中小企業が事業に使う設備や備品を購入したとき、一定金額までは購入した年度に全額を経費にできる制度があります。これが「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」です。令和8年度税制改正大綱では、この特例の対象となる取得価額の上限が、これまでの「30万円未満」から「40万円未満」へ引き上げられる方針が示されました。設備投資を検討している経営者や経理担当の方にとって、経費計上のタイミングと節税に直結する大切な改正です。ここでは現行制度の内容と、改正でどこがどう変わるのかを、具体的な金額とともに丁寧に整理します。
少額減価償却資産の特例の概要
制度の基本的な仕組み
通常、10万円以上の設備や備品は「減価償却資産」として、法定耐用年数にわたって少しずつ経費にしていきます。しかしこの特例を使うと、中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合に、その取得価額の全額をその年度の損金に算入できます。国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
対象となる資産は幅広く、器具および備品、機械および装置などの有形減価償却資産のほか、ソフトウエア、特許権、商標権といった無形減価償却資産も含まれます。所有権移転外リース取引で賃借人が取得したとされる資産や、中古資産であっても対象となります。
取得価額の判定単位
この特例では、取得価額が対象金額の未満かどうかを、1台または1組といった通常の取引単位ごとに判定します。1つの設備を機能ごとに分割して金額を下げるといった扱いはできませんので、購入時の請求書単位ではなく、あくまで事業で使う1単位ごとに金額を確認することが大切です。
現行制度の内容
対象金額と年間の限度額
現行制度で全額損金算入できるのは、取得価額が30万円未満の減価償却資産です。ただし、いくつでも無制限に使えるわけではなく、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額は300万円が限度とされています。事業年度が1年に満たない場合は、この300万円を月数按分した金額が限度になります。
適用できる法人の要件
この特例を使えるのは、青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等です。中小企業者は、原則として資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人などが該当します。国税庁 No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者
あわせて、常時使用する従業員の数の要件があり、現行では従業員数が500人以下(一定の特定法人については300人以下)であることが求められます。適用にあたっては、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付する必要があります。
現行の適用期限
現行制度の適用期限は、平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得等して事業の用に供した資産とされています。この期限をもって制度が終了するのか延長されるのかが、今回の改正で示された重要なポイントです。
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令和8年度税制改正による変更点
取得価額の上限引上げと期限延長
令和8年度税制改正大綱では、この特例について、対象となる減価償却資産の取得価額を40万円未満(現行:30万円未満)に引き上げるとされました。あわせて、その適用期限を3年延長することが示されています。財務省 令和8年度税制改正の大綱(3/9)
これにより、これまで30万円以上で全額経費にできなかった設備や備品についても、40万円未満であればその年度に一括で損金算入できる範囲が広がります。物価上昇で設備価格が上がるなか、一括経費にできる幅が広がる点は、中小企業の設備投資を後押しする改正といえます。
従業員数要件の見直し
今回の改正では、対象となる法人から、常時使用する従業員の数が400人を超える法人を除外することも示されています。つまり、従業員数の要件が実質的に400人以下へと引き締められる形です。多くの中小企業では影響のない範囲ですが、従業員数が多い法人は、自社が引き続き対象となるかを確認しておくと安心です。
改正前後の比較
取得価額の上限を中心に、改正前と改正後の主な違いを整理すると次のとおりです。年間の合計限度額300万円については、大綱で変更する旨は示されておらず、据え置きとなる見込みです。
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 取得価額30万円未満 | 取得価額40万円未満 |
| 従業員数500人以下 (特定法人は300人以下) |
従業員数400人超の 法人を除外 |
| 適用期限は 令和8年3月31日まで |
適用期限を 3年延長 |
実務で押さえておきたいポイント
取得のタイミングと年間限度額の管理
この特例は、年間合計300万円という限度額が引き続き適用される見込みです。取得価額の上限が40万円未満に上がると、1件あたりの金額が大きくなる分、年間で使い切れる件数は相対的に少なくなります。設備投資が集中する年度では、どの資産に特例を適用するか、通常の減価償却とどう組み合わせるかを計画的に検討することが節税につながります。
明細書の添付と青色申告の維持
特例の適用には、青色申告であることと、確定申告書への明細書の添付が欠かせません。要件を満たしていても手続きが漏れると適用を受けられませんので、決算時のチェック項目として明確にしておくことをおすすめします。改正内容は大綱段階のものであり、最終的な取扱いは今後の法令およびその施行時期の確認が必要です。
まとめ
令和8年度税制改正大綱により、中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、対象となる取得価額が30万円未満から40万円未満へ引き上げられ、適用期限も3年延長される方針が示されました。年間合計300万円の限度額は据え置きとなる見込みで、従業員数の要件は400人を超える法人を除外する形に見直されます。一括で経費にできる範囲が広がることで、設備投資と節税の両面でメリットが期待できます。適用できる資産の範囲や年間限度額との兼ね合いなど、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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少額減価償却資産の特例のよくある質問まとめ
Q.少額減価償却資産の特例で全額経費にできる金額はいくらまでですか。
A.現行は取得価額30万円未満の減価償却資産が対象です。令和8年度税制改正大綱では、この上限が40万円未満に引き上げられる方針が示されています。
Q.取得価額の上限が上がっても年間の限度額は変わりますか。
A.年間合計300万円という限度額について、大綱では変更する旨は示されておらず、据え置きとなる見込みです。1件あたりの金額が大きくなる分、年間で使える件数は相対的に少なくなります。
Q.この特例を使える法人の要件は何ですか。
A.青色申告書を提出する中小企業者等であることが必要です。中小企業者は原則として資本金1億円以下の法人などが該当し、常時使用する従業員数の要件もあります。改正では従業員数が400人を超える法人を除外することが示されています。
Q.対象となる資産にはどのようなものがありますか。
A.器具備品や機械装置などの有形資産のほか、ソフトウエアや特許権などの無形資産も対象です。中古資産や所有権移転外リースで取得したとされる資産も含まれます。
Q.改正はいつから適用されますか。
A.現行の適用期限は令和8年3月31日までで、大綱では適用期限を3年延長するとされています。最終的な取扱いは今後の法令とその施行時期の確認が必要です。
Q.特例を受けるために必要な手続きはありますか。
A.青色申告であることに加え、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付する必要があります。手続きが漏れると適用を受けられません。