非上場株式の評価において、過去に合併を行っている会社の株価を計算する際、類似業種比準方式をどのように適用すべきか迷う方は多くいらっしゃいます。とくに、配当、利益、純資産といった比準要素の計算において、存続会社と消滅会社の数値を単純に合算してよいのか、そしてそれは直前期だけでなく直前々期についても同様に扱うべきなのか、疑問に感じるポイントですよね。今回は、合併があった場合の比準要素の計算方法や、合算方式が認められる具体的な要件について、わかりやすく丁寧に解説していきます。
合併があった場合の類似業種比準方式の基本的な考え方
会社が合併を行うと、資産や売上、そして事業の内容が大きく変わることが一般的です。そのため、株価の評価方法である類似業種比準方式の適用についても、通常とは異なる慎重な判断が求められます。
類似業種比準方式のルールと3つの比準要素
類似業種比準方式は、評価する会社と事業内容が似ている上場会社の株価を基準にして、株価を計算する方法です。このとき比較のベースとなるのが、配当金額、利益金額、純資産価額の3つの比準要素です。
| 比準要素 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 配当金額 | 直前期末以前2年間の平均配当金額から1株当たりの数値を計算します |
| 利益金額 | 直前期末以前1年間、または2年間の平均法人税引き前利益から計算します |
| 純資産価額 | 直前期末の帳簿上の資本金や利益剰余金などの純資産から計算します |
合併直後に類似業種比準方式は適用できるのか
結論から申し上げますと、課税時期が合併を行った事業年度、あるいはその翌事業年度にある場合、原則として類似業種比準方式をそのまま適用することは非常に難しくなります。なぜなら、合併によって会社の規模や実態が大きく変化し、過去の配当や利益の実績が現在の会社の実態を正しく反映していないとみなされるからです。
会社実態が変わらないと認められる具体的な要件
ただし、ごく例外的に、合併前後で会社の実態がほとんど変わらないと認められる場合には、存続会社と消滅会社の数値を足し合わせる合算方式が認められることがあります。合算が認められるためには、以下の厳しい条件をすべて満たす必要があります。
| 要件の項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 合併の形態 | 合併比率が1対1の適格合併であること |
| 業種と規模 | 合併前後で主たる業種や会社規模に変化がないこと |
| 財務状況 | 合併当時に両社とも利益が黒字であり、純資産がマイナス(欠損)でないこと |
| 比準要素の変動 | 合併前後の1株当たりの配当、利益、純資産の金額に大きな変動がないこと |
比準要素(配当・利益・純資産)の合算計算の仕組み
厳しい条件をクリアして合算方式が認められた場合、具体的にどのように比準要素を計算していくのかを見ていきましょう。
配当・利益・純資産の計算方法はどのように変わるか
合算方式では、評価会社の比準要素を求める際、存続会社(合併法人)の数値に消滅会社(被合併法人)の数値を足し合わせて計算します。たとえば、利益金額を計算する場合、存続会社の直前期の利益に、消滅会社の直前期の利益を加算し、それを基に1株当たりの利益金額を算出することになります。これにより、2つの会社がもともと1つの会社であったと仮定したような合理的な数値が導き出されます。
直前期だけでなく直前々期も合算の対象になるのか
ここで最大の疑問となるのが、直前期だけでなく直前々期についても合算するのかという点です。類似業種比準方式における利益金額や配当金額の計算では、直前期末以前2年間の平均を用いる場面があります。合算方式が認められるような、合併前後で実態に変化がないケースにおいては、直前期だけでなく直前々期の数値についても、存続会社と消滅会社の両方の数値を合算して計算することになります。2年間の平均を正しく出すためには、過去2年分の実績をすべて合算ベースで揃えなければ、正確な1株当たりの金額が計算できないからです。
合算が認められない場合の非上場株式の評価方法
実務上は、上記の要件を満たすことは少なく、合算方式が認められないケースが大多数です。その場合、どのように株価を評価するのでしょうか。
純資産価額方式による評価への切り替え
合併の事業年度中に相続や贈与が発生した場合、過去の利益や配当の実績を合算できないため、類似業種比準方式の適用はできなくなります。この場合、会社の保有する資産と負債の時価をベースに計算する純資産価額方式によって評価を行うことになります。会社が解散したと仮定したときの価値を算出するため、合併後の実態に即した評価となります。
比準要素数1の会社としての評価方法
一方で、課税時期が合併の翌事業年度にある場合は少し対応が変わります。直前期末の決算はすでに合併後の状態で終わっているため、純資産価額の要素だけは合理的な数値として確定しています。しかし、利益や配当はまだ1年分の実績しかなく比較の基準が整っていません。そのため、純資産のみを使う比準要素数1の会社として扱い、納税者の選択により類似業種比準方式における割合(Lの割合)を0.25として計算する併用方式を採用できる可能性があります。
まとめ
合併があった会社の株式評価において、存続会社と消滅会社の比準要素(配当・利益・純資産)を合算できるのは、合併比率が1対1の適格合併であるなど、会社実態が変化していないと認められる極めて例外的なケースに限られます。この合算方式が認められる場合には、2年平均の計算において直前期だけでなく直前々期の数値についても両社を合算して計算を行います。しかし実務では合算が認められないことが多いため、合併事業年度であれば純資産価額方式、翌事業年度であれば比準要素数1の会社としての評価を検討することが大切です。
合併時の非上場株式評価のよくある質問まとめ
Q.合併直後の課税時期では、類似業種比準方式は原則として使えないのですか?
A.はい、合併によって会社の規模や業種、実態が大きく変わるため、過去の数値が現在の実態を反映していないとみなされ、原則として類似業種比準方式は使用できません。
Q.どのような場合なら存続会社と消滅会社の数値を合算できますか?
A.合併比率が1対1の適格合併であり、かつ合併前後で業種や会社規模に変化がないなど、会社実態が変わらないと認定された場合に例外的に認められます。
Q.直前々期の利益や配当も合算して計算するのですか?
A.はい、合算方式が認められる場合、利益や配当の2年平均を計算する際に、直前期だけでなく直前々期の数値についても両社の数値を合算して計算します。
Q.合算方式が使えない場合、どのような評価方法になりますか?
A.課税時期が合併事業年度にある場合は、資産と負債の時価をベースにする純資産価額方式で評価するのが一般的です。
Q.合併の翌事業年度に相続が発生した場合はどうなりますか?
A.純資産要素のみが確定しているとみなして、比準要素数1の会社として評価し、Lの割合を0.25として計算できる可能性があります。
Q.合併比率が1対1以外の非適格合併の場合はどうなりますか?
A.会社の実態が大きく変わったとみなされるため合算方式は認められず、原則として純資産価額方式など、別の妥当な方法で評価することになります。