「長年連絡を取っていなかった兄が亡くなり、突然自分が相続人になった」「配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が一緒に相続人になると聞いて、どう分ければよいのか分からない」。相続人に兄弟姉妹が含まれるケースは、子や親が相続する場合とは異なる独特の論点が多く、戸惑われる方が少なくありません。
兄弟姉妹が関わる相続には、相続税が2割増しになる、兄弟姉妹には遺留分がない、代襲相続は甥姪一代限りで止まるといった、他の相続にはない特有のルールがあります。この記事では、相続人が兄弟姉妹のときの相続税について、法定相続分や基礎控除の計算から実務上の注意点まで、順を追ってやさしく解説します。
兄弟姉妹が相続人になるのはどんなときか
まず押さえておきたいのは、兄弟姉妹は常に相続人になるわけではないという点です。誰が相続人になるかは民法で順位が定められており、兄弟姉妹の順位は最も後ろに位置しています。
相続人の順位と兄弟姉妹の位置づけ
配偶者は常に相続人になり、そのうえで血族の相続人が次の順位で決まります。上の順位の人が1人でもいれば、下の順位の人は相続人になりません。
| 第1順位 | 子(亡くなっている場合はその子、つまり孫が代襲相続) |
|---|---|
| 第2順位 | 直系尊属(父母や祖父母など) |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっている場合はその子、つまり甥姪が代襲相続) |
つまり兄弟姉妹が相続人になるのは、亡くなった方に子(や孫)がおらず、父母や祖父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合に限られます。配偶者と子がいない相続で、親も他界しているケースが典型例です[国税庁No.4132 相続人の範囲と法定相続分]。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になるケース
亡くなった方に配偶者がいて子がなく、直系尊属も他界している場合、配偶者と兄弟姉妹が一緒に相続人になります。実務では、この組み合わせで初めて「自分が義理のきょうだいと一緒に相続人になる」ことを知り、驚かれる方が多くいらっしゃいます。誰が相続人になるかの基本的な考え方は、こちらの記事もあわせてご確認ください。
法定相続人の範囲を徹底解説!順位と割合、相続税の計算までわかる
兄弟姉妹が相続人のときの法定相続分
相続税は法定相続分をもとに計算するため、割合を正しく理解しておくことが欠かせません。兄弟姉妹の法定相続分は、他の順位の相続人と比べて小さく定められています。
配偶者と兄弟姉妹の割合
配偶者と兄弟姉妹が相続人のとき、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が全員で4分の1です。兄弟姉妹が複数いる場合は、この4分の1をさらに人数で等分します[国税庁No.4132 相続人の範囲と法定相続分]。
| 配偶者と子 | 配偶者2分の1/子2分の1 |
|---|---|
| 配偶者と直系尊属 | 配偶者3分の2/直系尊属3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者4分の3/兄弟姉妹4分の1 |
たとえば配偶者と兄弟姉妹2人が相続人であれば、兄弟姉妹1人あたりの法定相続分は4分の1を2で割った8分の1となります。
半血の兄弟姉妹(異父・異母きょうだい)の割合
父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹(半血の兄弟姉妹)がいる場合、その相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血の兄弟姉妹)の2分の1となります[e-Gov法令検索 民法]。子の代における相続では割合の差はありませんが、兄弟姉妹相続に特有の論点として押さえておく必要があります。異父・異母きょうだいが法定相続人になる条件については、次の記事で詳しく解説しています。
父の前妻の子が亡くなった!兄弟として法定相続人になる条件と割合
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兄弟姉妹の相続税は2割加算される
兄弟姉妹相続で最も注意すべきなのが、相続税額の2割加算です。同じ財産を相続しても、兄弟姉妹の場合は納める相続税が他の相続人より重くなります。
2割加算の対象になる人
相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった方の配偶者・父母・子(一親等の血族)以外である場合、その人の相続税額に2割が加算されます。兄弟姉妹や甥姪はこの対象に含まれます[国税庁No.4157 相続税額の2割加算]。
加算される金額は、次の式で計算します。
たとえば税額控除前の相続税額が100万円であれば、20万円が上乗せされ、合計120万円が納税額の基礎となります[国税庁No.4157 相続税額の2割加算]。
なぜ兄弟姉妹は2割加算されるのか
2割加算は、亡くなった方との関係が比較的遠い人が財産を取得する場合や、相続税の課税を1世代分飛ばすような場合に、税負担のバランスを図る趣旨で設けられています。兄弟姉妹は配偶者や子と比べて生活のつながりが遠いと位置づけられているため、加算の対象となります。実務では、この2割加算を見落として資金計画を立ててしまうケースがあるため、早い段階から織り込んでおくことをおすすめします。
基礎控除と相続税の計算方法
相続税は、遺産の総額から基礎控除を差し引いた残りに対してかかります。兄弟姉妹相続でも計算の枠組みは共通ですが、法定相続人の数え方に注意が必要です。
基礎控除額の計算
基礎控除額は、次の式で計算します(2024年時点の制度)。
遺産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、原則として申告も不要です[国税庁No.4152 相続税の計算]。ご自身が申告の対象になるかどうかは、次の記事もご確認ください。
東京の家庭の25%が相続税申告対象?我が家は大丈夫か確認しよう
兄弟姉妹相続での計算の流れ
相続税の総額は、次の手順で計算します。まず遺産の総額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を求め、これを法定相続分で按分した金額に税率を掛けて各人の税額を出し、それらを合計します[国税庁No.4152 相続税の計算]。
税率は、法定相続分に応ずる取得金額に応じた超過累進税率が適用されます[国税庁No.4155 相続税の税率]。たとえば法定相続分に応ずる取得金額が5,000万円の場合、税率は20%、控除額は200万円です。
この段階で求めた各人の税額を合計したものが相続税の総額となり、実際に取得した割合で按分したうえで、兄弟姉妹が取得した分には前述の2割加算が上乗せされます。
配偶者がいる場合の税額軽減
配偶者と兄弟姉妹が相続人のケースでは、配偶者には税額軽減の特例があります。配偶者が取得した遺産のうち、法定相続分相当額と1億6,000万円のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない仕組みです[国税庁No.4158 配偶者の税額の軽減]。ただしこの軽減は配偶者だけの制度であり、兄弟姉妹には適用されない点に注意が必要です。
兄弟姉妹には遺留分がない
兄弟姉妹相続のもう一つの大きな特徴が、兄弟姉妹には遺留分が認められていないことです。遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分をいいます。
遺留分が認められるのは、配偶者・子(およびその代襲相続人)・直系尊属に限られ、兄弟姉妹は遺留分権利者に含まれません[e-Gov法令検索 民法]。そのため、亡くなった方が「全財産を配偶者に相続させる」といった遺言を残していた場合、兄弟姉妹は遺留分侵害額を請求することができません。
これは裏を返せば、子のいないご夫婦が「配偶者にすべての財産を残したい」と考える場合、遺言を用意しておくことで、兄弟姉妹の関与を受けずに財産を配偶者へ引き継げるということでもあります。実務では、生前対策として遺言書の作成をご提案する場面が多くあります。
代襲相続は甥姪一代限り
兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子である甥姪が代わって相続人になります。これを代襲相続といいます。
甥姪までで止まる理由
子の系統では、子が亡くなっていれば孫、孫も亡くなっていればひ孫へと、下の世代へ何代でも代襲が続きます。しかし兄弟姉妹の系統では、代襲は甥姪の一代限りで止まります。甥姪もすでに亡くなっている場合、その子(甥姪の子)が相続人になることはありません[e-Gov法令検索 民法]。
そして代襲相続で相続人となった甥姪も、前述の相続税額の2割加算の対象になります[国税庁No.4157 相続税額の2割加算]。
疎遠な兄弟姉妹の相続で困ったとき
兄弟姉妹相続では、長年疎遠だった相手が相続人になり、連絡先も分からないという事態が起こりがちです。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、こうしたケースでは手続きが滞りやすくなります。疎遠な兄弟姉妹が亡くなった際の進め方は、次の記事もあわせてご確認ください。
疎遠の兄弟が死亡!突然の相続、どうなる?手続きと注意点を解説
まとめ
相続人に兄弟姉妹が含まれる相続には、他の相続にはない特有の論点があります。兄弟姉妹が相続人になるのは子も直系尊属もいない場合に限られ、配偶者と一緒のときの法定相続分は配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1です。相続税額には2割加算が上乗せされ、兄弟姉妹には遺留分がなく、代襲相続は甥姪一代限りで止まります。
とくに2割加算と配偶者の税額軽減は納税額に大きく影響するため、早めに全体像を把握しておくことが安心につながります。個別の事情によって取り扱いが変わることもありますので、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
参考文献
- 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
- 国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- 国税庁 No.4155 相続税の税率
- 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
- e-Gov法令検索 民法
兄弟姉妹の相続税のよくある質問まとめ
Q.兄弟姉妹はどんなときに相続人になりますか。
A.亡くなった方に子や孫がおらず、父母や祖父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合に、兄弟姉妹が相続人になります。配偶者は常に相続人になるため、配偶者と兄弟姉妹が一緒に相続人になることもあります。
Q.配偶者と兄弟姉妹が相続人のときの法定相続分はどうなりますか。
A.配偶者が4分の3、兄弟姉妹が全員で4分の1です。兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1をさらに人数で等分します。
Q.兄弟姉妹の相続税が2割加算されるとはどういう意味ですか。
A.亡くなった方の配偶者・父母・子以外の人が財産を取得した場合、その人の相続税額に2割が加算される制度です。兄弟姉妹や甥姪はこの対象に含まれ、税額控除前の相続税額に0.2を掛けた金額が上乗せされます。
Q.兄弟姉妹の相続でも基礎控除は使えますか。
A.使えます。基礎控除額は3,000万円に600万円と法定相続人の数を掛けた金額を加えて計算します。遺産の総額がこの金額以下であれば相続税はかからず、原則として申告も不要です。
Q.兄弟姉妹に遺留分はありますか。
A.ありません。遺留分が認められるのは配偶者・子およびその代襲相続人・直系尊属に限られ、兄弟姉妹は遺留分権利者に含まれません。そのため遺言があれば、兄弟姉妹は遺留分侵害額を請求できません。
Q.兄弟姉妹が亡くなっている場合は誰が相続人になりますか。
A.その兄弟姉妹の子である甥姪が代襲相続人になります。ただし代襲は甥姪の一代限りで止まり、甥姪も亡くなっている場合はその子が相続人になることはありません。甥姪も相続税額の2割加算の対象です。