税理士法人プライムパートナーズ

iDeCoと退職金控除の完全ガイド!損をしない受け取り方のコツ

2026-03-26
目次

老後の資金準備としてiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する方が増えていますが、いざ受け取る時の税金についてご存知でしょうか。実は、会社からの退職金とiDeCoをどのようなタイミングで受け取るかによって、手元に残る金額が大きく変わってしまいます。この記事では、iDeCoと退職金控除の仕組みや、税金をなるべく抑えて賢く受け取るための具体的なポイントを分かりやすく解説いたします。ご自身の状況に合わせて、ベストな受け取り方を見つけていきましょう。

退職金とiDeCoの受け取り方と税金の基本

退職金やiDeCoで積み立てたお金を受け取る際、その受け取り方によって適用される税金のルールが異なります。まずは基本的な受け取り方の種類と、それぞれに適用される控除について確認していきましょう。

受け取り方法は主に3パターン

退職金やiDeCoの受け取り方には、大きく分けて3つの方法があります。ご自身のライフプランや今後の生活費の使い道に合わせて選ぶことが大切です。

受け取り方法 特徴と税金の扱い
一時金として一括で受け取る 退職所得として扱われ、退職所得控除が適用されます。
年金として分割で受け取る 雑所得として扱われ、公的年金等控除が適用されます。
一時金と年金を組み合わせて受け取る 一部を退職所得、残りを雑所得としてそれぞれの控除が適用されます。

退職所得控除と公的年金等控除の違い

一括で受け取るか、分割で受け取るかによって、税金の計算に使われる控除枠が変わります。一般的に、一時金で受け取った場合に適用される退職所得控除の方が、税負担を大きく抑えられる傾向にあります。ただし、公的年金等控除にも、65歳未満であれば年間60万円まで、65歳以上であれば年間110万円まで非課税となる枠がありますので、これらを上手に活用することが節税の鍵となります。

退職所得控除の詳しい計算方法

税制面で非常に有利な退職所得控除ですが、具体的にどれくらいの金額が非課税になるのでしょうか。計算方法は勤続年数(iDeCoの場合は掛金を拠出した期間)によって決まります。

勤続年数ごとの控除額の違い

退職所得控除の金額は、勤続年数が20年以下か、20年を超えるかによって計算式が変わります。長く勤めるほど、または長くiDeCoに加入するほど、1年あたりの非課税枠が大きくなる仕組みになっています。

勤続年数(加入期間) 退職所得控除の計算式
20年以下 40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

具体的な計算シミュレーション

例えば、大学を卒業してから同じ会社で30年間働き、退職金を2,000万円受け取る場合で計算してみましょう。最初の20年分は「40万円×20年=800万円」、残りの10年分は「70万円×10年=700万円」となり、合計で1,500万円が退職所得控除となります。受け取る退職金2,000万円から控除額1,500万円を引いた500万円の「半分」である250万円に対してのみ税金がかかるため、手取り額を多く残すことができます。

iDeCoと退職金を同時に受け取るときの注意点

退職金とiDeCoの両方がある場合、60歳や65歳のタイミングでまとめて受け取りたいと考える方も多いかもしれません。しかし、同時に受け取ると税金面で損をしてしまう可能性があります。

控除枠の重複と税金の発生

会社の退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、それぞれの勤続期間と加入期間が重なっている部分の退職所得控除が1回分しか使えなくなります。たとえば、退職金とiDeCoの合計額が退職所得控除の枠を超えてしまうと、超えた部分に税金がかかってしまいます。人生で1回きりの大きな控除枠ですので、合算して枠をあふれさせない工夫が必要です。

19年ルールと10年ルールとは?

控除枠の重複を避けるためには、受け取る年をずらす方法があります。しかし、法律によって「一定期間内に複数の退職金等を受け取ると合算されてしまう」という厳しいルールが設けられています。

受け取る順番 期間を空けるルール
退職金をもらった後にiDeCo 前年以前19年以内の退職金は調整の対象(19年ルール
iDeCoをもらった後に退職金 前年以前9年以内のiDeCoは調整の対象(10年ルール※令和7年改正後)

このように、退職金を先にもらうと次にiDeCoをもらうまでに20年も間を空けなければ控除が満額使えません。現実的にはかなり難しい選択となります。

iDeCoと退職金を受け取るベストなタイミング

ルールを踏まえた上で、手元に一番多くお金を残せる受け取り方の順番を考えていきましょう。ポイントは「iDeCoを先に受け取る」ことです。

iDeCoを先に受け取り、退職金を後にする

現在の制度下で最もおすすめなのは、60歳でiDeCoを一時金として受け取り、その後65歳まで会社で働き続けてから退職金を受け取るという順番です。令和7年の税制改正により、これまでの「5年ルール」が「10年ルール」に変更されましたが、それでも退職金を先にもらうよりは調整の期間が短くて済みます。60歳時点でiDeCoの退職所得控除を使い切り、その後数年あけてから会社の退職金を受け取ることで、税負担を分散させる効果が期待できます。

一時金と年金を組み合わせて非課税枠をフル活用する

もし受け取る金額が大きすぎてどうしても退職所得控除の枠を超えてしまう場合は、一部を「年金」として受け取る方法も有効です。60歳から64歳までの間は、公的年金等控除として年間60万円まで非課税で受け取れる枠があります。退職所得控除に収まる分だけ一時金でもらい、はみ出してしまう分を5年間で年間60万円ずつ年金として受け取れば、合計300万円分の非課税枠を追加で使うことができます。

令和7年度の税制改正による変更点

老後の資産形成を後押しするため、iDeCoや退職金に関するルールは定期的に見直されています。直近の大きな改正点もしっかりと押さえておきましょう。

拠出限度額の引き上げ

令和7年度の税制改正により、会社員のiDeCoの拠出限度額が引き上げられます。これまで企業年金がない会社員は年間約28万円が上限でしたが、これが月額最大6.2万円、年間で約75万円まで大きく拡充されます。これにより、さらに多くの資金を非課税で運用しながら老後に備えることが可能になります。

5年ルールから10年ルールへの見直し

もう一つの重要な改正が、先ほども触れた勤続期間の重複排除に関するルールの見直しです。これまでiDeCoを先に受け取った場合、5年空ければ会社の退職金で満額の控除が使えましたが、これが「前年以前9年以内」に延長されました。つまり、実質的に10年間空けなければならなくなったため、60歳でiDeCo、65歳で退職金という受け取り方では、退職所得控除が一部削られてしまうことになります。ご自身の定年退職の年齢と合わせて、慎重なプランニングが求められます。

まとめ

豊かな老後を迎えるためには、大切に育てたiDeCoと長年働いて得た退職金を、いかに税金で減らさずに受け取るかが非常に重要です。原則として、一時金で受け取って退職所得控除を活用するのが最も有利ですが、同時に受け取ると控除枠をはみ出してしまうリスクがあります。受け取るタイミングをずらしたり、年金受け取りと組み合わせて公的年金等控除を利用したりと、ご自身の受け取り予定額に合わせて計算してみることをおすすめします。税制改正の最新情報も踏まえながら、一番お得な出口戦略を立てていきましょう。

参考文献

国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
国税庁 No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(特定役員退職手当等)

iDeCoと退職金控除のよくある質問まとめ

Q.iDeCoと退職金は同時に受け取った方がお得ですか?

A.同時に受け取ると退職所得控除の枠が重複してしまい、超えた部分に税金がかかる可能性が高いため、タイミングをずらすか、一時金と年金を組み合わせるのがおすすめです。

Q.退職所得控除とはどのようなものですか?

A.退職金やiDeCoの一時金を受け取る際に、税金がかからないように差し引くことができる非課税枠のことです。勤続年数や加入期間が長いほど、控除できる金額が大きくなります。

Q.退職金を先に受け取る場合、どれくらい期間を空ければ良いですか?

A.退職金を先に受け取ってからiDeCoを受け取る場合、退職所得控除を完全に復活させるには前年以前19年(実質20年)の間隔を空ける必要があります。

Q.iDeCoを先に受け取る場合のルールはどう変わりましたか?

A.令和7年度の税制改正により、iDeCoを先に受け取った後に退職金を受け取る場合、これまでの5年間隔ルールから、実質10年間隔を空けないと控除が完全に使えないルール(10年ルール)に変更されました。

Q.一時金と年金の併用はどうやって活用しますか?

A.退職所得控除の枠に収まる分だけを一時金で一括で受け取り、枠からはみ出す分を年金形式で受け取ることで、公的年金等控除の枠(65歳未満で年間60万円まで非課税など)を活用し、税金をさらに抑えることができます。

Q.勤続年数が20年を超えると控除額はどう増えますか?

A.勤続年数20年以下の場合は1年あたり40万円ですが、20年を超えた期間については1年あたり70万円に増額され、より大きな非課税枠を利用できるようになります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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