保険料控除について、年末調整や確定申告の際に「所得税と住民税で控除される金額が違うのはなぜ?」と疑問に思ったことはありませんか?今回は、所得税と住民税で保険料控除が異なる理由や、具体的な計算方法、新旧制度の違いなどを分かりやすく解説します。
所得税と住民税で保険料控除が異なる理由
所得税と住民税では、税金の目的や計算の基準が異なるため、保険料控除の上限額や反映されるタイミングに違いがあります。所得税は国に納める税金で、その年の所得に対してかかります。一方、住民税は都道府県や市区町村に納める税金で、前年の所得をもとに計算され、地域社会の公共サービスを維持するために広く浅く負担を求める仕組みになっています。このため、住民税の控除上限額は所得税よりも低く設定されています。
所得税と住民税の控除上限額の違い
所得税と住民税では、控除できる上限額が具体的に決まっています。平成24年1月1日以降に契約した新制度の生命保険料控除の場合、所得税は最大120,000円ですが、住民税は最大70,000円です。それぞれの区分(一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除)ごとの上限も、所得税は各40,000円、住民税は各28,000円となっています。
| 税金の種類 | 合計適用限度額の上限 |
|---|---|
| 所得税 | 最大120,000円 |
| 住民税 | 最大70,000円 |
税金が軽減されるタイミングの違い
控除が反映されて税金が安くなるタイミングも異なります。所得税の場合、年末調整や確定申告を行うことで、その年の所得税から控除され、払いすぎた分があれば還付金として戻ってきます。住民税の場合は、申告した翌年の6月以降に納める住民税から差し引かれる形で税負担が軽くなります。
生命保険料控除の3つの種類と対象
生命保険料控除には、加入している保険の内容に応じて3つの種類があります。それぞれの種類ごとに控除額が計算されます。
一般生命保険料控除
一般生命保険料控除の対象となるのは、生存または死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険です。具体的には、定期保険、終身保険、養老保険などが該当します。保険金受取人が契約者本人、または配偶者やその他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)であることが条件です。財形保険や保険期間が5年未満の貯蓄保険は対象外となります。
介護医療保険料控除
介護医療保険料控除は、病気やケガによる入院・通院などに備える保険が対象です。具体的には、医療保険、がん保険、介護保険などが当てはまります。こちらも受取人が本人または配偶者、その他の親族であることが要件となります。
個人年金保険料控除
個人年金保険料控除は、老後の資金準備などを目的とした個人年金保険のうち、「個人年金保険料税制適格特約」を付けているものが対象です。受取人が契約者または配偶者であること、保険料の払込期間が10年以上であること、年金の受け取り開始が60歳以降で受け取り期間が10年以上であることなど、詳しい条件を満たす必要があります。
新制度と旧制度の違いと計算方法
生命保険料控除は、保険を契約した日によって新制度と旧制度の2つに分けられます。契約日をしっかり確認して計算することが大切です。
新制度(平成24年1月1日以後の契約)
平成24年(2012年)1月1日以後に契約した保険は新制度が適用されます。介護医療保険料控除が新設され、3つの控除区分となりました。年間支払保険料が80,000円を超える場合、所得税の控除額は一律40,000円となります。住民税の場合は、年間支払保険料が56,000円を超える場合、控除額は一律28,000円です。
旧制度(平成23年12月31日以前の契約)
平成23年(2011年)12月31日以前に契約した保険は旧制度が適用されます。こちらは一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の2種類のみです。年間支払保険料が100,000円を超える場合、所得税の控除額は一律50,000円となります。住民税の場合は、年間支払保険料が70,000円を超える場合、控除額は一律35,000円です。
新旧両方の契約がある場合の特例
新旧両方の保険に加入している場合は、新制度のみ、旧制度のみ、新旧併用の3パターンから、最も控除額が大きくなる有利な方法を選ぶことができます。ただし、新旧併用を選ぶ場合、一般生命保険料控除の所得税の上限は40,000円、住民税の上限は28,000円となります。旧制度単独で計算した方が有利なケースもあるため、比較して計算してみましょう。
住民税特有のルールと注意点
住民税には、所得税にはない独自のルールや基準があります。保険料控除を受ける際に知っておくべきポイントを解説します。
非課税となる基準額の違い
住民税が非課税になる所得の基準額は、所得税とは異なります。たとえば、給与収入のみで扶養親族がいない場合、所得税は年収103万円以下で非課税になりますが、住民税は年収100万円以下で非課税となります。そのため、所得税は0円でも、住民税だけは支払う必要があるというケースが発生します。
住民税の均等割について
住民税には、所得の金額に応じて負担する「所得割」と、所得の額に関わらず一定の基準を超えた方に定額で課税される「均等割」(年間4,000円から5,000円程度)があります。生命保険料控除で差し引くことができるのは「所得割」の部分のみです。課税所得が減っても「均等割」は免除されないため、注意が必要です。
控除を受けるための手続き方法
生命保険料控除を適用して税負担を軽くするためには、正しい手続きを行う必要があります。会社員と自営業者で方法が異なります。
会社員などの年末調整
会社員やパートなどの給与所得者は、勤務先で行われる年末調整で手続きを完了できます。毎年10月から11月頃に保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を手元に用意し、「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入して勤務先に提出します。
自営業者などの確定申告
個人事業主やフリーランスの方、または年収が2,000万円を超える会社員などは、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。確定申告書の生命保険料控除欄に金額を記入し、生命保険料控除証明書を添付または提示して税務署へ提出します。e-Taxを利用する場合は、電子データで提出することも可能です。
まとめ
所得税と住民税で保険料控除が異なるのは、税金の目的や計算方法、非課税となる基準が違うためです。所得税は今年の税金を年末調整で還付し、住民税は翌年の税金から差し引かれます。新制度と旧制度の違いを正しく理解し、上限額(所得税は最大120,000円、住民税は最大70,000円)を確認しながら、もれなく申告を行って賢く税負担を軽減しましょう。
参考文献
国税庁:No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等
保険料控除のよくある質問まとめ
Q.生命保険料控除で住民税はいくら安くなりますか?
A.生命保険料控除を適用すると、住民税では最大70,000円が所得から差し引かれます。住民税の税率は原則10%ですので、実際の税額としては最大7,000円安くなる計算となります。
Q.所得税は非課税なのに住民税がかかるのはなぜですか?
A.非課税となる所得の基準が異なるためです。給与収入のみの場合、所得税は103万円以下で非課税ですが、住民税は100万円以下で非課税となるため、100万円を超えると住民税の均等割や所得割がかかる場合があります。
Q.介護医療保険料控除は旧制度にもありますか?
A.介護医療保険料控除は平成24年1月1日以後の新制度で新設された枠です。そのため、平成23年12月31日以前の旧制度には介護医療保険料控除という単独の枠はありません。
Q.控除証明書をなくしてしまった場合はどうすればいいですか?
A.生命保険料控除証明書を紛失した場合は、契約している保険会社のコールセンターやインターネットのマイページなどから再発行の手続きが可能です。手続きに数日かかることがあるため早めに依頼しましょう。
Q.パートで年収100万円以下の場合、生命保険料控除を申告する意味はありますか?
A.パート収入が100万円以下であれば、もともと所得税も住民税も非課税となる可能性が高いため、生命保険料控除を申告しても税金は安くなりません。ただし配偶者がその保険料を支払っている場合は、配偶者の控除にできます。
Q.年末調整で申告を忘れた場合、後から控除を受けられますか?
A.年末調整に間に合わなかった場合でも、翌年の2月16日から3月15日の期間にご自身で確定申告を行えば、生命保険料控除を適用して還付を受けることができます。