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戦略分野国内生産促進税制の見直し|令和8年度改正と控除調整

2026-07-26
目次

脱炭素や経済安全保障の観点から、半導体や電気自動車などの国内生産を後押しする戦略分野国内生産促進税制は、令和6年度に創設された比較的新しい制度です。令和8年度税制改正の大綱では、この制度そのものの内容に加え、新たに設けられる投資促進税制との間で控除上限の重複を避けるための調整が示されました。中小から中堅の企業にとっても、複数の投資促進税制をどう組み合わせるかは設備投資の意思決定に直結します。本記事では、制度の基本から令和8年度改正での見直しの要点までを、公的資料に沿って丁寧に整理します。

戦略分野国内生産促進税制の全体像

制度の目的と対象となる分野

戦略分野国内生産促進税制は、生産・販売量に応じて税額控除を認めるという、従来の設備投資減税とは異なる考え方に立った制度です。対象となるのは、産業競争力基盤強化商品として定められた半導体、自動車、鉄鋼、基礎化学品、燃料の5分野で、青色申告法人が産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定を受けることが前提となります。国税庁 No.5922 戦略分野国内生産促進税制

「これから設備投資をしても、実際に売れるかどうか分からない」という不安を抱える経営者は少なくありません。この制度は取得価額に対してではなく、実際に生産して販売した数量に応じて控除額が決まる仕組みのため、事業が軌道に乗ってから恩恵を受けられる点が特徴です。

税額控除額と対象期間

控除額は分野ごとに数量単位で定められています。主な単位あたりの控除額は次のとおりです。

半導体(演算処理用) 200mm換算ウェハ1枚あたり16,000円
その他の半導体 200mm換算ウェハ1枚あたり4,000円
自動車(電気自動車等) 1台あたり40万円
自動車(その他) 1台あたり20万円
鉄鋼(グリーンスチール) 1トンあたり2万円
基礎化学品(グリーンケミカル) 1トンあたり5万円
燃料 1リットルあたり30円

認定は制度の施行日である令和6年9月2日から令和9年3月31日までに受ける必要があり、控除は対象商品の供給を開始した日から認定日以後10年を経過する日までの各事業年度で受けられます。ただし後半の期間は控除額が段階的に縮小し、当初の水準がそのまま続くわけではありません。

認定日以後7年目まで 単位あたり控除額の100%
8年目 75%
9年目 50%
10年目 25%

また、各事業年度の税額控除額は調整前の法人税額の40%(半導体は20%)が上限で、控除しきれなかった金額は4年間(半導体は3年間)繰り越すことができます。

令和8年度税制改正における見直しの要点

特定生産性向上設備等投資促進税制の創設

令和8年度税制改正の大綱では、いわゆる大胆な投資促進税制として特定生産性向上設備等投資促進税制が新たに創設されます。これは、生産性向上等設備の導入に係る投資計画について、その取得価額の合計額が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)であり、かつ年平均の投資利益率が15%以上となることが見込まれることなどの基準に適合するものとして経済産業大臣の確認を受けた場合に適用される制度です。財務省 令和8年度税制改正の大綱(3/9)

確認を受けた法人は、確認を受けた日から5年を経過する日までの間に対象設備を取得して事業の用に供した場合に、即時償却取得価額の7%(建物、建物附属設備および構築物については4%)の税額控除のいずれかを選んで適用できます。税額控除の上限は当期の法人税額の20%で、控除しきれない金額は3年間繰り越せます。経済産業大臣の確認は改正法の施行日から令和11年3月31日までの間に受けることとされています。

投資利益率は、投資計画のなかで次のような考え方で見込まれます。中小・中堅企業が5億円以上という金額基準に届くかどうかは、既存設備の更新も含めた計画全体で判断されることになります。

年平均の投資利益率 = 営業利益等の増加額 ÷ 設備投資額

他の投資促進税制との控除上限の調整

ここで問題になるのが、同じ設備投資に対して複数の税制の恩恵が重複してしまうことです。戦略分野国内生産促進税制の税額控除の上限は、生産設備への投資額を基礎として計算される部分がありますが、令和8年度改正では、この控除上限の計算の基礎となる生産設備の額から、特定生産性向上設備等投資促進税制の適用を受けた資産の取得価額を除くこととされました。半導体の生産用資産についても、同税制の適用を受けた特定機械装置等の取得価額は、控除上限計算の対象となる投資額に含めない取扱いとなります。

これは、一つの設備投資について両方の制度で控除枠を二重に確保することを防ぐための調整です。「せっかく大型の設備を導入するのだから、どちらの制度も最大限使いたい」と考えるのは自然ですが、実際には控除上限の計算段階で重複が排除されるため、どちらの制度を主軸に据えるかを事前に設計しておくことが重要になります。

中小・中堅企業が押さえておくべき実務上の留意点

適用要件の確認と計画認定の順序

いずれの制度も、税務申告の前段階で計画の認定や経済産業大臣の確認という手続を経る点が共通しています。戦略分野国内生産促進税制であれば産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定を、特定生産性向上設備等投資促進税制であれば投資計画に係る経済産業大臣の確認を、それぞれ所定の期限内に受けておく必要があります。設備を先に取得してしまうと要件を満たせない場合があるため、投資の意思決定と手続の順序には注意が必要です。

控除限度と繰越しの扱いの違い

控除の上限や繰越期間は制度ごとに異なります。戦略分野国内生産促進税制は調整前法人税額の40%(半導体は20%)を上限とし繰越しは4年間(半導体は3年間)、特定生産性向上設備等投資促進税制は法人税額の20%を上限とし繰越しは3年間です。自社の利益水準に対して控除枠が十分かどうか、どちらの制度で控除枠を使い切れるかを、複数年度の見通しのなかで検討することが求められます。

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まとめ

令和8年度税制改正の大綱では、戦略分野国内生産促進税制について、新設される特定生産性向上設備等投資促進税制との間で控除上限の計算基礎から適用資産の取得価額を除くという調整が示されました。5分野を対象とする数量ベースの税額控除という基本的な仕組みは維持されつつ、複数の投資促進税制を併用する際の重複が整理された形です。中小・中堅企業にとっては、金額基準や投資利益率、計画認定の手続、控除上限と繰越期間の違いを踏まえ、どの制度を軸に設備投資を設計するかがこれまで以上に重要になります。制度の適用可否は投資計画の内容や事業年度の状況によって変わるため、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

令和8年度税制改正(戦略分野国内生産促進税制)のよくある質問まとめ

Q.戦略分野国内生産促進税制の対象分野は何ですか。

A.半導体、自動車、鉄鋼、基礎化学品、燃料の5分野です。産業競争力基盤強化商品として定められた対象商品を国内で生産・販売することが前提となります。

Q.税額控除額はどのように決まりますか。

A.生産・販売した数量に応じて決まります。例えば自動車は電気自動車等が1台あたり40万円、その他が20万円、鉄鋼は1トンあたり2万円、燃料は1リットルあたり30円などと分野ごとに単位あたりの控除額が定められています。

Q.令和8年度税制改正での主な見直しは何ですか。

A.新設される特定生産性向上設備等投資促進税制の適用を受けた資産の取得価額を、戦略分野国内生産促進税制の税額控除上限の計算基礎となる生産設備の額から除くという調整が行われます。複数の投資促進税制の重複を避けるための見直しです。

Q.特定生産性向上設備等投資促進税制の金額基準はいくらですか。

A.投資計画における生産性向上等設備の取得価額の合計額が35億円以上、中小企業者等については5億円以上であることが必要です。あわせて年平均の投資利益率が15%以上となることが見込まれることなどの基準を満たし、経済産業大臣の確認を受ける必要があります。

Q.戦略分野国内生産促進税制の税額控除の上限と繰越期間はどうなっていますか。

A.各事業年度の税額控除額は調整前の法人税額の40%が上限で、半導体については20%が上限です。控除しきれなかった金額は4年間、半導体は3年間繰り越すことができます。

Q.認定はいつまでに受ける必要がありますか。

A.戦略分野国内生産促進税制の認定は制度の施行日である令和6年9月2日から令和9年3月31日までに受ける必要があります。控除は供給を開始した日から認定日以後10年を経過する日までの各事業年度で受けられますが、後半の期間は控除額が段階的に縮小します。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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