切です。誤って正の財産を処分してしまうと、取り返しがつきません。以下の表に、単純承認になる行為とならない行為をまとめました。

単純承認になる行為(やってはいけないこと) 単純承認にならない行為(やってもよいこと)
預貯金の引き出しや解約、不動産の売却 一般的な形見分け(経済的価値のない写真や手紙など)
亡くなった方の借金を遺産から支払うこと 生命保険金(死亡保険金)の受け取り
賃貸アパートの勝手な解約手続き 妥当な金額(100万円から200万円程度)の葬儀費用の支払い

相続放棄しても受け取れる正の財産(例外)

死亡保険金(生命保険金)の受け取り

相続放棄をした場合でも、実は受け取ることができる正の財産があります。その代表が死亡保険金(生命保険金)です。死亡保険金は、保険契約に基づいて指定された受取人に直接支払われる固有の財産とされているため、亡くなった方の遺産には含まれません。ただし、相続税の計算上はみなし相続財産として扱われます。生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠がありますが、相続放棄をした方はこの非課税枠の適用を受けられないため、税金の申告には注意が必要です。

遺族年金や未支給年金の手続き

亡くなった方が年金を受給していた場合、遺族年金や未支給年金を受け取ることができるケースがあります。これらも生命保険金と同じように、遺族の生活を保障するための制度に基づく固有の権利として扱われます。そのため、相続放棄をしても受け取ることが可能です。未支給年金は、亡くなった月までのまだ受け取っていなかった年金のことで、配偶者や子など一定の遺族がご自身の名前で請求できます。金額は受給状況によりますが、数万円から十数万円程度になることが多いですよ。

葬儀費用の支払いはどうなる?

お葬式にかかる費用を、亡くなった方の預貯金から支払ってよいのか悩む方は非常に多いです。過去の裁判例では、社会的にみて妥当な範囲の葬儀費用(一般的に100万円から200万円程度)であれば、遺産から支払っても単純承認にはあたらないとされています。しかし、不必要に豪華な葬儀を行ったり、数百万円もする高額な仏壇やお墓を遺産で購入したりすると、財産の処分とみなされる恐れがあります。不安な場合は、ご自身の財産から支払うのが最も安全ですね。

相続放棄した後の正の財産の管理責任

相続放棄しても財産の管理義務は残る?

相続放棄をすれば、もう亡くなった方の財産とは無関係になれると思われがちですが、実はそうではありません。民法により、相続放棄をした時に現にその財産を占有していた場合、次の相続人や管理者が財産の管理を始めるまでは、ご自身の財産と同じように注意して管理する義務(保存義務)が残ります。たとえば、亡くなった方と同居していた実家が空き家になった場合、そのまま放置してご近所に迷惑をかけるような状態にしてはいけません。

相続財産清算人の選任申し立てについて

管理義務から完全に解放されるためには、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てる必要があります。相続財産清算人とは、相続人が誰もいない場合に、亡くなった方の財産を管理し、借金の清算などを行ってくれる専門家のことです。申し立てを行うことで、正の財産も負の財産も適切に処理され、最終的に残った財産は国庫(国)に納められる仕組みになっています。

管理義務から解放されるための具体的な手順

相続財産清算人を選任してもらうためには、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ手続きを行います。この手続きにかかる費用について、表にまとめました。

必要な費用・書類 具体的な金額・内容の目安
収入印紙・郵便切手 収入印紙800円分、郵便切手は数千円程度(裁判所により異なります)
官報公告費用 約5,000円弱の費用がかかります
予納金(清算人の報酬など) 20万円から100万円程度(財産状況により裁判所が決定します)

予納金は、遺産の中から清算人の報酬が十分に支払えない場合に必要となるため、費用負担が大きくなることがありますのでご注意くださいね。

正の財産を処分してしまった場合の対処法

誤って財産を処分してしまったら?

もし、相続放棄の手続きをする前に、あるいはした後に、誤って亡くなった方の預貯金(例えば生活費として20万円など)を引き出して使ってしまった場合、原則として単純承認とみなされてしまいます。しかし、引き出したお金を一切使わずに別の口座に分けて保管しているだけの場合や、引き出してしまった後でも返金して元の状態に戻すことができれば、救済される可能性がわずかに残されています。自己判断で隠したりせず、すぐに専門家に相談することが重要です。

形見分けはどこまで許されるのか

亡くなった方の大切な思い出の品を受け取る「形見分け」は、どこまでなら許されるのでしょうか。一般的に、経済的な価値がほとんどないアルバムや手紙、着古した衣類などを受け取ることは、単純承認にはならず問題ありません。しかし、ブランド物の時計や宝石、数十万円の価値がある骨董品などを形見として受け取ると、正の財産を処分したとみなされます。価値があるかどうかわからない場合は、手をつけないのが一番安心ですね。

借金の支払いや解約手続きの注意点

クレジットカードや携帯電話の解約手続きも、慎重に行う必要があります。携帯電話の解約に伴い、未払い金数千円を遺産から支払ってしまったり、解約に伴う返戻金を受け取ったりすると、財産の処分とみなされる危険があります。債権者(お金を貸している会社)から数万円の督促状が届いても、遺産から支払ってはいけません。相続放棄の手続き中であること、または完了したことを伝え、受理証明書を提示することで支払いを断ることができます。

相続放棄をすべきか迷ったときの判断基準

プラスの財産とマイナスの財産の調査方法

相続放棄をするかどうか決めるためには、まず正の財産と負の財産がそれぞれいくらあるのかを正確に調べることが第一歩です。預貯金は金融機関に残高証明書を請求し、不動産は市役所で名寄帳を取得して確認します。借金については、信用情報機関に開示請求を行うことで、消費者金融やクレジットカードの借り入れ状況(残高が50万円あるかなど)を把握できます。この調査を3ヶ月以内に行う必要があります。

限定承認という選択肢も検討する

財産を調査した結果、正の財産と負の財産のどちらが多いか分からない場合、「限定承認」という手続きを選ぶこともできます。限定承認とは、受け継いだ正の財産の範囲内でのみ借金を返済し、もし財産が余ればそれを受け取ることができるという制度です。例えば、借金が1,000万円あるかもしれないが、実家の不動産(評価額800万円)だけは手元に残したい場合などに有効です。ただし、相続人全員で申し立てをする必要があり、手続きが非常に複雑になります。

専門家に相談するタイミング

相続の期限である3ヶ月は、お葬式や各種手続きに追われているとあっという間に過ぎてしまいます。財産の調査が難航している場合や、すでに少し遺産に手をつけてしまって相続放棄ができるか不安な場合は、迷わず早めに法律の専門家に相談しましょう。家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることで、3ヶ月の期限を延長できる場合もあります。無理にご自身だけで抱え込まないことが大切ですよ。

まとめ

相続放棄をした後、預貯金や不動産といった正の財産に安易に触れてしまうと、相続放棄が無効になり、すべての借金を背負うという取り返しのつかない事態になりかねません。死亡保険金や遺族年金のように受け取れる例外もありますが、基本的には亡くなった方の財産には手をつけず、慎重に行動することが求められます。また、空き家などの管理義務が残る場合には、相続財産清算人の選任も検討しましょう。正しい知識を持ち、安全に手続きを進めてくださいね。

参考文献

裁判所:相続の放棄の申述

国税庁:相続税の課税対象になる死亡保険金

相続放棄後の正の財産に関するよくある質問まとめ

Q.相続放棄をした後、亡くなった方の預金を引き出してもよいですか?

A.絶対に引き出してはいけません。預金を引き出して使用すると単純承認とみなされ、相続放棄が無効になって借金を含むすべての遺産を背負うことになります。

Q.相続放棄をしても生命保険金(死亡保険金)は受け取れますか?

A.はい、受け取ることができます。死亡保険金は受取人固有の財産とされるため遺産には含まれず、相続放棄をしても受け取る権利は失われません。

Q.遺産の中からお葬式の費用を支払っても大丈夫ですか?

A.一般的で妥当な範囲の葬儀費用(100万円から200万円程度)であれば遺産から支払っても問題ないとされることが多いですが、高額な仏壇の購入などは単純承認とみなされる危険があるため注意が必要です。

Q.亡くなった方の実家が空き家になりますが、相続放棄すれば放置してもよいですか?

A.相続放棄をしても、現に占有していた場合は次の管理者が決まるまでご自身の財産と同じように管理する義務が残ります。完全に手放すには家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てる必要があります。

Q.亡くなった方の衣服や写真などを形見分けとして持ち帰ってもよいですか?

A.経済的な価値がほとんどない写真や手紙、着古した衣服などであれば持ち帰っても問題ありません。しかし、宝石やブランド品など価値のあるものは持ち帰らないでください。

Q.相続放棄の手続きには期限がありますか?

A.はい、ご自身が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。期限を過ぎると放棄できなくなるため、早めに行動しましょう。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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