税理士法人プライムパートナーズ

暗号資産の税金が令和8年度改正で20%分離課税へ

2026-07-21
目次

暗号資産(仮想通貨)を保有・売却している方にとって、令和8年度税制改正の大綱で示された課税方法の見直しは大きな関心事ではないでしょうか。これまで暗号資産の利益は最大で55%近い税負担となる場面もあり、「株式やFXと比べて税金が重い」という声が絶えませんでした。今回の改正では、一定の暗号資産の譲渡益を申告分離課税20%とし、損失の繰越控除を認める方向性が示されています。

本記事では、相続税・生前対策を専門とする税理士法人の視点から、令和7年12月26日に閣議決定された大綱の内容を一次情報にもとづいて整理します。あわせて、暗号資産が相続財産となった場合の評価や課税についても解説します。数値や要件は公的機関で確認できた事実のみを記載し、適用時期など未確定の事項は断定を避けています。

改正前の暗号資産課税の仕組み

まず、現行制度における暗号資産の課税がどのようになっているかを確認します。ここを押さえておくと、今回の改正がなぜ大きな転換なのかが見えてきます。

雑所得としての総合課税

現行制度では、暗号資産を売却したり商品の決済に使用したりして生じた利益は、事業所得等に該当する場合を除き、原則として雑所得に区分されます。雑所得は給与所得などほかの所得と合算して課税される総合課税の対象です。国税庁 No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係

超過累進税率と損益通算の制限

総合課税の所得税率は課税所得に応じた超過累進税率で、5%から最高45%までの7段階に区分されています。ここに個人住民税が加わるため、所得の高い区分に該当する方の暗号資産の利益には重い税負担が生じます。国税庁 No.2260 所得税の税率さらに、雑所得で生じた損失は原則としてほかの所得と損益通算できず、翌年以降に繰り越すこともできないため、値下がり時のリスクを税制上カバーしにくいという課題がありました。

令和8年度税制改正による暗号資産課税の見直し

こうした課題を踏まえ、令和8年度税制改正の大綱では暗号資産課税の枠組みが大きく見直されました。ここでは大綱の記載にもとづいて要点を整理します。

申告分離課税20%への移行

大綱では、居住者等が暗号資産取引業(仮称)を行う者に対して特定暗号資産の譲渡等をした場合、その譲渡所得等については他の所得と分離して20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率で課税するとされています。特定暗号資産とは、金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限られます。財務省 令和8年度税制改正の大綱(1/9)

損失の繰越控除の導入

あわせて、特定暗号資産の譲渡等により生じた損失のうち、その年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額から控除しきれない金額があるときは、一定の要件のもとで、その控除しきれない金額を翌年以後3年内の各年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額から繰越控除できるとされています。値下がり局面での損失を将来の利益と相殺できる点が、現行制度からの大きな変化です。

取引業者による報告書の提出

納税の適正化を担保するため、暗号資産取引業を行う者は、その年中に特定暗号資産の取引を行った居住者等の氏名・住所・個人番号や、取引に係る特定暗号資産の名称その他の事項を記載した報告書を、取引があった日の翌年1月31日までに税務署長へ提出しなければならないこととされています。取引情報が税務署に把握される前提で、適正な申告が一層重要になります。

改正前後の比較

現行制度と大綱で示された改正内容を並べると、税負担の考え方が大きく変わることがわかります。

改正前(現行) 改正後(令和8年度大綱)
雑所得として総合課税 特定暗号資産の譲渡等を申告分離課税
超過累進税率5%〜45%
(住民税は別途)
一律20%
(所得税15%・住民税5%)
損失の繰越控除なし 翌年以後3年内の繰越控除が可能

税負担の比較例

実際にどの程度負担が変わるのか、単純化した例で確認します。ここでは、ほかの所得が多く所得税の最高税率区分に該当する方が、暗号資産の譲渡益1,000万円を得たケースを想定します。あくまで税率差を示すための概算であり、実際の税額は各種控除や所得構成により異なります。

改正前(総合課税・最高税率区分): 1,000万円 × 55%(所得税45%+住民税10%) = 550万円
改正後(申告分離課税): 1,000万円 × 20%(所得税15%+住民税5%) = 200万円
差額: 550万円 − 200万円 = 350万円

この例では税負担が350万円軽くなります。ただし総合課税は超過累進税率のため、所得区分が低い方では差が小さく、場合によっては現行のほうが有利になることもあります。ご自身の所得状況に応じた試算が欠かせません。

暗号資産が相続財産となる場合の評価と課税

相続税を専門とする立場からは、暗号資産を「遺す・受け継ぐ」場面の取扱いも見逃せません。所得課税の改正とは別に、相続時の評価は従来どおりのルールが適用されます。

相続税の課税対象となる暗号資産

暗号資産は金銭に見積もることができる経済的価値を有する財産であるため、被相続人が保有していた暗号資産は相続財産として相続税の課税対象となります。ウォレットや取引所の口座に残された暗号資産も申告漏れとならないよう、生前からの把握が重要です。

相続開始時の時価による評価

相続税法上、相続により取得した財産の価額は、原則としてその取得の時における時価によって評価します。e-Gov法令検索 相続税法第22条暗号資産についても相続開始時の時価で評価することになり、活発な市場が存在する暗号資産は、相続開始時に取引を行っている暗号資産交換業者が公表する取引価格を基に評価するのが実務上の取扱いです。国税庁 仮想通貨や暗号資産に関する税務の取扱いについて(令和7年12月)

秘密鍵とパスワードの承継

暗号資産は秘密鍵やパスワードを失うと事実上引き出せなくなる一方、価値がある限り相続税の課税対象となる点に注意が必要です。相続人が所在や取引所を把握できるよう、生前対策として保有内容を記録・共有しておくことが、無用な負担やトラブルを避けるうえで有効です。

まとめ

令和8年度税制改正の大綱では、特定暗号資産の譲渡等について申告分離課税20%(所得税15%・個人住民税5%)とし、損失の繰越控除を認める方向性が示されました。現行の雑所得・総合課税から大きく変わる内容であり、所得の高い方ほど税負担の軽減効果が見込まれます。一方で、対象は登録された特定暗号資産に限られ、適用時期など詳細は今後の法案によります。相続の場面では、暗号資産は経済的価値のある財産として相続税の課税対象となり、相続開始時の時価で評価されます。所得課税と相続課税の両面から早めに備えることが大切です。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

参考文献

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暗号資産の税金のよくある質問まとめ

Q.暗号資産の利益は令和8年度改正でどう変わりますか。

A.大綱では、特定暗号資産の譲渡等による所得を他の所得と分離して20%(所得税15%・個人住民税5%)で課税するとされています。現行の雑所得・総合課税から申告分離課税へ移行する方向性です。

Q.改正前の暗号資産の税金はどのくらいでしたか。

A.現行制度では原則として雑所得となり総合課税の対象で、所得税は5%から最高45%までの超過累進税率が適用されます。ここに住民税も加わるため、所得の高い方ほど負担が重くなります。

Q.暗号資産の損失は繰り越せるようになりますか。

A.大綱では、特定暗号資産の譲渡等で生じた損失のうち控除しきれない金額を、一定の要件のもとで翌年以後3年内の各年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等から繰越控除できるとされています。

Q.すべての暗号資産が20%の分離課税の対象になりますか。

A.対象は金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限られる特定暗号資産です。すべての暗号資産が一律に対象となるわけではなく、詳細な範囲や適用時期は今後の法案によります。

Q.相続した暗号資産に相続税はかかりますか。

A.暗号資産は経済的価値のある財産であるため、被相続人が保有していた暗号資産は相続財産として相続税の課税対象となります。ウォレットや取引所の残高も申告の対象です。

Q.相続した暗号資産はどのように評価しますか。

A.相続税法第22条により、財産は取得の時における時価で評価します。暗号資産は相続開始時の時価で評価し、活発な市場があるものは取引を行う交換業者が公表する取引価格を基に評価するのが実務上の取扱いです。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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