この記事は、個人事業主・フリーランスの方、副業のある会社員の方、アパートや駐車場などの不動産所得がある方に向けたものです。毎年届いていた税務署からの「確定申告のお知らせ」のハガキや封書が今年は届かず、申告しなくてよいのか迷っている方を想定しています。
結論から申し上げます。お知らせが届かないことと、確定申告の義務があるかどうかは、まったく別の話です。税務署からのお知らせは行政サービスとしての案内にすぎず、申告義務はご自身の所得の状況によって決まります。国税庁は近年、電子申告を利用した方などへの用紙・お知らせの送付を段階的に取りやめており、届かないこと自体は珍しいことではありません。
お知らせの不着と申告義務の関係
税務署から送られてくる「確定申告のお知らせ」は、申告に必要な情報(予定納税額など)や電子申告の案内を記載した通知です。国税庁は「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」の実現に向けた取組として、確定申告書用紙の送付に代えてこのお知らせを送付する運用へ移行しました。国税庁 確定申告書の事前送付に関するお知らせ
一方、所得税の確定申告が必要かどうかの判定は、国税庁のタックスアンサーに示されたとおり、その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合で、その超える額に対する税額が配当控除額と年末調整で控除を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超えるかどうかで決まります。国税庁 No.2020 確定申告
つまり、判定の材料はご自身の所得と控除だけです。税務署からの通知の有無はこの判定式のどこにも登場しません。お知らせが来ないことを理由に申告を見送ると、無申告として加算税や延滞税の対象になります。
お知らせが届かなくなる主な理由
お知らせの送付対象は、翌年も申告が必要と見込まれる方のうち、一定の条件に当てはまる方に限られます。逆に、次のいずれかに該当する方には送付されません。国税庁 確定申告書用紙に代えて「確定申告のお知らせ」はがき等をお送りしています
| マイナンバーカード方式で e-Tax送信した方 |
所得税または消費税について、マイナンバーカード方式を利用してe-Taxで申告した場合は送付されません |
|---|---|
| 税理士に作成・提出を 依頼して申告した方 |
税理士が作成・提出した申告については送付されません |
| 予定納税額などの 情報がない方 |
お知らせに記載すべき情報がないため送付されません |
電子申告への切り替えによる不着
最も多いのが、前年にご自宅などからマイナンバーカード方式でe-Tax送信したケースです。スマートフォンやパソコンで申告を済ませた翌年から、ハガキも用紙も届かなくなります。国税庁は令和5年分から、前年に送付した確定申告書用紙を使用せずに申告書を提出した方などについても、用紙の送付に代えてお知らせを送る運用としています。
e-Taxをご利用の場合は、マイナンバーカードでログインした後、メッセージボックスに通知される「申告のお知らせ」で内容を確認できます。紙が届かなくなった代わりに、通知の受け取り先が電子的な窓口へ移ったとお考えください。
税理士関与による不着
税理士に申告を依頼した年の翌年も、お知らせは送られません。顧問契約を前年で解約した方や、開業初年度だけ税理士に依頼した方が、翌年に「今年は何も届かない」と戸惑うことがあります。依頼をやめた年こそ、自力での申告準備が必要になる年です。
送付対象そのものに該当しない場合
お知らせの送付対象は、事業・農業・不動産所得のいずれかがあり青色申告決算書や収支内訳書の作成が必要な方、予定納税や公的年金等の所得がある方、消費税の課税事業者などです。副業を始めたばかりの会社員の方や、初めて確定申告をする方は、そもそも税務署がその所得を把握していないため、通知が届かないのが通常です。
実務では、副業所得が前年に生じたばかりの会社員の方から「何も届かないので申告不要だと思っていた」というご相談を受けることがあります。税務署は取引先から提出される支払調書などで収入を把握しているため、通知がないまま数年が経過し、後日に無申告を指摘される流れが典型的です。通知の有無は、税務署が申告義務を認めた証拠にはなりません。
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申告が必要かどうかの判断基準
お知らせが来ない状態で最初に確認すべきは、ご自身に申告義務があるかどうかです。所得の種類ごとに判断の入口が異なります。
事業所得・不動産所得がある方の判定
個人事業主やフリーランスの方は、事業による所得金額の合計額が所得控除の合計額を超え、その超える額に対する税額が配当控除額などを上回るかどうかで判定します。赤字であれば納める税額は生じませんが、青色申告の特典を受けるためには期限内申告が前提となる点に注意が必要です。
不動産所得がある方は、次の算式で所得金額を計算します。国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
総収入金額には、家賃だけでなく、名義書換料、承諾料、更新料、頭金などの名目で受け取るもの、敷金や保証金のうち返還を要しないもの、共益費として受け取る電気代や水道代なども含まれます。必要経費には固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などが該当します。
給与所得者の副収入と20万円基準
会社員の方が副業や不動産で収入を得ている場合、1か所から給与の支払を受けていて源泉徴収の対象となる方は、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超えるときに確定申告が必要です。2か所以上から給与を受けている方は、年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額との合計額が20万円を超えるときに申告が必要となります。また、年間の給与収入が2,000万円を超える方は、金額にかかわらず確定申告が必要です。以上はいずれも令和7年4月1日現在の法令等に基づく取扱いです。国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
20万円は「収入」ではなく「所得」で判定します。副業の売上から必要経費を差し引いた後の金額で比べる点を取り違えると、判定を誤ります。なお、この20万円の基準は所得税の申告についてのものであり、住民税の申告義務とは別に考える必要があります。
お知らせが来ない場合の申告手続き
申告義務があると判断できたら、お知らせの有無にかかわらず期限内に申告します。所得税の申告と納税の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までです。直近の令和7年分については、所得税および贈与税の申告期限が令和8年3月16日、個人事業者の消費税等が令和8年3月31日とされていました。国税庁 令和7年分 確定申告特集
スマートフォンとマイナンバーカードによる電子申告
用紙もハガキも手元にない場合、最も手数が少ないのはスマートフォンからの電子申告です。国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成した申告書を、マイナンバーカードを使ってe-Taxで送信できます。マイナンバーカード方式を利用するには、マイナンバーカード読取対応のスマートフォンまたはICカードリーダライタと、利用者証明用電子証明書の暗証番号(数字4桁)および署名用電子証明書の暗証番号(英数字6文字から16文字)が必要です。国税庁 e-Taxの利用方法
暗証番号を失念している場合は、市区町村の窓口での再設定が必要になり、申告直前では間に合わないことがあります。準備は申告期の1か月以上前に済ませておくことをおすすめします。
関連コラム利用者識別番号とは?e-Taxで忘れた時の確認方法5つと取得手順を解説▸
書面による作成と郵送
電子申告が難しい場合は、確定申告書等作成コーナーで作成した申告書を印刷して郵送するか、税務署の窓口へ提出します。用紙は国税庁ホームページからダウンロードでき、税務署の窓口でも受け取れます。用紙の入手方法の詳細は上掲の関連コラムをご確認ください。お知らせが届かないことを理由に税務署へ用紙を請求する必要はなく、郵送提出そのものは現在も認められています。
無申告の場合の加算税と延滞税
お知らせが来なかったことは、申告しなかったことの正当な理由になりません。期限後申告となった場合、本来の税額に加えて無申告加算税が課されます。割合は令和7年4月1日現在の法令等では次のとおりです。国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
| 申告のタイミング | 無申告加算税の割合 |
|---|---|
| 税務調査の事前通知前に自主的に申告 | 納付すべき税金の5パーセント |
| 事前通知後・調査による決定前に申告(令和5年分以降) | 50万円までの部分は10パーセント、50万円超300万円までは15パーセント、300万円超は25パーセント |
| 調査による決定後(令和5年分以降) | 50万円までの部分は15パーセント、50万円超300万円までは20パーセント、300万円超は30パーセント |
さらに、過去5年内に無申告加算税等を課されたことがある場合は、納付すべき税金の10パーセントに相当する金額が加算されます。反対に、期限後申告が法定申告期限から1か月以内に自主的に行われ、納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付しているなど一定の要件を満たす場合には、無申告加算税は課されません。
加算税とは別に、納付が遅れた期間に応じて延滞税もかかります。令和8年1月1日から令和8年12月31日までの割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.6パーセント、それ以降が年8.9パーセントです。国税庁 延滞税の割合
実務では、お知らせが来なかった年だけ申告を飛ばしてしまい、数年後の税務調査でまとめて指摘されるケースが見られます。気づいた時点で自主的に期限後申告をすれば、割合の低い5パーセントの区分にとどまる可能性があります。放置している期間が長いほど延滞税も積み上がるため、早期の対応が金銭的な負担を抑えます。
関連コラム延滞税 税率|割合・計算方法と免除されるケースを税理士が解説▸
所得の種類が複数にわたる場合や、過年度の無申告がある場合は、判断を誤ると加算税の区分が変わります。具体的なケースについては税理士へのご相談をおすすめします。
まとめ
税務署から確定申告のハガキや封書が来ないことは、申告不要の合図ではありません。国税庁は電子申告の進展を踏まえ、マイナンバーカード方式でe-Tax送信した方や税理士に依頼して申告した方などへの送付を取りやめています。申告義務の有無は、あくまでご自身の所得金額と所得控除の関係で決まります。
お知らせが届かない年は、まず所得の状況から申告要否を判定し、必要であればスマートフォンとマイナンバーカードによる電子申告、または書面の作成・郵送で期限内に手続きを済ませてください。無申告のまま放置すると無申告加算税と延滞税が積み上がり、自主的な申告よりも負担が重くなります。判断に迷う場合は、まずは税理士にご相談ください。
参考文献
- 国税庁 確定申告書の事前送付に関するお知らせ
- 国税庁 確定申告書用紙に代えて「確定申告のお知らせ」はがき等をお送りしています
- 国税庁 No.2020 確定申告
- 国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
- 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 令和7年分 確定申告特集
- 国税庁 e-Taxの利用方法
- 国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
- 国税庁 延滞税の割合
確定申告のお知らせが来ない場合のよくある質問まとめ
Q.税務署から確定申告のお知らせが来ない場合、申告は不要ですか。
A.不要ではありません。申告義務はその年の所得金額と所得控除の関係で決まり、税務署からの通知の有無とは無関係です。
Q.去年までハガキが届いていたのに今年は来ないのはなぜですか。
A.前年にマイナンバーカード方式でe-Tax送信した方、税理士に作成・提出を依頼した方、予定納税額などの情報がない方には送付されません。
Q.お知らせの内容はどこで確認できますか。
A.e-Taxを利用している場合は、マイナンバーカードでログインした後、メッセージボックスに通知される申告のお知らせで確認できます。
Q.副業の収入がある会社員はいくらから確定申告が必要ですか。
A.1か所から給与を受け源泉徴収の対象となる方は、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える場合に必要です。収入ではなく所得で判定します。
Q.用紙が届かない場合はどのように申告しますか。
A.確定申告書等作成コーナーで作成し、マイナンバーカードを使ってスマートフォンからe-Tax送信できます。印刷して郵送または窓口提出することも可能です。
Q.申告しないまま期限を過ぎた場合はどうなりますか。
A.無申告加算税と延滞税が課されます。税務調査の事前通知前に自主的に申告すれば無申告加算税は納付すべき税金の5パーセントにとどまります。