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孫養子へ生前贈与し相続させなかった!持ち戻しなしでよい?

2026-06-03
目次

孫を養子に迎えてまとまった資金を生前贈与したものの、遺言などで実際の相続時には財産を渡さなかった場合、過去の贈与はどのように扱われるのでしょうか。特に気になるのが、贈与した財産を相続財産に計算上戻す「特別受益の持ち戻し」の有無です。本記事では、持ち戻しがなしになるケースや、具体的な税金・法律のルールについて詳しく解説します。

孫養子への生前贈与と特別受益の基本

相続トラブルを防ぐためには、まず特別受益という制度の基本を理解しておく必要があります。孫養子への贈与がどのように扱われるのか見ていきましょう。

特別受益の持ち戻しとは

特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前に受け取った「特別な利益」のことです。相続人間の不公平をなくすため、贈与された金額を相続財産に一度足し戻して遺産分割を行う計算方法を持ち戻しと呼びます。

特別受益になる主な贈与 特別受益にならない主な贈与
住宅購入資金(例:1,000万円) 一般的なお年玉や入学祝い(例:数万円)
独立開業資金(例:500万円) 扶養義務の範囲内の生活費や学費

孫養子に対する生前贈与の扱い

孫と養子縁組をした場合、法律上は「子」と同じ第一順位の法定相続人になります。そのため、孫養子に対して行われた結婚資金やマイホーム資金などの多額の生前贈与は、原則として特別受益の対象となります。

相続財産を渡さなかった場合の持ち戻し

遺言書で「孫養子には相続財産を渡さない」と指定した場合、孫養子の相続分は0円になります。しかし、過去の生前贈与が特別受益とみなされると、他の相続人の取り分を計算する際に影響が出ます。このとき、被相続人が生前に「持ち戻し免除の意思表示」をしていれば、贈与分を相続財産に足し戻す必要がなくなり「持ち戻しなし」として処理されます。

持ち戻し免除の意思表示を有効にする方法

「持ち戻しなし」にするためには、被相続人の意思表示が不可欠です。どのように意思を残せば有効になるのかを解説します。

遺言書による明確な意思表示

最も確実な方法は、遺言書の中に「孫養子への生前贈与分については、特別受益の持ち戻しを免除する」とはっきり書き記しておくことです。口頭での約束だけでは証拠が残らないため、他の相続人に認めてもらえない可能性が非常に高くなります。

黙示の持ち戻し免除が認められるケース

明確な文書が残っていなくても、贈与が行われた背景や目的、家族関係などから「被相続人は持ち戻しを免除するつもりだった」と推測されることを黙示の意思表示と呼びます。しかし、過去の裁判例を見てもこれを証明するハードルは非常に高く、確実な方法とはいえません。

意思表示の方法 確実性・証明力
公正証書遺言での記載 非常に高い(トラブル回避に最適)
口頭での約束や推測(黙示) 低い(証拠不十分で争いになりやすい)

生前贈与契約書への記載

贈与を実行する際に作成する「贈与契約書」の特約事項として、持ち戻しを免除する旨を記載しておくことも有効な手立てです。さらに公証役場で確定日付(手数料700円程度)を取得しておくと、書類の改ざんが疑われるリスクを防ぐことができます。

生前贈与にかかる贈与税のルールと具体例

生前贈与を行う際には、法律上の持ち戻しだけでなく、税務上のルールも押さえておかなければなりません。

暦年課税の基礎控除110万円

贈与税の基本である暦年課税制度には、受贈者1人あたり年間110万円の基礎控除があります。孫養子に対して毎年110万円以下の贈与を繰り返す方法であれば、贈与税を一切納めることなく財産を移転できます。

相続時精算課税制度の活用

60歳以上の祖父母から18歳以上の孫養子へ贈与する場合、累計2,500万円まで贈与税が非課税になる相続時精算課税制度を選択できます。ただし、贈与者が亡くなった際には、その贈与額(2,500万円まで)が相続財産に加算され、相続税の対象となる点に注意が必要です。

暦年課税制度 相続時精算課税制度
年間110万円まで非課税 累計2,500万円まで特別控除(非課税)
手続きなしで利用可能 初年度に税務署への届出が必須

生前贈与加算の期間延長について

暦年課税を利用して贈与をしても、贈与者が亡くなる直前の贈与は相続財産に足し戻して相続税を計算する「生前贈与加算」というルールがあります。この加算期間が令和6年(2024年)1月1日以降の贈与から順次延長され、従来の亡くなる前3年間から、最終的に亡くなる前7年間へと変更されました。孫養子が遺言で財産を一切受け取らなくても、この加算の対象になる場合があります。

孫養子に相続させない場合の遺留分問題

持ち戻しをなしにできたとしても、他の相続人から不満が出てトラブルに発展するケースがあります。その原因となる「遺留分」について解説します。

遺留分侵害額請求の対象期間

遺言で孫養子以外に財産を渡さないようにしても、配偶者や実子には最低限の財産を受け取る権利である「遺留分」が保障されています。相続人に対する生前贈与は、原則として相続開始前の10年間に行われたものが遺留分を計算するための基礎財産に含まれます。

持ち戻し免除と遺留分の関係

遺言などで「持ち戻し免除の意思表示」をしていたとしても、それはあくまで遺産分割の計算上の話であり、遺留分の計算には影響しません。もし孫養子への1,000万円の贈与によって実子の遺留分を侵害していた場合、実子から孫養子に対して金銭の支払いを求める「遺留分侵害額請求」が行われるリスクがあります。

制度の名称 影響の範囲
持ち戻し免除の意思表示 遺産分割協議の計算にのみ有効
遺留分侵害額請求 持ち戻し免除があっても請求対象になる

遺留分トラブルを防ぐための対策

孫養子が後からお金を請求されて困らないよう、生前に生命保険を活用して代償金の支払い資金(例:死亡保険金500万円)を準備しておくことが有効です。また、あらかじめ他の相続人の遺留分(法定相続分の半分など)を侵害しない範囲の金額に抑えて贈与計画を立てることも大切です。

孫を養子にする際の相続税の注意点

孫を養子にすること自体に、相続税の計算上大きなメリットとデメリットが存在します。

相続税の2割加算ルール

孫を養子にして財産を渡すと、一代飛ばして税負担を免れるのを防ぐため、算出された相続税額に対して税金が2割加算されるルールが適用されます。たとえば、本来の相続税が200万円であれば、2割加算されて240万円を納めなければなりません。

基礎控除額への影響

相続税がかかるかどうかを判断する基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。孫を養子にすると法定相続人が1人増えるため、基礎控除額が600万円増額されるという大きな節税メリットがあります(ただし、実子がいる場合は養子としてカウントできるのは1人までです)。

孫養子のメリット 孫養子のデメリット
法定相続人が増え、基礎控除額が600万円アップ 相続税を負担する場合、税額が2割加算される
生命保険の非課税枠(500万円)が1人分増える 他の相続人(実子など)の相続割合が減り不満が出やすい

まとめ

孫養子にまとまった額の生前贈与を行い、実際の相続では財産を渡さなかったとしても、他の相続人から「あの贈与は特別受益だから持ち戻しすべきだ」と主張されるリスクがあります。これを防ぐためには、遺言書や贈与契約書で「持ち戻し免除の意思表示」を明確に残しておくことが重要です。ただし、持ち戻しをなしにできても遺留分の請求対象(過去10年分)にはなるため、他の相続人の最低限の取り分にも配慮し、生命保険を活用するなどの具体的な対策を検討しましょう。

参考文献

国税庁:贈与税がかかる場合

国税庁:相続税の計算

持ち戻しや孫養子への贈与に関するよくある質問まとめ

Q.孫養子への生前贈与は必ず持ち戻しの対象になりますか?

A.住宅購入資金や独立資金など、高額な贈与は原則として特別受益に該当し、持ち戻しの対象となります。少額のお祝い金や生活費は対象外です。

Q.遺言で相続させなかった場合、持ち戻しは免除されますか?

A.遺言で財産を渡さないことと、過去の贈与の持ち戻しは別の問題です。被相続人が「持ち戻し免除の意思表示」を明確にしていない限り、持ち戻しの対象として計算されます。

Q.持ち戻し免除の意思表示は口頭でも有効ですか?

A.口頭や推測(黙示の意思表示)でも法律上は有効ですが、客観的な証拠がないため他の相続人と争いになります。公正証書遺言などに明確に記載することが最も確実です。

Q.孫養子への贈与税はいくらからかかりますか?

A.暦年課税制度を利用する場合、年間110万円を超える贈与に対して贈与税がかかります。110万円以下であれば非課税です。

Q.孫養子は相続税の2割加算の対象になりますか?

A.はい、対象になります。孫を養子にした場合、本来の子が亡くなっていて代襲相続する場合を除き、算出された相続税額に対して2割が加算されます。

Q.生前贈与から何年以内だと遺留分の対象になりますか?

A.孫養子(法定相続人)に対する生前贈与は、原則として相続開始前の10年間に行われたものが遺留分を計算するための基礎財産に含まれます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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