会社の解散を決めた事業者・経営者・経理担当の方に向けて、税務署へ提出する届出と申告の実務をまとめます。結論から申し上げると、解散したらまず「異動届出書」を所轄税務署へ速やかに提出し、あわせて解散の日で区切られた事業年度の確定申告を行います。登記事項証明書の添付は現在不要で、給与支払事務所等の廃止届出書や消費税の事業廃止届出書も同時に検討する必要があります。
解散は「会社が消えること」ではなく、清算結了までは法人が存続し続ける状態です。届出と申告を止めてしまうと無申告として扱われ、加算税や延滞税の対象になります。手続の順序と期限を先に押さえておけば、清算までの負担は大きく減らせます。
法人解散時に税務署へ提出する届出の全体像
解散にあたって税務署へ提出する書類は、大きく3種類です。いずれも会社の状況によって要否が変わるため、自社に該当するものを最初に確認してください。登記所への解散登記とは別に、税務署への届出が必要である点が実務上の落とし穴になります。
| 異動届出書 | 法人の解散および清算結了が対象の届出です。異動等の後、速やかに納税地の所轄税務署長へ提出します。国税庁 C1-8 異動事項に関する届出 |
|---|---|
| 給与支払事務所等の 開設・移転・廃止届出書 |
従業員や役員へ給与を支払う事務所を廃止した場合の届出です。廃止の事実があった日から1か月以内に提出します。 |
| 事業廃止届出書 | 消費税の課税事業者が事業を廃止した場合の届出です。事由が生じた場合に速やかに提出します。 |
加えて、解散の日で区切られる事業年度について法人税等の確定申告が必要です。実務では、解散の決議と同じタイミングで税務署への提出物を一覧化し、登記完了を待たずに準備を進める会社が多く見られます。登記が完了してから慌てて着手すると、給与支払事務所等の届出の1か月という期限に間に合わないためです。
異動届出書の書き方
異動届出書は、事業年度の変更や本店移転などにも使う汎用の様式で、解散もその異動事項の一つとして扱われます。専用の「解散届」という様式は存在しません。提出先は異動前の納税地の所轄税務署長で、手続の根拠は法人税法第15条および第20条です。国税庁 異動届出書の記載要領等
記載欄ごとの書き方
記載の中心は「異動事項等」「異動前」「異動後」「異動年月日(登記年月日)」の各欄です。解散の場合は異動事項等の欄に解散である旨を記載し、異動年月日の欄に解散の日を記載します。代表取締役が清算人に就任するときは、代表者の変更としてその内容もあわせて記載し、異動前に旧代表者、異動後に清算人の氏名を記載する形になります。
解散の日は登記の日と一致するとは限りません。株主総会その他これに準ずる総会等で解散の日を定めたときはその定めた日、定めなかったときは解散の決議の日、解散事由の発生により解散した場合は当該事由発生の日が解散の日となります。国税庁 1 事業年度
実務では、株主総会議事録に記載した解散の日と、届出書および申告書の事業年度末とが一致しているかを必ず突き合わせます。ここがずれると、後続の申告書の事業年度がすべて誤った期間で作成されてしまい、修正の手間が大きくなるためです。
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添付書類と提出方法
異動届出書の添付書類はありません。かつては登記事項証明書の添付が求められていましたが、平成29年4月1日以後、法人の設立・解散・廃止などの届出書等への登記事項証明書の添付は不要となりました。国税庁 法人設立届出書等について、手続が簡素化されました
ただし、異動事項の内容確認のため、定款等の写しの提示を求められる場合があります。提出はe-Taxソフトで作成して電子提出するほか、書面で作成して所轄税務署へ持参または送付することもできます。実務では、解散登記が完了した履歴事項全部証明書の写しを社内控えとして保管し、税務署から確認を受けたときに即応できるようにしておくと安心です。
解散に伴う事業年度の区切り
解散をすると、定款で定めた事業年度とは別に、税務上の事業年度が区切られます。この区切りを理解しないまま従来の決算期で申告してしまう誤りが少なくありません。区切りは法人税法上のみなし事業年度と、会社法上の清算事務年度の2段階で生じます。
解散事業年度
法人が事業年度の中途において解散した場合、まず定款等で定めた事業年度開始の日から解散の日までの期間が一つの事業年度とみなされます。これが解散事業年度です。3月決算の会社が9月30日に解散した場合であれば、4月1日から9月30日までが解散事業年度となります。
清算事務年度
解散の日の翌日以降は、定款で定めた事業年度ではなく、会社法上の清算事務年度が事業年度になります。清算事務年度とは、解散等をした日の翌日、またはその後毎年その日に応当する日から始まる各1年の期間です。先の例では10月1日から翌年9月30日までが第1期の清算事務年度となり、決算期が実質的に9月末へ移動します。
実務でつまずきやすいのは、解散後も従来どおり3月末で決算を組んでしまうケースです。清算中の申告書は清算事務年度で作成する必要があるため、会計システムの会計期間設定を解散の日の翌日基準に変更する作業を、解散直後に必ず行います。
解散確定申告と清算中の申告期限
法人税の確定申告書の提出期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。国税庁 C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)したがって解散事業年度の申告は、解散の日の翌日から2か月以内が期限となります。9月30日解散であれば11月30日が期限です。
清算中も同様に、各清算事務年度の終了の日の翌日から2か月以内に申告を行います。清算が長引けば、その年数分だけ申告が続く点に注意してください。なお、定款の定め等により申告期限を延長する特例の申請制度もあります。国税庁 C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請
消費税については、課税事業者である法人は課税期間ごとにその課税期間の終了の日から2か月以内に確定申告書を提出します。ただし清算中の法人において残余財産が確定した場合は、その確定の日の属する課税期間終了の日の翌日から1か月以内が期限となり、その1か月以内に残余財産の最後の分配等が行われる場合には、その行われる日の前日までとなります。国税庁 No.6610 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について
残余財産が確定する事業年度は、法人税についても通常の決算期とは異なる期間で区切られ、期限の考え方も個別の判断を伴います。最後の分配を実行する日程と申告期限は連動するため、分配のスケジュールを決める前に期限を確認しておくことをおすすめします。
あわせて提出する届出
解散に伴って給与の支払をやめる場合は、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書を提出します。提出期限は開設、移転または廃止の事実があった日から1か月以内で、提出先は給与支払事務所等の所在地の所轄税務署です。手続の根拠は所得税法230条および所得税法施行規則第99条です。国税庁 A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
実務では、清算人に報酬を支払う場合や、清算期間中に残った従業員へ給与を支払う場合には、給与支払事務所はまだ廃止されていません。この場合は源泉徴収と納付を継続し、実際に支払をやめた時点で廃止届出書を提出します。解散したその日に一律で廃止届を出してしまうと、その後の源泉徴収の取扱いと矛盾するため注意が必要です。
関連コラム給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書|提出期限1ヶ月と書き方を解説▸
消費税の課税事業者が事業を廃止した場合は、事業廃止届出書を納税地を所轄する税務署長へ提出します。提出時期は事由が生じた場合に速やかにとされ、手続の根拠は消費税法第57条第1項第3号および消費税法施行規則第26条第1項第4号です。国税庁 D1-14 事業廃止届出手続
なお、消費税課税事業者選択不適用届出書などに事業を廃止した旨を記載して提出した場合には、他の不適用届出書等および事業廃止届出書の提出があったものとして取り扱われます。どの届出を出しているかは会社ごとに異なるため、過去の提出履歴を確認したうえで整理してください。
都道府県および市区町村への届出
税務署への届出とは別に、法人住民税や法人事業税を管轄する都道府県税事務所および市区町村へも解散の届出が必要です。国税の異動届出書を提出しただけでは地方税の手続は完了しません。提出する様式の名称、期限、添付書類の要否は自治体ごとに定められており、統一されていません。
そのため、本店所在地を管轄する都道府県税事務所と市区町村の窓口に、解散の届出と清算結了の届出の様式を確認するのが確実です。実務では、解散登記の完了後に国税、都道府県、市区町村の3か所へ同時期に提出できるよう、書類一式をまとめて準備します。
届出と申告を放置した場合のリスク
解散後も清算結了までは法人が存続します。事業活動を止めたからといって申告義務が消えるわけではなく、期限までに申告しなければ無申告の状態になります。期限後申告となった場合には、本税に加えて無申告加算税の対象となり得ます。国税庁 法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)
納付が遅れた場合は延滞税もかかります。延滞税は法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて計算される附帯税です。国税庁 No.9205 延滞税について清算が数年に及ぶ会社では、放置した年度が積み上がるほど負担が増えます。
地方税についても、清算結了の登記が済むまでは法人として存続しているため、均等割などの取扱いを自治体へ確認せずに放置すると課税関係が残り続けるおそれがあります。休眠のまま置いておくのか、解散して清算まで進めるのかは、この維持コストと手続負担を比べて判断することになります。
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清算結了までの流れ
解散から清算結了までの税務手続は、次の順序で進みます。各段階で提出物と期限が決まっているため、着手前に全体を把握しておくと漏れを防げます。
- 株主総会で解散を決議し、解散の日と清算人を決定します。
- 解散および清算人選任の登記を行います。
- 税務署へ異動届出書を速やかに提出し、都道府県および市区町村へも届出を行います。
- 該当する場合は、給与支払事務所等の廃止届出書と消費税の事業廃止届出書を提出します。
- 解散事業年度の確定申告を、解散の日の翌日から2か月以内に行います。
- 清算が続く間は、清算事務年度ごとに確定申告を行います。
- 債務の弁済と残余財産の分配を行い、残余財産の確定に対応する申告を行います。
- 清算結了の登記を行い、税務署へ清算結了の異動届出書を提出します。
清算結了も異動届出書の対象事項です。最後の届出まで行って、はじめて税務上の手続が完了します。実務では、清算結了の登記日と最終申告の提出日を同じ月にまとめ、社内の担当者が変わっても手続が止まらないよう記録を残す運用が有効です。
解散の日の判定、清算事務年度の設定、残余財産の分配時期と申告期限の調整は、会社の決算期や債務の状況によって最適な進め方が変わります。具体的なケースの判断は、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
会社を解散したら、まず異動届出書を所轄税務署へ速やかに提出します。添付書類は不要ですが、定款等の写しの確認を求められる場合があります。あわせて、給与の支払をやめるなら給与支払事務所等の廃止届出書を1か月以内に、消費税の課税事業者なら事業廃止届出書を速やかに提出します。
申告面では、解散の日で事業年度が区切られ、解散事業年度の確定申告を解散の日の翌日から2か月以内に行います。その後は清算事務年度ごとに申告を続け、残余財産の確定と清算結了まで手続が続きます。都道府県および市区町村への届出も別途必要です。期限を外すと加算税や延滞税の負担が生じるため、早い段階で全体像を固めておくことが重要です。
参考文献
- 国税庁 C1-8 異動事項に関する届出
- 国税庁 異動届出書の記載要領等
- 国税庁 1 事業年度
- 国税庁 法人設立届出書等について、手続が簡素化されました
- 国税庁 C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)
- 国税庁 C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請
- 国税庁 No.6610 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について
- 国税庁 A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
- 国税庁 D1-14 事業廃止届出手続
- 国税庁 法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)
- 国税庁 No.9205 延滞税について
法人解散の届出のよくある質問まとめ
Q.法人が解散したら税務署へ最初に出す書類は何ですか。
A.異動届出書です。法人の解散および清算結了は異動事項に含まれ、異動等の後、速やかに納税地の所轄税務署長へ提出します。専用の解散届という様式はありません。
Q.異動届出書に登記事項証明書の添付は必要ですか。
A.必要ありません。平成29年4月1日以後、法人の設立や解散などの届出書等への登記事項証明書の添付は不要となりました。ただし異動事項の内容確認のため、定款等の写しの確認を求められる場合があります。
Q.解散事業年度の確定申告の期限はいつですか。
A.法人税の確定申告書の提出期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。解散の日で事業年度が区切られるため、解散の日の翌日から2か月以内が期限となります。
Q.解散した後の決算期はどうなりますか。
A.解散の日の翌日からは、定款で定めた事業年度ではなく会社法上の清算事務年度が事業年度になります。清算事務年度は解散等をした日の翌日、またはその後毎年その日に応当する日から始まる各1年の期間です。
Q.給与支払事務所等の廃止届出書はいつ提出しますか。
A.廃止の事実があった日から1か月以内です。清算人への報酬や清算期間中の給与の支払が続く間は廃止に該当しないため、実際に支払をやめた時点を基準に判断します。
Q.解散の届出をせずに放置するとどうなりますか。
A.清算結了までは法人が存続するため申告義務が残り、期限までに申告しなければ無申告となって無申告加算税の対象となり得ます。納付が遅れた場合は延滞税もかかります。地方税の取扱いも自治体への確認が必要です。