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令和8年度税制改正 企業グループ間取引の書類保存特例を解説

2026-07-27
目次

令和8年度税制改正大綱では、法人課税の分野で「企業グループ間の取引に係る書類保存の特例」が新たに設けられることになりました。グループ会社との取引が多い企業ほど、「どの書類を、どこまで残せばよいのか」という不安を感じやすいところです。ここでは、大綱で確認できる範囲に絞って、この新しい特例の内容と、経理・税務のご担当者が押さえておきたい実務上の視点を、順を追って整理いたします。

新設される書類保存特例の全体像

特例が創設される背景と位置づけ

今回の特例は、令和8年度税制改正大綱の「公平かつ円滑な納税のための環境整備」のなかで、企業グループ間の取引に係る書類保存の特例として創設されるものです。企業グループ内では、親会社や関連会社との間で役務の提供や資産の貸付けなどが日常的に行われますが、その対価がどのように算定されたのかを示す情報が、取引関連書類に十分に残っていない場合があります。こうした情報の不足を補い、対価の額を算定する根拠を明確にしておくことを求めるのが、この特例の狙いです。財務省 令和8年度税制改正の大綱(3/9)

特例の基本的な仕組み

大綱では、内国法人が関連者との間で特定取引を行った場合において、その取引に関する取引関連書類等に、対価の額を算定するために必要な事項の記載または記録がないときは、その記載または記録がない事項を明らかにする書類(電磁的記録を含みます)を取得し、または作成し、かつ、これを保存しなければならないこととされています。ここでいう「対価の額を算定するために必要な事項」には、その取引に関する資産または役務の提供の明細や、その内国法人が支払うこととなる対価の額の計算の明細などが含まれます。つまり、対価の根拠が既存の書類でわかるのであれば追加の作成までは求められず、不足している部分を補う書類を残すことが求められる仕組みです。

対象となる「関連者」と「特定取引」

関連者の判定基準

この特例でいう関連者は、移転価格税制における関連者と同様の基準により判定されるものとされています。したがって、移転価格税制の対象となる関係を持つグループ会社であれば、この特例においても関連者に当たると考えておくのが自然です。自社にとって誰が関連者に該当するのかは、移転価格税制の考え方をあらためて確認しておくことが出発点になります。

特定取引に含まれる取引の範囲

特定取引とは、販売費、一般管理費その他の費用の額の基因となるものに限る取引をいうものとされています。大綱で示されている取引の例としては、関連者による工業所有権等の譲渡または貸付けや、関連者による役務の提供(研究開発、広告宣伝、経営管理・指導などが挙げられます)があります。いずれも費用の発生につながる取引が対象であり、費用の裏付けとなる対価の算定根拠を残しておくことが求められる、という整理になります。

対象法人 関連者との間で特定取引を行った内国法人
関連者 移転価格税制における関連者と同様の基準で判定
特定取引 販売費・一般管理費その他の費用の額の基因となる取引
(工業所有権等の譲渡・貸付け、研究開発・広告宣伝・経営管理・指導等の役務提供など)
求められる対応 対価算定に必要な事項の記載がない場合、その事項を明らかにする書類(電磁的記録を含む)を取得・作成し保存
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保存を怠った場合の取扱いと実務上の留意点

青色申告の承認取消事由との関係

実務上とくに注意しておきたいのは、その事項を明らかにする書類の保存が法令の定めに従って行われていないことが、青色申告の承認の取消事由等となる点です。青色申告の承認が取り消されれば、欠損金の繰越控除をはじめとする各種の特典が受けられなくなるおそれがあり、企業経営への影響は書類の不備という言葉から受ける印象以上に大きくなり得ます。書類保存を単なる事務手続きとしてではなく、青色申告の維持に関わる重要な要件として位置づけておくことが求められます。財務省 令和8年度税制改正の大綱(目次)

適用時期に関する現時点での整理

この特例がいつの事業年度から適用されるのかについては、令和8年度税制改正大綱の本文では具体的な施行日や適用開始の事業年度が明示されていません。今後の法令の制定や国税庁からの解説によって、適用時期や書類の具体的な様式などがより明確になっていくものと考えられます。現時点では、確定した詳細を前提に体制を作り込むのではなく、大綱で示された考え方に沿って、グループ間取引の対価の算定根拠を整理しておく準備を進めておくことが現実的です。

準備として整理しておきたい情報

特例の趣旨をふまえると、グループ会社との取引ごとに、提供される資産や役務の内容と、その対価がどのような計算によって決まったのかを説明できる状態にしておくことが有効です。契約書や請求書だけでは対価の算定根拠まで読み取れないことも多いため、既存の取引関連書類に不足がないかを取引類型ごとに点検し、不足がある部分については補足資料を整えておく、という進め方が考えられます。

まとめ

令和8年度税制改正大綱で創設される企業グループ間の取引に係る書類保存の特例は、内国法人が関連者との特定取引を行う際に、対価の額を算定するために必要な事項が取引関連書類に残っていない場合、その事項を明らかにする書類を取得・作成し保存することを求めるものです。関連者は移転価格税制と同様の基準で判定され、特定取引は費用の基因となる取引に限られます。保存が適切に行われないことは青色申告の承認取消事由等となるため、影響は小さくありません。適用時期など未確定の部分もあるため、確定した情報を確認しながら準備を進めることが大切です。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

企業グループ間取引の書類保存特例のよくある質問まとめ

Q.企業グループ間の取引に係る書類保存の特例とは何ですか。

A.内国法人が関連者と特定取引を行った場合に、対価の額を算定するために必要な事項が取引関連書類等に記載・記録されていないとき、その事項を明らかにする書類を取得・作成して保存することを求める、令和8年度税制改正大綱で創設される特例です。

Q.どのような法人が対象になりますか。

A.関連者との間で特定取引を行った内国法人が対象です。関連者は移転価格税制における関連者と同様の基準により判定されます。

Q.特定取引にはどのような取引が含まれますか。

A.販売費・一般管理費その他の費用の額の基因となる取引に限られます。大綱では工業所有権等の譲渡・貸付けや、研究開発・広告宣伝・経営管理・指導などの役務提供が例として挙げられています。

Q.どのような書類を保存する必要がありますか。

A.取引に関する資産または役務の提供の明細や、支払う対価の額の計算の明細など、対価の額の算定に必要な事項が既存の書類に不足している場合に、その事項を明らかにする書類を取得・作成して保存します。電磁的記録も含まれます。

Q.書類を保存しないとどうなりますか。

A.その事項を明らかにする書類の保存が法令の定めに従って行われていないことは、青色申告の承認の取消事由等となるとされています。

Q.この特例はいつから適用されますか。

A.令和8年度税制改正大綱の本文では、具体的な施行日や適用開始の事業年度は明示されていません。今後の法令や国税庁の解説で明確になると考えられます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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