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認知症の方が相続放棄するには?後見人の手続きや注意点を解説

2026-03-24
目次

親族がお亡くなりになり、いざ相続の手続きを進めようとしたとき、相続人の中に認知症の方がいらっしゃるケースは少なくありません。借金などのマイナスの財産が多く、相続放棄を選びたくても、認知症の方はどのように手続きを進めればよいのでしょうか。今回は、認知症の方が相続放棄するにはどのような手順を踏めばよいのか、費用や期間、注意点などを優しくわかりやすく解説していきます。

認知症の方は自分で相続放棄できる?

認知症になってしまった場合、相続手続きにおいてさまざまな影響が出てきます。まずは、ご本人が自ら相続放棄の手続きを行えるのかどうかについて確認していきましょう。

認知症の方本人は相続放棄の手続きができない

結論からお伝えしますと、認知症により物事を判断する能力が低下している場合、ご自身で相続放棄の手続きを行うことはできません。相続放棄とは、亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないという、法律上の重大な決断です。認知症が進行して意思能力がないとみなされる状態では、ご本人による相続放棄の申立ては無効となってしまいます。そのため、代わりに手続きを進めてくれる人を立てる必要があります。

遺産分割協議への参加もできない

相続放棄だけでなく、財産の分け方を話し合う遺産分割協議にも参加することができません。遺産分割協議は、相続人全員が内容をしっかりと理解し、同意した上で署名や実印の押印を行う必要があります。判断能力が不十分な状態で行われた協議は、後から無効になる可能性が高いのです。ご家族が代わりに署名や押印をすることも法律上認められていないため、そのままでは銀行口座の解約や不動産の名義変更といった一切の手続きがストップしてしまいます。

認知症の方が相続放棄するには成年後見制度を利用する

認知症の方がご自身で手続きできない場合、成年後見制度という国の制度を利用して、代理人に手続きを進めてもらうことになります。この制度の仕組みについて詳しく見ていきましょう。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症や知的障害などにより判断能力が十分ではない方の代わりに、財産の管理やさまざまな契約手続きを行う後見人を選任し、ご本人を保護するための制度です。家庭裁判所に申し立てを行い、選任された成年後見人がご本人に代わって、相続放棄の手続きや遺産分割協議などを行ってくれます。ご本人の不利益になるような契約を防ぐ役割も持っています。

法定後見制度と任意後見制度の違い

成年後見制度には、大きく分けて2つの種類があります。ご本人の現在の健康状態によって利用できる制度が変わりますので、以下の表で違いを確認してみてください。

制度の種類 特徴
法定後見制度 すでに認知症などで判断能力が低下している場合に、ご家族などが家庭裁判所に申し立てて後見人を選任してもらう制度です。
任意後見制度 ご本人の判断能力がしっかりしている元気なうちに、将来認知症になったときに備えて、自ら後見人を選んで契約を結んでおく制度です。

すでに認知症を発症してしまっている場合は、必然的に法定後見制度を利用することになります。

後見人の選任にかかる期間と費用

家庭裁判所に後見人の選任を申し立ててから実際に選任されるまでには、おおよそ1ヶ月から2ヶ月、長い場合は4ヶ月程度の期間がかかります。また、申し立てにかかる費用としては、収入印紙800円、連絡用の郵便切手が約3,000円〜5,000円必要です。場合によっては、医師による鑑定費用として約50,000円〜100,000円が追加でかかることもあります。選任された後見人が弁護士や司法書士などの専門家になった場合は、ご本人の財産から月額20,000円〜50,000円程度の報酬を継続して支払う必要があります。

後見人を通じた相続放棄手続きの流れ

ここからは、実際に成年後見人が選任されてから相続放棄が完了するまでの具体的なステップを解説します。

家庭裁判所への後見開始の申立て

まずは、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、後見開始の申立てを行います。申立てができるのは、ご本人、配偶者、四親等内の親族などと法律で定められています。申立てには、ご本人の戸籍謄本や住民票、医師の診断書、財産目録など、多くの書類を集める必要があります。

成年後見人の選任

申し立てを受けた家庭裁判所は、書類の審査やご本人・ご家族との面接を行い、もっとも適任と思われる人を成年後見人に選任します。ご家族を候補者として申請することもできますが、親族間で意見が対立している場合や、財産が高額な場合には、裁判所の判断で第三者の専門家が選ばれるケースが多くを占めています。

後見人による相続放棄の申述と受理

成年後見人が無事に選任されたら、いよいよ後見人がご本人に代わって相続放棄の手続きを行います。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄申述書を提出し、問題がなければ受理され、手続きが完了します。これで、ご本人は初めから相続人ではなかったことになり、借金などを引き継ぐ心配がなくなります。

認知症の方が相続放棄する際の注意点

成年後見制度を利用すれば安心と思われがちですが、相続手続きを進めるにあたって気をつけておきたい重要なポイントがいくつかあります。

必ずしも相続放棄が認められるとは限らない

成年後見人の最大の役割は、ご本人の財産と権利を守ることです。そのため、被相続人に多額の借金があるなど、明らかに相続放棄をした方がご本人のためになるという場合でなければ、後見人は手続きを行いません。たとえば、ご家族の負担を減らすために認知症の方だけ放棄させようとしても、ご本人にとってプラスの財産を受け取れる権利を捨てることになるため、認められないのです。

後見人との利益相反に注意が必要

もしご家族が成年後見人に選ばれた場合、利益相反という問題に気をつけなければなりません。たとえば、亡くなった父親の借金を放棄するために、認知症の母親の成年後見人に同居の子供がなったとします。子供も相続人である場合、母親の相続を放棄すると子供の相続分が増える可能性があり、利害が対立してしまいます。この場合、子供は後見人として母親の手続きができず、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう手間がさらに発生します。子供自身が先に手続きを済ませておけば、利益相反を防ぐことができます。

相続放棄の3ヶ月の期限と期間の伸長

相続放棄には、被相続人が亡くなったこと、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内という厳しい期限があります。しかし、成年後見人の選任には時間がかかるため、期限を過ぎてしまうと心配になる方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください。認知症の方に後見人がつく場合、この期限は後見人が選任されて、相続の開始を知った日からスタートします。また、必要であれば家庭裁判所に期間伸長の申立てを行うことで、期限を延長してもらうことも可能です。

認知症になる前に行える生前対策

ご家族が認知症を発症してからでは、手続きの負担や費用がとても大きくなってしまいます。そのため、ご本人が元気で判断能力があるうちに対策をしておくことが非常に大切です。

任意後見契約を結んでおく

将来、判断能力が低下してしまったときに備えて、あらかじめ信頼できるご家族などを後見人として指定し、公証役場で任意後見契約を結んでおく方法です。これなら、いざというときにスムーズにご希望の方が財産管理や手続きのサポートを行うことができ、裁判所によって知らない専門家が選任されるリスクを減らすことができます。

家族信託を活用する

家族信託とは、ご本人がお元気なうちに、ご自身の財産の管理や処分をする権限を信頼できるご家族に託す契約のことです。ご本人が認知症になってしまった後でも、託されたご家族の権限で財産の管理や運用、不動産の売却などを柔軟に行うことができます。家庭裁判所の許可や専門家への報酬が必要ないため、非常に自由度が高く、注目されている生前対策の一つです。

遺言書を作成しておく

財産を渡す側となる方の対策として、元気なうちに遺言書を作成しておくことも有効です。誰にどの財産をどれくらい渡すのかを明確に記しておくことで、残されたご家族は遺産分割協議を行う必要がなくなります。認知症の方がいる場合でも、協議を通さずに遺言書通りにスムーズに名義変更などの手続きを進めることができます。確実性を高めるため、公証役場で作成する公正証書遺言をおすすめします。

まとめ

認知症の方が相続放棄するには、ご自身で手続きをすることができないため、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があります。後見人がご本人に代わって申述を行いますが、選任までには時間と費用がかかり、場合によっては専門家への継続的な報酬が発生することもあります。また、ご本人の不利益になるような手続きは認められません。このような複雑な手続きを避けるためにも、ご本人がお元気なうちに家族信託や任意後見契約などの生前対策をしっかりと検討しておくことが、ご家族の安心につながります。

参考文献

裁判所:相続の放棄の申述

裁判所:成年後見制度に関する審判

国税庁:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

認知症の方が相続放棄するにはのよくある質問まとめ

Q.親が認知症の場合、子供が代わりに相続放棄できますか?

A.ご家族であっても、認知症の方の代わりに直接相続放棄の手続きをすることはできません。家庭裁判所に申立てを行い、成年後見人を選任してもらった上で、その後見人に手続きを代行してもらう必要があります。

Q.成年後見人は必ず家族が選ばれるのですか?

A.必ずしもご家族が選ばれるとは限りません。親族間で意見の対立がある場合や、管理する財産が高額な場合には、家庭裁判所の判断により専門家が後見人に選任されるケースが多くなっています。

Q.成年後見人をつければ、確実に相続放棄できますか?

A.成年後見人はご本人の利益を守る義務があるため、相続財産の中に預貯金や不動産などプラスの財産が多くある場合、ご本人にとって不利益となる相続放棄は認められない可能性が高いです。借金などのマイナス財産が明らかに多い場合に限り、相続放棄が行われます。

Q.後見人が決まるまでに相続放棄の3ヶ月の期限が過ぎてしまったらどうなりますか?

A.認知症の方に後見人が選任される場合、相続放棄の3ヶ月の期限は「後見人が選任され、相続が開始したことを知った日」から計算されます。そのため、手続き中に期限が過ぎてしまっても、選任後に間に合うようになっていますのでご安心ください。

Q.成年後見人にかかる費用はどのくらいですか?

A.申立て時に印紙代や切手代が数千円、医師の鑑定が必要な場合は約50,000円〜100,000円かかります。また、専門家が後見人に選任された場合は、ご本人が亡くなるまで毎月20,000円〜50,000円程度の報酬を支払い続ける必要があります。

Q.認知症になる前にできる対策はありますか?

A.ご判断能力がしっかりしているうちに、信頼できるご家族に財産管理を任せる家族信託や、将来の後見人をあらかじめ決めておく任意後見契約、財産の分け方を指定する遺言書の作成などを行うことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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